もし緋村剣心がデートアライブの世界に行ったら   作:こうけー

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六喰ファミリー読みました?


彼は別れそして出逢う

流れる冷や汗。早くなる鼓動。そして、目の前の溢れ出る威圧感。

折紙には目の前の十香が恐ろしくて仕方がなかった。圧倒的に、誰が見ても折紙が優勢だった先程とは違い、十香の霊装、霊圧の2つだけで折紙を萎縮させていた。

 

(…夜刀神十香。貴方は一体ーー)

 

刹那ーー折紙に向けて十香は指を突きだすと後ろに生える黒い翼を分解させて、黒い光線を放った。それは、折紙の光線と同じように、しかし色は全くの逆。

折紙も同じように後ろの白い翼を分解させ、光線を放つ。

2つはぶつかり合い、大きな音を発てて爆発するが、その爆煙から十香の黒い光線だけが折紙に向かっていく。

 

「…っ!」

 

折紙は辛うじてそれを避けると、更に一歩警戒して十香から距離を取った。

「…うむ。力としては十分だな」

折紙に対して、十香は新たな力に納得がいくと少し笑顔を見せて折紙に問いかけた。

 

「此処等で仕舞いにしないか鳶一折紙?今ので力の差は分かっただろう」

「ーーぅるさぃ…」

「…?」

「貴方に何が分かるの!?親を目の前で殺され、一人になって、唯一私を救ってくれた士道を精霊に近づけられて、彼を守るために!精霊を消すために!その為だけに生きてきた私は貴方の足下にも及ばなかった!!憎い精霊に自ら成って、貴方を、精霊を消せると思いきや…貴方はすぐに私の上に立つ…」

「……それはーー」

「初めから!生まれた時から一人だった貴方に!私の憎しみなんて分からない!!」

折紙は溢れる怒りの言葉を止めることなく全て十香にぶつけた。十香はその最後の言葉を静かに聞き入れ、そして目を瞑ったーー

そしてゆっくりと開けると折紙にーー

 

「なら初めから一人で、悪と見なされた私の…いや、精霊の哀しみが貴様には分かるのか?」

「ーーっ…」

「名前も居場所も存在も…全てを否定された精霊(私達)の痛みが貴様には分かるのか?大切な人(士道)を同じ奴に2回も傷つけられた精霊(私達)の怒りが貴様に分かるのか?」

 

十香も折紙に対して溢れる怒りの言葉を止めることが出来なかった。折紙の苦しみを理解出来ないことは認める、それに関しては言葉も無い。しかし、精霊の哀しみを貶すのは流石に黙っていない。

別に折紙に認めろとは言わない。ただ精霊にも折紙の似たような哀しみが有ったことを分かって欲しいだけだった。

 

「私達はシドーのお陰で温もりを知った。楽しさ、悲しさ、幸せ等の感情を知った。私はシドーに名前を貰った。そして、明日を知った…」

「…」

「シドーは言った事は必ず守る。自分を犠牲にしても…それは貴様も知ってるだろう?」

「…でも、貴方達が居なければ彼が傷つくことは無かった」

「そうだな…私はその点では精霊である事を今も悔やんでいる。しかし、精霊だったお陰で私はシドーに…ケンシンや左之助や宗次郎、琴里に四糸乃に狂三に耶倶矢に夕弦。千琥に奏に穣之助に出会えた…そしてーーー貴様にも出会えた」

「…ぇ?」

「お主が居なければ学校での張り合いがないからな…それにお主が居なければ士道が悲しむ…私も皆も…な」

 

十香の照れくさいが優しい笑顔が折紙を包み込む。久し振りの温もりだ…7年前に士道に救ってもらった時以来だろうかーー

 

「御前も涙を流すんだな…」

 

十香に言われて初めて折紙は自分が涙を流していることに気が付いた。涙も久し振りだ。同じように7年振りだろう……まさか、士道の次に自分を包み込む者が天敵・夜刀神十香だとは思わなかったが…それもまた一興だ。

 

「…私は士道に何かしてあげることは出来る?」

 

折紙の純粋な質問。それに答えたのは十香ではなくーー

 

「いや…もう既に色んな物を貰ってるよ」

「…士道」

 

傷は琴里の治癒能力のお陰で無くなっており、折紙は一先ずの安堵の息をついた。その間に士道は折紙の目の前まで来ると優しく体を抱き寄せた。

「ーーぁ…」

折紙は小さく声を漏らすとそのままゆっくりと士道の背中に手を回した。

「悲しかったな…苦しかったな…ごめんな折紙。救ってやれなくて……でもこれからは俺がお前を守ってやるよ…だってお前は俺のーー」

「彼女だから?」

「あぁ……って…ん?」

 

士道は変な違和感を感じた。自分は大切な存在として折紙を守るつもりだったが、折紙から違う言葉が聞こえてきた気がする。

「お、折紙?」

「嬉しい…しかし、彼女は守られるだけの存在ではない。支えあい、時には彼女が彼を守る事も必要…」

「え、えぇっと?」

「必要」

「い、いやそうじゃな「必要」…はい」

士道が渋々、肯定すると折紙は軽く微笑み士道の唇に自分の唇を触れさせた

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

~剣心side~

剣心は今は誰もいない嘗ての自分の居場所に戻っていたーーーそう、士道の家である。

「ーー懐かしいな…」

思えば、全ての始まりはここからだった。士道と出会い、精霊に出会った。

もしーーもしも、士道達に出会っていなかったら…自分はどうなっていたのだろうか…?

 

考えても、想像がつかなかった。それほど、彼等との思い出は深い物となっていたのだ。

大切な思い出…大切な繋がり…そして、大切な人達。

彼等を裏切る日が来るなんて思っても見なかった。いざ、彼等を裏切るとなると心が痛むなんて甘い物じゃないし、自分の息の根を止めたくもなる。

しかし、DEMの陰謀を止めるには誰かがDEMに付かなくてはいけない。士道には精霊達が、左之助と宗次郎には家族が居る。選択肢的にも自分しか残っていないのだ…

こっそりと静かに彼等を裏切れば自分への怒りはより大きな物になるだろう…

しかし、ここで彼等に自分の意図を話せばきっと止めるに違いない。そうなっては元も子もない。

 

「…本当に申し訳ない。そして、今まで有難う」

 

家を後にする前に、一度頭を深く下げると少しの間そのままで居続けたーー

「終わったか?」

外には、アダムとイヴが立っており出てきた剣心に声をかけた。

「……あぁ」 

「気持ちは分かるが、これも奴等の為だと思え。そうすれば、少しは気持ちも軽くなるだろう…」

「……御主、意外と良い奴だな」

「これからは、仲間だからな」

 

そう言って、先を歩みだした2人に続いて剣心は歩みだした。

そして、家の方を振り返るともう一度だけ頭を下げたーーー

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

「結局、剣心はどこにも居ず…ってわけね」

傷は負っているが比較的、軽傷で済んだ琴里は先程から行方の知れない剣心を探し回っているが形跡一つ残って居なかった。

「どこほっつき回ってるかは知らないけど帰ってきたら説教ね…これは」

今回はかなり負傷者を出してしまったが、鳶一折紙の霊力封印。誘宵美九とのコンタクトの機会も得ることができた。結果としては、まずまずと言ったところだ。

それに、ファントムや誅邪の事も調べなければいけない。こんな時に剣心の迷子を捜している暇なんて無かった。

「でも、本当にどこに行ったのかしら?」

琴里が咥えていたチュッパチャプスを噛み砕くと同時に部屋に士道が入ってきた。そしてーー

 

「琴里!家にこんなものが!!」

 

士道の手に握られていたのは何枚かの手紙だった…

 

ーーーー 

ーーー

ーー

 

~DEMside~

 

「最初の方は困ったりする事も有ると思うけど遠慮無しに聞いてくれたまえ」

廊下を歩く剣心、その前を歩くのはアイザック・ウェストコット、エレン・M・メイザースの2人。今、剣心は施設案内を社長直々に教えて貰っている所だった。

「あぁ…承知した」

「あと言う事としたら君のアデプタスNo.だが…今のところは2を与えるつもりだ。本当な1をあげたい所だがアダム・イヴの2人は別格なんでね……」

剣心にも2人の力の強さは十分分かっているし、まずアデプタスNo.など興味も無かった。

「ここが君の部屋だよ。3番目に広い部屋だ…好きに使ってくれて構わない」

そこで、横にいたエレンが口を開いた。

「貴方にはお願いが一つあります…付いてきてくれますか?」

言われて付いてきた部屋には一人の女の子が座っていた。とは言っても服装も髪も体も汚れている…スラム街を思わせる感じだった。

「彼女は?」

「アイクが先日連れてきた貧民児です。親はおろか名前すら持っていませんが言語能力は聞いただけで理解するなど素晴らしい才能を持っています」

「それで…拙者は何を?」

「あの子に飛天御剣流を教えてあげて欲しいんだ。特別魔術師として育てるのも有りだが脳への負担も大きいからね…アダム達みたい完全体になれるとは限らない。それに自分でパートナーを育てる方が君自身安心できるだろう?」

 

剣心は少女に近づくとーー

「御主…名前が無いのか?」

少女は少しの間、剣心の顔を見つめた。

「うん…それに自分が何なのかも分からないの……」

その言葉に剣心は言葉を失った。余りにも昔の…心太だった頃の自分に似ているから。

「もし…力を持つ事が出来るとしたらどうするーー?破壊の為に使うか、守る為に使うか…それとも他の新たな物に使うか……どれを取る?」

「……正解はそこにあるの?」

「え?」

「そのどれかに正解はあるの?……もし無いのなら私は全部取る。臨機応変に、その場に応じて…生き残るために私は力を使う」

 

少女の答えに剣心は驚きを隠せなかった。10歳程の少女が言う答えじゃない…確かにこれはある意味で逸材だ。

 

「完璧に仕上げるまでどれくらいかかりそうだい?」

ウェストコットの問いに答える前に剣心は少女にもう一問聞いた。

「お前には…大切な人はいるか?」

「…いないよ。だってずっと一人だったんだもん…でも、もしも大切な存在を得られるなら……私は親が欲しい。あの温かさが欲しい…」

 

その言葉が、完全に剣心の心を掴んだ。

 

「お前は今日から緋村弥生(やよい)と名乗れ…お前の親の名は緋村剣心ーーいいな?」

「緋村…弥生……何だか好き…この響き」

「そうか…それは良かったな」

 

剣心は弥生の頭を優しく撫でてやると弥生は気持ち良さそうに顔を綻ばせた。

 

「で、結局どれくらいかかりそうだい?」

「…普通なら何年も懸けなければ習得なんて不可能だが、施設も揃っている…そうだな、半年で習得させよう。才能があれば3ヶ月で終わるくらいで進める」

「無理はしなくて良いんだよ?」

「いや、きっと出来るさ…この子ならな……」

 

嬉しそうに自分の名前を何回も繰り返している弥生を剣心は微笑ましく思うと、弥生の手を取り、部屋を後にした。

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

「ねぇ…お父さんって呼んでいい?」

「好きにしていいぞ。それが良いならそれでな……」

「本当⁉じゃあ…お父さん!」

「何だ?」

「ううん、読んでみただけ!」

「そうか…なら弥生?」

「何?」

「読んでみただけだ」

「えへへ…」

 

弥生はまた可愛らしい、優しい笑顔を作り剣心に向けた。

それに剣心もまた笑顔を返す。

 

(この子は…絶対にDEMの力にはさせない。拙者が強く優しい人間へ育てて見せる!)

 

 

この、緋村弥生がこれから先に起こる誅邪と激闘を繰り広げるのはまだ2年先の話。

 

緋村弥生。この時、齢12。

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

 

そして1年の月日が流れた今、円卓会議では緋村剣心を最重要警戒対象にすると同時に彼を殺害対象にする事を決めた。

 

また同じ時期にDEM社にいた剣心にも不幸が降りかかっていた…

 

 




どうも受験生こうけーです。
これで美九編終わりです。え?封印してないじゃんって?
…まぁ、メインは剣心の裏切りと折紙の精霊化なので…って、じゃあなんで美九編にしたんだって話ですよね…すんません
さて、今回新たなキャラとして緋村弥生を出しました!元々は男の予定だったんですけど気分が変わりました(笑)
この子も誅邪に匹敵するチートキャラなので実質、弥生>剣心ですね…ま、まぁ子は親を抜くものですよ!

てなわけでまた!!
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