先導の英雄   作:無銘のヲタク

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今回は投稿期間が空いてしまいい申し訳ございません。いろいろ予定が詰まっていたせいで投稿することができませんでした。また投稿し始めますので、これからもご愛読のほど、よろしくお願いします。


未来の種

 

「いやぁ、面白い神だったなー」

 

俺とガネーシャ様の死闘(?)は俺はリューに、ガネーシャ様はシャクティに止められたことで引き分けに終わった。

その後、ガネーシャ様と固い握手を交わし、俺は輝夜たちと共に巡回へと戻った。

 

「アタシたちはうるさくてかなわなかったぜ。次、お前と巡回する時はあそこには絶対近づかせねぇ」

「まったくだ。あんな騒々しいのは二度と御免蒙る」

「そこまでか?」

「はい。あんな公衆の面前でよく恥ずかしげもなく叫べますね」

 

リューは心底不思議そうに呟く。

まぁ、エルフのリューは一生やらないようなことではあるか…

 

「いや、俺だって別に恥ずかしいぞ。でも、俺の羞恥心を犠牲に暗黒期(いま)の民が少し笑ってくれるなら、安いもんだろ」

「「「.....」」」

 

俺が少し笑ってそう呟くと、三人は驚いたような珍しいものを見たような顔立ち止まり、俺の方を凝視する。

 

「……何だよ、その顔は?」

「いや、おまえ…そんなこと考えていたのか」

「普段馬鹿なことばっか言ってんのに急に真面目なこと言うからびっくりしたぜ」

「おい、お前ら俺を何だと思ってんだ」

 

「「「変人」」」

 

「即答かよ」

 

身も蓋もない評価にガックリと肩を落としたが、不意に視界の端を掠めた小さな影に、今日ここへ来たもう一つの目的を思い出す。

 

「あ、すまん。ちょっと寄っていきたい所があるんだけど、いいか?」

「別に構わないのですが、いったいどこへ?」

 

 

「ちょっと、ガキの子守にな」

 

 

そう言って俺は三人を促し、入り組んだ路地裏へと足を進めた。

喧騒から離れたその先、少し寂れた建物の前では、十数人の子供たちが元気に声を上げて遊んでいた。

 

 

「おーい!ガキども、遊びに来たぞー」

 

 

「あ!レイ兄ちゃんだ!」

「ほんとだぁ!」

 

俺の声に気づくや否や、子供たちが一斉に駆け寄ってくる。小さな手が俺の服や腕に次々と群がり、あっという間に身動きが取れなくなった。

 

「ねぇねぇ今日は何しに来たの?」

「また、面白い話聞かせてくれるの?」

「そんなことより俺たちと鬼ごっこしようぜ!」

 

「まてまてそれは後だ。先に院長に用があんだよ」

 

「院長?」

 

「おう。ここは身寄りのない子供を集めて勉強とか遊びとかさせてる場所なんだよ。いわゆる孤児院ってやつでな、今日はここの院長に会いに来たんだよ」」

 

院長という単語に疑問を抱いたリューたちに、俺はこの場所の成り立ちを説明する。

 

「院長なら家の中にいるよ。呼んでこようか?」

「あぁ、頼むわ」

 

快く首を縦に振ると、一人の子供が家に駆け込んでいった。

すると、俺の裾を弱々しく引っ張る感触があり、見下ろすと古びた人形を抱えた少女がこちらを見上げていた。

 

「ねぇねぇお兄ちゃん、後ろのお姉さんたちだぁれ?」

「あぁ、この人たちは…」

 

「もしかして兄ちゃんの恋人さん!?」

 

「「「は?」」」

「お!小僧よくわかったな。みんなおr...ごめんごめんて。冗談よ、だからそのおっかない顔やめて」

 

軽い冗談なのに、青筋が浮かんだ顔を浮かべて、今にも抜刀しそうな三人を必死に宥め、俺は改めて子供たちに向き直った。

 

「怖い怖い…まぁ、この人達は俺の大事な人でな。こんな訳の分からない俺を受け入れてくれた、優しくて頼もしい仲間だよ」

「あ、兄ちゃんが時々話してたのって、この人たち?」

「そうそう。俺が信頼を置く貴重な存在だよ」

 

俺がそう説明していると、家の中から赤銅色の長髪に眼鏡をかけた三十代ほどの女性がさっき駆け出して行った子供に引っ張られながら歩いてくる。

 

「来ましたか。じゃあすぐ終わるからガキどもは適当になんか遊んどけ」

 

「「「「はーい!」」」」

 

子供たちが散っていくのを見届けてから、俺は院長へと向き直った。

 

「レイさん、今日はどういうご用件で?それにそちらの三人は?」

「俺のファミリアの仲間です。それと、いつもの『これ』を受け取ってください」

 

俺は懐から金貨の詰まったずっしりと重い麻袋を取り出し、院長の手へと渡した。

それを見たリューたちが、驚きに目を見開く。

 

「レイ、お前今のは……」

「ん?寄付だよ、寄付。ここを維持するためのな」

「レイさん……いつも申していますが、毎回わざわざこんなことをしてもらわなくても。私から貴方に返せるものはありません」

「いいんですよ。これは俺がやりたくてやってるだけですから」

 

食い下がる院長を制し、俺は三人の視線を背中に感じながら言葉を続けた。

ここには子供しかいない。院長がどれだけ必死に働いても、この暗黒期(じき)に女手一つで十数人の口を養うのは、不可能に近いのが現実だ。

 

「……レイ、なぜ貴方がこれほどのことを? ギルドに支援を仰げば済む話ではないのですか?」

「…そのギルドが金を出してくれないんだよ、リュー」

「え…?」

「今は闇派閥の対応に追われてて、ギルドの予算もカツカツだ。こういう小さな施設にまで手が回らないのが今のオラリオなんだよ」

 

「そんな…」と、リューが悲痛な声を漏らす。

 

「だがわからん。なぜお前がそこまで固執している?」

「それは…『未来』のためかな」

 

輝夜の問いに、俺は子供たちの遊ぶ姿を見つめながら答えた。

 

「俺はこの暗黒期にもいつか終わりが来る、来てほしいって願ってる。その時、今の大人たちに代わって未来を担う連中がいなきゃいけないだろ? 今この芽を摘ませちまったら、いつまで経っても芽吹きはしない。だから俺みたいな余裕のある奴が少しばかり投資したってバチは当たらないと思ってな」

「.....」

「まぁ純粋にあいつらを見ていると守ってやりたいって思う気持ちもあるけどな」

 

俺は視線を今広場で遊んでいる子供たちの方に向ける。そこには今のオラリオの暗い空気を感じさせないような笑顔で遊んでいる子供たちの姿があった。

 

「お前らもそう思うだろ?だから『正義』のファミリアなんだ」

「……そうだな」

 

三人とも無邪気に遊ぶ子供たちの姿を見てその顔に笑みを浮かべる。

 

「ねぇレイ兄ちゃん。まだ~?」

「おっと悪い悪い、さて辛気臭い話はここらでやめにしてガキどもの遊びに付き合ってやるとしますか。おいお前ら、鬼ごっこやるぞ。俺が鬼やってやるから逃げてみろ!よーいドン!」

 

俺が不意打ちで駆け出すと、路地裏に一際大きな歓声が上がった。

 

「やべぇ!みんな逃げろー!」

「わぁ!急すぎだよ!」

「兄ちゃんちょっと待ってよ!」

「『待った』はねぇ!」

 

 

「…あいつが一番子供みてぇだな」

「「そうですね(だな)」」

 

何やら後ろから呆れたような声が聞こえたが、今は無視することにした。

 

────────────────────

 

それからしばらく、俺は子供たちと(途中で無理やりリューたちも巻き込んで)全力で遊び倒した。

 

「じゃあ、そろそろ巡回に戻るか。またな、ガキども」

「うん!また来て絶対遊ぼうね!お姉ちゃんたちも!」

「皆さんまたいつでもいらしてください」

 

院長と子供たちの見送りを受けながら、俺たちは夕暮れに染まり始めた道を歩き出す。

 

「また来て欲しいそうだけど?」

「……まぁ、気が向いたらな」

「アタシはこんな疲れるなら御免だぜ」

 

そう言うライラだが、その口元は、隠しきれない満足感でわずかに綻んでいた。

すると、ライラが突然何かを思い出したようにニヤリと悪そうな笑みを浮かべ、俺の肩を組んでくる。

 

「そういえばお前最初によぉ、アタシたちを『大切な仲間』とかって言ってたよなぁ。うれしいぜぇアタシは」

「……おっと結構臭いことを言った自覚があったから、あんま触れてこなかったことをいきなり突っ込んできたねぇ」

「それに子供たちを守りたいと言った時のお前の真面目な顔、似合わなすぎて鳥肌が立った」

「おい、さっきも思ったけどお前らの俺に対する評価おかしいだろ」

 

信頼する仲間からの辛辣な評価に、思わず泣きそうだ。

 

「────しかし、あなたがやっていることは間違いではない。誰かの力になろうとするその行為を、私は尊敬します」

「お、おう。急にそう言われると、なんか…むず痒いな」

 

リューの澄んだ瞳に真っ直ぐに見つめられ、俺は思わず頬を掻いて視線を逸らした。

冷やかすような輝夜とライラの視線から逃げるように、俺は足早に歩き出す。

 

「ほら、さっさと行くぞ!こんなところで油を売っている暇は俺たちにはないんだよ!」

「お前が来たいって言ったんだろうが。ったく、行くか」

 

賑やかな声を背中で聞きながら、俺たちは再び、黄昏時のオラリオへを歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────見ーつけた」

 

 

 

 

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