「ど、どうして泣いてるんですか?」
剣心はいきなり大人数の知らない人が入ってきて少女が泣き出した事に驚いた。
「あと、ラタトスクとは何ですか?」
琴里は剣心のその言葉を聞くと完全に自分達の事を忘れていることが分かった。
「そうね…今はまだ話す必要はないわ…でも一つ聞かせてもらえるかしら?」
「え?良いですけど何か?」
「輝ヶ谷千琥という女性を知ってるかしら?」
琴里の質問に一瞬理解していなかった剣心だったが直ぐに返事をする。
「いや…知らないですけど…」
やはり…と琴里は僅かに抱いていた希望を見事に打ち砕かれた。
「…邪魔をしたわね。いきなりでごめんなさい。私の名前は五河琴里」
「あ、僕は緋村剣心です」
「知ってるわよ…明日又来るわ。その時にラタトスクの説明をするから宜しくね」
そう言い琴里は部屋を後にすると取り残されたメンバーは何も剣心と言葉を交わさずに部屋を出た。
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「どうゆうことだよ!剣心の記憶が無いって…!」
あれからまたフラクシナスに戻ると集まったメンバーは剣心と再開するまでの雰囲気よりも更に悪い雰囲気を漂わせていた。
「言ったでしょ?覚悟しなさいって…」
すると琴里の横に立つ令音が左之助に説明する。
「恐らく精神的な何かで記憶を閉ざしてる可能性が高いだろう…」
「精神的なって…何だよそれ」
「言っただろう。不殺の誓いの事だ」
「…でもよ!そんなことで…!」
左之助の言葉を遮り琴里が口を開く。
「それよりも事態は更に悪化したわ。
千琥は危篤状態。
それを止めることが出来る可能性の有る剣心は記憶喪失」
「どうするつもりだい琴里?」
「とりあえず今日一日は様子を見ましょ…明日から本格的に対策に乗り出すわ。それじゃ解散にしましょ」
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~DEM社~
音も何もない静かな社長室にドアをノックする音が響き渡った。
「どうぞ」
何もせずただガラス張りの壁から見える景色を見てるアイザック・ウェストコットがそう言うとドアを開き一人の男が入ってきた。
「どうしたんだいアダム?」
「いえ、一つ報告が有りまして…」
「ほう?何だいその報告とは?」
椅子に座りアダムを見つめるウェストコットにアダムは目の前まで近づく。
「今日、緋村剣心が目を覚ましました」
「そうかい…しかしそれが報告かい?随分どうでもいい報告だね」
「いえ、ここからが本題です」
呆れた仕草をするウェストコットに腹をたてたのかアダムは少し声を強く張ってしまった。
「?」
「その緋村剣心ですが記憶を失いました。恐らく今までの戦闘能力も全て…」
「そうかい…それは残念だ…ならば、これから先に置いて彼は必要がない。更に万が一記憶を取り戻した際に邪魔をされては困るからね…」
ウェストコットはそこで一拍置くと再び話し始めた。
「殺しておこう。ラタトスクの監視が強まる前にね…
そうだね…明日にしよう。明日彼を外に連れ出すように手配しておくから君が殺しに行ってくれ…一応、アルテミシアと悠仁とミルーシャを連れていっておいてくれ」
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琴里は皆と解散した後、千琥の元に居続けていた。
(…千琥ごめんなさい。剣心の中から貴方を奪ってしまったわ。私達の事も忘れているけれど貴方が助かるには剣心が必要なのに…)
少し唇を強く噛み締めると再び緩めて次は語りかけた。
「でも安心して…明日必ず元の剣心に戻させるから…貴方と剣心が過ごしたこの天宮市で剣心に思い出させて見せるわ」
言い終えると同時に令音が部屋に入ってきた。
「明日どの様にするんだい?」
「明日はとりあえず剣心には外に出てもらうわ…とりあえず二人がこの前最後に行った展望台でこのブレスレットを置いておく。そしてそれを手にした剣心に後は全て任せましょう」
説明を聞いた令音は一つ琴里に質問をした。
「左之助や宗次郎、シン達はどうするんだい?」
「彼等には剣心の保護をしてもらうわ…DEMが何かしらの手を打ってくる可能性もあるしね」
「了解した」
そう言い令音は部屋を後にした。
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次の日がやって来た。
そして今日この日がこれから先の未來の一番の分岐点となる