先導の英雄   作:無銘のヲタク

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RiNeさん、アイアンスローンさん、¥¥さん、ざっしさん、へきとらさん評価、ゆめぴんくるすさん評価・感想ありがとうございます!
今回から少しアストレアレコード始まります。


物語の始まり

 

俺が【アストレア・ファミリア】に入団してから、早いもので二週間程過ぎた。

 

この短期間の間、俺の日常は劇的に変化した。ダンジョン帰りにアイズとオラリオの街を警邏がてら散策したり、名物のジャガ丸くんを一緒に頬張ったりと、平穏(?)で充実した日々を送っている。

 

…まあ、一番の事件と言えば、風呂の時間を間違えて突撃したら、輝夜達に半殺しにされかけたことだ。あれはやばかったなぁ…今世で一番身の危険を感じた。

 

ともあれ、そんな修羅場を乗り越えつつ、着々とファミリアの仲間として馴染めてきた今日この頃。今俺が何をしているかと言えば────

 

 

「アリーゼ!三番倉庫、制圧した!」

「そのまま四番まで制圧!先の区画まで押さえて!」

「了解!」

 

俺たちは今、ガネーシャ・ファミリアからの要請を受け、都市を脅かす【闇派閥(イヴィルス)】の襲撃制圧任務に就いていた。

俺にとってはこれが初めての闇派閥との実戦。敵の本命の相手は実力者である輝夜とリューに任されている。

 

「足を引っ張るなよポンコツエルフ」

「抜かせ!」

 

疾走する二人の正面から、黒い装束に身を包んだ闇派閥の構成員が次々と姿を現す。だが、あいつらの前では数など無意味に等しかった。

 

「ふっ!」

 

「はぁ!」

 

「「「「「ぐわぁぁぁ!」」」」」

 

輝夜とリューの二人が先行し、後からライラも合流してからも電光石火の早業で、敵を瞬く間に沈黙させる。

 

「なんとも手応えのない相手だ。期待外れもいいところだな」

「所詮は数だけを頼みにした烏合の衆、ということでしょう」

 

静まり返る戦場。終わったか、と全員が安堵の息を吐きかけたその瞬間だった。

 

 

 

「おのれぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

狂乱した叫びと共に、建物が激しく揺れるほどの爆発が巻き起こった。

 

「なっ!爆撃!?伏兵か!」

「不味ぃぞ。あっちにはアリーゼたちが────」

 

燃え盛る炎と黒煙。しかし、爆風が直撃したはずの場所に人の気配はない。

 

「なっ!いない!?」

「悪いな」

「がっ…!?」

 

背後から放たれた言葉に、男が振り向く隙も与えない。

俺は動揺する構成員の脳天に刀の柄を叩き込み、一撃で意識を刈り取った。

 

「そう簡単にうちの団長様は傷つけさせないぜ」

「ね、ねぇレイ?もう放しても大丈夫じゃない?」

「ん?あぁ悪い」

 

咄嗟の判断で、爆心地の近くに居たアリーゼを守るために、腰を持って抱き寄せていた彼女の体から手を放す。

 

「コ、コホン!【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】の二つ名を持つこの私に爆撃なんて笑止ね!」

 

ぱっと身を離すと、アリーゼは頬を朱に染めながら、わざとらしい咳払いをして胸を張った。

 

「あの団長照れてるのを無理やり誤魔化してるぞ」

「団長様お顔が真っ赤でいらっしゃいますよ?」

「二人共アリーゼをからかうのはやめろ!アリーゼはそ、その、あんまり男性経験がなくて慣れていないだけだ!」

「リオン、それ擁護できてねぇぞ」

「なんだアリーゼ照れてんのか?かわいい奴め〜」

「うぅ〜〜〜!!!」

 

恥ずかしさを顔を手で覆って隠しているアリーゼをからかっていれば…

 

 

「お前たちはなにをやっているんだ...」

 

 

呆れ果てたような溜息と共に、仮面をつけた団員たちを引き連れた青髪の女性が現れる。

 

「あ、シャクティ!」

 

彼女の名はシャクティ・ヴァルマ。ガネーシャファミリアの団長にしてレベル4の第二級冒険者だ。

ヴァルマという名からわかる通り、あのアーディの姉である。

姉妹揃って美人だが、妹とは対照的に生真面目で厳格。その隙のなさゆえか、浮いた話の一つも聞かない女性だ。

 

「(行き遅れそうだなこの人…)」

「おい、レイ。何か失礼なことを考えてないか?」

「シャクティに貰い手がいないなら、俺が貰おうかな、と」

「死ぬか?」

「すいません!」

 

向けられた鋭い眼光に、俺は光速で頭を下げた。

 

「はぁ、まぁいい。アストレアファミリア、助力に感謝する。あとはこちらが対処しよう。行くぞ!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

──────────────────────

 

その後、ガネーシャ・ファミリアの手によって闇派閥の残党は全て鎮圧され、工場の火災も無事消し止められた。

 

「たく、これで何回目だよ。いい加減面倒臭くなってきたぜ」

「魔石工場の襲撃はこれで4回目、連中は一体何を企んでいるのでしょう」

 

ライラの愚痴に、輝夜が忌々しげに言葉を返す。

 

「奴らの目的はまだわからん、だが今回もそうだが襲撃地からあるものが奪われていた」

 

シャクティの言葉に、アリーゼが表情を引き締めた。

 

「それは?」

「魔石の()()()()だ。」

「撃鉄装置?」

 

聞き慣れない言葉に一同は首を傾げる。

 

「あぁ、いわゆるスイッチ。あらゆる魔石製品の起動部品になっているものだ」

「連中はそんなもの使って何をしようとしてんだ?」

「…それもまだ、調査中だ」

「わからないことばかりかよ。これじゃあ後手に回る一方だぜ」

「ギルドには主要施設の警備を強化するように言っておこう」

「市中の巡回も増やしたほうが良さそうね」

 

ライラが悪態をつき、シャクティとアリーゼが今後の対策を話し合う傍ら、俺は闇派閥の狙いを反芻する。

 

(オラリオ各所の工場の襲撃に、撃鉄装置、おまけにさっきの爆発……爆破テロでも企んでるのか?まだこれだけじゃなんとも言えないな)

 

 

「────あ!レイ!久しぶり!」

 

 

思考の渦に沈もうとした俺の意識が、明るい声によって一気に現実に引き戻される。

 

「ん?おう、アーディか。相変わらず可愛いなぁ」

「えへへ、ありがと!あっそうだ。お姉ちゃん、闇派閥の捕縛終わったよ」

「...アーディ、他の者がいる場でその呼び方はやめろ」

「あ...ごめーん、お姉ちゃん」

「.....」

 

さすがアーディ、相変わらずの見事な天然っぷりだ。姉の鉄面皮がわずかに引き攣っているのを見て、俺は内心で苦笑した。

 

「アリーゼ、あとの処理は引き受ける。お前たちはもうホームに帰って休んでくれ」

 

「そう?じゃあ、お言葉に甘えようかしら。みんな、帰るわよ!」

 

シャクティから帰還の許可をもらえたので俺たちは戦場となった工場を後にした。

 

──────────────────────

 

「あら、みんなおかえりなさい。お風呂にする?それとも食事かしら?」

 

ホームに戻ると、主神アストレアが聖母の如く慈愛に満ちた微笑みで迎えてくれた。

 

「俺はアストレア様がいいでsグボアッ!」

「お前は少し慎みというものを覚えろ。あと神に対し不敬だ」

 

輝夜の容赦ないツッコミ(物理)が炸裂する。

 

「あはは...」

「じゃあ、アストレア様もお風呂も私が堪能するわ!」

「お前ずるいぞ!アストレア様は俺が──ぐべらっ!?」

「お前はもう少し寝てろ馬鹿」

「あらあらライラまで...ふふふ」

 

輝夜とライラによって二度沈められた俺はズキズキと痛む頭を押さえながら、ふらふらと風呂場へ向かった。

全員が汗を流した後、食堂に集まって今回の任務の報告と反省会が始まる。

 

「それじゃあアリーゼ、今日の事を聞かせてもらえる?」

「はい!工場は燃えてしまったけど、一般人や冒険者の被害はゼロでした!」

「しかしまぁ未だに敵の狙いはわからないままだけどな」

「そうだな。あまり楽観視してはいられないだろう」

「まぁでも相手の目的がなにかわからなくても、事件は起こるもの。だったら今わかることでできる限りやるしかないわ」

 

アリーゼが力強く拳を握る。その姿にアリーゼの正義を追い求める人間性が垣間見える。

 

「アリーゼの言う通りだな。できることからコツコツと、だ」

「そうよ!じゃあいつものアレやりましょうか!」

「……これ毎回やんのかよ。アタシ、小っ恥ずかしくて苦手なんだが」

「安心しろ私もだ」

「いつもの?」

 

初耳の俺が問いかけると、アリーゼがいたずらっぽく笑った。

 

「あ、レイは知らなかったわね。こういう反省会の度にやってることがあるのよ」

「へぇ」

 

するとアリーゼが立って顔を引き締めて言った。

 

「使命を果たせ!天秤を正せ!いつか星となるその日まで!」

 

彼女の言葉に呼応するように、他の団員たちも立ち上がる。

 

「天空をかけるが如く、この大地に星の足跡を綴る!────『正義の剣と翼に誓って』!」

「『正義の剣と翼に誓って』!」

 

俺以外の全員の声が、一つになってホーム内に響き渡った。

その光景は、どこまでも眩しく、そして気高かった。

 

「おぉ。かっこいいじゃん」

 

思わず漏れた独り言。

この正義の系譜の末端に自分も確かに連なっているのだと、少しだけ誇らしい気持ちになった……

 

自身の胸中に澱のように溜まった昏い感情からは目を背けて────

 

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