原神世界に転生したから推しと仲良くなりたい……あれ?なんかいろいろ違くない?   作:妄想アイス

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はい、ちょっと幕間でございます。
次も遅くなるとか言っといて、ほんと不定期投稿ですね、私。
仕方ないですね。筆が乗るときと乗らないときはどうしてもあるんです。

さてさて今回は、ベリアルとは違う視点でのお話です、どうぞ。


幕間・一
スネージナヤの『砂嵐』


「ゴルルァァアア!!!やりやがったな、ロマン!」

 

 ゴツン!!

 

 場所は雪荒ぶ氷の国スネージナヤ。

 その中の立ち並ぶ住居の一つにて、盛大に拳骨で頭部を打った音が響いた。

 

「ったぁ!!!何してくれるの、このクソ親父ィ!」

「自業自得だろうが!また隣ん家の小僧を連れ出しやがったな!」

「そ、それの何が悪いっていうのさ!」

 

 拳骨を受けた少女はたまらず大きな悲鳴を上げた。

 そして殴ってきた主をにらみ返すが、すぐに怒鳴られてしまい、ついつい怯んでしまうものの、精一杯の虚勢とともに震え声で力強く言い返す。

 この二人、どうやら少女が何かをして、それが原因で言い争っているようだ。

 

「アイツは病み上がりだろうが!こんな極寒の冬の中、外に出してんじゃねぇ!!」

「病み上がりであんなに元気なわけないでしょ!あのバカが動きたそうにしてたから一緒に遊んでただけなんですけどぉ!?」

「人のせいにすんな!!このドラ娘がぁ!!」

 

 ドガッ!

 

 またもや拳骨の音。今度は先ほどよりも痛そうだ。可哀そうに……。

 

「ぎゃあああああああ!!!頭が割れるぅぅぅぅぅぅうう!!!」

「今日は飯抜きだ!しっかり反省してやがれ!!」

「嘘でしょぉぉぉぉおおおお!!!」

 

 絶叫が狭い部屋に響き渡り、地獄の宣告を言い渡した少女の父親は、言いたいことは言い終わったようで、その大柄な体にぴったりな、ドスドスという足音をさせながら、部屋から出ていった。

 少女はしばらく悶絶していたが、父親が出ていったことに勘づくと、急いで扉を開けて更なる抗議を行おうとしたが、どうやら何か重いものを置かれて、出口を塞がれたようで、扉はうんともすんとも言わない。

 

「ああああもぉぉぉおおお!!あのクソ親父!!いつか絶対ぶん殴ってやる!」

 

 少女の名はロマン。まだ10代と若い、スネージナヤの狩人の家に生まれた、ただの転生者(・・・)だ。

 前世、しがない『原神』プレイヤーの一人でしかなかった彼女は、ベリアルと同様にこのテイワットに転生していた。

 しかし彼女には悩みがあった。それは……、

 

「なんでよりによってスネージナヤなのさ…………!!」

 

 『原神』において、目的を達成するために他の七国の被害を無視して事件を起こし続ける国家に転生したこと。

 モンド、璃月、稲妻、スメール。彼の生きていたころにリリースされていた四国では番外編も含めて、大暴れしていた。その上、彼女が少ししか知らない水の国フォンテーヌでも何をするか分かったものじゃない。

 残念ながらまだ高校生だった彼女は、フォンテ―ヌがリリースされる前日に、信号無視で突っ込んできた車に轢かれて死んでしまい、フォンテーヌはあまり知らないのだが……。可哀そうに……。(二度目)

 

 ちなみにその数ヵ月前に彼女の数少ない『原神』を語れる親友が過労(笑)で死んでしまっている。

 誰なのかは、もはやお察しであるだろう。とはいっても、そんなことは当人たちが知るはずがないのであるが……。

 そして、もう一つ皆さんお気づきだろうか?

 

「しかも……私、男だったんだけどなぁ」

 

 ベリアルと通話していたときの彼は、れっきとした男性であったことに……!!

 ちなみに口調に関しては、前世の『俺』のままだと強い違和感を感じてしまったため、いつか変えてみたいと思っていた『私』にしている。

 

「ほら、漫画とか小説のキャラで『私』口調のカッコいい男性とかいるじゃん、って誰に言い訳してるんだろうか、私は」

 

 それでも、転生してからずっと女子として生きていたため、ところどころ男らしいところはあるものの、未練はあるもののこれから女性として生きていく覚悟はつけている。

 

 話は戻り、そんなシナリオ上では敵であった国に転生したことと、女性になっていたことで、かなりショックを受けた彼女だったが……、悩みとは言うが、さして気にしている様子ではない。

 

「まぁこの国に生まれたことが良いか悪いかで言ったら……まだ良い、なんだけどね」

 

 その理由は、彼女にとっての『推し』の存在だ。

 彼女が生前、『原神』をプレイし始めたころ、ちょうどあるキャラの限定祈願が行われていた。

 

 そのキャラクターの名前は、タルタリヤ。

 このスネージナヤにおけるファデュイ執行官、ファトゥス第十一位に名を連ねる戦闘狂の青年だ。

 

 彼は、ロマンが初めて手に入れた限定星5キャラだった。

 それ以来、『原神』を一喜一憂しているうちに、彼の中のまだ多くは語られなかった闇も含めて、大好きになっていた。フォンテーヌでも出てくるという情報が出ていたため、ものすごく楽しみにしていた。

 

 それくらい好きだった彼が生まれたスネージナヤに生まれられたことには、強く感謝している。

 しかも……

 

 コンッ、コンッ。

 

 一人室内で思案にふける彼女の耳に、ふと窓を叩く音が届いた。

 顔を上げると真っ白い雪景色を背景に、一人の少年が、窓を叩いている姿が見える。

 髪は濃いオレンジ、瞳は深い青。実に美麗な顔立ちの少年だ。

 その表情はふてくされていて、実に不満そうにも見える。

 

「はいはい、今開けるよ」

 

 ロマンは少し呆れた表情をして、ため息を吐いた後、少年が入ってこれるように窓を開けた。

 窓が子どもが一人通ることができる程度に開けると、ロマンは窓から離れて、少年は何の躊躇もなく部屋に上がり込むのだった。

 ロマンはその無作法に慣れているのか、何も言わず上着と毛布を引っ張り出して、少年に投げつけた。

 

「ほら、そんな格好だと冷えるだろ!これやるから、くるまって、暖炉の前で暖ま……」

「なんで来なかったんだい、ロマン?」

 

 少年は、ロマンの言葉を遮って、不満を口にした。

 威圧感のある笑みを浮かべながら、ロマンを見やる少年の言葉を聞いて、「そういえばもう約束の時間をとっくに過ぎちゃってたなぁ」と、少年との約束を思い出すロマン。

 約束では、一緒に外に出て運動するつもりだったが、ロマンは父親に引き留められ、言い争いになっていたのですっかり忘れていた。

 

「ごめん、ちょっと親子喧嘩しちゃっててね!たはは、流石に親父にはまだ勝てないしさ」

「振り切ればよかったじゃないか、まさかできないとでも……」

「だからそれすらさせてもらえなかったんだって!あとしばらく外出してもらえないかも!謝るから、遊ぶのはまた今度ね!」

「ふ~ん、それなら抗議してこようかな」

「いやいやいや待て待て!!それじゃ私が死ぬほど怒られるだろ!!謹慎期間が延びちゃうかもしれないよ!それはお前も困るだろ!?」

「……じゃ、我慢するとするか」

 

 ロマンが約束事をすっぽかしてしまったことを謝り、事情を説明すると、少年が父親に直談判しに行こうとしたので、急いで止める。

 ここに入れていることが知られるとあの親父はまた噴火するに違いない。

 

 先ほどの少年の無作法を気にしなかったように、二人の会話に遠慮はない。

 それはそうだろう。生まれたころから一緒にいる幼馴染同士だ。

 二人の仲では、もはや遠慮なんてものは失礼にあたるほどの感覚になっているほどである。

 

「さてさてバレないように気を付けるとして、室内でできることなんて限られてるし……なにするよ、アヤックス(・・・・・)?」

 

 そう、この少年が未来の『公子』タルタリヤ。本名、アヤックス少年である。

 このスネージナヤに転生して、唯一良かったと思えることが、『推し』がそばにいることであった。

 今の家族は、ぶっきらぼうな親父一人だとはいえ、前世の家族と『推し』の方が情が湧いているほどなのはどうなのか……。

 

 記憶が戻ったのは、つい先日、アヤックスが数日にわたって失踪し、突如戻ってきたときだ。

 アヤックスの失踪を理解したその時のロマンは酷く動揺・心配して、街中駆けまわって彼を探し、その疲れでもはや気絶するように眠りについた。

 起きた時に、目の前にアヤックスが手を握りながら添い寝していた時は、本当に驚いた上に、ギャン泣きしながら、彼を正座させて一時間近く説教した。

 その衝撃ですっかり頭から一瞬ですっぽ抜けてしまっていたのだが、実はその時には前世の記憶は戻っており、落ち着いたときに自らの記憶を再確認したが、当然の如くタルタリヤ……アヤックスがそばにいることに狂喜乱舞した。

 

 転生したことを自覚して最初にやろうとしたことが『推し』を探すこととは、流石に親友、思考回路がベリアルと同じだ。

 

 それに加えて、記憶と心の整理がついた時には、もう自分がほとんど女性であることを受け入れてしまったロマンであった。

 

「なら、戦お「できないって言ってるでしょ、話聞け馬鹿」……つまらないね」

 

 ロマンは話を一切無視して、頓珍漢なことを口走る、目の前の『推し』に、つい「この戦闘狂め」、と悪態をついた。

 いちいち眼福であるが、傍若無人だったり、超傲慢だったりするのは、創作の仲だけで十分だと、ここ数日アヤックスと向かい合う中で、しっかり思い知ったくらいだ。まあアヤックスはさほど酷くはないのだが。

 

「さてさて、戦うのが無理となると、やれることはとんと無いね。というよりこの部屋が少しばかり寂しすぎるんじゃないか?」

「余計なお世話だ、私はこれで充分なんだよ。ミニマリストってやつさ」

 

 アヤックスの言葉通り、ロマンの部屋は机椅子とベッド、服や小物を入れるタンスと、本が10冊程度あるくらいで、部屋が少し広いのもあって、物悲しい雰囲気を受ける構成だ。

 これは、前世と比べてテイワットには1人でできる娯楽が少ないのが原因ではあるが、チェスなんかのボードゲームの一つすらないのはミニマリストにもほどがあるとは思われる。

 

「…………ふーむ。とはいってもやることがないのは事実だし……じゃあ」

「ん?なにか案でも浮かんだのかい?」

「アヤックス、お前が失踪していた三日間のことについて教えてくれないかな?」

「…………」

 

 その言葉を聞いて、アヤックスはつい押し黙った。

 アヤックスの中で、そのことはそう軽々と言うようなことではないと思っているからだ。

 あの深淵で経験したこと、出会った人、そしてその中で自覚した己の欲望と生まれた己の野望。

 それらを他人に共有すること、ましてや目の前の幼馴染に話すことは、酷くためらわれる……。

 

「…………やっぱり話さないか~」

「……あぁ……すまない」

 

 ロマンがそんなことを質問したために、二人の間にはしばらく緊迫した空気が続いたが、ふと質問した当人のほうが脱力して、ベッドに身を投げ出した。

 ロマンはそもそも答えてくれるなんて思っていなかった。アヤックスが深淵でのことを教えてくれるならば、もう帰ってきたときに教えてくれているはずだ。それくらいの信頼は築けている自負はある。

 それに、大雑把ではあるが、前世のプレイ時に少しの情報が得られている。

 

(ま、今はそれでいいか。それより……そろそろアヤックスのお母さんが来るんじゃないか?)

 

 冒頭で父親が言っていたように、アヤックスは病み上がりという扱いになっている。

 いちおう帰ってきたときは全身傷だらけだったから間違いではないのだが、目の前のコイツを見てみると分かる通り、生意気なくらいに元気いっぱいで、憎らしくなるまである。

 しかしながら、つい先日行方不明になっていた以上、当然周りはまたいなくならないかと心配するわけで、勝手に抜け出してくるこいつを探しに、わざわざロマンの家に探しにやってくるのである。

 その時間あと少しということで、早急にこいつには出て行ってもらわねばならない。

 仮にバレたら、まあ拳骨を受ける上に、謹慎時間が延び、退屈な時間が増えてしまう。

 

「というわけでバレたくないから、出てけアヤックス」

「突然酷いな……なんて。分かってるよ。だから次は約束破るなよ」

「それこそ分かってるさ。ほら。とっとと行ってくれ。親父の拳骨は痛いんだ」

 

 窓を開けて、アヤックスが外に出ると、しっしっと追い払う仕草をするロマン。

 なんだかラノベのツンデレ幼馴染のようであることに気が付いて少しこっ恥ずかしくなり、それを紛らわすように、容赦なく窓を閉めたが、ガラス越しに手を振るアヤックスについ軽くひらひらと手を振り返してしまう。

 

 アヤックスの姿が視界から消えると、ロマンの口元には、薄く笑みが浮かぶ。

 それまでのアヤックスとの時間の余韻に浸っているのだ。

 

 実は先ほどアヤックスを急いで出ていかせたのも、謹慎期間が延びて、アヤックス少年と会えない時間が先延ばしになる可能性が高い。それは断固阻止したかった。創作の中の推しと直に話せるなんて、このテイワットに転生していなきゃ絶対に無理なことなんだから、できるだけたくさん堪能したい、とロマンは思っていたのだ。

 もう思考や言動が、完全にツンデレ幼馴染のそれだが、本人はまだ自覚しているようで自覚していない。

 女性として生きていくことは受け入れられても、自身の中の乙女心は自覚できていないのだった。

 

 そんなロマンは、無意識にたっぷりと記憶の中のアヤックスを脳内保存し、次の思考に移る。

 

 その思考とは、ロマン自身の今後についてだった。

 

(今後、私がどうするか……。このままスネージナヤにいるのも面倒くさいことになる気がする。アヤックスはファデュイに放り込まれるけど、私はファデュイには入りたくない。とすると…………やっぱり冒険者だな。それで旅人と一緒に旅をするんだ。私は『原神』の続きが知りたい!)

 

 アヤックスばかりに集中していたが、ロマンもベリアルに負けず劣らずの『原神』ファン。

 キャラはアヤックス……タルタリヤばかりに執心していたとはいえ、ストーリーや細かい設定などは、全てにおいて大好きだった。

 

 そんな彼女が、ベリアルと違う結論に行きつくはずもなく、その目的はテイワットを巡る旅に出ることに落ち着く。

 

 そのためには………、

 

「強くならなくちゃ!だな!」

 

 机の上にひっそりと置かれている、『岩元素の神の目』に視線をやりながら、そう決意するのだった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

~オリキャラ情報~

 

名前:エレッキオル(本名:ロマン)

神の目:岩

命の星座:砂嵐座

武器種:法器

出身:スネージナヤ

 

髪:灰髪 瞳:青色 基本色:灰色

 

詳細:

テイワットに転生した転生者の一人(現在のところ、他にはいない)

ベリアルの親友で、ベリアルに原神を布教した張本人。

推しはタルタリヤ。ベリアルとは違い、単推し。

今後は旅人の旅に同行させる予定。

 

前世での死因は、横断歩道を渡っていたところ、飲酒運転の車が信号無視でつっこんできたという、ベリアルと比べてあまりにもベタ。

今世では女性な彼(彼女)だが、前世のころから体格は華奢で女顔なほうではあった。あまり気にしてはいなかったようだが。

 

ちなみにそもそも出てくる予定はなかった。

タルタリヤを女性化させるかどうかすごい悩んでいるときに、とちくるって「あ、こいつ出して女体化させればいいやん!」と、唐突に思いついた追加キャラとなります。だって一話で男性だったから、ちょうどよかったんだ。

作者の都合でしっかりメス堕ちしております。『公子』との絡みが楽しみですね。

 

『エレッキオル』は、冒険者として活動していく上で決めた名前。

もともとは前世での旅人ネーム。冒険者になるならこの名前を使おうと決めていた。

 

神の目は岩。アヤックスが帰ってきたときに気づいたらポケットに入っていた。戦闘方法はまあ、岩を纏ってステゴロ(?)、少し違うが岩元素版の鹿野院平蔵君やディシア姐さんの元素爆発を想像してくれればいい。

 

元素スキルや元素爆発の詳細は思案中。

今のところは、通常攻撃では地面から連続して岩の棘を出して攻撃するところを、元素スキルでは、タルタリヤと同様に、近距離と遠距離を切り替え、岩元素を纏わせて戦うスタイルに変わる。

元素爆発で、小規模の砂嵐を起こして周りに大量の砂を散布し、その砂による敵の拘束と、味方へのシールド付与、一定時間が経つと拘束範囲内の砂を破裂させて、敵にダメージを与えるものとしている。




はい、どうもありがとうございました。

この幕間、なかなか衝撃的な内容だったのではないでしょうか。
ええ、今回も私の趣味です。性癖全開真君とは私のことだ文句あるか。

さてさてそんなことは置いておいて、次はベリアル周辺の情報をまとめと、今考えている別の幕間を出して、その次からベリアル君に戻るつもりです。
すっ飛ばして本編に戻るかもしれないんですけどね。

では、今回もありがとうございました。

また、誤字やストーリーのおかしいところがありましたら、教えてくれれば幸いです。

感想ももちろんお待ちしております。
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