ブルーアーカイブ 実績「楽園を信じる者」及び「闇の中で照らされて」取得RTA闇堕ちチャート   作:狐玄

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前回の本編内で折れた武器を置いていく描写にスマホを付け加えました。(23/5/1)
また、本編内の横線がまえがきやあとがきの横線と同じで見辛いため◆に統一しました。



「太陽は陰り、星は堕ちる」

「ミ、ミカさん……?」

 

 ティーパーティー、テラス。

 何時もは優雅で穏やかなその場所は、緊迫した空気に包まれていた。それは定期的に行われている情報共有の場、とある情報が出された時のことだ。

 トリニティの生徒会と言えるティーパーティーは、トップが3人居るという性質上ホストを順番に務める特徴がある。現在のホストはセイアだが、その間他の二人はサポートに回るのが通例となっている。サポートの内容は多岐に渡り、その中には内外部の情報収集も含まれていた。現在ナギサはゲヘナ及びトリニティ内部、ミカはそれ以外の場所の情報収集を担当している。今回の集まりはサポートの二人が集めた情報をホストに届け、執政をより良くするための場である。

 そして今、ナギサがゲヘナに関する情報を共有していた。その時、最初は穏やかだったミカが突然テーブルに手を叩き付け、大きな音をたてて立ち上がったのだ。

 

「ミカ様?どうかなさいま……ヒッ!?」

 

 テーブルに手をついたまま動かないミカは、普段の感情豊かな様子と打って変わって何も感じさせないような顔を浮かべその場を容易く凍りつかせた。

 ティーパーティーの生徒の一人が心配して近づくも、ミカの能面のような顔を見て驚き後ずさる。セイアもそのただならぬ様子に思わず問いかけていた。

 

「……ミカ、どうかしたのかい?」

「――今のとこ、もう一回お願いできる?」

 

 表情を崩さぬミカから帰って来た返事は、おそらくこうなったきっかけであろう情報の確認であった。ナギサはミカの様子を困惑しながらも手元に目を落とし、再びその情報を告げる。

 

「ゲヘナ郊外、ヒノム火山付近の建物にて大規模な爆発が発生しました。下手人はゲヘナ学園の不良たちとみられ、動機は過去返り討ちにされた本業モナに対する恨みかと。爆発の(のち)、その建物から重症と思われる彼女が出てくるのを確認しています」

 

 本業モナと言えば、キヴォトスで有名な生徒の一人である。ゲヘナに在籍していながら風紀を乱すこともない穏やかな性格をしており、様々な自治区に現れては分け隔てなく接してくるという。それは相手がトリニティであっても変わらず、ゲヘナにおいても異質な生徒と見られているらしい。更にその実力は早くも風紀委員長として君臨している空崎ヒナや、今この場にいる武闘派の聖園ミカなどに負けず劣らずの強さがあるのではないかと言われている生徒だ。

 その穏やかな性質はエデン条約を控えているティーパーティーにとって重要な人物であり、動向が注目されている理由とも言えた。無論、ゲヘナにおいても重要視されているであろう彼女にティーパーティーが接触してしまうと政治的な問題が発生する可能性があるため、情報収集だけに留めているのが現状ではある。だが、エデン条約が結ばれた後ならばティーパーティーは積極的に彼女への接触を図ることだろう。それくらい、ゲヘナの生徒でトリニティに友好的な生徒は少ないのだ。

 

「へぇ……ゲヘナの」

 

 酷く、低い声だった。

 それを聞いたミカは強く、強く手を握った。机にかけられていたテーブルクロスに数多の皺が刻まれ、ギチリと音が鳴りそうなほど握りしめられた手は、内に秘める激情を外に出さないようにしている風にも見えるだろう。しかし、ミカは激情を外に出さないようにしているわけではなかった。ミカは今、すぐにでも走り出しそうな自身の体を抑えるために力を入れているのだ。

 最初はそのまま走り出そうと思っていた。……しかしいざ走り出そうとした瞬間、ミカの頭の中にとある言葉が浮かび上がって来た。

 

――私は応援するよ。その意志を。

 

 ……体が石のように動かなくなったような錯覚に陥った。そうだ。今、感情に任せて暴れてしまえば。大切なお友達(モナ)が応援してくれたこの意志(願い)が、エデン条約の全てが無意味になってしまう。

 彼女と共に笑いたい、彼女との関係を隠さずに居たい。ただ、それだけだというのに。どうしてこんなにも難しいのだろうか。どうしてこんなにも苦労しないといけないのであろうか。ただ相手がゲヘナだというだけで、どうしてこうも難しくなるのだろうか。まだアリウスとの和解も済ませていないというのに。

 ミカの心の中では様々な激しい感情のもやが渦巻いていたが、それはまだハッキリとした形になることは無かった。

 

「失礼致しますっ!」

 

 突如、テラスに続く扉が強く開け放たれた。

 その淑女らしくない行動にナギサは眉を顰めるが、それだけのことがあったのだろうと軽く注意をするだけに留めることにしたようだ。

 

「――いかがなさいましたか?それと、あまりに性急すぎるのは優雅とは言えませんよ?」

「もっ、申し訳ございませんナギサ様。至急、報告した方が良いかと思われる情報でしたので……」

「それで……一体どんな情報ですか?そんなに慌てるような事態が?」

 

 ナギサがそんなやり取りをしている中、ミカはふとセイアの方に目を向けた。それ自体に理由など無かった。強いていうならば、たまたまなのだろう。ナギサたちを見つめるセイアは、どこか悔しそうな表情をしているように見えた。それはどうしてなのか、セイアに問いかけようとしたその時。ミカの耳に信じられない情報が入ってきた。

 

「昨日の夜、本業モナの住居と思われる場所が爆破されました。本業モナの生死も、犯人の手がかりも不明のままです。しかし、彼女の怪我を考慮すると半日も経たずにあの規模の爆発に巻き込まれては生存は絶望的かと思われます」

 

――今、この子はなんと言った?

 

 ミカは、大きな罅が走った音が聞こえた気がした。さっきは耐えられた。だって、彼女はまだ生きていた。怪我をさせたヤツらは憎い。でも、彼女が生きているなら堪えることが出来た。エデン条約が結ばれてしまえば、一緒に居て守ってあげられるから。けれど……けれど!あなた(モナ)が居なくなってしまったのならば!

 

……(ミカ)は、何のためにエデン条約を進めればいい?

 

 あなたがいないゲヘナと仲良くする価値はあるの?あなたはどうしてゲヘナに居るままなの?あなたが望むのならば、強引にでもトリニティに入れたのに。どうして、そこまでゲヘナに居続けるの?なぜ、こんなにも彼女を痛めつける奴らと仲良くしなければならないのだろうか?黒く、澱んだ感情がミカの中に生まれ始めた。それを振り切るかのように、ミカは頭を軽く振り足を動かす。

 そんなミカに気付いたセイアが苦虫を嚙み潰したような顔をして問いかける。それは、未来を視てなお変えられなかった悔恨か、それとも――いずれにせよ、ミカには知る由もない。

 

「ミカ?どこへ行くんだい?」

「ちょっと、気分悪くなっちゃって……今日はもう休むね?」

「……そうか。まぁ、今日の目的の大部分は終わっているし問題はないだろう。ナギサも、整理する時間が必要だろうから今日は解散としよう」

 

 並々ならぬミカの様子に何を感じ取ったのか、セイアは追及することなく引き下がった。ミカはそれを一瞥し、足早にその場を立ち去る。

 

 

 ミカが立ち去った後のテラス、少ししてナギサと報告に来た生徒との会話が落ち着いてきた頃。

 ミカが出て行った扉を見つめていたセイアに、ナギサは声をかける。

 

「ミカさん、大丈夫でしょうか」

「……ミカが一番、エデン条約に乗り気だったからね。ゲヘナとの和解の象徴になりそうな本業モナが生死不明とあっては、仕方ない部分もあるだろう」

 

 振り返りながらそう口にしたセイアは、目を伏せてどこか悲しげな様子であった。エデン条約が締結された場合、彼女に接触する話になった時、喧しいくらい積極的だったのも彼女だった。喜々として手を挙げ、自分が接触すると言って憚らない彼女はとても楽しげだったのを覚えている。ナギサは先程のミカの感情が抜け落ちたような顔を思い出し、嘆息する。

 

「何事も無いと良いのですが……」

 

 

 

 運命は、既に動き出している。それは、とある少女(百合園セイア)が見た未来よりも大きく、激しいうねりを持って。

 

 

「……」

 

 ミカの自室、その扉の内側すぐの場所。

 扉を閉めた後、ミカは己を抱きしめるように腕を組みその場に座り込む。

 

「モナちゃん……」

 

 とても、か細い声だった。膝を抱えるようにして特徴的な純白の大きな翼に覆われた彼女の表情は、誰も窺い知ることはできなかった。二重に己を覆うその姿は、まるで生まれ変わろうとする蛹のようにも見えた。

 

「ゲヘナとも、アリウスとも……ほんとに仲良くなれるかなぁ……?」

 

 震えた声で問うたその言葉は、誰にも届くことは無く、誰からも返答が返って来ることは無い。嫌なほどの静寂が自身の傍で佇むだけだ。

 でも、それでも。ミカは、歩き出さなければならない。だって、そうしなければ。彼女(モナ)が遺した想い(呪い)までもが、無駄になってしまうと思ったから。彼女が応援してくれた『アリウスと和解する』こと。それすら出来なかったら、私は――

 

「……に……ならなきゃ……」

 

 ゆっくりと、立ち上がる。ふらふらと、今にも倒れそうな足取りで歩き出す。その日、その後のミカの行方を知っているのは……地面に残された小さな雨の跡だけだった。

 

 

 とある深夜、セイアの居る部屋の前。

 

「……セイアちゃんはここにいる。静かに、病院にでも送ってくれれば……そういうことだから、よろしくね」

 

 ミカは、その場所に訪れていた。……アリウスの、生徒を連れて。彼女の口から出てきたのは、病院送りという物騒な言葉。その言葉に何の関心も示すこともなく、アリウスの生徒は口を開く。

 

「……これについては、スクワッドに任せます」

「……スクワッド?」

「はい、ご存じでしょう?」

 

 そう言って、アリウスの生徒たちは立ち去っていく。スクワッド――アリウススクワッドという特殊部隊。それを知っているかの確認もなく。それをしばらく見つめた後、ミカも歩き出す。仮面を被った白髪の生徒とすれ違ったことに、気も留めず。

 

 

「……今のは」

 

 白髪の生徒――白洲アズサは、震えそうになる己の体を手で押さえ呟く。すれ違った時に見た桃色の髪をした彼女の顔は、一見すればなんてことはない笑顔だと見えるだろう。しかし、アズサにはどこかそれが空虚なものに見えた。まるで魂が抜け落ちてしまったかのような、そんな印象を抱いたのだ。

 自分が、空虚というものを習わされたからだろうか。巧妙に隠されているそれを、見つけることが出来たのは。未だ、崩れる前の彼女はまだ戻れる可能性があるだろう。すべては崩れたのだと教えられた自分たちとは違って。だが、彼女のそれは薄氷を履むが如く危ういものだ。少しでも天秤が傾けば、一気に持っていかれるだろう。しかし、それでも彼女は致命的な決壊を迎えることは無かったのだろう。それは天性の才覚故か、まだ天秤が傾く事態が起こっていないのか。……どちらにせよ、こちら側に堕ちてくることが無いといいのだが。

 

「任務を、こなさなければ」

 

 やるべき事を思い出し、足を動かす。部屋の扉を前にし、最終確認を済ませる。不足が無いことを確認し、ドアを静かに開ける。わずかに開かれた扉の隙間から中の様子を伺ってみると、こちらに背を向け椅子に座っているセイアらしき姿が見えた。亜麻色の髪がふわりと動かす様子に、彼女がまだ起きていることが窺い知れる。

 

――しばらく待つか?

 

 そう、脳裏に浮かんだ言葉を否定し、アズサは音を出さぬようにドアを開き、歩を進める。一度出直しても、寝ているとは限らない。それに校内での作戦行動が長いほど、露呈するリスクが高まる。起きていても関係ない。高鳴る鼓動に緊張しながら、一歩、一歩と歩みを進める。

 アズサの位置が、扉と椅子に座っている少女のちょうど間の辺りに到達した時、唐突にその少女が口を開いた。

 

「ようこそ、アリウススクワッド」

「――ッ!」

 

 思わず、銃を突き付ける。一体、いつ気付かれた?そして、何故私の所属を知っている?アズサの頭の中は混乱の極みにあった。それを知ってか知らずか、彼女は言葉を続ける。

 

「少し……話をしないかい?」

「……話、だと?」

 

 こちらに振り返った彼女は神妙な面持ちで、そう切り出した。その見目は、情報通りの……百合園セイアそのものだ。そんな彼女が何を話すのか、どんな目的があるのか。全く分からなかった。だが、アズサには話を聞かずに撃つという選択肢を取れなかった。取りたくなかった。そんな思いからか、僅かばかり銃口を降ろしたアズサを見てセイアは微笑みながら心の内を告げる。

 

「……私は今、迷っているんだ」

 

 全身が、硬直した。何故なら……アズサもまた、迷っていたからだ。それが見抜かれたようで、なんとも言えぬ気持ちになる。

 

「私は……間違っていたのだろうか?」

「……?何を……」

「全てが無意味だと分かっていて、全てを諦めることは」

「!」

「未来は変えられないと分かっていても、伝えれば何かが変わったのだろうか?彼女が気にかけていた存在を、死なせてしまうことは無かったのだろうか?そんなことを、最近ずっと考えてしまうんだ。」

 

 そう言って目を伏せたセイアに、アズサはグリップを覆うように緩めていた手を握りしめ、口を開いた。

 

「私は、あなたの悩みがどれだけのものかは分からない。けど、例え……例え全てが虚しいからと言って、そこで抵抗を諦めるべきではない……と、そう思う」

 

 視線をそらし、自信なさげに言う姿はどこか頼りない。けれど、その目に映る意思はどこまでも真っ直ぐだった。アズサ自身にも、正解は分からない。でもそれでいいのだと信じるしかない。そうであると願って、足掻くしかないのだ。きっとその先に、何かが変わると思い込んで。人は今日も、生きていくのだ。

 

「抵抗を諦めるべきではない……か」

「私からも、聞きたいことがある」

「なんだい?」

「ほんとうに……これでいいのだろうか」

 

 セイアは、目を閉じる。話が分からなかった訳ではない。恐らくこの問いに対する答えは、彼女の今後に大きく関わるだろうと思ったから。

 

「……それは、私のヘイローを破壊することかい?」

「それは……いや、それも――ある。けど、私はこの先、この行為による影響が不安なんだ」

 

 それは、アズサの中で僅かばかり生まれた願い。もうこんな、暗雲の中進み続けるような……そんな生き方しかできないような生徒が生まれて欲しくない。

 そんな思いを感じ取ったセイアは、しっかりとアズサに目を向けて言葉を紡ぐ。

 

「私のヘイローが破壊されれば、その影響は大きいだろう……きっと、それはエデン条約も例外ではない」

「では……!」

「大きく荒れるかもしれないね。キヴォトスが」

 

 下手人をゲヘナに見せかければ、それでもう後は何もする必要はない。ゲヘナとトリニティの間にある溝は修復不可能なまでに広がり、それは次第にキヴォトスを動乱に陥れていくだろう。そう言われているような気がして、アズサは背筋にヒヤリとしたものが流れたのを感じた。

 

「アリウスは……私は、どうなるのだろうか」

「……エデン条約によって、ゲヘナとトリニティ間の紛争が無くなれば、アリウスの問題はじきに解決できるかもしれない」

 

 この両校の根深い問題を解決する方法は、少なくとも今はこのエデン条約しかないだろう。

 そう続けたセイアに、アズサは目を合わせる。それを見て、セイアは少しばかりその眼差しを鋭くする。

 

「……しかし同時に、アリウスはティーパーティーのヘイローを破壊しようとしていた。それが実行されれば、キヴォトスは本物の戦場になってしまうはず」

 

――君は、それを止めたいかい?

 

 沈黙が、流れる。

 目を見開いたアズサは、眼を閉じ……覚悟を決めたかのような眼差しをセイアに向け、答えを口にした。

 

――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「……そうか。ではアズサ、君に――」

 

 その言葉に、驚いたかのような顔をしたセイアは、微笑みながら選択を口にする(一歩、踏み出した)

 

 

 

 

 それは、必ずしも最善になるわけではない。でも一歩、歩み出す。そうすれば、可能性は0ではないのだから。その小さな一歩は、きっと後に大きなうねりを生む。そのうねりが齎すは……希望か、それとも絶望か――

 

 

「セイアちゃんが、死んだ……!?」

 

 ガタリと、椅子を蹴飛ばし立ち上がる。何で、どうしてと思考は掻き乱される。何がどうなっているのだろうか?何故そうなってしまっているのだろうか。襲撃犯はバカなのだろうか。誰がそこまでやれと言ったのだろうか。

 

「私は――!私は……?」

 

 そう、私は……?

 そこで、思考が止まる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

――どうして

 

――どうして?

 

 ああ、そうだ。私は――ホストになろうとして。だって、そうしないと。彼女との思い出が、彼女の信頼を、その何もかもを……踏みにじってしまうから。

 アリウスと、和解しないと。これは、果たさないと。でなければ、もう――

 

「私は、誰にも顔向け出来なくなる――!」

 

 モナを助けられず……そしてセイアを殺してしまったミカに、既に退路など残されていない。こうなってしまっては、行くところまで行くしかない。

 そう、覚悟した時。ナギサがミカの許を訪れた。

 

「ミカさん、いらっしゃいますか?」

「ナギちゃん?もしかして……」

「……はい、セイアさんのことです」

 

 それは、予想通りのことだ。ホストが斃れてしまった以上、残りのティーパーティーのどちらかが継がなければ業務が立ち行かなくなる。その話し合いをするのは理解できる。しかし、次に耳に入った言葉により、ミカはそれ以外の情報を聴き取れなくなった。

 

「エデン条約にも大きな影響があるでしょうし、早急に立て直してエデン条約を締結させなければいけません」

 

 エデン、条約。()()()()()()()()()()()と?そんなもの……そんなもの、絶対に許すことはできない。あんなゲヘナなんかとの平和条約だなんて、全く信頼できない。信じる方がどうかしてる。一緒に居ることさえ、嫌だ。

 いつの間にか変質した思いと共に、ミカの心の内には暗く、そして黒い炎が灯される。

 

「――ミカさん?」

「ああ、うん。大丈夫!」

「そうですか……私はやることがあるのでもう行きますが、ミカさんもお気を付けて」

 

 話は、既に終わってしまっていたようだ。ああ、ここで私がホストになると言えば……いや、納得させるだけの材料も、技術も無い。ここで無理にホストになろうとしても、怪しまれるだけだろう。目を閉じ、気持ちを落ち着かせる。実際に落ち着いたかはさておき、暫くした後に目を開けたミカの目には、覚悟の色が見えた。しかし、その色は憂鬱そうに暗く澱んでいた。その悲痛な表情は、誰にも気付かれることはなく。そして誰にも救われない。

 

 少なくとも、今は、まだ。

 

 

 ティーパーティー、テラス。

 連邦生徒会長が失踪してから数日。その対応に追われていた二人が一息ついた頃。ティーパーティーの構成員から報告された出来事に度肝を抜かれる事となった。

 

「連邦生徒会の所有するビルが……襲われた……!?」

「襲撃者の名前は本業……モナ……!」

「現在、指名手配が行われているようです。おそらく、ゲヘナでも同様の手配がされているものかと」

 

 本業モナ。誰に対しても穏やかで、分け隔てなく接してくれる優しいあの子。それが、どうして。ナギサも、ミカも、その部屋に居る誰もが驚愕した。生きている事もそうだが、その変わりようにだ。ミカの受けた衝撃は、殊更大きなものだった。

 

――生きていた?なら、アレは……私の、早とちり?でも、それでも……!

 

 頭の中がぐるぐると回る。考えは纏まらず、心臓がバクバクと大きな鼓動を鳴らし、嫌な汗が滲み出る。体の芯に溜まる嫌な熱に、心まで焼かれそうだ。それでも、もう、止まることはできない。既に、賽は投げられたのだ。それに、世間的に見て犯罪行為を犯しているという共通点が出来たことに喜んでいる自分が、心のどこかに居ることを感じた。そんな自分が、嫌になる。

 

――セイアちゃんがいれば、何か変わったのかな

 

 ハッとする。何を考えているのだろうか。もう、それは叶わない。けれど、もし、もし彼女も生きていたのならば。

 

 

 

 私は、彼女たちに許しを請うことができるのだろうか?





 ☆あ☆と☆が☆き☆

 アズサもセイアも解像度が足らないよォ!想像で書くしかないよンギィィィィ!⤴︎
 次回はだいぶ遅れるかもしれません。ちょっと別ゲーの諸事情で砂集めしたいので……

 さて、今日は何の日かお分かりですね?そう、聖園ミカの誕生日です。誕生日、おめでとうミカ。有らん限りの愛を君に贈るよ。私にできることは、これくらいしかないから。



 最近別ゲーとお絵描きのモチベが上がってきたのと本編が純♡愛してるからあとがき書くことないです。
 まぁある方が珍しいと思うんですけど(名推理)
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