崩壊の帝国   作:東海鯰

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帝国の選択

20XX年 9月5日 アメリカ合衆国 ホワイトハウス

 

「・・・・君達はジャップの要求を受け入れるべきだと言うのかね?」

 

日英が旧植民地や北欧諸国、それに加え米国のパトロン、イスラエルを取り込む形で発足を発表した「自由と民主主義の連合・ユニオン」。条約調印後の記者会見で米国の参加を加盟国が求めたことを受け、ホワイトハウスでは対応を巡り緊急会議が開かれていた。

 

「無論です大統領。現時点では確かに日露は講和していますが、それは長くは続かないというのがペンタゴンの見解です。それこそ、ウクライナでの戦争も一時的な休戦はあっても、一定の期間を経た後に再開される可能性が高く、先のモスクワへの核攻撃を逃れたメドベージェブ氏を次のロシア大統領に担ぎ上げた上で日英との講和を破棄する動きがあると諜報部やイスラエルのモサドから報告が上がっています。また、先の日露の戦闘に我が国が参戦しなかったことで同盟各国からの心証が低下しており、いつ同盟国が反旗を翻し、日英の陣営に付くかも分からない状況です。既にパラオやツバルはユニオン加盟に向けた交渉を開始すると発表しており、特にパラオはジャパンの部隊の駐留を希望しているとも。このまま座していては我が合衆国の権威と地位の失墜に繋がるのは必定。更に世界地図で見ると日英は我が国を包み込むように立地しています。これにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わりじわじわと締め上げる様に圧力をかけてきています。西側陣営での内輪もめは中国を利することになり、ユニオンもそれを望んでいないはずです。」

「国務省としても我がアメリカがユニオンに参加することに賛成致します。そもそもこの軍事同盟が出来たのは我が国が的確かつ迅速な対応が出来なかったためです。日英は我が国が断れば我々をのけ者にして新たな国際秩序を築くことを計画しているはずです。そうなれば第二次世界大戦を乗り越え、世界の覇権国となった合衆国は見る影もなく瓦解することでしょう。大統領は合衆国を崩壊させた罪人として後世に名を残すことになります。それだけは我々閣僚としても避けたいのです。」

「しかしだね君達!! ジャップは我が国の軍を勝手に動かし、更には核を無断で使用したのだ!! それに加え何だあの九条という条文は!! 我が国が日本における利権を全て放棄し、対等な独立国として扱えというものではないか!! イエローモンキーがアングロサクソンと対等だと? ふざけるのもたいがいにしろと言いたいな!!」

 

怒りを露にする大統領。しかし、この場にいるのは白人だけではない。国防長官は黒人、そして副大統領はインド系なのだ。この大統領の言葉に全ての閣僚が怒りの声を上げた。

 

「大統領、その差別的発言の一切を速やかに撤回して頂きたい。」

 

静かに怒りを表明した副大統領。インド系初の副大統領であった彼女は更に言葉を続ける。

 

「バイデンデン大統領、貴方はかつて黒人初の大統領、オバマン政権で重要閣僚の地位にあったはずです。にも関わらず何故そのような言動が出来るのですか? はっきり言わせて頂きます。」

 

その時、その場にいた全ての閣僚や官僚、そして警備兵に至る全ての人間が大統領に向け銃口を向けた。

 

「この場には貴方の味方は一人足りともいない、それだけは言わせて頂きます。」

「き、きしゃまら!! この私、大統領に逆らうと言うのか!! そんなクーデターで政権を奪取できると思っているのか!!」

「大統領、貴方だけなんですよ。ユニオン加盟、そしてジャパンと対等な関係を築き、互いに利用して新たな秩序を築くことに反対しているのは。」

「ぐぬぬぬぬ、だが私は認めん!! ジャップと対等な同盟を組むと言うのは!! 私は大統領を辞任する!! 後はお前らで好きにやればいい!! だが後で私を辞めさせたことを後悔するだろう!!」

 

完全に四面楚歌となったバイデンデン大統領は周囲の圧力に屈する形で政権を投げ出し大統領の職を辞職。これに伴い副大統領のハリハリス氏が初の女性大統領に就任。議会ではバイデンデン前大統領が投げ出した日英との交渉を妥結させると宣誓。そして初の仕事としてユニオン加盟並びに日豪の核武装への賛否を議会に問うこととなる。

 

「しかし、これからが大変ですな。ハリハリス大統領。」

「ええ。けど国防長官、この難局を乗り越えない限り我が合衆国はマリアナ海溝の奥深くに沈むわ。勝手に動いてしまった米軍の件、それも含めてジャパンと交渉することになるわね。」

「そうですな。個人的な考えではありますが、現地部隊は自己の判断で行動し、それをホワイトハウスは承認しようとしたが、前大統領の我儘で承認出来なかった、とするのは如何で?」

「成程ね、責任の全てをバイデンデンに押し付けちゃおうと。」

「そういうことです。それに貴女も嫌々大統領に従っていたのでしょう?」

「そうね。だけど、イスラエルがユニオンに参加、ユダヤ人コミュニティーの働きかけ。これらを無視しては完全に帝国は崩壊する、そしてそれをヒオウギ大使が、ひいてはジャパンが煽っているということ。これらを踏まえて考えたら貴方たちに賛同する以外なかったわ。」

「大統領、国内の事は我々にお任せを。混乱する国内、国務長官として完遂してみせましょう。」

「頼もしい限りね。それじゃあ、ジャパンとの首脳会談の調整を頼むわ。ミスター・ワカバ・・・そう言えば亡くなっていたのね、ミスター・マツバとの会談、そしてその場でのユニオン加盟申請の表明を行えるよう諸々の対応もね。」

 

こうして西側の帝国アメリカ合衆国はギリギリのところで崩壊を回避した。その後ハリハリス大統領は議会でのユニオン加盟が賛成多数となった後に日本を訪問。臨時首都となっている仙台市で会談が行われ、共同記者会見で米国のユニオン加盟を正式に申請し、先に申請したパラオ、ツバルと共に加盟に向けた協議が行われることになると共に、日豪の核武装と新型の原子力潜水艦の研究を日英米豪で合同で行うことでも合意し、新たな日米関係の幕開けとなるのである。

 

(続く)

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