「…ただいま…」
「あ、お帰り剣心何してたの?」
「いや、少しばかり用があっただけでござるよ…」
「そう?それにしては元気無いよ?」
剣心はフラクシナスに緊急召集されて集まった理由を聞いた。
いきなり過ぎた。折紙の誘拐もそうだったが宗次郎の瀕死はそれ以上にいきなりだった。
折紙の誘拐も宗次郎の瀕死も犯人はDEMだと言うのは分かった。宗次郎がラタトスクの医療機関に運ばれている最中に残された力を振り絞って話したのだ。
「はは…そんな事ないでござるよ…さて、今日はもう遅いし寝よう。千琥も今日は泊まっていくでござるよ」
「そ、そう?ならお言葉に甘えて…」
千琥から見て剣心は明らかに部屋を出て行く前に比べて元気が無かった。元気が無いと言うより何かを考え込みすぎている様に見えた。
「………ふぅ」
剣心は一つ溜め息を吐くと目を閉じた。
ーーー………
「貴方達に集まってもらったのは理由は二つあるわ」
およそ1時間前、剣心や左之介達はフラクシナスに急に呼ばれた。用件も何も書かれず只、集まれとメールに書かれていた。
「で、その理由って何だ?」
士道が琴里に理由を聞くと琴里は令音の方を向いて会釈をした。令音はそれを見ると頷き話を始めた。
「一つは先程何者かに鳶一折紙が誘拐された」
「何だって!?」
令音の話を聞き最初に反応したのは士道だった。
「誘拐誰に!?」
「それは二つ目の理由でも分かる」
令音は士道の焦り様を見ると士道の顔の前に手のひらを出し落ち着けと言った。
「二つ目の理由だが…」
令音が二つ目の理由を話そうとした瞬間に左之介がある事に気付いた。
「そういや…宗次郎と狂三と奏がいねぇぞ?」
「それが二つ目だ…」
「あ?」
令音は一拍置くと話を再び進めた。
「こちらの件も鳶一折紙の誘拐と同じ時間帯だ。宗次郎が何者かによって胸を大きく斬り付けられた姿を住宅地で発見した…」
「「「な!?」」」
それに反応したのは剣心、左之介、士道だった。
「誰にでござるか?」
剣心は一瞬気が慌てたが落ち着きを戻すと令音に聞いた。
「鳶一折紙の件も宗次郎の件もどちらもDEM社によってやられた…」
「クソッ、またDEMかよ!」
左之介は近くにあった空箱を蹴り怒りを表した。
「DEM社の誰に?エレンに勝っているのにそれより下の者にそんな重傷負わされるなんて…」
「相手は城宮悠仁と言いアデプタス6と言っていたらしい…」
「らしい?定かじゃないのか?」
士道が琴里に聞くと琴里は舌打ちをして悔しそうな顔をしながら答えた。
「宗次郎が言ったのよ…ラタトスクの医療機関に運ばれている最中に医師に私達に伝えてくれと言ったらしいわ。宗次郎ったら重傷で喋ることなんて自殺しに行くような物なのに…」
琴里も口に含んでいたチュッパチャプスを噛み砕いて怒りを表した。
「質問。宗次郎はどれ程の怪我を負ったのですか?」
「だぁー」
夕弦とその腕の中にいた穣之介が言った。
「宗次郎の傷は肋骨の何本かが折れているのと幸いにも斬撃は宗次郎の心臓に紙一重で届いてなかった…」
「今は集中治療室に居るわ…」
「狂三殿と奏は?」
剣心は宗次郎と一緒でここに居ない二人の居場所を聞いた。
「狂三と奏は君たちより先に集めてこの事を話した。今は二人とも宗次郎の側にいるよ…」
「そうでござるか…」
辺りはまるで葬式の様に静かになったが琴里のある一言で再び活気を戻した。
「こっちは身内をやられたのよ!DEM社に乗り込んでやりましょ!」
「おぉ!そうだぜ嬢ちゃん!」
左之介が誰よりも早く琴里の意見に賛成した。
「しかし、DEM社にどうやって…?」
剣心はふと疑問に思ったことを琴里に告げた。
「今、恐らく宗次郎を倒した城宮悠仁と言う男はDEM日本支社に居る筈だ…」
「と言うことは日本支社に殴り込むと…?」
「そうよ…」
その後、皆宗次郎の敵を討つためにDEM社に乗り込む事に賛成した。
「今日は遅いから明日の夜にまた集まってちょうだい…昼間だとバレる可能性が高いからね…そして各自、明日は好きなことをしてきなさい。相手は宗次郎が手も足も出なかった相手…最悪なケースも有り得るわ…」
「珍しいでござるな琴里殿がそんな事を言うなんて」
「それくらい今回は簡単じゃないってことよ…宗次郎が手も足も出なかった相手だけじゃなくDEM社に乗り込むんだからどんなのが居るかわからないわよ?」
明日の集合時間を聞くとその日は解散になったのだった…
ーーー………
剣心は閉じていた目を開いた。
「好きなことか…」
恐らく、皆デートをするだろう。
左之介は夕弦。士道は十香と。
(拙者は好きな女の子いない…でも、何だろうかこの感情は…今日いきなりだ…)
そう思いその感情が何で誰にたいしてなのか考えている内に眠りに落ちてしまった。
ーーー………
次の日、剣心が起きたのは自分でも驚くほど早かった。
(久し振りにこんな時間に起きたでござるな…折角だし、このまま起きるか…)
そう思い、布団から出ると台所に向かった。しかし、その台所に人の気配がした。剣心もその気配にすぐ気が付き少し構えるが昨日、自分が家に来た千琥を泊めたのを思い出した。
「おはよう…千琥」
「あ、おはよう剣心!ご飯もうすぐ出来るからね!」
台所への扉を開けるとそこにはエプロンをして朝御飯を作っている千琥の姿があった。
(千琥は偉いな…ご飯も美味しいし、良いお嫁さんになりそうだ…)
『私は貴方のお嫁さん!』
(…良い人と巡り会えるだろうな…)
ーーー………
千琥が作った朝御飯は至って普通でご飯に味噌汁、卵焼きだった。しかしどれも美味しくて自分が作るものより美味しいのに少し嫉妬した。
「ねー、剣心?今日って用事ある?」
朝御飯を無言で二人で食べていると千琥が先に口を開いた。
「今日でござるか?」
「そう、今日だよ」
「今日は特に何もないでござるよ?しかし何故?」
「一緒に街でデートしない?」
「え?」
剣心は戸惑っていた。今日の夜にはDEM社へ乗り込むのに昼間に街でぶらぶらしていては身が引き締まらない気がしたのだ。
(だが、何故でござろう…千琥とのデートを嫌がらずに喜んでいる自分もいる気がする…)
「で、どう剣心?大丈夫?」
「え…?あ、あぁ…大丈夫でござるよ」
「本当に!?やったー!」
「そんな大袈裟な…拙者とデートしても楽しくないでござるよ?」
あまりのはしゃぎ様に剣心は少しからず嬉しく思った。自分とデートする事をここまで喜んでくれるとは思っていなかった。
ーーー………
それから剣心と千琥は朝御飯を食べ終えて街に出掛けた。
「あ、剣心見て!これってアクセサリー屋さんだよね?」
千琥は街中にあった少し大きいアクセサリーやネックレス等のブランド店だった。
「そうでござるな。気になるなら入ってみるでござるか?」
「良いの?」
「別に良いでござるよ減るものでもないし」
そして二人はその店の中に入っていった。
中はやはりブランド物を置いているからなのか少し大人びた雰囲気を漂わせる構造だった。
「わぁ……素敵だね~剣心!」
「確かに落ち着くでござるな…」
二人で広い店内を見て回る。色々な種類の物が置いてありその中には目を惹くような物も多々あった。千琥がうわぁと眼を輝かせる物もあり剣心は買えるのなら買ってあげたかったが剣心の所持金を上回る物しかなかった。
「あ!これも可愛いね~!」
千琥が又してもあるものに眼を輝かせた。
それはネックレスのだった。菱形の綺麗なピンクをしたネックレスで名前を彫れる物だった。
(これも高いだろうな…)
剣心はそのネックレスの所にある値札を見た。
(………ギリギリイケる…!)
剣心にとってその値段は剣心の所持金でほんとにギリギリだった。
しかし剣心に迷いは無かった。
そのネックレスのコーナーの店員を見つけてそのネックレスを注文した。
「え?剣心どうしたの?」
千琥は剣心の行動に驚いてしまった。
「…まぁ、記念でござるよ」
「良いの?これ高いよ?買ってくれるならもっと安くても…」
千琥が余りにも慌てているので剣心は微笑してしまった。
「買うなら良いものを買うべきでござるよ…その代わり、大切にしてほしいでござる」
「剣心………ありがとう!もうだーい好き!」
その後、会計を済ませて名前を彫る時間でご飯を済ませると店に戻り購入したネックレスを受け取った。
そのネックレスにはT・Kと彫られていた。
千琥は耀ヶ谷千琥。つまり、T・Tの筈だ。しかし千琥は千琥と剣心と言う意味でT・Kと彫った。
剣心は千琥の為に買ったがその千琥がこう言った事をしてくれるのは素直に嬉しかった。
そして、T・Kと彫られたネックレスを身につけた千琥は初めて会った時から今までで一番綺麗に見えた。
「どう?似合う?」
千琥が少し不安気に聞いてきたが剣心は優しく微笑むと似合うよと答えた。それを聞いた千琥は嬉しそうに剣心に抱き付いた。
(やはり何だろうかこの感情は…でももうすぐで分かる気がする…)