とある冬の日の話   作:よたか1100


原作:俺タワー
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とある建姫たちの冬の日のお話(数年前別サイトで掲載したものになります)

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とある冬の日の話

「うぅ……」

 

建姫というものは多少薄着でも彼女たちの本来の姿でもある程度の寒さ、

また暑さに耐える事は可能だが、今日は彼女らのその薄着を差し引いても寒い。

 

両手で腕をさすりながら食堂に続く廊下を歩く電動ドリルもまたその冷え込みに震えている一人だった。

そんな彼女の肩をとんとんと誰かの手が優しくたたく。

 

「ハァイ、電動ドリル!今日はとってもコールドね?」

「グルーガンさん!そうですね、ちょっと前まで暑さで倒れそうだったのに、

 もうこんなに寒いなんて、風邪には気を付けないといけませんね!」

 

電動ドリルはふんす、と気合を入れるように両手をぐっと握って見せる。

どんな状況でも元気に明るく振る舞う、彼女のまっすぐな姿勢に救われているものは多いだろう。

それが彼女の戦乙女としての才能なのだろうか、とグルーガンは脳内

 

「ところで……ワタシはブレークタイムにキッチンでコーヒーでも飲もうかなって思ってたんだけど。

 電動ドリルは、どうしたの?」

「私も似たようなものです、お姉さまと一緒に休憩できればと思って、

 軽い差し入れをしようかと思っていました。」

「オゥ!それは嬉しいサプライズね!」

 

両手を叩いて発した言葉通りに嬉しそうな相手に、電動ドリルは首をかしげた。

 

「嬉しい、ですか?」

「ええ、自分と同じタイミングで、同じ目的の人がいたらちょっとハッピーじゃない?」

「確かに……偶然だとしてもちょっと縁を感じてしまいますね!」

 

ニコニコと二人で見つめあいながら食堂に続く扉を開く。

お菓子作りに、料理にこだわる建姫のために少しずつ改良された厨房に向けて足をすすめると、先客の姿をそこに認める。

 

「グルーガンさんに電動ドリルさん、奇遇ですね。」

「ハロー!珍しいメンバーね!」

 

ゆったりと柔らかな、それでいて奥底に鋭さの込められた声音。

後ろから立ち寄る二人が何か言葉を発する前に気配に気づき一人が振り返る。

くのいち三姉妹の長女、鉋。

そしてその両サイドに立っていたのはいつもの妹二人……ではなく、

建姫ディーゼルジェネレイターとオフセットスパナ。

彼女らの背後に見えるのは鍋。

 

「あら、お二人もこちらに何か御用ですか?」

「なにか必要なものがいるなら言うといい、こちらの作業はもうほぼ終わったからな。」

「あ、はい!

 ですが、本当に珍しい組み合わせですね。一体何ををなさっていたのですか?」

「うふふ、今日は私が二人に料理を教えていたのよ。」

 

両脇に生真面目さの塊のような二人の建姫を携えて、鉋はにこにこといつも通り、そこの見えない笑顔を向ける。

その不穏さをグルーガンは感じ取っていたし、感じ取っていることを鉋もまたわかっているだろう。

 

それでも、そのどこか険しさの籠った笑顔は自分たちに向けられている間は僅かではあるが和らいでいる。

だから彼女も彼女なりに、この料理教室を楽しんでいるのだろうとグルーガンは理解した。

 

「寒さも厳しくなってまいりましたから、そういった時期にぴったりのお料理だそうで……」

「オヤカタ様が風邪でも引いてしまっては一大事だ、

 私は私のできる全てを用いてオヤカタ様に報いたい。

 その点で私とオフセットスパナとは思考が同じだからな。

 二人で鉋に師事していた、ということだ。」

 

ディーゼルジェネレーターがオフセットスパナの言葉を引き継いで頷く。

彼女も言葉こそ強張ったような声音であることが多いが、それも責任感から。

 

「そうねぇ、丁度出来上がったところですから、二人に味見してもらいましょうか。」

「フフッ、嬉しいサプライズは続くものね!」

「でも、いいんですか?オヤカタ様のためのお料理じゃ……」

 

電動ドリルは自身に負けず劣らず二人の生真面目な建姫の顔を交互に見つめる。

問いかけに二人は表情を緩ませて返す。

 

「量は十分作った、此処にいる人数分を出しても余るだろう。」

「ええ、わたくしも是非皆様にも味わって頂きたいですわ。」

「だったら……」

「お言葉に甘えさせて頂きます!」

 

座席に並んで座るグルーガンと電動ドリルの前に、ほどなくその料理は運ばれる。

またそれも鉋やポンチらによって事務所に導入された茶碗に入れられた白いスープの中に豚肉や人参、大根が浮かんでいた。

 

「この白いスープは何?シチューかしら?」

「シチューではなく、『粕汁』という料理です。

 エーテルの一種の生成時に生じた粕を使ってるのよ。」

 

反対側の座席に座った鉋の説明に、二人は不思議そうな表情を浮かべた。

 

「エーテルの粕?それって酔っぱらったりしないの?」

「それって、本当においしいんですか?」

「酩酊はしないらしい。味は今から試してみるところだ。」

 

最後にディーゼルジェネレイターが座席に座る。

5人揃ったのをお互いが確認して礼儀正しく両手をあわせて「いただきます。」と揃えて言う。

 

「んんー、おいひいれす!なんだか身体がぽかぽかしますね!」

「ええ、初めて食べたのに……なぜか懐かしい感覚がして……」

「気持ちからウォーミングしてくるわ。」

「ふむ……そうだな。確かにこれならオヤカタ様にもお喜びいただけるだろう。」

 

ふぅ、と落ち着いた笑みを浮かべる四人を鉋は満足げに見つめる。

不穏さは奥底にありはするものの、先ほどよりももっと柔らかな空気になったのは料理のおかげか、それともこの場の空気なのだろうかとグルーガンは考える。

 

「あの、鉋さんがよければ、今度でいいので私にも教えて頂けませんか?

 お姉さまにお作りしたら喜んで頂けるかもしれなせん!」

「構わないわよ、ふふ、家族を大切にしたいって気持ちはすごくわかるもの。

「ワタシも作ってみたいわ!」

「ふむ、どうする?先ので作り方は覚えたと思う。よければ受け持つが……」

 

鉋に問う二人に助け船を出すようなディーゼルジェレネーターだが、

鉋は笑みを崩さずに左右に頭を振る。

 

「いいえ、大丈夫よ、それに……忍は影に生きる者だけれど、こういうのも悪くないって思っちゃうの。

 なんだか【あいどる】のお仕事を思い出しちゃうわ。」

「あの衣装いいですよね!」

「電動ドリルのポリスもとってもキュートだったと思うわ!

 私もはやく素敵なコスチュームでオヤカタにアプローチしたいわね!」

「ふむ……確かに年明けのあの衣装も好評だったな。」

「海の家でもオヤカタ様には喜んで頂けましたものね。」

 

会話に明るく返しながら、かす汁を電動ドリルは飲み下す。

体温を上げる役目などほぼなくなった筈のその味はやはりどこか温かかった。


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