ブルーアーカイブ 実績「楽園を信じる者」及び「闇の中で照らされて」取得RTA闇堕ちチャート   作:狐玄

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スーーーーーーーッ(深呼吸)



あ、独自設定あります。



「絶望の足音」

 

 ゲヘナ学園、万魔殿の本部。

 ほとんどの生徒に見向きもされないその部屋は、正に自由と混沌を象徴する様相を呈していた。まだ日が高い――本来であれば執務をしているべき時間なのだが、その部屋の中で仕事らしきことをしている生徒は一人もいなかった。遊びに来たというソファに座るモナ、そのモナの膝の上に腹ばいになって寝ているイブキ、向かいで趣味の本を整理しているイロハ。そして部屋の奥の偉そうな机に脚をかけ、豪華な椅子にもたれかかり爆睡をキメているマコトである。なお、残りの万魔殿のメンバーは不在のようだ。

 

「ねぇねぇ!イブキ、気付いちゃった!!」

「お、何々?何に気付いちゃったのイブキちゃん?私に教えてくれる?」

 

 不意にソファに手をつき体を起こしたイブキの言葉に、モナは興味津々と言った風に疑問を返す。

 イブキとの出会いは、イロハと出会った日から少しした頃。モナが万魔殿で働いているイロハの姿を見て声をかけた時だ。イブキはその時イロハの横に居て、モナのことを不安げに見上げていたのを覚えている。最初に会った時は幼い感じの子だなぁとしか思っていなかったが、後にまだ高校生では無いと聞いて吃驚した記憶がある。それなのに万魔殿の部屋まで連れ込んで大丈夫なのかと気になったものだが、イロハもマコトも、果ては他の万魔殿のメンバーも全員が気にしていなかったのでモナは考えることを放棄した。それまであまり話していなかったマコトとも話すようになったメリットもあったし、不利益もないならそれでいいかと思ったのだ。

 

「いいよ!あのね、モナ先輩、イブキと翼がおそろいなんだよ!」

「……そういえば、似ていると言えば似ていますね」

 

 その会話に興味をそそられたのか、整理していた本を置きこちらを向くイロハ。

 彼女の視線を追ってみれば、そこにあるのはモナの翼。それは確かにイブキと非常に似ていると言って良いだろう。強いて違う点を挙げるとすればイブキよりもモナの方が翼が大きいのと、翼の根本上部から一節目までが山なりになっているところだろうか。ブーメランを思わせる形をしているその翼をひらひらと動かしながら、モナは言葉を漏らす。

 

「確かにそうかもねぇ……自分の翼なんて気にしてなかったから気付かなかったや。それに気付けるなんて、イブキちゃんはすごいなぁ」

「ほんと!?イブキすごい?」

「すごいすごい。そんなすごいイブキちゃんにはこのアメちゃんをあげよう」

 

 そう言ってポケットから取り出したのは、トリニティ以外では入手が難しいちょっとレアな飴。この間ミカと出会った時に貰ったものだ。代わりにこちらもゲヘナの菓子をあげたので貰ったというより物々交換に近いだろうか。こういった交換は度々しており、他人にあげるのを躊躇するほど少ないわけではない。何よりこういうものはみんなで食べたほうが美味しく感じると相場が決まっているのだ。モナは眼下で激しく主張してくるイブキの頭を撫でながら、空いている手で彼女の口先に飴玉を差し出した。

 

「わーい!!ありがとう、モナ先輩!はむっ」

「良かったですね、イブキ」

「……ところで、イロハちゃんにも翼ってあるの?普段見えないけど」

 

 小動物のように指ごと飴を頬張るイブキを他所に、モナはイロハに視線を向ける。視線を向けられたことに気が付いたイロハは少しのあいだ空を見つめた後、こちらに向き直り蠱惑的な笑みを浮かべながら口を開く。

 

「――さて、どうでしょうかねぇ?」

「わあ、いい返事ぃ」

 

 答えをはぐらかされたというのに、モナはけらけらと嬉しそうな表情を浮かべる。それはこみ上げてくる歓喜が思わず出てきてしまったような顔であった。

 前にイロハのことを見た時は、こんな表情はしなかった。もっと硬くて、冗談なんか通じ無さそうな顔をしていた。それが今、こんなにも楽しそう。モナはそのことがとても嬉しかった。この世は自分の思い通りにならない事ばかり。それでも、それでも自分の言葉で誰かを笑顔に出来たのなら。それはとても幸せなことだろうから。

 そう笑顔を見せれば、イロハも呼応するようにクスクスと笑い声をあげる。イブキはそんな二人を不思議そうに見ており、マコトは未だに鼻提灯を作っていた。そんな混沌さがさらに上昇した部屋のドアが、不意に開かれた。

 

「マコト、この書類についてなんだけど……モナ?」

「……なんで執務中のはずなのにモナさんがいるのかとかそこの美味しそうな飴とか聞きたいことは色々ありますが……なぜマコト議長が寝ているのを気にもしないんですか?」

 

 そこから顔を出したのは、ゲヘナが誇る風紀委員会のトップ二人――ヒナとアコだった。数枚の書類を片手に入ってきたヒナは、モナが居たことに驚いたのか手から力が抜けてしまったようだ。ひらひらと宙を舞う書類は、力なく床に落ちていく。ヒナの後ろに付いていたアコは、彼女が落とした書類を拾いながらこの部屋の惨状に疑問を呈す。

 その言葉を受けたイロハとモナはゆっくりと顔を見合わせたあと、各々の言い分を口にする。

 

「私は別に……部外者だし?」

「良くないと言えば良くないですがこれくらいはいつも通りですし」

「えぇ……それでいいんですか万魔殿」

 

 その言葉を聞いたアコは、マコトとイロハに白い目を向けてしまう。さもありなん、私もそう思う。けれど、モナはそれを口にすることは無かった。アコを調子に乗せると、大抵いろいろと酷いことになるのだ。この前もそれでこの万魔殿の執務室が崩壊したとかいう噂を聞いたことがある。

 ……この執務室、記憶の中で月一くらいで崩壊している気がするのだが、大丈夫なのだろうか。頻繁に校舎が崩壊するのに誰もそこまで慌てないことに、日常化してしまっている事実を強く実感してしまう。最近ではゲヘナ以外の生徒も「また壊れたんだ、あそこ」みたいな反応になって来ているらしい。それでいいのか万魔殿。

 

「……随分と仲が良いのね」

「……およ?もしかして、やきもち?」

「別に、そういうわけではないけれど……」

 

 少々棘のある声色で語り掛けてくるヒナに対し、モナは楽し気にヒナの顔を覗き込み言葉を返す。ズバリと己の心の中を当てられたからか、頬を染めながら視線を外すヒナ。そんな姿をいじらしく思いながら、モナはヒナとアコを逃がさず巻き込むため二人にも飴を手渡す。せっかく会えたのだ、もう少しくらい話し込んでもバチは当たらないだろう。

 

「ふ~ん……まあいいや。せっかくだし、二人も混ざっていきなよ!はい、アメちゃんあげる!」

「ああ、ありがとう……じゃなくて」

「私もですか?いえ、貰えるならありがたく受け取りますけど……あら、美味しい」

 

 つい受け取ってしまったヒナは、既にアコに飴を渡している最中のモナを見つめながらその飴を所在なさげに揺らした後、諦めたかのように口に入れた。困ったように眉を寄せるその姿を横目で見ながら、モナも飴玉を一つ口に放り込む。

 

「それにしても二人して来るだなんて、またマコトちゃんになんか難癖を付けられたの?」

「あなたたちも大変ですね。マコト先輩のめんどくさい難癖を受けるのは」

「それはそうなんですけど、仮にも寝ているとはいえ目の前でそういうこと言います?普通」

 

 何の前触れもなく、唐突にマコトに対して言いたい放題になった二人にアコは思わず半目になってしまう。

 

「いいのいいの、どうせすぐに他のことに気を取られるから」

「マコト先輩は移り気ですからね」

 

 ねぇ?と二人はクスクスと笑い合う。敬意の欠片も見えないその光景に、アコは呆れることしかできなかった。

 しかし、そろそろ起こさないといけない時間なのも確かだ。モナはイブキを膝の上から退かすと、背伸びをするように手を伸ばしながら立ち上がる。

 

「でもまぁ、そろそろマコトちゃんを起こそうか」

「あっ!じゃあイブキが起こす!」

「お?それじゃあ一緒に起こそうか〜」

 

 そう言って、マコトに近寄る二人。

 しかしその時、甲高い音と共に窓が割れ……ちょうど二人とマコトの間となる位置に小さい影が転がり落ちて来た。丸いシルエットにデコボコとした外皮。その外見は、破片型手榴弾――世間一般的にはフラググレネードと呼ばれるものに非常に酷似していた。

 突然の大きな音にイブキはビクリと驚き固まってしまう。それに対し、突然転がってきた手榴弾と思わしきものを前にモナの身体は自然と動き出し、スローモーションになった視界の中で手榴弾に手を伸ばしながら思考が高速回転し始めていた。――マコトちゃんは寝ていて、ソファで座った状態のイロハちゃんや入口近くに居るヒナちゃんとアコちゃんは触れることすら間に合わない。固まってしまったイブキちゃんにも難しい。なら私がどうにかするしかない。――でもどうやって?投げ返す?蹴り返す?ダメだ、間に合わない。外に出ていく前に爆発するだろう。ならば覆い隠すしかない。破片型手榴弾なら使ったことがあるから対処自体は容易だ。最終的に破片が飛び散らなければいい。しかし、手の届く範囲に破片を防げるような厚みのあるものが見つからない。ソファ?重すぎる、間に合わない。それに全ての範囲を覆うことができない。マコトちゃんが向こう側で寝ているのだ。片方だけでは足りない。服を被せる?薄すぎる、防げない。それに脱ぐ手間もあり、間に合うかどうか分からない。確実性に欠ける。何か、何か――

 ふと、視界の中の自らの腕が目に付く。モナは一度目を閉じ、開く。そこに映されていたのは、覚悟を決めたような、そんな表情であった。

 爆発する前に手榴弾を手にしたモナは、そのまま流れるように腹に抱え蹲った。――己の身体。それが、モナが思い付いた中で一番被害を抑えることができる唯一の手段だった。

 

 

 そして次の瞬間、モナの意識は暗闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 伸ばした手は、届かなかった。

 

 

 

 

 

 いつものように風紀委員として活動し、万魔殿の難癖に文句を言うために執務室まで訪れる。そんないつも通りの日のはずだった。いつもと違ったのは、モナが居たこと。雲に隠れる太陽のように、いつの間にか現れたり消えていたりする彼女は、万魔殿の執務室にいた。部屋に入った時に見えた黄金に輝く髪を揺らす見知らぬ少女と共に笑うその姿は、とても様になっている。それこそ、自分と一緒にいるよりも――

 そこまで考えた瞬間、不意に胸の奥がじくりと痛んだような感覚に陥った。その痛みは、思わず手に持っていた書類を落としてしまうほど鋭かった。それは醜い嫉妬か、それともモナが自分の元から去ってしまうことへの恐怖か。ヒナはこの感情のうねりに耐えきれず、意図せず声が漏れ出てしまった。

 

「……随分と仲が良いのね」

「……およ?もしかして、やきもち?」

「別に、そういうわけではないけれど……」

 

 自分でも不機嫌そうだと分かる、みっともない声が出てしまった。これでは、嫌われてしまうかもしれない……そう、思っていたのに。彼女はなんとも楽しそうにこちらの顔を覗き込み、揶揄ってくる。なぜ、そんなにも楽しそうなのだろうか。その顔は、私が怒っているなんてちっとも思って無さそうで、この程度なんともないと言っているようで。これでは、心配していた私が馬鹿みたいではないか。ヒナはなんだか恥ずかしくなり、視線を外してしまう。

 

「ふ~ん……まあいいや。せっかくだし、二人も混ざっていきなよ!はい、アメちゃんあげる!」

「ああ、ありがとう……じゃなくて」

 

 差し出された手に、体は自然に反応してしまう。彼女から貰えるものは、なんだって嬉しいと思えてしまうから。受け取ってしまった飴を片手で弄びながら、ヒナはアコに飴を渡しているモナを見つめる。誰に対しても、分け隔てなく接するその姿に仕方なさを感じながら飴を口にする。

 分かってはいるのだ。彼女の優しさは、私だけに注がれるものではない。頭ではそれが分かっているのに、心のどこかが足りないと叫んでいる。もっと構って欲しいと、もっと褒めて欲しいと――もっと、共に在りたいと。純粋な愛に飢えた貪欲な心は、どこまでも求め続ける。まるで癇癪をおこす子供だ。無遠慮に、無思慮に暴れ出す。そんな抑えきれぬ心がまた顔に出てしまわないよう、ヒナは心に蓋をする。こんな恥ずかしい姿、誰にも見せられないから。見せたくないから。

 

「でもまぁ、そろそろマコトちゃんを起こそうか」

「あっ!じゃあイブキが起こす!」

「お?それじゃあ一緒に起こそうか〜」

 

 そうこうしているうちに、話は進んでいたようだ。未だに鼻提灯を浮かべ、睡眠を貪っているマコトに近寄るイブキとモナ。

 しかしその時、甲高い音と共に窓が割れ……ちょうど二人とマコトの間となる位置に小さい影が転がり落ちて来た。丸いシルエットにデコボコとした外皮。その外見は、破片型手榴弾――世間一般的にはフラググレネードと呼ばれるものに非常に酷似していた。

 その状況に、モナは誰よりも早く動いていた。投げ込まれた手榴弾を掴み、腹に押し付けるように体で覆い、蹲る姿勢。それは、自身の体を犠牲に他を守る姿勢。ヒナは思わず手を伸ばす。たとえキヴォトスの住人であろうとも、至近距離で手榴弾の爆発を集中的に全て受ければそのダメージは深刻なものになり得るだろう。何かいい案があるわけではない、だが……それでもと手を伸ばす。彼女が傷付くのは嫌だから。

 

「モナっ!!」

「ホアッ!?」

 

 けれども、無情にもその手は間に合わない。大きな破裂音が、執務室の中に響き渡る。それと同時に、マコトの悲鳴も響き渡る。モナは破裂音に合わせて、一瞬だけふわりと浮かび上がったかと思うと、ゆっくりと横に倒れこんだ。鮮やかな、赤い波が彼女の体から海を作っていく(広がっていく)。それを見て、ヒナの背筋は真冬のように凍り付いた。胸の内に恐怖と、不安と、激情が綯い交ぜになって塗りたくられる。モナが居なくなってしまう(ヘイローが壊れてしまう)恐怖。もしや既に……という不安。手榴弾を投げ込んだ者への怒り。それらを何とか押し留め、ヒナはモナの元へ走りその体を抱え込む。

 

「モナ!…………!!!」

 

 モナを抱え込んだヒナは呼吸を確認し、生きていることに安心する。しかし、ボロボロの服の間から見えるその傷に愕然とする。――想像よりも、怪我が酷い。腹部からは沢山の血が流れ、着ていた服も赤く染まっている。兎にも角にも止血をしなければ。辺りを見回し、包帯の代わりになるものがないか探す。だが、見つかるのは長さが足りないものばかり。ヒナは仕方なくモナの着ていた服を破り、包帯の代わりにした。下着が見えてしまうが、そこはヒナの上着を被せることで対応する。

 

「ぐ……げほっ……ごぽっ……!」

「大丈夫!?しっかりして!……モナ?……モナ!!……!」

「い、委員長!?」

 

 腕の中のモナは力なく頭を傾けながら咳き込み、その口からも細く赤い滝を作り出す。その滝はヒナの腕に流れ落ち、嫌な湿り気と暖かさを与えてくる。ヒナは、小さく開いたモナの口から見える赤色の液体をみて血が上手く吐き出せていないことに気が付いた。爆発の際に肺に傷がついたのか、それとも喉か……そこまで考えて、思考を打ち切る。ここで正確な判別をするのは無理だ。それよりも、処置を施さなければこのままでは出血多量の前に窒息で死んでしまう。

 逡巡することもなく意を決したヒナは、モナの口に己の口を密着させ血を吸い出し近くの床に吐き捨てる。後ろの方から変な声が聞こえた気がしたが、今はそれよりもモナを助けなければと再び口を付ける。数度、床に血を吐き捨てた所でモナの呼吸が正常に戻ったことが確認できた。そのことに一安心しながら、アコに視線を向け指示を出す。

 

「アコ、セナに連絡を入れて」

「……はっ、はい!ただいま!!」

 

 なぜか顔を赤くしていたアコを不思議に思いながら、一段落ついたヒナは周囲に目を回す。すると、そう遠くない位置で情けない声と姿で慌てているマコトと、その横に移動していたイロハが通信機器を耳に当てているのが見えた。

 

「な、なんだぁ今の音は!敵襲か!?」

「ええそうですよ敵襲ですよマコト先輩!さっさと目を覚ましてください」

 

 先程の大きな破裂音でようやく起きたらしいマコトに、イロハは不機嫌そうに喝を入れる。それと同時に、緊急回線を使用し近くに居る万魔殿のメンバーに出動命令を下す。その後もイロハは苛立ちを隠すこともせず、淡々と指示を入れていく。手榴弾を投げ込んだであろう犯人の調査、周囲への厳戒態勢、そして応急処置のための備品の確保。口封じの箝口令。普段のものぐさな態度は鳴りを潜め、万魔殿の一員としての顔が表れる。

 

「おのれ、このマコト様を狙うとは……」

「マコト先輩だけ狙われたかは怪しい所ですがね。モナ先輩の方が被害が甚大ですし」

「……なにぃぃぃ!!!???」

「……マコト先輩、そこで固まっちゃってるイブキと一緒に大人しくしてくれませんか。邪魔になるので」

「え……え?今邪魔って言ったのか?」

 

 寝起きでまともに状況が見えていなかったマコトは、辺りを見回しモナの状態に気付くと非常に驚いた顔で椅子から転げ落ちた。イロハはそんなマコトに呆れた様子で溜息をつきながら大人しくしてほしいと告げる。

 どうせマコトが動いてもロクなことにはならないのだ、それならば静かにしてくれる方が助かる。というようなストレートな物言いに困惑するマコトを他所に、イロハはモナに程近い場所でへたり込んでいるイブキに近寄る。目の前で血だまりが作られていく様を見せられてしまったのだ。固まってしまうのも無理はないだろう。

 

「イブキ、大丈夫ですか」

「……あ、イロハせんぱい……イブキは、イブキはだいじょうぶ。でも、モナせんぱいが……」

「大丈夫です。大丈夫……ですから」

 

 イロハは唐突に頭を振る。それは、不安を振り払おうと自分に言い聞かせているように見えた。

 

「ヒナ、ちゃ……」

「モナ!良かった!起きた……の……ね……」

 

 モナの応急処置を終え、辺りを警戒しながら万魔殿の様子を見ていたヒナはその聞きなれた大切な友人の声に視線を戻す。しかしヒナの視界に映ったものに、ヒナは言葉を紡げなくなった。

 それは、三層からなる輪の中に太陽を思わせる丸い球体が鎮座し、その球体から天使のような羽と悪魔のような羽のどちらもが生えている物体だった。モナの頭の上に浮かぶその物体は、普段は目に見えないもの、鏡でしか見れないものだ。触ることはできず、影にも映らない。ただ死の間際に現れ死ぬと同時に砕け散るそれは、まるでこれから死ぬものを迎えに来た天使のようで、死を運ぶ天使の輪(ヘイロー)と呼ばれているものだ。

 それがモナの頭上に現れたという事実に、ヒナの頭は真っ白になる。ヘイローはその幻想的な見た目からファッションとして使われることが多々あるが、こうして実際に見てみると今後はそのファッションのことを受け入れられなくなりそうだ。

 

「ヒナ、ちゃん……みん、なは……?」

「っ!……無事よ。あなたは、もっと自分の心配をして」

 

 今も死の淵に立たされているというのに。腕の中で輝くその灯は、蠟燭のようにか弱くも懸命に他人を照らそうとしている。それは、次の瞬間消えてしまうかもしれない程に弱々しいというのに。

 思わず彼女の肩を抱いていた手に力が入る。すぐにそれに気付き手を離したが、モナの顔がほんのわずか歪んだのが分かってしまった。

 

――何をやっているんだ、私は

 

 自分の無力さに、苛立ちを覚える。たとえどれだけ力を持っていても、守れなければ何の意味もない。大切な友人一人守れなくして、何が最強の一角か。

 

「ごめんなさい……モナ」

「平気だよ……だって、ヒナちゃんが……そばに、いるから」

「!」

「一番、あんしん……できる場所、だから」

 

 その言葉に、ヒナの心は荒れ狂う。人は、命の危機に本性が出るという。それならば、今もなお命の危機にあるモナの言葉は本心と言って良いだろう。もちろん普段の言葉が嘘であると疑っていたわけではない。それでも、こんな状態になってまで信頼してくれているという事実はヒナの心に確かな熱を与える。

 

「全くもう……本当に、あなたは……」

 

 そこで、口を噤む。いつの間にか、モナのヘイローが消えていたからだ。先程の状態から、ヘイローが消えるということは――死か、ただ単に意識が無くなっただけか。心臓の鼓動が速くなる。自らの胸に手を当てずとも、それが分かる程に速く。どうか後者であれと、ヒナはそう思いながら震える手を彼女の口元に翳す。そうして感じた生命の息吹に、胸をなでおろす。

 

 祈る事しか、今のヒナにはできなかった。セナが来るまで、ヒナにできることはあまりにも少なかった。

 

 

 

 白く、清潔なベッドで眠るモナ。個人の為に作られたその病室には、眠るモナを傍から見つめる影が二人いた。

 

「……それで、結局犯人は見付からなかったと?」

「ええ、そういうことになりますね。腹立たしい」

 

 小柄な体躯でありながら、それを超える重機関銃を持つ威圧感のある少女。彼女は、鋭く矢のような今にも貫きそうな視線をもう一人の少女に向ける。それに対するは豊かな赤い髪を下ろし、本を片手に面倒だと言わんばかりの顔をしながらも答える少女。

 その二人――ヒナとイロハは、モナのベッドの傍で稀有な出会いを果たしていた。お互い、直接話したことはこれまで無かった。モナという共通の友人がいるだけの、他人。そんな関係だった。

 襲撃があった日の翌日、見舞いに来た時間がちょうど同じであった二人は、せっかくだからと情報を共有したのだ。そして分かったことは、犯人が見つけられなかったというもの。箝口令に関しては想定通り機能したおかげか、この事件について知っている人物は少ない。だが、万魔殿の執務室に手榴弾を投げ込んだ犯人だけはまるで何一つ手がかりが掴めなかったというのだ。万魔殿は抜けていることもあるが、ゲヘナ生徒の代表組織だけあって基本的には優秀な人物の集まりだ。トップがアレだからか威厳は微塵もないが。ともかく、そんな組織を相手に生半可な実力では簡単に捕まるだろう。だが、今回の相手は手がかり一つすらも残していない。それがどういうことか分からない程、二人は愚かではないし楽観的でもなかった。

 

「何が目的だったのかしらね」

「皆目見当もつきませんが……まぁろくでもない理由なんじゃないですかね」

「まあ、なんにせよ対策はしないと」

「そうですねぇ……回せる人手は少ないですが、調査に向かわせますか」

「風紀委員会からも、多少は出せるけれど……」

「良いですね。では、私たち(万魔殿)は北半分を担当するのであなたたち(風紀委員会)は南半分をお願いします」

「分かった」

 

  それだけの実力を持ちながら、したことと言えば手榴弾を投げ込むのみ。目的が何も見えない、不気味な相手だ。だが、それが何であろうと関係はない。かの犯人は万魔殿に喧嘩を売ったのだ。ついでに風紀委員会にも喧嘩を売っているが。ナメられてはいけないのだ。特に、ゲヘナにおいてはそれが顕著だ。

 怪しいポイントはある程度絞り込んでいる。投げ込まれた手榴弾は、汎用性があると言っても作られている工場などは決まっている。非効率極まりないが、手がかりがほとんどないので虱潰しに探すしかない。自治区を半分に分け、北半分を万魔殿が、南半分を風紀委員会が集中的に調査する。これで捕まるとは思えないが、何もしないよりはマシだろうという判断だ。

 

 しばらくは、忙しくなりそう。ヒナはそう、穏やかに眠るモナの顔を見ながら小さく呟いた。

 

 

 

「知らない天井だ」

 

 白い天井、それがモナが覚えている中で最後の記憶であるヒナの手の中で気を失ったあと最初に見た光景だった。

 目を覚ましたモナは、痛む体で自身に何があったのかを思い出した。そう、手榴弾を抱え込み処理したのだ。それによって体の節々は痛み、入院を余儀なくされているのが現状である。

 

「目が覚めましたか」

「……セナちゃん?」

「はい」

 

 そんなモナに、この部屋の主――セナが話しかけてくる。

 

「痛み以外に、違和感はありますか?」

「ううん、ないよ。おかげさまで大分良くなってるみたい、ありがとう」

「それは良かったです。ですが、しばらくは安静にして頂きます」

「え!?そうなの!?」

「……はぁ、見た目は大丈夫でも、万が一がありますから。検査入院も兼ねているんですよ」

「そっか、それならしょうがないね。ところで、他の人は結局大丈夫だったの?」

 

 セナは、手元のカルテに目を落とす。そこに書いてあった「一般のキヴォトスの住人に比べ、耐久力が無い疑いアリ」という文字を、モナに伝えることは無かった。ただでさえ怪我をしている最中に精神的ダメージを与えることもないだろうという気遣いからだ。これは落ち着いた頃に伝えることにし、セナは他人の安否を聞いてくるお人好し(モナ)の疑問に答える。その答えに嬉しそうに笑う彼女の顔を見ながら、セナはそのカルテを棚にしまう。きっと、彼女なら乗り越えられるだろうと思いながら。

 

 

 

 しかし、そのカルテが次に開かれたのは、季節がぐるりと巡ってからであった。

 






ヘイローについて

 普段は肉眼では見えない。これは先生も同様である。
 平時は鏡に写った場合のみ見ることが可能。
 死の淵に瀕した時、肉眼で見えるようになる。(某有名ゲーム的に言うと赤体力になったら)

 はい。ということでヘイローについての独自設定です。
 ヘイロー、天使の輪。つまり『死を表す象徴』です。この世界の『死の確定』がヘイローが壊れることとするならば、ヘイローが肉眼で視えるということは死が間近に迫っている証なのではないでしょうか。そういう想像がこの設定の元です
 それが見えてしまうことによる感情の揺れ。なんと美しいことなんでしょう……

 あ、モナちゃんのヘイローはこんな感じです。あくまで雰囲気としてね。


【挿絵表示】



 4.5PVとかのお話はまた後日。初日なのでね。その分はモナちゃんで補給するからよぉ……おかわり、行こうか。


 は~、イブキを庇って死んで万魔殿の子たちを凍り付かせてぇ~!不忍の心みたいにイブキが攫われてブチ切れたイロハが使えるモンは全部使うとばかりにモナちゃんに応援を要請してそのせいで死にてぇ~~~!!!
 モナちゃんに習った自分に甘くしたせいでモナちゃんが死んじゃうシリーズ第二段!!!フゥ^~!
 イブキが攫われたらイロハはブチ切れするけどイロハのキレ方って静か目だよね。「……許せませんね」って感じの。だから「イブキが攫われたんですけど協力してくれませんか?してくれますよね?」ってモナちゃんに連絡しよう。モナちゃんもイブキのこと好きだから100%協力してくれるゾ。で、実力も高いから手分けして探すんだ。その方が効率的だしね。モナちゃんが運よく最初に見つけてちょっと遅れてイロハとか他の万魔殿メンバーが集合するんだ。速いねぇ~(黄色い大将風)じゃあ、その間に死のうか。
 一人ぼっちのイブキを見つけた瞬間「イブキちゃん!ケガはない!?」「モナ先輩!……うん!イブキは大丈夫!」とかそういう感じで会話しながらイブキはこちらに駆け出してくるんだけど、イブキが一人ぼっちだったのは実は攫った側の策略で爆破して一人でも多くの犠牲者を出そうとしていたんだよね。でもこのままだと誰一人殺れ無さそうだから仕方なくモナちゃんを爆破したってワケ。っぱ爆発よ。爆発こそ芸術。使いやすくてナンバーワンだね。初心者から上級者まで誰でも使える最高の装備だ。だからモナちゃんは軽装備こそ最も輝くのさ。
 で、話を戻すんだけどイブキにそんなことが分かるわけもなく。万魔殿は気付いても間に合わず。唯一モナちゃんだけがイブキのことを助けることができるんだよね。モナちゃんはどうするかな?まぁ助けるよね。信じることを重要視してるモナちゃんは他人からの『信じられること』にとっても弱いんだ。チョロいと言ってもいいね。助力を求められて単独行動が許されてるってことは『この人なら一人でもイブキのことを助けてくれるだろう』っていう厚い信頼の表れだよね。それがモナちゃんを殺すんだ。モナちゃんが認識した他人からの信頼を裏切る行為はモナちゃん自身の否定に繋がるからね。命を投げ打ってでも信頼に応えようとするんだ。それが一般的には異常だと頭では分かっていても、モナちゃんの『心』が普通(それ)を選べないのさ。難儀な性格してるねぇ……?
 こういう時の爆破してくる敵、謎に事前に情報渡してくるよね。「かかったなアホが!!」とかそういう感じで。それでみんな(イブキ以外)攻撃が来るってわかるんだけどもしイブキが攻撃された場合間に合うのはモナちゃんだけ。それが分かったから爆発する瞬間モナちゃんはイブキを抱きしめて庇うんだ。あ、爆発した時に腕とか吹き飛んだら良いと思わない?ヨシそうしよう今すぐに。

 ヒャア、きたねぇ花火だ。

 イブキは何が起きたかわかんないよね。しかたないよイブキは。だから至近距離でモナちゃんの血液ぶっかけられて「え?」って言いながら固まってて。目先と鼻筋の間に影ができるタイプのハイライト消えてる表情だとなお良し。うむ。
 イロハはアレだね、眼ギュッって凝縮してかっぴらいて欲しいね。口も普段はしないように大きく開けて「イブキ――ッ!!!」って言いそう。どう見積もってもイブキ>モナなんだよな。しかたないね♡でもちゃんとモナちゃんのことも想ってるから安心していいよ♡
 マコトは……マコトは……?わからん。ていうか君の描写ギャグ時空が多すぎてシリアスする時どんな感じになるのか全く想像つかないんだよ。だからマコトはまぁ他で動き縛られてて参加できなかったとかで頼む。ゲヘナが舞台のストーリーやってくれないかな~情報自体は他のストーリーに参加しててちょこちょこあるんだけどな~(欲張り)
 他はまともな情報ないので知らん。あ、サツキはなんかいい表情してくれそうな気配はする。目ん玉ちいさくして汗だらだらで眉寄ってる表情とか良く似合いそう。早くストーリーにたくさん出て♡でもなんか君もギャグ時空の住人っぽいよね。これだからパンティ(パンデモニウムソサエティの略)は。

 う~ん、これモナちゃん生きてるかな~~~どうかな~~~。私が死に際は会話していて欲しいオタクだからギリギリ生きてることにしようか。良かったねモナちゃん!遺言の時間はできたよ。頑張って希望を遺して逝ってね!まぁ実際に遺すのは爪痕なんですけど。
 片腕が吹き飛んだモナちゃんを見てイブキが「モナ先……輩……?」「あ……う……ごめんないさい……イブキが……イブキのせいで……」って言うんだ。イブキは子供っぽいけどちゃんと自分が悪いかも、って考えられるいい子なんだよね。だから自分が攫われたせいでモナちゃんがこんな大怪我を負ってしまったと考えちゃうんだ。
 もちろんそんなことをモナちゃんが許すわけもなく。「大丈夫……イブキちゃんのせいじゃないよ……」って言うんだ。言え。イブキを泣かせるなんてゆ゛る゛さ゛ん゛。あ、襲撃犯は役目終わったからキレたイロハちゃんの戦車で掃討されていいよ。バーイ。
 そんでもって掃討し終えたイロハが駆け寄って来るんだ。「イブキっ!無事ですかっ!!」って。今のイブキちゃんモナちゃんの返り血で血だらけだからね。心配するよね。で、イブキちゃんは「う゛……イブキは大丈夫だけど、モナ先輩が……」って返すんですよ。そこで初めてイロハはモナちゃんの現状を認識するわけですね。モナちゃんにきっかけを貰って、イブキに救われた(唐突に生えた独自設定)イロハはイブキに気を取られ過ぎてモナちゃんの方の認識が遅れちゃったんですよ。しかたないと思いますよ。
 そこで「モナ、先……輩?」ってめちゃくちゃ動揺してほしい。モナちゃんの頭の上に浮かぶヘイローを見て頭真っ白になってほしい。それで一瞬遅れたあと思い出すかのように急いで応急手当を始めてほしい。モナちゃんが何か話そうとするんだけど「しゃべらないでくださいッ!!」って普段は絶対に出さないような声で怒鳴られるんだ。またイロハの新しい一面が見れて私は嬉しいよ……うっうっ……ありがとうねモナちゃん。
 でも腕は片方吹き飛んでるし血は止まらねぇしでどんどんモナちゃんの生命の鼓動が小さくなっていっちゃうんですわね。ヘイローにひびが入っていく演出とかあると良いですね。それでイロハは焦燥に駆られて手が震えてくるんだ。この時、本質が出て欲しいね。自分しかモナは救えない。完璧にこなさなければ。って。極限状態でイロハの昔の真面目な部分が出てくるととてもエモだと思います。イブキちゃんはギャン泣きしてそう。

 そんでもって最終的にヘイローが砕け散る様を目の前で見せられるわけですね。かわいそ……。この時のイロハはギャン泣きするって感じじゃなくてモナちゃんの胸の服を握りしめて、顔をその手に重なるように縋り付いて地獄のような声で「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛」とか言ってくれると興奮します。
 このあと?大体この前のイロハ回とおんなじ感じになりそう。でも今回は下手人の所属とか考えてないしパンティ側が100悪いってわけじゃないからなぁ~大乱闘スマッシュブルーアーカイブになるかは怪しいラインですわね。でも下手人の所属してるところは近いうちにミカさんが殴り込みに行くと思います。ヒナちゃん?部屋で泣いてるよ。

モナちゃんが居なくなったゾ♡

  • モナ……どういうこと!?(会う)
  • モナ……会って話を聞かせて!(書置き)
  • モナ……どこに……!?(行方不明)
  • モナが……死んだ……?(死んでない)
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