原神世界に転生したから推しと仲良くなりたい……あれ?なんかいろいろ違くない?   作:妄想アイス

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おはこんばんにちは、妄想アイスです。
今回思ったより筆が乗ったので、投稿します。
今回9000字くらい書けたんですよ。嬉しいです。
内容もまぁ、いいんじゃないかな。

今回はちょっと戦闘シーン入れられました。そこまではっきりとは書けてませんが。

それではどうぞ。


第十一話 きっかけ

 モンド東、海辺の洞穴にて―――。

 

「よっ、ほっ、ふっ、しっ、ぶね!」

 

 タタンと、軽快に地を蹴る音がする。

 そしてそれを追うようにして、ガラスが割れたようなそこそこの衝撃音も響いている。

 連続して発される双方の音は、まるで一つの音源から放たれたものであるかのようにぴったりと止まる。

 軽快なステップを刻むのは、まるでダンスでも踊るように走る一人の少年が発した音だった。

 

 少年はベリアル。

 エウルアと初めて依頼を成し遂げた日から一年が経ち、まだ未熟だった戦闘技術も見違えるように成長していた。

 

 ベリアルの走り去った後をみれば、そこに咲くのは氷の華。

 

「たくもー!面倒だな!急凍樹」

 

 そう、今ベリアルがたった一人で挑んでいるのは、氷の大華、『急凍樹』。

 並の冒険者では集団で挑んでも軽く返り討ちに合う、氷元素を身の内に有する怪物。

 ベリアルの有する草元素とは、何の元素反応も起こさない相性の悪い相手だ。

 その上、相手の振り撒く氷元素が原因で時間が経てば経つほど身体の動きが鈍ったりもし、更には今回が急凍樹に挑む一回目であるため、とにかくアドバンテージが低い。

 

「さっすがに何の準備もなかった、挑みたくないなホント。でも問題ないね。倒すッ!!」

 

 すこぶる悪い状況になぜか口角を上げ、挑んでいくベリアル。

 彼は敗北するつもりは一切ない。

 その証拠に先ほどからただ逃げているだけではなく、何かの瓶を急凍樹に向け、投げまくっていた。

 

 しばらくその行動を続けると、急凍樹は勢いよく倒れ、氷の霧はいったん晴れる。

 

「やりぃ!上手く行った!ここまでよくもくっそ追い回してくれたなコノヤロー!反撃の時間だぁ!」

 

 無防備に投げ出されるその巨大な顔?へと、大チャンスと斬りかかる一人の『アホ』。

 

 この男がとった作戦はいたってシンプル。

 自分が弱点をどうにもできないなら、宝盗団たちのように、何か反応する素材をぶつけてやればいーじゃんと。

 それを受けて自作されたこのトリックフラワー、スライムの素、烈焔花の花蕊の粉末など炎元素の素材をとにかく詰め込みまくった火炎瓶。

 しかもこのアホ、特に何も事前確認せずにこれを使っている。

 危険度は未知数、信頼性は皆無であった。

 

 こんなものでうまくいっているのだから頭はいいのだろう。

 行動自体はどう考えてもアホと無鉄砲の極みだが。

 

 しかしなぜ、ベリアルはこんなことをしているのか。

 それは当然『依頼』である。

 目的は、急凍樹のコアを取ってくること。

 

 つまりそのためには急凍樹を倒すことが必要。

 しかし現状他に急凍樹に挑める人員がいなかったため、ベリアルが単独で行くことになった。

 だが、無理して単独で挑むほど緊急性のあるモノではなかった。

 

 その一番の理由は、依頼主がクリプス・ラグヴィンドだからである。

 一年と少し前に家出を敢行してからも、彼には随分と世話になっていたりする。

 

 今持っている片手剣も、半年ほど前に彼が融通してくれたものだ。

 無理をしてでも依頼を受けるだけの十分な恩があった。

 

 そして二番目の理由は……ベリアルはこれを機にモンドを出て行こうと考えているのだ。

 ベリアルは今日まで一年経ってもモンドを出ることがなかった。

 母親の件も、父親には悪いが任せっきりで接触不可となっているし、仲良くしている知り合いも多い。

 

 優柔不断な性格のベリアルはなかなか決めることができなかった。

 しかし今回、クリプスおじさんからの依頼を頼まれて、いいきっかけだと考えたのだ。

 

 もちろんこれからも帰ってくるつもりではいるし、ゲームで知っているとはいえ、モンドだけでも多かった違いがこれからも出てくると考えれば、ほぼ未知なのだ。

 現実となった今では、地図はあれどマップはないのだから、自身の先行きの不安もあった。

 

 しかし未知とは、ベリアルが知りたいことでもあるのだから。

 

 そうこうしている間にヌルっと急凍樹を倒し終えたベリアルは、途中途中で負った傷や氷元素の寒さで、身体を震わせながら、帰路につこうとした。

 

 そしてそこで気が付いた。

 急凍樹の存在していた洞窟の上、秘境の存在する近くの崖に、一羽の紅い鳥がいることに……。

 

「紅い……」

 

 なんてこともないはずのただの鳥に、ベリアルは何かを感じ取っていた。

 それを確かめようと、崖の上に登ろうとするが、行動を起こした時には、紅鳥はすでにそこから飛び立っていた。

 

「なんだったんだ……今のは……」

 

 放心したようにその場に立ち尽くすベリアル。

 しばらくして、あたりを巡回する騎士団に見つけられるまで、ベリアルはそのままだった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 後日、『アカツキワイナリー』――。

 

 今日は、昨日倒してとってきた急凍樹のコアを、依頼主であるクリプス・ラグヴィンドに渡しにアカツキワイナリーにやってましたぁ!

 さて、手紙だと普通に入ってくればいいって言ってたけど……ノックくらいしようかな。

 そう思って、コンコンと二回ほど扉を叩いてみたら、

 

『はい、どちら様ですか?』

 

 そう、誰かの声が聞こえてきた。

 

「あ、クリプスさんからの依頼を受けた冒険者です~。急凍樹のコアを取ってきたので、納品しに来ました~」

『そうだったんですね。今、開けます、すぐ父を呼んできますね』

 

 よかった。反応が無かったらどうしようかと……マテ、今ナンテッタ?チチ?マサカ……。

 ガチャッ、ギィッと開く扉、その先から出てきたのは……。

 

「はい、入ってもらってかま……ベリアル?」

「あ~、やっぱりディルックだったか……え~っと」

 

 中から出てきたのは、想像通り、可愛い可愛いディルックちゃんだった。

 いや、思った以上に可愛いな。

 派手過ぎないが、きちんと装飾が入ってるカッコよさのある服だ。

 それが妙にディルックと会っている。あ、髪はポニーテールなのも俺的にポイント高い。

 少し、ゲームのデザインに似てるような気がしないでもない、カッコいい。

 

「な、なんでここに……って今の通りだよね……あ、も、もしかして依頼を受けた冒険者ってベリアルのことだったの」

「(はっ!自分の世界に入ってた!)あ、あぁ、そうなんだよな」

「だから父さんはあんなに嬉しそうだったんだ……」

「そうなの?」 

「う、うん」

 

 ん、なんか久しぶりで接し方忘れちゃったな……あっちも似たようなもんか……。

 

「そ、そうだ!応接室に案内するから!そこで待ってて!」

「お、おう」

 

 しばらく後……。

 

「やぁ、ベリアル君!元気そうだね。といっても、傷があるね。ムリさせちゃったかい?」

「いえ、大丈夫です。自分としてもいいきっかけだったんで」

「それならよかった」

 

 ディルックが言った通り、クリプスおじさんが来てくれた。

 その後は、納品と、世間話だ。

 この前譲ってくれた剣は助かってる、だとか、古い従業員がやめてしまった、だとか、母親の状態は……とか。

 

 そして最後に、言うべきことがあった。

 

「クリプスおじさん……」

「ん?なんだい、真剣な顔で」

「実は俺、モンドを出ようかと思ってるんです」

「……そうか」

「はい」

 

 伝えられた……、伝えるには少し勇気がいったから、心臓がバクバクしている。

 この依頼を受けた時に決めたことだから、まだクリプスおじさんには言っていなかったんだ。

 

「いつ出るんだい?君のことだし、もしかしてもう今日か明日にでも?」

「はい、もう明日か、明後日には出ようと思っています。だから……これまでお世話になりました……」

 

 そう言って、俺は頭を下げる。この人には多大な恩があったからだ。まだそれを返しきれてないけど、きっとこれからも減ることはないだろう。

 

「分かった。ディルックとガイアにも言っておいで。もう依頼は完了したからね」

「そうですね……ありがとうございます」

 

 そういって、離席し、応接室を出ようとする俺に、もう一言、クリプスおじさんから声をかけられた。

 

「ベリアル君、ありがとうね。これからも時々は帰ってきなさい。モンドは君の故郷だからね」

「はい、もちろん!」

 

 ……本当にありがとうございます、クリプスおじさん。

 

 

――――――――――――――――――――

《ディルックside》

 

(嘘だ……そんな……ベリアル……!!)

 

 ベリアルとクリプスとの話が終わった頃、ディルックは屋敷の中を走っていた。

 その理由は、聞いてしまったからである

 

 『ベリアルがモンドを出ていく』という内容を。

 

 むろん彼女はそれを知っていたはずだ。

 冒険者になりたい、そしてテイワット中の魔神について調べつくしたいという彼の願い。

 それを聞いたときから、興味を惹かれ応援していた。

 

 しかし、いざベリアルがモンドを離れるとなると、ディルック自身も驚くほどのショックを受けていた。

 

(なんで?ベリアルがモンドを離れるってだけで、僕はなんでこんなに寂しいの?なんで?)

 

 彼女は、走っている最中、自問自答を続けた。しかしそれでも答えは出なかった。

 

 そして、彼女を呼び止める者が現れた。

 

「姉さん?」

 

 それは……親愛なら義妹、ガイアの声だった。

 

「ガイ……ア」

「うん……ッ!どうしたんだ姉さん!そんなに泣いて!」

「泣い……あ」

 

 そこでガイアに指摘されてようやく気付く。

 自分は泣いているのだと。

 すでに分かっていたことをはっきり認識しただけで、大粒の涙をこぼしているのだと……。

 

「いったい何が……」

「ベリ……アルが……」

「ベリアルさん!?ベリアルさんが何かしたのか!?」

「違うんだガイア……ベリアルが……モンドを出ていくって……!」

「え……?」

 

 その事実を口にしただけで、ディルックは言い知れない不安感に襲われる。

 なぜ自分はこんなことを思うのだろうと、疑問を反芻する。

 

「姉さん、待ってくれ。ベリアルさんがモンドを離れるって、言ってたのか?」

「父さんに……そう話してるのを聞いたんだ……」

「それを聴いたから、そうなってるのか?」

「うん……(グスッ)」

「そうか……」

 

 それを聞いたガイアは、正直対応に困っていた。

 自分もそれを聞いた今、いささかではない程度のショックを受けてはいる。

 だが、それはベリアルからもともと聴いていたことであったし、覚悟というか、近いうちに離れるのだろうなと思っていた。

 しかし……この義姉にはそれがかなりのショックであったのだ。

 

「僕は……どうしちゃったのかな……?どう……すればいいのかな、ガイア?」

「…………」

 

 ガイアは考えていた。

 これあれだ、不器用で純粋な自身の義理の姉はつまりベリアルに……という感じのことを。

 このまま、ベリアルに合わせないでモンドを発ってもらうのも考えたが、それではあまりにも後味が悪い。

 そして自分も突然のことで驚いているため、なにか意趣返しをしてやりたい。

 

 そうなるとガイアにすべきことは……。

 

「姉さん」

「……?」

「ベリアルさんに、会いに行こう」

「ふぇ?」

 

 

――――――――――――――――――――

《ベリアルside》

 

(…………)

「ちょ、ちょっと、そんなっ、いきなり!?心の準備ってものが!」

「今の姉さんだといつまで経っても出来なさそうだな!早く行こう!」

(………二人で何やってるんだろう……?)

 

 ディルックを探していたら、姉妹でなんだか押し問答しているところに遭遇してしまった件。

 いや、ホント何してんだアイツら?

 というか二人が喧嘩?とは、珍しいな。

 

「だ、だって!どんな顔して会えばいいのか分からない!今の自分の気持ちくらい整理させて!」

「じゃあ聞いてあげるが、姉さんはベリアルさんのことどう思ってそんなことになってるんだ!」

「分からないって言ってるだろ!」

 

 そこでベリアルは察した。

 これは自分が聞き耳立てたりしていてはいけないやつだと。

 これを隠れて聞いてしまえば、きっと自分も二人も一生の黒歴史として刻まれてしまうするような気がしてならない。

 そう結論付けたベリアルは急いで二人に話しかけることにした。

 

「お~い、二人とも~」

「「!!?」」

 

 できるだけいつも通り、偶然通りすがったように気を付けながら、ビクゥッと縮こまった二人に近づいていく。

 

「やほ、え~っとディルックはさっきぶり。で、ガイアは久しぶりだよな。どしたん?二人して」

 

 自分は何も知りませんよ~という体で、出来る限り不自然じゃないように、二人に何をしていたのか聞いてみる。

 実際ベリアルはそこまで事を把握したわけでは無い。

 把握する前に飛び込んだから当然なのだが。

 

「……これはちょうどいい。姉さん」

「ひゃわっ!?」

「おん?」

 

 ベリアルを見てフリーズしていたガイアも、状況を把握し、同じくフリーズしていた義姉を押し出し、ベリアルの前に無理矢理立たせる。

 ディルックは自体が呑み込めず混乱するばかり。

 ガイアはいつの間にか消えている。アイツどこ行った。

 

「で、何してたの君ら」

「えっと……分からない……」

 

 二人は初めて会ったかのような感覚に陥る。

 今は何を話せばいいかまるで分からず、困ったように頭を掻くベリアル。

 今自分が何をしたいのか分からず、ただもじもじとしり込みするばかりのディルック。

 

 沈黙の時間が続く。

 しかし、こんな状態で離れるよりはよほどいいと思う。

 

 突如、ベリアルが諦めたようにため息をついた。

 

「近日中に、モンドを出ていくことにしたんだ」

「え……あ、そう、なんだ……」

「ホントにどうした、様子がおかしいぞ」

 

 先ほど盗み聞いてしまったことが事実であると再確認してしまったディルック、彼女はベリアルの言葉を聞いて、ショックを受けたように下を向いて、黙ってしまった。

 その様にベリアルはかなり心配している様子だ。

 

「あの、さ。僕らって友達だよね?」

「いきなり何を……当たり前なんだが?」

 

 彼は、当然その言葉を肯定する。

 至極当然のことを聞かれたことに驚きすらあった。

 

「突然すぎるよ」

「あ~、唐突に決めたことだからなぁ……うん、すまん……」

 

 そう聞いたベリアルは、納得したかのように謝罪した。

 この決断は、ベリアルにとって最初から決めていたものだし、ディルックはそれを一番に理解していると思っていたが、流石に何かを言う時間はなかったのだから仕方ない。

 彼は気分屋なのだ。

 

「謝るようなことでも……ないだろ」

 

 ディルックは自分が落ち着いてきたことに気づいた。

 確かにこれはガイアに感謝すべきかもしれない、とも。

 彼女が無理やり突き出してくれなければ、こんな落ち着けず、ずっと頭の中で悩みが無限ループしていただろうから。

 自分はベリアルに何をして求めているのか、よく考える。

 

「僕はね、ベリアル。ずっと君にモンドにいてもらいたかったんだ」

「お、おう?」

「別にさ、君の夢はとても楽しそうだし、応援してる。でもそれはそれとして!寂しいよね!長い友達がいなくなるとさ!」

「……うん、そうだな……」

 

 それは彼にもわかる感情だった……。

 もうずいぶん長いこと友人と、御鏡周(みかがみあまね)と会っていない。

 別の世界の友人なのだから、会えるはずもないが、それでも時々寂しくなる。

 ディルックはそれを言っているのだと、彼は認識した。

 

「まったく、本当に突然すぎるんだから……」

 

 しかし、それと対照にディルックはだんだん自分がただ寂しいのではないことに気づいてきた。

 ベリアルとずっと一緒にいたい、ずっと彼の夢を聞いていたい、ずっと彼の元気そうに笑うこの姿を見ていたい。

 それをすべて認識したとき、彼女は自分の頬が随分と熱くなっていることに気づいた。

 

「ん?ディルック、お前なんだか顔が赤いけど……大丈夫か?」

「そんな……そんな、こと……」

「ディルック?」

「ひゃ!?」

 

 少し心配になったベリアルは、軽くディルックのおでこをつついた。

 そんな行動は、更にディルックの顔を熱くさせた。

 

「あ、あぅぅ、べ、ベリアル。僕は、大丈夫だし、その、君がモンドを出ることも、納得したから……今は、今は、一人にさせて!!で、でもね!行くときは、ちゃんと言ってね!見送るからさ!」

「……そうか、ありがとな」

「う、うん!じゃ、じゃあ、またね!」

 

 そういうや否や、ディルックは急いで、廊下の向こうに走り去ってしまった。

 

「……もう少し、話したかったんだけどな。流石に、女の子の額つつくのはキモかったか。あ~、恥ずかしい。なんでやったんだあんなこと」

 

 一人で恥ずかしがりながら寂しそうにする少年を残して。

 ちなみにガイアにはそのあと遭遇して、ちゃんと言った。

 ひっぱたかれた。

 

 

――――――――――――――――――――

《ディルックside》

 

 ギィ……バタン……。

 

 ドアの開閉の音だ。

 ディルックは自身の部屋に戻っていた。

 

「すごく……ドキドキしてる……」

 

 彼女は、自身の胸元に手を置き、そう独り言ちた。

 彼女の心臓は痛いほどに脈打ちを続け、このまま破裂してしまいそうだった。

 

「これって……そう(・・)……なのかな?」

 

 ディルックは、自身の中にある感情に気づいていた。

 しかし、まだそれを体験したことのない彼女は、それをいまいち上手く受け止めることができなかった。

 

 

「そんなこと……あるのかな……いつの間にか僕が、アイツに、ベリアルに……いやいやそんなことないさ。きっと何か別の要因が……!」

 

 このままならば、何か熱でも出したのかと結論付けようとしたところに……。

 

「おっと姉さん、その結論には納得できな「わあああああああああああああああ!!!!!!」……もう少し声を抑えてくれ姉さん」

 

 突如入ってきた親愛なる妹、ガイアによりその考えは砕かれた。

 

「ガ、ガガ、ガイア!なんでいるんだ!!?」

「姉さんが一人で勝手に自己解決しようしているからだ」

「じ、自己解決って……」

 

 ガイアは先ほどディルックが泣いていた時、すでに気づいていたのだ。

 

「姉さんは!ベリアルさんに!()をしている!」

「なぁっ!!!?こ、恋だなんて……!」

「いいや!してるね!ここまで分かりやすいのは、もうどうしようもない!」

「う、うぅぅ……」

 

 優柔不断で不器用な姉が見ていられないだろうと思ったガイアは、既に行動を決めていた。

 

「姉さん」

「……な、何だよぉ。恋してるからってなんだよ、どうしようもないじゃないか。いつ好きになったかも分かんないし、アイツがいなくなって悲しいなんて馬鹿みたいに思ってるし!!まさか揶揄いに来たのか!?」

「いいや違う」

「じゃぁ、いったい何を」

「ベリアルさんはまたモンドに帰ってくるはずだ。だから次までに作戦を考えておこう」

「ふぇ?」

 

 そう、親愛なる姉の恋のサポートへと。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 後日、ディルックやガイア、更にはクリプスやリサ、アンバーまで来て、ベリアルはモンドを旅立った。

 残念ながら、ジンやバーバラはこれなかったが、クリプスを通し、「いってらっしゃい」という旨の手紙を受け取っていたため、シスコンのベリアルのテンションは最大マックスだった。

 途中、このことを知らなかったエウルアとの一悶着はあったものの、ベリアルは無事にモンドを旅立った。

 

 そして…………、

 

「なるほどなるほど!ここが璃月(リーユェ)!岩王帝君の居わす街!テイワット最大の貿易港!でっかい!」

 

 数週間の道のりを経て、現在彼はかの璃月の地を踏んでいる。

 

「さ~って、どっこいこっかな~。とりあえず、モラにまだ余裕はあるし、いくらか店を周ってみようか。良いものがあれば、モンドにいる皆に送るのもいいな~」

 

 ベリアルは今、酷く高揚していた。

 彼が今立っているのは、彼の愛する【原神】の主要地の一つ、璃月なのだから。

 

「あ、岩王帝君への参拝はやっておくべきだよな、うん!」

 

 だからだろうか。

 

「よし、じゃあまずは玉京台に、ってうわっ!」

「きゃあっ!?」

 

 目の前を歩いていた女性に気づかず、衝突してしまったのは。

 

「あ、す、すいません!前をよく見ていませんでした!怪我して……え」

「だ、大丈夫です!特に問題ありません……て、あぁ!しょ、書類の紐が!」

 

 ぶつかった女性は、書類の束を確認していたようで、ぶつかった衝撃でそれを束ねる紐が切れて、書類が散らばってしまった。

 幸か不幸か風はそこまで強くなく、どこかにさらわれるようなことはなかった。

 しかし、ベリアルはそれどころではなかった。

 なにせ、ぶつかった相手は……、

 

「あ、アンタは……」

「……え?」

 

 まるで快晴のような水色の髪、頭の上部から後ろにねじれながら生えた仙角、宝石のような極採色の瞳。

 首から下がるベルに、全体的に羊のような印象を受ける

 そう、彼女は……ディルック達と同じく、ベリアルがゲーム内で大好きだったキャラの一人。

 

「……甘雨……、さん?」

「あ、はい、甘雨と申します」

 

 璃月七星の秘書、半仙の甘雨であった。

 

「あ、書類……」

「あ、風にさらわれないうちに拾わないと!」

「手伝います!」

 

 突然の遭遇に、茫然としていたベリアルも、我に返って書類拾いを手伝うことにした。

 書類の量はそこまで多くなく、周りの通行人も手伝ってくれたため、すぐに拾い切ることができた。

 

「ありがとうございます、それにぶつかってしまい申し訳ありません。仕事に気を取られてしまって……」

「あ、いえ、こっちの方こそすいません!自分も璃月に初めて来たので興奮してしまって周りが見えていませんでした」

「いえ私の方こそ……」

「いや俺の方が……」

 

 甘雨は真面目な性格のせいか、ベリアルは少し緊張しているせいか、謝罪合戦が始まってしまう。

 しかし雰囲気を察して、甘雨がそれを壊してくれる。

 

「ふふっ、こんなふうに言い合っててもどうしようもないですね。改めまして、甘雨と申します。月海亭で璃月七星の秘書を務めています。ところでなぜ私の名前を……?」

「あ、自分はベリアルです。冒険者です。名前を知っていたのは、前にちょっと特徴とか聞くことがあって、それで」

 

 年上で地位も高い相手だからか、ベリアルの一人称もなぜか『自分』になってしまう。

 甘雨はそれを微笑ましそうな顔で見るばかりだ。

 

「そうなのですね。あ、先ほど璃月を初めて訪れたばかりだと。困ったことがあれば私のところに来てください。先ほどぶつかってしまったことですし」

「え、ご迷惑じゃ……」

「そんなことはありません、お気軽にどうぞ」

 

 ベリアルは甘雨と会うのはほぼ不可能と考えていたため、実に渡りに船なのだが、なんだか甘雨の方に意図があるように感じる。

 しかし特に断る理由もなく、甘雨も遠慮なくと言ってくれているため、ベリアルもその提案を承諾することにした。

 

「じゃあ、困った時は頼らせてください。忙しいとは思うので、そんな簡単にはしませんけど」

「ふふっ、律儀ですね。ありがとうございます」

 

 そして、少しの挨拶とともに、二人はそのまま分かれた。

 

「いや~、まさかこんなところであの人に会えるとはな~、運がいい」

 

 そしてベリアルは呑気に、この出会いを嚙みしめていた。

 

――――――――――――――――――――

《甘雨side》

 

 

 ベリアルと別れたその先で、甘雨は一人、疑問を零す。

 

「彼は……やはり、そうなのでしょうか……?」

 

 彼女はベリアルに、何か(・・)を感じていたのだ。

 

「もうすぐ……なのでしょうか……?もうすぐ、貴方様が……お戻りになるのでしょうか……?ご復活なされるのですか……?『歳君(さいくん)』……―――様……」

 

 そう、上古に君臨していた何者かに向けて、嬉しそうに、待ち遠しいように。




お読みくださりありがとうございます。

はい、いつも通りアホなベリアル君です。
なにやってんでしょね。

あとは、この作品のヒロインの一人がヒロインらしくなってきました。
残念ながら義妹はまだのようです。
こいつどうやってデレさせようか……難しすぎるだろ。

そして、彼女です。私の最推し甘雨ちゃんです。ようやく出せました。
この璃月来て最初に遭遇というのは当初からやりたかったことです。都合がいいですね。

そしてもう一つ、私が出したかった単語も最後に出せましたし、けっこう満足してます。

では、また次回。
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