今見ているこれもきっと夢なのだろう。
千葉県千葉市、総武高校。
学校の周りの街道に咲く、満開の桜の花弁も、徐々に散り始めるであろうかという時期。
二年目のクラスにもようやく慣れる……というわけでもないのだが、ある程度クラスメートたちの立ち位置が決まり始めた今日この頃。
「よし、来たな。早速だが、君。部活動に入ってみる気はないかね」
俺は現国の担当教師である平塚静によって、職員室へと呼び出されていた。
そして、顔を合わせて一番に告げられた言葉がこれであった。
「部活動、ですか」
「なんだ、不満かね?」
彼女は俺にこんな反応をされるとは思っていなかったのか、不思議そうにこちらを見てくる。正直なところ、不満よりも、突然告げられたこともあって疑問の方が多かった。
当然、不満がないわけではない、寧ろ大いにあると言えよう。なにせ教師から頼まれてはいる部活動なんぞ、厄介事が目に見えている。大口開けて開く地獄の釜に誰が好き好んで飛び込むのだろうか。少なくとも、俺は御免である。
「失礼ながら、その通りです」
「ふむ……そうか、なかなか正直だな。だがね、田島。君にとってもこの提案は悪い話ではないだろう。体調を崩して休みがちな君にとって内申点がプラスになるのは悪くないと思うが?」
「そうは言われましても……」
さて、部活ときたか。
内申点がプラスになると言われても、一切の興味関心がわかなかった。どう考えても碌なものではないし、面倒極まりない。そもそも、俺は成績は悪くない。
しかし、ならば上手く断って見せよと言われれば、それをすんなりと行動に移せるだけの口実や動機がなかった。実際、部活動に所属していない俺は、暇ではあるのだし。
当然、餓鬼の言い訳じみた物言いでは、目の前で腕を組む女教師を納得させるだけのものがない。下手に喋ればこちらが言い負かされるのは目に見えている。伊達に現国の教師をやっていないのである。
この状況をどう切り抜けるべきかと思案している俺に、平塚先生はこう続けた。
「実は最近、私が顧問をすることになったある部活動を設立してね。君にはそこに所属してもらいたいんだ」
「あまり気乗りはしませんね……」
「ちなみに、奉仕部という。どうだ、イケてるだろう?」
イケてるかどうかで言えば、俺の感性によるものなのだから断言は出来ないが、多分イケてない。……恐らくだが。口にはしないで、曖昧に笑うことで流しておくことにした。
しかし奉仕部か。聞いたことも、見たこともない。新しく設立したのだからそうなのだろうが、一般的な部活動でイメージされるものにはなさそうだ。
奉仕という名を冠しているのだから、ボランティア的活動を主としているのだろうか。それとも、いかがわしい意味での奉仕。メイドとか、俺らの年齢にはまだ早いこととか。そういうのだな。しかし、彼女は曲がりなりにも生活指導担当である。スカートが短いだのなんだのと注意している人間が、そんな部活を設立するとは思えない。
であるならば前者なのだろう。とすれば、ますますやる気がなくなった。自分でも言うのあれだが、ボランティアなんぞ柄じゃない。
なんにせよ、入部したいとは到底思えない部活動であることは間違いなかった。
「……イケてないのか?」
「ノーコメントで。とはいえ、奉仕部だかなんだか知りませんが、他を当たって下さい。ぼくは特に部活に興味はないです。放課後の時間を取られるのも好ましくはありませんし」
俺は不安そうにこちらを見る先生に、嘆息しながら、その申し出を拒否した。
「何故だ?確か君は、放課後を共に過ごすような友人を作っていなかったと記憶しているが」
まるで俺の孤独性を周知の事実であるかのように告げられる。いや確かに事実ではあるし、俺がそうあるように生きているのだから、仕方がないのことであるが、それを生徒に言うのか。
「いや、仮にも教職だろうに……。失礼、確かにそれは事実ですが、それとこれはまた別の話です。それに、先生はぼくに強制入部をさせる理由もないでしょう。あくまで提案であるならば───」
「では、あると言ったら君はどうするかね」
「……その内容次第、でしょうか」
口から出た返答は、生じ苦し紛れでしかなかった。
平塚先生が俺に強制を命じる理由。それについての心当たりは、ないかと言われればある。いや、大いにある。
困った。途端に、断る口実も、理由も見失ってしまった。
さながら、新宿駅で迷った田舎者の如く困り果てた俺の様子を見て、平塚先生はなんだか面白そうに、ニヤリと笑い、長い足を組み直した。
「心当たりがあるという顔だな?まぁ、君の心が読めるわけではないが、きっとそれで正解だよ。君は私に借りがある。それを、返してもらう時というわけだ。教師と生徒の関係性で貸し借りを持ち込むのは、健全ではないというのはわかっているがね」
「あぁ……。まぁ、はい。そうですね。それを言われると、ぼくはもう何も。確かに、ぼくはあの時『なんでもする』そう言いましたからね」
よく覚えているとも。
何せ、入学してから数週間の出来事だから。しかもそうなった原因は俺だ。貸し借りと言われても仕方がなかった。
「よく覚えてるな」
「自分から言ったことですから。……分かりました、その奉仕部とやら、ぼくで良ければ入らせて頂きます」
「よろしい。まぁこのままごねるようであれば、私のピストルのように強いパンチが出るとこだったがね」
「はぁ、そうですか」
思わず口からため息が漏れてしまうのは許して欲しい。その話を出されると俺は強く出れない。
とはいえ、その貸し借りが今回の入部でチャラになるならば入るというのもやぶさかではない。
どうせここでグダグダと逃げる口実を探しても、平塚先生は大人しく逃げさせてはくれなさそうだ。
ノコノコと職員室まで来たのが悪かったか。そんな諦めが伝わったのか平塚先生は満足そうに頷いた。
「君のその光のない目からより一層光がなくなってしまったな。では部室に案内するから着いてきたまえ」
そう告げた後、席から立ちあがった彼女は職員室の外へと向かっていた。すぐにその後を追いかける。
実に厄介なことになった。これもある意味で自業自得か。過去の俺を恨むべきか、それとも世界を八つ当たりとして恨んでおくべきか。いや、どちらでもないか。全く、実に度し難い。
再度口から出てしまったため息が、平塚先生と自分の足音だけが響く廊下では、やけに大きく聞こえて、行き場を見失ってどこかへと消えていった。
◇
平塚先生を追いかけることはや数分。渡り廊下を抜けて特別棟へと向かう。ちらりと窓から見える中庭を覗けば、放課後ではあるが未だにチラホラと生徒が見受けられる。
中庭は我が校において、生徒達の憩いの場だ。俺のような人間には到底縁のない場所ではあるが、彼ら青春を生きる者たちにとっては必須のスポットだろう。蒸し暑い夏だろうと、凍えるような冬であろうとそこに集まっているのだから、恐らく彼らにとってのセーフゾーンなのかもしれない。
HPとかMPとか回復しているのかもしれないな。もしかしたら俺の精神的なダメージも回復する可能性だってある。すればいいな。
そんなどうでも良いことを考えていれば、平塚先生が顔だけこちらに振り返る。
「着いたぞ」
そう言った平塚先生の前にあるのは何の変哲もない空き教室。つまりここが部室ということだろう。プレートまでないとなると、奉仕部とやらは本当につい最近設立したばかりらしい。
何も言わず部室であろう教室を観察してる俺に、平塚先生もまた無言のまま教室の扉を開けた。ノックはしてないようだが、部員はいないのだろうか。
教室の中は空き教室らしく教室の隅には机と椅子が乱雑に積み上げられており、他には何も無い普通の教室。しかしながら、一番最初に目につくのはそこではなかった。
その何の変哲もない教室の中、それはあまりにも場違いな存在。窓辺の近くで1人読書に耽ける少女。黒髪ロングの見目麗しい少女で、その儚さは場違いな筈なのに、何故かこの教室とマッチしているように感じてしまう。まるで一つの絵画、芸術作品のような光景に思わず嫌気がさす。場違いなのは、俺の方だったかもしれない。
どうやら彼女は奉仕部とやらの部員のようだ。となると先程のノックの件は平塚先生が単に非常識なだけらしい。
しかしこの少女、見覚えのある顔だ。どこで見たのだったか。思い出そうと四苦八苦している俺の疑問を他所に少女が口を開けた。
「平塚先生。入る時はノックをお願いします」
「すまんすまん。次からは気をつけるよ」
少女は、自身の注意を笑って流す平塚先生に呆れた様子を見せたあと、その視線をちらりとこちらへと向けた。
「それで、そちらの覇気のない男は?まさかとは思いますが.........」
「そのまさかだ。彼は田島 実、前に言った新入部員だよ」
どうやら事前に説明があったらしく、彼女は納得したような、しかし嫌そうな顔をして頷く。
見るからに歓迎はされていないのがよく分かる。事前に聞かされていたとはいえ、男と二人っきりになる可能性があるのは女として嫌だ、ということだろうか。気持ちは分かる。とはいえ、紹介されたのならば名乗らねばなるまい。
「ただいま紹介に預かった、2年E組田島 実だ。どうぞよろしく」
仰々しく礼をしながら自己紹介をしてみると、目の前の少女は先程よりも更に嫌そうな顔をしながら平塚先生の方を見る。
「.........本気で、この男が?」
「生憎と、私の権限で強制入部に出来そうなのがこの男しかいなくてね。何、彼は問題児ではあるが信頼も信用もできる。少なくとも君が思ってるような事はしない男だ」
「.........あまり信用できませんね、特にその光のない死んだ目が。まるで知性のない犯罪者のように思えます」
こちらの目を見れば、体を抱きしめて身動ぎする。どんなことを思われているか、想像に難くない。しかしながら、俺はこの少女に欲情することなど万が一も有り得ない。主に……いや、女性に対して身体的特徴を揶揄すると殺されるので口には出すのはやめておこう。
「だ、そうだ。何かいいたいことはあるかね?」
「……随分信頼がないものですね、ぼくの目は」
「日頃の行いが悪いということだろう。ともあれ、これは決定事項だ雪ノ下。君がなんて言おうが彼はこれから奉仕部員だ」
「.........はぁ、平塚先生がそう仰るのであればこれ以上反対したところで無意味でしょう。分かりました」
雪ノ下と呼ばれた少女は渋々と嫌々に、全くもって納得する気は無いが心底嫌そうにして了承した。
雪ノ下と聞いてようやく既視感の正体が判明した。この総武高校の二年生の中でも一際目立ち、注目されている少女。首席で入学した彼女が、入学式でスピーチを行っていたのはさすがの俺でも覚えている。
さらに言えば眉目秀麗と呼ぶべき彼女の事は嫌でも耳に入ってくるのだ。そんな女の話は一年生の頃から二年生の現在に至るまでずっとされていて、あまり噂に興味のない俺ですら聞いたことあるほどだ。
そんな清楚やら品行方正、質実剛健であり慈愛に満ちたマザーテレサの生まれ変わりと呼ばれていた彼女だが……どうにも聞いていた話とは違う。少なくとも初対面の相手を性犯罪者扱いするような性格ではなかった筈だ。確か優しさの権化だとか、思いやりの極みだとか、そんな話だったか。まあ所詮噂は噂、ということだろう。随分尾ひれやら余計なものが着いているものだ。
雪ノ下の返答に平塚先生は満足したかのように大き頷く。
「そうか。実はこの時期私も暇ではなくてね、後のことは2人で頼んだよ」
そう言い残し平塚先生は白衣を翻し去っていく。
さして時間は経ってないがそれでも妙な疲労感が身体を支配する。平塚先生との会話は精神的な疲労を感じやすいらしい。
「悪いが座っても?」
「どうぞ」
了承を貰えば、近くにあった椅子を適当に掴み取り腰掛ける。
相変わらず学校でしか使われていないこの手の椅子は座り心地が最悪だ。硬く低く、座っていても疲れが取れるとは到底思えない。こんな椅子で小中合わせて10年は過ごしているのだから、慣れというものは怖い。
さて、何はともあれ色々と部活について聞く必要があるな。一息つき余裕が出来たのでようやく雪ノ下の方を見据える。
「それで、色々聞かせてもらうとしようか。部長殿」
「あら、もう上下関係を理解しているのね。その理解能力の高さには感服するわ。いいでしょう、何が聞きたいのかしら」
先程から思ってはいたが随分と失礼な女だな。こちらとしてもやられっぱなしというのも性にあわないが……ここで目くじらを立てるのは、勘だが不味い気がする。
今はあくまでも冷静に彼女と接する必要があるだろう。扱いがまるで猛獣と接する時のようだ。感覚的にはネコ科かな。
「........まぁそういうことでいい。それで、だ。現状、俺は部活動の名前については平塚先生から聞かされているから知っている。しかし奉仕部、とやらが何を目的に活動するのかは聞かされていない。単なる人助けという訳じゃないのだろう?」
「なぜそう思うのかしら」
「それなら別のネーミングでもいい。お悩み相談部とか他にも色々とあるだろう。しかしわざわざ『奉仕』という単語を選ぶんだからな。それ相応の意味が込められてるとみた」
「それで?」
「そうだな……ただその場を解決するのではなく、その人間の人生の為に救いの手を差し伸べる、正しく文字通りの奉仕の精神。転じて奉仕部。その辺か?」
「……驚いた、意外と頭は回るようね」
本当に驚いたようで、目を丸くした後に微笑んだ。その笑みがあまりにも人の神経を逆撫でするようなものなのだから、ある意味で魔性だな。天性の煽りの才能と言ってもいい。
「平塚先生曰く、優れた人間は人を救う義務があるそうよ。自己変革を促し、人の悩みを解決する。要するに私たちはあくまでその悩みの解決にきっかけを与えるのであり、解決するのはその依頼人自身ということ。わかったかしら?」
「なるほど、やはりボランティア───だから奉仕部か。分かりやすくて結構だ」
思わず毒づいてしまう。あまりに俺という人間とはかけ離れた思想だ。俺たちのやり方次第で、依頼人は悩みを解決できるか否か決まる。つまり依頼人の人生の責任を持つ必要があるということになる。俺には他人の今後の人生の責任なんぞ持てん。
少なくとも堂々と宣言できるこの女と違って、俺は真人間ではない。他者の為に行動するというのは、ひねくれ者の俺にとって雲を掴むより難しい話だった。
だから平塚先生曰くの言葉も、俺には相応しくない。
「……しかし、優れた人間か。お前はともかく、俺自身は何か優れているところがあるという自負がある訳じゃ無い。周りからも到底そうは思われていないだろう」
生まれた時から才能と運には恵まれなかった。生まれが悪いとかではなかったが、そういう天命だったのだろうと諦めている。望むのもを得られず、失ってばかりの人生だった。だからこそ俺が誰かより優れているなんて、到底思えないのだ。
そんな俺の思考とは裏腹に、雪ノ下はこちらを軽蔑するように見てくる。
「ふうん、その自覚はあるのね、珍しい。あなたみたいな男は自分が優れているという、小さなプライドがあるものだと思ったのだけれど」
「生憎とプライドなんぞドブ川に落としてしまってな。今や見た目にそぐわない己の矮小さを受け止めるだけの日々だよ」
「見た目以上に暗いのね。軽蔑するわ」
「大いに結構。これが俺という人間だ。勝手にするがいい、変わることも──いや、待てよ。まさかそれが目的か?」
確か『自己変革を促し、悩みを解決する』だったか。確かにその可能性は大いにある。もしそうならば俺は平塚先生に、この部活を通してなにかしら変わることを期待されているのだろうか。
だが俺にそれを求めるのは酷な話だ。なにしろ、俺のようなひねくれものが変わるにはまだ時間が必要なのだ。
「なにか気づいたことでも?」
「いや........少し穿って考えすぎたか。彼女がそこまで考えているとは到底思えん。その場のノリで行動するような人間だろうからな」
「それは否定しないわ」
そう言って少し微笑む雪ノ下。今日初めて笑った気がするな。しかし普段の冷たい表情を考えれば、これは嘲笑と呼んだ方がふさわしいかもしれない。とはいえ、年頃の少女らしい柔らかな笑みは、相手が相手なら勘違いさせてもおかしくはないな。ギャップ萌え、というやつか。
そんなことを呑気に考えていると、雪ノ下から鋭い視線が飛んできた。
「そんなにジロジロ見ないで貰えるかしら。あなたの目でそう長い間見られると、とても不快だわ」
「これから約二年同じ部活でやっていくんだ、これにも慣れてくれ。さもなければ困るのはお前だぞ」
「......到底無理な話ね。きっと私は生涯あなたのその死んだ目を不快に思い続けると思うわ」
「やめろ、面と向かって言うな。死にたくなる」
自覚はしているのだ、自覚は。この女と喋ると、ひたすらにこちらの精神が削られていくのは何故なのだろうか。RPGのように毒沼の中をひたすらに進軍しているわけでもないのだから。
これ以上この件について喋ってると二度とこの部活に来ようと思えなくなってくる。話を変えるとしよう。
「あー......そう、お前は部長なんだろ?」
「あまりそういう意識はしてなかったのだけれど、役職をつけるのであればそうなるわ」
「となると、やはり俺が副部長か?」
「入った順番でならそうなるわね。でも、それを認めるにはあなたは少し風格が足りてないのではないかしら」
「否定はしない。俺なんぞ、見たまんまのどこにでもいる平凡な男だ」
「その目つきはあまり平凡とは言い難いわね」
「黙れ、一々人のコンプレックスを刺激するなと、親から教わらなかったのか?」
「……教わった事などないわ。私は優れているから」
「……そうかよ」
妙な間があったが、話は平行線だな。話にならない。こいつとまともに会話するには余程の器の持ち主じゃないと難しそうだ。
「まあいい。話を戻そうか。部として存続するとなるといずれ部員も入ってくるだろう?ならやはり俺は副部長としておくと部活動としても示しがつく。なに、入った順ならば誰も文句は言わない」
「妙に副部長に拘るわね......」
「なんとなくだ」
というのは建前だ。
今後なにか面倒な事がある時に、部長が誰か決めておけば責任逃れが出来るからな。対等な関係より上下関係がしっかりある方が楽な時がある。この女は見た目通り責任感は強そうだからな。そういう責任逃れができる余地を残しつつ、副部長という肩書きを振りかざすのも悪くはないだろう。肩書きを持つことによって増える多少のデメリットは必要経費と考えるしないが。
「まあ、別になんでもいいわ。そもそも、私の一存で決められる訳でもないし、あなたよりも私が全て上なのは間違いないのだから」
「そうか、最後の言葉は聞かなかったことにしてやる。そういう訳でこれから約2年間よろしくお願いしようか?雪ノ下部長殿」
そう言って立ち上がり、握手を求める。しかし冷酷無慈悲な鉄の女、雪ノ下雪乃は、ピシャリと俺の友好の印を跳ね除けこう続ける。
「ええ。本当は全く宜しくなんてしたくはないのだけれどね。でもね田島くん。私は部長として、あなたを歓迎する責務があるもの。だからあなたを歓迎するわ」
「……歓迎の気持ちがあるなら、少しはその冷笑に温かみでも持たせてくれ」
「お生憎様、これが精一杯なの。ごめんなさいね?」
「……そうかい」
そう言って立ち上がって見上げながらも、間違いなく俺を見下す雪ノ下は、本日2度目の微笑みを見せる。しかしその目は全く笑っておらず、嘲りすら感じるほどには冷ややかなものである。
彼女の堂々とした姿に、俺はそんな短い返答しか出来ず、跳ね除けられた手をさすることしか出来ないのが情けない。
これからこの女と部活動をしなければならないと考えると、酷く憂鬱でしかなかった。
時系列的には比企谷奉仕部入部前で、時期は四月半ばから下旬頃を想定しています。
この作品のメインヒロインを誰だと捉えてますか?
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雪ノ下
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一色いろは
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鶴見留美
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松山千佳子
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材木座義輝
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戸部翔