先導の英雄   作:無銘のヲタク

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この作品の最初の方の話を若干違和感があると感じたので少し加筆修正しました。少しレイの感じが変わっているので気になったら覗いてみてください。(評価をつけてもらえると尚嬉しいですね)


束の間の休息

 

「ふぁあ……眠ぃ…」

 

漏れ出た欠伸と一緒に、重い瞼をこする。ベッドの横にかけてある装備を手に取り、寝間着から手慣れた手つきでそれに着替え、自室を後にする。まだ回らない頭を掻きながら階段を降り、そのまま表に出ると、既に俺以外の団員は全員集まっていた。

 

最後に玄関から出てきた俺に、朝から元気満ちた声が飛んでくる。

 

「おはよう、レイ!もしかして寝不足?昨日の夜、何処かに行っていたみたいだしね」

「…まぁ、ちょっとな。それより今日は炊き出しの手伝いだったか?」

「えぇ!デメテル・ファミリアの全面協力のもとに、ギルドが主催する冒険者による炊き出しをするのよ!美味しいご飯が猛威をふるうわ!」

「何でお前がすげぇふんぞり返って偉そうなんだよ」

 

胸を張って豪語するアリーゼに、ライラが呆れたようなツッコミを入れる。当の本人はどこ吹く風といった様子で、高らかに右手を掲げた。

 

「それじゃあみんな、メインストリートに出っ発〜〜!!」

 

────────────────────―

 

そうして大通りに着いた俺たちはアリーゼの指示に従い、解散して各自、料理や配給、諸々の手伝いを始めた。そんな中、俺はどちらの手伝いもせずに大通り周りの見回りをしている。

 

なぜこうなったのか。

事の始まりは、準備中に俺が「料理でも手伝うか」と口にした瞬間だ。全員(特にリュー)が「え?作れるの?」みたいな疑いの眼差しを向けてきたので、その辺の調理道具を借りて軽く作ったものをアリーゼたちに食べさせてみたところ…

 

「お、おいしい。(でも、私の女としての尊厳が崩れ落ちそうだわ...!)」

 

と、お褒めの言葉をいただいたのだが…どうにもアリーゼを筆頭に全員が何やら複雑な、ショックを受けたような表情を浮かべた。

結果、「料理は私達()に任せなさい!」と半ば強引に押し切られ、俺は警備担当へと格下げ(?)されたのである。

 

(料理できるのはモテる男の必須条件だと思うんだが、うーん…何がまずかったんだ…?味はよかったぽいからなぁ…)

 

少し頭を悩ませながら、通りを歩いていた中、ふと顔を上げると、視界には溢れんばかりの人だかりがあった。

 

「にしても、こんなに人が集まって騒いでいるのなんて久しぶりだな」

 

ここ最近のオラリオは闇派閥のせいで人だかりも活気もまるでなかったゆえに、その光景を見て俺は自然と笑みが溢れる。

 

 

「おーい!そこの(あん)ちゃん」

 

 

「ん?」

 

誰かに呼ばれて振り返ると、そこには屋台の寸胴を前にしたガタイのいい男が立っていた。

 

「あんた、アストレア様のとこの冒険者だろ?いつも都市中を巡回してくれてありがとな。これはその礼だ」

 

差し出されたのは、湯気の立ち上る旨そうなスープ。

 

「いやいや、それが俺の仕事だよ。ていうかそれ民間の人に配るやつだろ?俺が受け取るわけには...」

「いいんだよ、感謝の印なんだから。そんなに気になんなら、これを食った分いつもの二倍は働いてくれや!」

 

おっさんはそう言って強引にスープを渡してきたのを、俺はそれが溢れないようにしっかりと持つ。

 

「ははっ。わかったよ。じゃあ、遠慮なく…おぉ、これは美味い」

「だろ?」

 

自信満々に笑うおっさんに見守られながら、俺はスープを飲み干し、空になった器を返した。

 

「ごちそうさん。それじゃあ、精一杯働かせてもらうよ」

「おう!がんばれよ!」

 

背中に受けた激励に手を振り、再び歩き出す。

 

(感謝されるのは、やっぱりいいもんだな…)

 

誰かに感謝される。その重みが、今は心地よかった。

しみじみと感慨にふけつつ歩いていると、正面に見覚えのなる顔ぶれが見えてきた。

 

あれは、アリーゼとリュー……それと…っ!?あれは、ガルムス…?

 

二人の傍らにいたのは、かつての戦場を共にした戦友を彷彿とさせる、屈強なドワーフだった。

 

「もしかしてこれ、あいつに似た奴もいるんじゃ...」

 

脳裏をよぎるのは白髪に赤眼を携え、快い笑みを浮かべる親友の姿。

 

 

「そしたら、そいつが俺の代わりになってくれるかも…なんてな」

 

 

例え、あいつの生き写しが現れたとしてもこれは俺の使命だ。これだけは俺が成さなきゃいけないよな…

 

 

 

「あ、おーい!レイ!なにしてるのー?」

 

 

 

こちらに気づいたアリーゼが大きな声を上げる。俺は思考を切り替え、彼女たちの方へ足を向けた。

 

「何って、お前らが俺に周辺警備に回るように言ったんだろうが」

「あ、そうだったわね」

「ったく…で、この人は?」

「この方はロキ・ファミリア幹部、ガレス・ランドロック殿、【重傑(エルガルム)】の二つ名を持つレベル5の第一級冒険者です」

 

リューの紹介に、ドワーフの老戦士が不敵に笑う。

 

「お主がアストレアファミリア唯一の男のレイ・オーガじゃな。かなり腕が立つと聞いている。よろしく頼むぞ」

「ロキ・ファミリア…アイズがいるところか」

「その件についてはお主には感謝しておる。あのダンジョン狂いのアイズが最近はダンジョンに行くばかりではなく、ホームの中で過ごす時間が増えた。それに儂らの言うことも少し聞くようになったからわい」

「俺はただアイズより少しだけ長く生きている身として、ちょっと人生に余裕を持つように言っただけですよ」

 

それで、アイズが年相応の女の子らしく過ごしているなら、言った価値はあったな。

 

「まぁ、それはそうと、アイズは『次は負けない...!』とも張り切っておったぞ」

「……止められませんかね?」

「無理じゃろうな」

「ですよねぇ...」

 

俺のため息に、ガレスは「ガハハ!」と豪快に笑う。……よし、今のうちに一つ確認しておくか。

 

「...ガレスさん、一つ聞きたい事があるんですけど」

「なんじゃ?」

 

「実は18歳とか、そんなことはないですよね?」

 

「んなわけないじゃろ」

「ですよねッ!」

 

わけがわからないという顔のガレスさんを余所に、俺は内心で胸をなでおろした。

 

「それじゃあ、儂は警備に戻る。炊き出しの方は任せたぞ」

「俺も戻るわ」

「レイ、サボっちゃだめよ?」

「やかましいわ」

 

────────────────────―

 

アリーゼたちと別れ、俺は再び周囲に気を配りつつ、巡回を続ける。

 

「(それにしても、警備があるとは言え、こんな大っぴらに炊き出しなんかして大丈夫なんだろうか。闇派閥の襲撃を受けたりしたら大変だぞ)」

 

嫌な予感が思考を支配し始めた、その時だった。

考え事に没頭しすぎていたせいで、正面から来た人物と肩がぶつかってしまう。

 

「っと、すいません」

 

俺は即座に謝罪の言葉を口にする。

 

「おう、気にすんな。

 

 

 

 

慰謝料代わりにちゃ〜んと、てめぇの命をもらっていくからな」

 

 

 

 

「は?」

 

耳を疑うような言葉が聞こえた直後、抜身の凶刃が俺の胴を引き裂く────

 

「あぁん?」

 

────―ことはなく。俺は腰の刀を抜き放ち、迫る刃を紙一重で阻む。

 

ったく、あんま変なフラグは立てるもんじゃないな。だが、今はその反省より…

 

俺は周囲に向けて声を張り上げた。

 

「全員ここから離れろ!闇派閥の襲撃だ!近くにいる冒険者は民間人の避難誘導を急げ!!」

 

「いやあぁぁぁ!!」

「襲撃だって!?」

「に、逃げろぉぉぉお!!!」

 

悲鳴が爆発するように広がり、平穏だった大通りが瞬時にパニックへと変貌する。

炊き出しに集まっていた人々は、手に持った料理を捨てて一目散に逃走を開始した。

 

「物分かりの良い人たちだっ!」

 

周囲から民間人の影がある程度消えたのを確認し、俺は刀に力を込めて押し留めていた相手の剣を弾く。そのまま襲撃者の意識を刈り取ろうと振り下ろすが────

 

「チッ!」

 

その直前に相手は驚異的な跳躍で屋根の上へと逃れ、俺の刃は空を切る。

見上げる視線の先、逆光の中に立つ「女」と目が合った。

 

「はぁ、なんか煮えきらねぇ始まりだが、まあいいか。どうしようもねぇ群衆(バカ)どもに、ここは笑う暇もねぇ地獄だってことを思い出させてやらねぇ〜となぁ!!…やれ、てめえ等!」

 

女の号令と共に、路地裏や屋根裏から白装束に身を包んだ集団が湧き出し、逃げる民間人を追い始める。

 

「行かせ────ッ!」

 

闇派閥達を追おうとした俺の背後で、重い着地音が響いた。それと共に肌を刺すような、どす黒い殺気が向けられる。

 

「てめえには、邪魔された分、私の相手をしてもらおうかぁ」

 

振り返れば、そこには赤と桃が混ざったような髪色をしたさっきの女が立っていた。ボロボロの服を纏い、狂気に濁った瞳がこちらを覗いている。

 

「いつもなら、女の人に誘われたりしたら、内心小躍りするんだけど。今はあいにく取り込む中だ。後にしてくれない、お姉さん?」

「そうつれねぇ事言うなよ。一緒に踊ろうぜぇ?傷つき、叫び、鮮血が舞う最ッ高のダンスをよぉ!!!」

 

狂笑と共に突撃してくる女。俺は刀を正眼に構え、その狂気を受け止めるべく地を蹴った。

 

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