先導の英雄   作:無銘のヲタク

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冒険の始まり

 

 

 

『神時代』

 

 

 

これは天界より娯楽と未知を求めて降り立った不変不滅の【超越存在(デウス・デア)】、いわゆる神と呼ばれる存在が下界に降り立った時代を差したもの。

 

彼らは下界に降り立った際に自らの『神の力』を封印した。

 

ただ神の絶対的な力で発展する世界に価値はなく、神の娯楽に飢えた心を満たすことはできない。

 

それに、世界とは自分達神の手によって作られていくものではない、人間という矮小な存在が精進し積み重ねられていくものなのだから。

 

代わりに神達は子供たちに自分達で下界に蔓延る怪物(モンスター)へ対抗する力として『神の恩恵(ファルナ)』を授けた。

 

自身の冒険を『経験値(エクセリア)』とし、力とすることで怪物達を倒す者達を人々は『冒険者』と呼び、世界は冒険者を中心に発展を遂げていった。

 

 

 

 

では、ここで一つ疑問を投げ掛けよう。

 

『神時代』以前の下界は一体どんな有様だったのか?

 

 

 

 

答えは怪物達による()()()()である。

 

神の力を宿さぬ下界の人々など容易く怪物の手によって命を落としてきた。そんな時代の人々は自身の無力に絶望する者ばかりであり、ただ徒に滅ぼされるのを黙ってみる者さえいた。

 

だが、そんな苦境において『彼ら』はその無力に抗い、自身の倍以上の身の丈を持つような強大な敵に立ち向かった────

 

 

 

 

そんな彼らを皆はこう呼んだのだ─────『英雄』と。

 

 

 

 

彼らは『神の恩恵』を持たずとも、モンスターに立ち向かい、常人では実現不可能な『冒険』と『超克』を繰り返し、下界の人々に希望を示した。そんな彼らの物語は『英雄譚』として『神時代』の今も語り継がれている。

 

この物語はそんな『英雄譚』の()()と言えるものかもしれない。

 

かつての『英雄』の影を追う『彼』は『神時代』に一体何をもたらすのか…この物語を読む者達には是非最後まで見届けていただこう。

 

────────────────────

 

多くの冒険者達が行き交う大都市。オラリオ。

 

その都市の周りを囲うようにして聳え立つ石壁。それを前に一人の男が御者に礼を告げて荷台から地面に降り立つと、大都市への入口となる大きな門を見上げる。

 

「ここがオラリオか...なんか懐かしいなぁ…」

 

その青年は短くも綺麗な黒髪にサファイアのような蒼き瞳を宿し、服装は白と黒が混ざった甚平、おまけに腰には一振りの刀が差してあり、いかにも極東出身であるのが見てとれる風体であった。

 

「せっかくだし、着いた記念に()()みたく日記でもつけてみるか?

 

では綴ろう英雄日誌!青年「レイ・オーガ」は迷宮都市オラリオを見て、かつての楽園を思い出し武者震いを起こすと共にこれから始まる自分の冒険にワクワクが止められないよ!キラッ

 

ってか?うーん...ないな!やめよう。これを後でみたときに背筋がゾワゾワしそうだ」

 

かつての友を真似るように大仰に綴るが、恥ずかしくなり、手に持ったペンと手帳をしまって、それから都市の検問所の列の最後尾に並ぶ。

 

前の方を見ると、馬車に乗った行商人だったりやたらガタイのいい剣士だったり、多種多様な人がぞろぞろ並んでいる。

 

まぁ、オラリオみたいな中心地だ、そりゃ金や名声欲しさに集まる奴らは五万といるよなぁ…あ、俺の番だ。

 

入場受付の人に軽く挨拶をして、自分がここに来た目的等を書いた書類を渡す。それを見た門番の人が少し渋い顔をする。

 

「君は冒険者志望なのか…まったく、よりにもよってなんでこの時期なのか…」

「なんか今あるんですか?」

「今のオラリオは闇派閥が多くできて、治安が悪くなっていてね。オレも不審な人物を通さないように気を張ってるんだよ」

「へぇ」

 

時代が変わっても世界の中心でなんか揉め事が起きるのは変わらねぇのな。闇討ち、暗躍なんて面倒事は懲り懲りなんだが…

 

「それで、検問は終わりですか?」

「待ってくれ。最後に背中に神の恩恵(ファルナ)が刻まれてるかどうか確認させてくれ」

「…わかりました〜」

 

そう言われて俺は背中全体が見えるように服を捲った。

 

「よし、神の恩恵は刻まれてないな。行っていいぞ、くれぐれも事件に巻き込まれないようにな」

「ご丁寧にどうも、それじゃ門番さんもお仕事頑張って下さいねぇ」

 

服装を整えた俺は門番に感謝をつげてオラリオ内部に入る……甚平で背中に顕れた()()()()()()()()()を隠しながら…

 

──────────────────────

 

「犬人、猫人、小人族…おーエルフもいるじゃん。やっぱりエルフはいいねぇ、別嬪さんばっかだ。フィーナも可愛いは可愛いんだけど、いまいち容姿云々より魔法ぶっ放されてた記憶しかないからなぁ……このリンゴ美味っ」

 

入口を抜けた先には食料を売っていたり、武器を売っていたりしている店などの多くの建物が連立していて、さらには人に関しても職業だけじゃなくて、種族もたくさんいることに又もや既視感を感じつつ、露店で買ったリンゴを齧りながら都市の中心へと歩みを進める。

 

 

 

 

「────どけぇ!ごらぁ!!」

 

 

 

 

色々見物しながらと街を歩いていると、突然叫び声が聞こえてきて、そこに顔を向けると何やら必死な形相で逃げている様子の男が俺のいる方向に走り寄ってくる。

 

うわぁ、なんだあのおっさん、顔怖。こっち来ないでくれ、おっさんはお断りだ。

 

そんなことを考えていると、今度はその男の後ろから女性が男を呼び止めるような声が聞こえてくる。

 

「そこの男、止まりなさい!」

「そうよ、観念してお縄につきなさい!」

 

お!女の子は大歓迎だぜ!でもなんか一人聞き覚えがあるような……

 

「ちっ!このままじゃ捕まっちまう、なら...」

 

なにを考えたのかその男はレイに近づいて来た。

 

「は?」

 

想定外の事態に困惑してるのも束の間、男は俺の両腕を拘束して首にナイフを添える。

 

おぉ、見事な手際。人質になっちゃった………なんで?

 

「動くな!『正義』のファミリアの女ども!動いたらこいつの命はねぇぞ!」

「あらやだ、リオンどうしましょう。人質取られちゃったわ」

「アリーゼ、そんな呑気な...はぁ、貴様!その人を離して、盗んだお金を返せ!」

 

そういう彼女たちは先程の声の主のようだ、一人は赤い髪をひとつにまとめてポニーテールした女性、もう一人は綺麗な金髪をしたエルフだった。そして重要なのがどちらも見目麗しい美少女だった!もう一度言おう美少女だった!

 

おお!最初の出会いが美人とか最高だぜ……ん?なんかあっちの人…リュールゥにすげぇ似てるな。まだ女性と決めつけるには早計か……

 

目の前の嘗ての吟遊詩人に容姿がよく似た人を見て、その人の性別について思考を巡らせる。

 

「うるせぇ!てめぇらみたいに強い奴らと違って俺みたいなのはこういう手段を使わねぇと生きていけないんだよ!」

「貴様が盗んだ金は貴様と違いちゃんと生活している人が手に入れた金だ!どんな理由があろうとも盗みを働いていい理由にはならない!」

 

ぐうの音も出ないド正論だな。

 

「ぐぅっ!」

 

......ぐぅ、出たな。

 

金髪のエルフが男に対して説得(説教か?)をしているのを見ていると、男はその言葉に苛立ったのかナイフを少し強く押し当ててくる。

 

「黙れ黙れ!いいから俺から離れろ!この男を殺すぞ!」

「────わかった、わかったから。離れるから落ち着きなさい」

「アリーゼ!?」

「あんまり、刺激するとあの人が何するかわかったもんじゃないわ。今は相手の命令に従いましょう」

「くっ!」

 

痺れを切らした男が威圧すると二人の女性は俺と男から距離を取っていく。

 

「ははっそれでいいんだよ」

 

そうして男が自分の周りを威嚇しながら逃げる準備を始める。俺はそこで周りから人が離れていってるのを確認する。

 

このくらい距離取れてるなら…もういいかな。

 

 

 

「────なぁ、おっさん。俺これいつまでやってればいいの?」

 

 

 

「……あァ?」

 

いきなり喋り始めた俺に男も、それを追っていた二人も驚いた表情を浮かべる中、俺は首に当てられた刃を指して話しを続ける。

 

「そろそろ(これ)どけてくれない?」

「なにゴチャゴチャ言ってんだ!いいから大人しくしてろっ!」

「でもさぁ…俺さっきここに来たばっかなのにこんな目に遭ってるなんて、可哀想じゃない?」

「知るかっ!黙って大人しくしとかねぇと殺すぞ!」

 

男は黙らせようとしたのか、手に持ったナイフを俺の首元に近づける。

 

「はぁ…そんなおっかないこと言ってないで自首しようぜ?このまま逃げてもどうせ捕まるって。今なら罪が多少軽くなるように俺も言うからさぁ...」

 

俺が何とか男を説得しようとしていると、男の方が苛立ちを表すように小刻みに震え始める。

 

よし、()()()()かな?

 

 

「…うるせえなぁ...!もういい、ここで死ねやぁ!」

 

 

そして、ついに男は業を煮やしたのか、俺の身体に向けて手に持ったナイフを振りかぶる。

 

「あ、待って!」「まずい!」と二人が俺という人質が突如殺さるのを察知し動こうとする。その瞬間────

 

 

 

 

「ガッ!?」

 

 

 

「「え…」」

 

男の身体は俺に組みしかれ、苦悶の表情を浮かべた様子で地面に倒れ伏していた。

 

 

「なっ、てめぇ何を──「おい」」

 

 

俺は倒れている男の顔の横にさっきのナイフを突き立てる。すると男は怯えたように「ひっ…?!」と声を漏らす。こんなことでビビるくらいなら最初からやらないでほしいものだ。

 

「ったく…さっき門番さんに、事件に巻き込まれないようにって言われたばっかなのに。だが、あんたも災難だったな。よりにもよって人質にしたのがこの俺で」

 

俺はちょっとかっこつけて、目の前の男にそう告げる。

 

フッ…決まったな…!!

 

 

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