ブルーアーカイブ 実績「楽園を信じる者」及び「闇の中で照らされて」取得RTA闇堕ちチャート   作:狐玄

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次回更新は年内にできたらいいなぁと言った感じになりそうです。申し訳ない



「ブラックマーケットは少女を誘う」

 

 

「……ふむ」

 

 ――暗いオフィス、外から差し込む光のみを光源としたその部屋で、大柄な機械を模した外見の人物が受話器を置いた。椅子に深く腰掛け、片手をこめかみに当てるその人物……カイザー理事は思考の渦に囚われていた。

 

「興味深い報告だ。やつらのデータは正確な物だったはず」

 

 それは先ほどの電話で受けた、一連の報告。不足なく勝てる戦力をぶつけた筈だが、アビドスは今もなお健在。目的の達成には至っていないという。デスクに広げられた書類の一つを手に取り、注意深く見る。その表面にはここ数ヶ月のアビドスの戦闘データを基準に作られた戦力数値が記されていた。

 

「計算ミスか?いや、しかしあの力は明らかに……」

「……お困りのようですね」

 

 コツコツと硬質な音を響かせ、暗がりから現れた黒く染まった人型が声を掛ける。

 黒服と呼ばれるその人物に、カイザー理事は渋い顔をしているかのように聞こえる声で答える。

 

「……いや、困ってはいない。ただ、計算に少しエラーが生じただけだ。アビドスの連中が、データより遥かに強かっただけのこと」

「……ふむ?失礼」

 

 カイザー理事が放った書類を手に取り、覗き込む黒服。しばらくの沈黙の後、徐に口を開いた。

 

「……データに不備はありません」

「……エラーではない、と?」

「ええ。これは単に、アビドスの生徒が更に強くなった。と解釈すべきかと」

 

 そう告げられたカイザー理事は、様々な要因を考えた。急激な成長、その裏には必ず大きな変化があるはずだと。新たな武器?新たな資源確保?新技術の発見?――違う、奴等にそんな余裕はない。

 で、あるならば。

 

「――外的要因か」

「まさに。あなたにとっての我々がそうであるように、アビドスにも強い外的要因があったと考えるのが自然でしょう」

 

 まあ我々の影響はあまり強くありませんが。と続ける黒服はどこか楽しそうに笑っていた。

 

「ともかく、アビドスにどのような要因があったのかは探るべきです。私も少々気になりますので、個人的に調べさせていただくかと」

「……」

「では、私はこれで」

 

 カイザー理事は自由気ままに去っていった黒服を見届けると、もう一度戦力が記された書類を一瞥した。そして、徐に部下を呼び出し命令を下した。

 

「――モナを呼び戻せ」

 

 

 ◆

 

 

「じゃあ、後は頑張ってね」

「ありがとね~!」

 

 ブラックマーケット。

 悪意と欲望に彩られたその中では、銀行も諸悪を担う存在であった。それでも銀行の名を冠しているだけあって、金の融資も受けられる。ここは表で落ちぶれた者たちの、最後の防波堤でもあるのだ。

 落ちぶれているわけではないが、表で銀行を使えない便利屋にとって使える銀行はここのみである。よって、モナはここまで便利屋を案内した。前にブラックマーケットに出入りしたことがある便利屋に案内は本来必要ないが、定期的に地図が役に立たなくなるこの街ではその記憶も役に立つか怪しいものである。

 よって、信頼できる案内を用意するというのはブラックマーケットでは常識であった。加えて、モナを連れることで余計なちょっかいを掛けられるのを防ぐという打算もあったが。

 

「……ん?」

 

 不意に、持っていた携帯端末が震えた。着信を知らせるその音は、めっきり聞かなくなって久しいものだった。半年ほど前までは頻繁に聞いていたものだが、全てを捨てたあの日に端末を替えてからまともに聞いていない。

 

「――はい」

『カイザーコーポレーションです』

「ああ、理事の……」

『はい、その理事がお呼びです。近い内にオフィスまでお越しください』

「了解」

 

 そう言って通信を切る。通信履歴に残るのはカイザーコーポレーションの文字列のみ。それをつまらなそうに見つめた後、端末を仕舞い歩き出す。

 そう、すべて捨てたのだ。生き残るために。後悔も未練もあるけれど、それでもモナは生きることを選んだ。言い知れぬ嫌悪感は自己を苛み、目付きは自然と悪くなる。

 そんな彼女を見かけた他の住人たちは、触らぬ神に祟りなしとでも言うように離れていた。ただ一人、いや三人だろうか、周りを見ていなかった人物を除いて。

 

「ご、ごめんなさ~い!通りま~す!!」

「あっおい待てい!」

「おっと……ん?」

 

 声に反応して振り返ると、誰かがこちらに走って来るのが見えた。その少女は追われているようで、こちらのことを見ることも無く猛進してきていた。このままだと衝突しそうな勢いで、咄嗟にモナは横にズレる。そのお陰か走っている少女たちは誰にもぶつかることも無く走り去っていった。

 モナはすれ違う時、追われている少女の着ている制服が目に付いた。それは記憶が正しければ、有名なマンモス校であるトリニティ総合学園のものだ。

 追いかけている方はこの辺りではよく見る不良スタイルだったので疑問は無い。

 

「あれって……」

 

 トリニティ総合学園は一言でいえばお嬢様学校、裕福な生徒が多い学校だ。そんな彼女たちがブラックマーケットに来る理由は基本的に存在しない。少なくとも、モナの認識の中ではそうなっている。

 だから、気になった。どんな理由で彼女がこのブラックマーケットに来ているのか。

 

「――追いかけようかな」

 

 とりあえず追いかけている不良たちを気絶させて、直接聞けばいいだろう。ブラックマーケットでは特別変わったことは無い、普通のことだ。

 走っていった方へと駆けていくモナ。その際、銃を手に取りいつでも撃てる状態にしてから担ぎ直す。あの程度の速さなら、余裕で追い付ける。それに、銃を肩に掛けている状態からでも負けはしない。

 

 ――わあぁああぁ!?

 

 そう遠くないところ、曲がり角を曲がった先だろうか。そんな距離から聞こえてくるのは、先程すれ違った追われている方の生徒であろう声。そして、次に聞こえてきたのは聞き覚えのある声。

 

 ――思い出しました、その制服……キヴォトス有数のマンモス校の一つ、トリニティ総合学園です!

 

「あれ、この声って……今朝の」

 

 そう、今聞こえてきたのは今朝モナが出会ったアビドスの生徒、アヤネの声である。アビドスは行動が早いな。いや、少人数だからこそか。そんな感想を抱きながら、見つからないように角から現場を覗き込む。

 別に見つかっても問題はないのだが、アビドスの戦闘を直接見ることができそうなのでモナは潜むことを選択した。事前に実際に見ているのと見ていないのとでは、戦う時に大きな差が出るだろう。

 

「あれ、先生もいる?」

 

 覗き込んだ先に見えたのは、アヤネを除くアビドス対策委員会のメンバーと、その生徒たちの後ろで穏やかに佇む先生の姿だった。

 

「肝が据わっているというかなんというか……」

 

 弾丸が一発でも当たれば命に関わるというのに、と思ったが、それはブラックマーケットの外でも同じことかと思い直す。

 

「拉致って交渉!中々の財テクだろう?くくくくっ」

「どうだ、お前たちも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は――ん?」

 

 アヤネの言葉に便乗して計画を暴露する不良たち。その二人の背後には、音も無くシロコとノノミが忍び寄っていた。そしてそのまま――痛烈な打撃音を響かせ、不良たちを気絶させた。

 

「うぐぇっ!?」

「げぶぇっ!?」

「悪人は懲らしめないとです☆」

「うん」

 

 気絶させる時、愉快な断末魔が聞こえた気がしたが……気のせいだろう。それよりも、今の一幕だけでも戦闘能力の高さが伺い知れる。近接戦闘も可能で、その練度も相応に高い。

 近付かれても銃に頼る生徒は多いが故、銃に頼らずとも戦えるというのはそれだけで強みになり得る。ここに来る前にムツキに便利屋がアビドスと衝突して勝てなかったという話も信憑性が増すというものだ。ただ、便利屋は全力ではなかった様子ではあるが。

 

「あっ……えっ?えっ?」

 

 この中でただ一人、トリニティの生徒――ヒフミはただただ困惑することしかできなかった。

 

 

 ◆

 

「あ、ありがとうございました、皆さんが居なかったら学園に迷惑を掛けちゃうところでした……」

「それに、こっそり抜け出して来たので、何か問題を起こしたら……あうう……想像しただけでも……」

「大丈夫、君が無事でよかったよ」

 

 申し訳なさそうに早口で事情を説明を捲し立てるヒフミに対し、先生は気にすることは無いとでも言うように手をひらひらと振る。

 

「えっとー、ヒフミちゃんだっけ?それにしても、トリニティのお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」

「あ、あはは……それはですね……実は、探し物がありまして」

「探し物?」

「もう販売されていないので買うこともできない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて」

 

 その顔には、どうしても諦めきれないと言った感情がありありと浮かんでいた。しかし、ブラックマーケットで取引されていて、通常販売はされていない物。この二つだけを聞けば、浮かび上がるものは当然限られる。例えば――

 

「もしかして、戦車?」

「もしくは違法な火器?」

「化学兵器とかですか?」

「ギャルのパ……いやなんでもない」

「先生?」

「冗談だよ?……ごめんなさいゆるしてください」

 

 違法なものだ。一つおかしなものがあったが、すぐさま近くに居たセリカに詰められて情けない震え声を上げていた。ヒフミはそんな違法物質の羅列に目を回しながらも、自分が求めていたものをバックの中から取り出す。

 

「えっ!?ギャ、ギャル……!?い、いいえ……そういうのではなくてですね……えっと、探していたのはこの、ペロロ様の限定グッズなんです」

「ペロロ?」

「限定グッズ?」

「はい!」

 

 その発言に興味を惹かれたのか、セリカはそちらの方へと向き直る。無事解放された先生は口には気を付けようと反省しながら、セリカから地味に距離をとっていた。そんな先生にノノミが近づくと、頬を赤くしながら耳元で囁いた。

 

「私はギャルではありませんが……欲しいですか?フフッ♪」

 

 先生に電流走る。

 まずい。このままでは先生の内なるペロロ様がペロロジラを超えてデカグラマトンになってしまう。助けてユウカ、このままじゃノノミのこと好きになっちゃう!しかし無情にも脳内のユウカは追撃を仕掛けてきた。「そんなに欲しいなら私だけを――って違いますからね!?」と。

 

 デカグラマトン――降臨。

 

 先生は賢者のように穏やかな顔を浮かべ、天を仰いでいた。もう終わってもいい、と言わんばかりの昇天であった。

 しかし、天は先生を見放してはいなかった。ヒフミが取り出したぬいぐるみが珍しかったのか、他のみんなの視線はそちらへと向かっていた。その間に表情を整え、なんとか誤魔化す。大人として――無様な姿は見せられないから。

 なお、物陰から覗いていたモナはバッチリ見ていたしドン引きしていた。でも、無駄な美化がされなくなってむしろ良かったのかもしれない。良かったということにしておきたい。モナは心からそう願っていた。

 

「これなんですけど……ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!限定生産で100体しか作られてないグッズなんですよ!とってもレアなんです!」

 

 そう言って差し出されたぬいぐるみは、なんとも面妖な見た目をしていた。ニワトリともペンギンとも見えるシルエットに、アイスが口の中に詰め込まれ、コーンがまるで鼻のように飛び出ていた。口から溢れるアイスの端から下がまろび出て、気絶しているかのように白目を剥くその姿は、奇妙な感覚を齎すことだろう。

 

「ね、可愛いでしょう?」

「「……」」

 

 その場にいたほとんどの面々は、言葉に困っていた。可愛さは多少あるのかもしれないが、それらを凌駕する狂気のようなパーツによって諸手を挙げて可愛いとは言えなくなっていた。周りをみても同じような感想に至ったものが大半で、少しばかり安堵していた。これが少数派だったなら、きっと困惑は隠せなかっただろう。

 だが、そんなユニークな人形にも理解を示すものは居るものだ。

 

「わあ☆モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねぇ!私はミスター・ニコライが好きなんです」

「分かります!ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて……最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ!それも初版で!」

 

先生の傍で囁いていたノノミは、同好の士と会えたのが嬉しかったのかヒフミと手を取り合い存分に語り合っていた。先程まで先生を誘惑していたとは思えない程、ファンシーな空間が出来上がっていた。

 

「……いやぁー何の話だか、おじさんにはさっぱりだなー」

「ホシノ先輩はこういうファンシー系に全く興味ないでしょ」

「ふむ、最近の若いやつにはついていけん」

「歳の差、ほぼないじゃん……」

 

 自らをおじさんと呼称する少女、ホシノはけらけらと笑っていた。先生はそんなホシノを見て、「私もついていけないなぁ」と呟く。世代が違うのだからしょうがない、という事実は言わないお約束だ。先生は何時までも――青春を忘れていないのだから。

 

「というわけで、グッズを買いにきたのですが、先程の人たちに絡まれて……皆さんが居なかったら今頃どうなっていたことやら」

「こんなのが横行してるのかしら、ブラックマーケットって……」

「そ、そうですね……ところで、アビドスの皆さんはなぜこちらへ?」

「私たちも似たようなもんだよ。探し物があるんだー」

「そう、今は生産されていなくて手に入れにくい物なんだけど、ここにあるって話を聞いて」

「そうなんですか、似たような感じなんですね」

 

 そこまで話した時、不意にアヤネの端末がアラームを鳴らす。

 

「これは……皆さん、大変です!四方から武装した人たちが向かってきています!」

「何っ!?」

 

 端末から鳴らされたのは、彼女たちの頭上で周囲を警戒していたドローンからだ。ブラックマーケットは何が起きるか分からないから、と事前に先生から要請されて浮かべていたのだ。ちなみにモナは敵性意思もなく、銃も構えていないので引っかかっていない。アビドスの技術力では、今の所これが限界であった。

 

「みんな、戦闘準備を。あそこで迎え撃つよ」

 

 そういって先生が指差したのは、左右を遮蔽に挟まれ、背後もしっかりと防げる場所だった。爆発物でも投げ込まれれば危険なことになるが、幸い奥にドアがあるので退避も簡単だ。アヤネのドローンにドアの先を監視してもらい、いざという時の退避場所にする。

 迅速に構築される陣地に、初めて見たヒフミは驚きっぱなしである。

 

「居た、アイツ等だ!」

「よくもやってくれたな!痛い目にあわせてやるぜ!」

「先ほど撃退したチンピラの仲間のようです!完全に敵対モードです!」

「望むところ」

「全く、なんでこんなのばっかり絡んでくるんだろうね?私たち、何か悪いことした?」

「愚痴は後にして……応戦しましょう、皆さん!」

 





・「あっおい待てい!」
 (淫夢要素は)ないです。

・「うぐぇっ!?」「げぶぇっ!?」
 中身はでていない。

・ギャルのパ(ry
 七つの特殊なボールを集めると貰えるらしい

・ノノミ
 かーっ!見んねセリカ!卑しか女ばい!

・先生
 こういう人です。
 先生の性別は不詳です。お好きな方で想像してください。文章的にはどっちともとれる……はずです。

・モナ
 ドン引きです。
 でも嫌いにはなってないらしい。
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