東京リバースギフテッド   作:とぅりりりり

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戦闘は夕飯(ディナー)の途中で

 

 

 アジトと呼ばれている拠点は結構大きめの建物だ。多分2階建てなのは確実で、見た目は少し古い西洋風のお屋敷みたいだ。

 帰り道に識文さんから「元々あった建物を少々改造してるんですよ」と説明されたので居住に関する問題はなさそうだ。

 帰宅して早々に食料品を片付けに和泉さんと結依がキッチンへと向かい、俺と識文さんは日用品やらを持ってリビング代わりの部屋を通る。

 そこで吉田さんがテレビをつけた状態で待っていた。

 

「おかえりー」

 

 吉田さんは上着をソファにかけ、ソファに横になった状態で俺たちを出迎える。

 ダルそうに上体を起こしたかと思うと、俺の方を見て一言「お前んち行くの少し待ってな」と指さしてきた。

 

「俺が付き添うつもりだけど今ここから俺が離れるのはタイミングを見ないと事故るからな」

 

「あ、もしかして赤ずきんの怪って、たっきー知ってました?」

 

「知ってる。そのことでちょっと前からバタバタしてたんだわ」

 

 識文さんの問いに即答した吉田さんは頭をぼりぼり掻いて嘆息する。

 

「まあ怪異じゃない人災だから最終的に俺にお鉢回ってきそうなのはダルいけど、俺や識文……和泉は多分やりたがらないけど一応カウントするとこのあたり以外だと骨が折れそうだしな」

 

 なにやら色々複雑なようだ。

 そういえば口ぶりや喧嘩の仲裁からして吉田さんが一番強いんだろうか?

 

「皆さんってやっぱり強いんですか?」

 

 何気なく口にした疑問に識文はニコニコと「強いですよ?」と被せ気味に答える。その顔には揺るがない自信を感じた。

 が、吉田さんは曖昧そうな顔をしている。

 

「まあ、俺はたしかに強いけど強いだけだから」

 

 強いだけってのも変な主張だが俺は異能のことをまだまだ知らないのでわからないなにかがあるんだろう。

 これ以上話が続かないと思ったのか、識文さんが、ぽんと思いついたように手を打つ。

 

「そういえばたっきー、二人が鈴木さんに助けられたらしいですよ」

 

「あー……はいはい。やっぱあれ夢ちゃんか」

 

 そういえば吉田さんは倉庫近くに助けにきてくれたから現場近くに来ていたはずなんだよな。

 

「まあ……多分大丈夫っしょ。夢ちゃんそういうのよく忘れるし……」

 

「忘れ……」

 

「興味ないことはすーぐ忘れるよ。俺なんか2回くらい顔と名前忘れられてたことある」

 

 やっぱりあいつ妖怪か何かじゃないかな……。

 というか口ぶりからして知り合いだったの?

 

「じゃあ皆さんとあの傘女、どっちが強いんですか?」

 

 全員微妙な反応はしているがトラウマになっているという様子もない。怯えているとかではなく、面倒といった様子だった。

 

「強いの基準によるけど一応俺」

 

 吉田さんは数瞬の思考の後、そう判断を下す。

 識文さんは「まだ今は自分じゃないですかねー」とふわふわした解答だった。

 

「ただ勝とうと思うと俺らじゃすげー苦労するんだよな……」

 

「勝てないってことですか?」

 

「うーん……勝てなくはないと思うというか……勝てはするよ。ただ……」

 

「その場合、生かして勝つとなると途端に難易度が跳ね上がるって感じですかね」

 

 あ、そういうことか。

 命を奪わないという前提での戦いになると吉田さんたちは苦労するから勝つのが難しいってことなんだろう。

 いったいなんの異能なんだろ……?

 

「手加減したら危険なのに手加減せずに相手したら殺すしかなくなる……みたいなそんな厄介妖怪」

 

「なんかそういうところ人間のずるさを感じるんすけど」

 

 妖怪なのにそこまで計算してるなら相当厄介な相手だ。トラウマとか怯える人がいるのも頷ける。

 

「まあ~……夢ちゃんそういう子だから……一番は関わらないことかな」

 

 なんでだろう……。

 俺も関わりたくないと思っているのに俺の直感がどうせまた対面することになるぞと告げている。

 

 いやこれ美沙杜の声だわ。ちょっと静かにしててくれ。ネタバレは許容できるけど知りたくないタイプのネタバレなんだよそれは。

 

 静かになったのでとりあえず、ここで生活する場所は最初に使わせてもらっていた空き部屋を改めて案内され、その後各部屋の説明を受けた。

 

「お風呂は2~3人くらいまでは入れる広さあるけど基本的にここに住んでるみんな、一人で入りたがるから入るときはこのプレート使ってね」

 

 脱衣所のあたりにプレートがかかっており、使用中の面に『乱入可』と『乱入不可』のマグネットが重ねられていた。基本的に乱入不可のマグネットを上にしておくようだ。

 

「洗濯物ですが一応、自分のカゴと共通のカゴがあります。人と一緒に洗いたくないものは自分のカゴで、その他の洗い物はこっちに入れておいてください。洗濯当番は基本共通のものだけ洗います。自分の洗濯物は自分で洗いましょうね」

 

 識文さんの説明を聞きながらふと思う。

 

「あの……もしかして吉田さんと和泉さん以外にも他にいます?」

 

「あれ? 言ってませんでしたっけ? いますよ。今は出払ってますがもっと住人がいます」

 

 シェアハウスみたいなもんなのかな。

 とりあえず個人用カゴとかの名前を見るに確かに人がもっといるのは間違いない。今は結依と俺とあと3人だけなんだろう。

 

「トイレは2ヶ所。こことあと上ですね」

 

 識文さんが順番に説明していき、そのままキッチンとダイニングにたどり着く。

 リビングとダイニングそれぞれにテレビがあるようだ。

 

「食事に関してはー……一応当番制だったのですが最近出払うことが多いのでその時々で変わります。今日はあとで自分か結依ちゃんとじゃんけんします」

 

 キッチンに足を踏み入れると結構な広さがあり、よく見ると棚や収納場所には色々詰まっている。

 コンロ3つにスペースも広い。これは……

 

「俺も夕飯作っていいですか?」

 

「え? 料理好きなんですか?」

 

「好きというか……作るのはわりと」

 

 料理そのものを作るのは好きなのだがほぼ一人暮らしなので人に作る機会は少なかった。祖父が生きていた頃はよくやっていたがそれでも二人分くらいだ。

 5人分ともなれば作る側としても大変そうだし手伝うほうがいいだろう。

 

「うーん、傷とか大丈夫ならお願いしましょうか。実は料理上手な人、今ほとんど出払っているので」

 

 識文さんはしきりに俺の体調を気遣ってくれる。だから悪い人ではないはずだが……。

 

 なんか俺の直感(真)と美沙杜の囁きがどっちもこの人は怖いと告げている気がする。

 というか美沙杜お前元気だな。

 

 ざっくりと施設の説明も終わり、あとはこのアジトでのルールの話を他の面々も集まったリビングですることになる。

 

「共同スペースに置いてあるもの自分のものは名前を書くなり自己主張すること。おやつは名前を書いてないと本気で勝手に食べられます。それはここでは書いてないほうが悪いルールです」

 

 そんなこと、本当にあるんだ……。兄弟もいないので未知の世界を覗いている気分だ。

 

「緊急時以外は個人の部屋に勝手に入らないこと。プライバシーを侵害したら殴られても文句は言えません」

 

「さっきからなんか治安が悪くないですか?」

 

 なんかどれも暴の気配を滲ませているのはなんなのか。

 

「一番大事なのはこのアジトやリーダーであるたっきーの情報を他人に漏らさないこと」

 

 吉田さんのほうをちらりと見る。よくわからないが他言しないというだけならそこまで難しいことでもないだろう。

 

「まあ重要なのはこんなところでしょうか。あとは細かいのはその都度説明したり、今後追加されたりするかもしれないので気楽にやるといいですよ」

 

 そうして、改めて自由な時間……と思ったがそろそろ夕方だ。

 

「俺、夕飯作っていいですか?」

 

「あ、そうですね。たっきー、今日は食べます?」

 

「んー、じゃあもらう」

 

 吉田さんは何かスマホで入力しながら返事をしているためこちらは見ない。

 和泉さんはというとテレビを見ながら「自分の体調と相談しながらやりなよ」と一言呟く。

 結依は夕飯と聞いて「あ、じゃあ私も手伝う」と立ち上がって3人でキッチンへと向かった。

 

 

 

 

 ――15分後。

 

 

 

「ごめん、結依、識文さん。邪魔」

 

 

 

 まさか先住人に対して邪魔、と言うことになるとは思わなかった。

 邪魔と言われた二人はしょぼくれて少し後ろで俺のことを見ている。気が散る~!

 

 

 ――経緯は15分前に遡る。

 

 

 まず何を作るのかとキッチンにある食材を確認しようとした瞬間、結依が識文さんととんでもないことを言い出す。

 

「鶏肉買ってたよね」

「はい。多めに買ったのでしばらく冷凍もできます」

「じゃあ鶏肉焼こうかー」

 

 ん?

 

 そう言って鶏もも肉に雑に塩コショウをまぶし、フライパンを火にかけだす。

 

 ん?

 

 そのまま皮がついた面を上にして鶏もも肉を焼きはじめ、ある危機感を抱いた。

 

 あ、これ料理ができる、の基準がそもそも違うやつだ。

 

 え? しかも塩コショウ以外なにか味付けしないの? ソースとかは?

 

「あの……二人とも……それだけそのまま食べるつもりで……?」

 

「え? そんなわけないでしょ」

「そうですよ。ちょっと手抜きですけどそんなことはないです」

 

 ああ、なんだよかった。俺の心配しすぎだったかと胸を撫でおろそうとした瞬間、息継ぎすらさせてくれない情報の洪水を目の当たりにする。

 

「お米はお昼に炊いたやつがまだあるのでそれとチキンソテーですよ」

 

「ふりかけもあるよ。時葛どれにする?」

 

 何種類ものふりかけが詰まったケースを差し出されてくらっとした。

 あれ? おかしいな。このキッチンからして料理ができる人が普段使ってそうな気配がしたのに限界料理しか出てこなさそうだぞ。

 

「あの……俺に……俺に作らせてくれませんか……!」

 

 まさか他人の家に来て料理を作らせてほしいなんて懇願することになろうとは思ってもみなかった。

 お願いします。せめて俺が食べるものだけでもいいから俺に作らせてください。

 

「時葛、料理できるの?」

 

「それなりには……」

 

 いや、この二人の様子からして俺のそれなりは料理できる、の分類な気がしてきた。

 

「うーん、構いませんがチキンソテーはお嫌いでしたか?」

 

「チキンソテー()嫌いじゃないです」

 

 普段この家で料理してる人、苦労してるんだろうなぁ……。

 そんな哀れみを抱きながら冷蔵庫を見る。

 そういや、買い物のとき識文さんが食べていたあれ、美味そうだったな……。

 幸い牛肉が買ってあるのでそれと玉ねぎと……キャベツはねぇな……。あ、ほうれん草がある。あとカットされてるサラダ用の野菜もあった。

 とりあえず一通り取り出して調味料も確認する。あるな……とりあえずだいたいあるな……。

 ありがとう、調理担当の人。俺はここで生きていけそうです。

 

「とりあえず俺の頼んだこと手伝ってもらっていい?」

 

「いいよ。なにしたらいい?」

 

「結依は玉ねぎを半分にしたらスライスしておいて。識文さんはお湯沸かして沸騰したら塩入れて、ほうれん草茹でてください。40秒くらいでいいです。あ、ちょっと待ってくださいほうれん草ちゃんと洗ってください。俺その間にタレ作ったり……」

 

 いいかけて途中で二人の顔がとんでもないことになっているのに気づく。

 

 ――まさかまともに飯を作ることができるのか?といいたげな目をしてくる。

 やめろ、今どき異世界転生ものですらそんな反応されないだろ。

 

「……で、できる?」

 

 不安になったので思わず聞いてしまう。

 すると結依も識文さんも慌てて笑顔で応じた。

 

「あったりまえじゃん! それくらい余裕余裕!」

「そうですよ! これでも自分は家にいた頃料理担当していた日もあったんですよ!」

 

 ダメそう。

 

 

 ダメでした。

 

 いや、正確にはダメではなかった。ダメというより遅い。あと自信がないのかいちいち全部聞いてくる。

 

「ねぇ! スライスってこれくらい?」

「それくらい」

「あっ待って! これ分厚くない!? どうしよう!」

「大丈夫だからそのまま切って」

「お湯沸きましたけど塩ってどれくらいですか?」

「ひとつまみでいいですよ」

「……ひとつまみってどれくらいですか?」

「ひとつまみはひとつまみですよ?」

 

 肉に使う用のタレを混ぜながら一つの結論に至る。

 これ自分で全部やったほうが早いわ。

 

「ごめん、結依、識文さん。邪魔」

 

 

 しょぼくれた二人が後ろから俺を見てくるの今に至る。

 

「拗ねてる?」

「拗ねてない……」

 

 ほうれん草を茹であげながら水で冷まし、水気を絞りながら言う。拗ねてんだろ結依。

 

「怒ってます?」

「怒ってないです」

 

 フライパンでまず玉ねぎを炒めながら牛肉も切って一緒に炒める。その合間にほうれん草を切ってまた絞って皿に乗せておく。

 なんか怒ってるのかな、と思って聞いてみたけどちょっと怒ってません? 識文さん?

 

「邪魔って言ってごめんて。謝るからこっち戻ってきて」

 

 さすがに邪魔は言いすぎた。いや……わりと邪魔だったけど……。

 恨みを抱く今にも唸りそうな犬みたいな顔で寄ってくるな。

 白だしと一緒に醤油みりんでおひたし用のつゆを作るのでそれをレンジで加熱するように結依に頼み、識文さんには卵をといてもらう。

 炒めた肉にコチュジャンや生姜ニンニクチューブ、醤油や酒、砂糖などを混ぜたタレを入れて絡めながら加熱していく。

 炒めている間でも甘辛い香りがかなり食欲を煽ってくる。そうそう、こういうのが食べたかった。

 完成した甘辛炒めを皿に盛ってから思う。

 

 やっぱもうちょいなんかほしいな。

 というか5人分と考えると……。

 

 結局、このあともある材料で品数を増やしたのだが、後々識文さんは俺のことを「まさか誰もやりたがらない飯奴隷ポジションを自分からやりたがる人が増えるとは思いませんでした」なんて言ったとかなんとか。

 

 

――――――――――

 

 

「ご飯だよー」

 

 結依が吉田さんたちを呼んでくると、吉田さんと和泉さんがぎょっとして並んだ食事を見る。

 

・牛肉の甘辛炒め

・だし巻き卵

・ほうれん草のおひたし

・豆腐とワカメの味噌汁

・サラダ

・人数を考慮して追加で作った生姜焼き

・最初に作ったチキンソテー

 

「誕生日?」

「なんかいいことでもあった?」

 

 和泉さんと吉田さんがそれぞれよくわからない反応をするが普段なに食べてんだこの人たち。

 早く肉食べたいなぁと椅子に座りながらふと、それぞれの様子を見る。

 なんか和泉さんと識文さんはわりと行儀がいいというか、ちゃんといただきますってしているのだが、吉田さんはしていない。結依は一応しているが……。

 

「いやー、イチカちゃんとかハグミちゃんがいないのにこんなにちゃんとしたご飯は久しぶりですね」

 

「あ、サラダとおひたしの僕食べるの多めで」

 

 他の料理担当の人だろうか。あのキッチンを作った人たちだと思うと尊敬の念が湧く。

 その裏で和泉さんは野菜が好きなのか自分ようにさっさととりわけている。カット野菜買ったの、和泉さんぽいな。

 

「すごい! ちゃんと普通のご飯だ!」

「普通のご飯だって何?」

 

 生姜焼きを一枚食べた結依はなぜか感動している。

 そっか……。異世界転生してすごいすごいって言われるのってこんな感じなんだろうか……。

 なんかちょっと複雑な気持ちになりながら楽しみにしていた甘辛い炒めを白米の上に乗せて口にする。ちょっと辛いのが食欲を加速させ、サラダも食べながら白米を消費していく。

 が、吉田さんはまだ手をつけていない。

 

「あー……わりぃ。ちょっと出てくるわ。俺の分は取っといて。後で食べる」

 

 なぜか横目でどこかを見ながら立ち上がると、ダイニングから出て、多分アジトの外に向かったようだ。

 

「どうしたんだろ」

「田吉さんはよくああやってどっか行ったりしてるよ」

 

 結依がよくあることだと補足するのでそういうものかと納得し、吉田さんのものにラップをかけておいた。

 

「あ、これ美味しいですね。自分は好きです」

 

 識文さんが甘辛炒めを気に入っている横で和泉さんが甘辛炒めのソースを少し味見しながら渋い顔をしておひたしで口直しをしている。

 

「僕は生姜焼きの方かな。辛いの苦手」

 

 ……あ、これもしかして個人の好き嫌いとかもそのうち考えないといけないやつ?

 

 そう考えると誰もやりたがらないんだろうな……料理。

 

 

 ふと、トイレに行きたくなったので一旦離席し、教えられた一階のトイレへと向かう。

 が、すぐ近くに脱衣所と洗濯機、風呂場があるのだが何か物音がする。

 立ち止まって耳をすませると物音だと思ったが静かに水の音がするだけだ。

 

 ぴちょん、ぴちょんと水が垂れるような音はちゃんと水道閉まってないのかなと思い、中に入ってみるが洗面台も風呂場も特に水が出ているようには見えな――

 

 

 

 

「よう」

 

 背後からの知らない声に命の危機を感じて咄嗟に異能を発動する。とにかく避けろ。相手の動きを遅くしているうちに早く動け。

 そう思って体を動かし、なんとか避けることはできたが、体勢を崩してしまう。

 

「チッ。早いな。異能か?」

 

 手に炎を燈す男は見知らぬ男。アジトの他の住人、だったらこんな風にする必要はないので敵だ。

 が、いかにもチンピラみたいな見た目をしており、正直命の危険は感じていても、あの銀髪よりヤバいという気配はしなかった。

 

 

「まあいい、一人ずつ始末して――」

 

 炎が振りかざされそうになれ、また死ぬのかと覚悟を決めた瞬間、ドンッという音とともに炎男が吹き飛んで壁に激突する。

 

「無事かい!?」

 

 乱入してきたのは和泉さんで、状況を確認してから舌打ちし、敵を睨む。

 

「危ないから下がってて」

 

 なぜか洗面台の蛇口を捻りながら和泉さんは俺の前に立つ。

 その奇行に、侵入者はケラケラ笑う。

 

「なんだ? そんなことで俺の火は消せ――」

 

「君、バカだろ」

 

 あまりにもバッサリと、侵入者を見下すように言う和泉さんに、侵入者も「あ?」と怪訝そうな顔をする。

 

「まったく……僕のことは調べれば出てくるはずだ。そんな最低限のことすらしてないやつに……」

 

 洗面台の水がごぼごぼと呼吸するように音を立てる。

 そして、和泉さんが不愉快そうに腕を振り払うと水が生き物のように躍り出た。

 

「――僕が負ける道理はない」

 

 

 

 

 和泉――異能(ギフテッド)【水使い】。

 

 

 

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