先導の英雄   作:無銘のヲタク

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『英雄』と彼女達の再会

 

「さて…来たはいいが、どうもなぁ...」

 

俺はアーディと分かれた後、【アストレア・ファミリア】のホームに着いたが、いざ玄関を開けようとすると、リヴェリアさんがあいつらの元気がなくなっていた、と聞いて、少し入るのを躊躇っていた。

 

いやだってアーディ曰く、死んじゃった!…って思われてわけだし、それで何食わぬ顔で帰ってきたら気まずいよなぁ。ここはいつもの俺の感じで行くか、それとも深刻そうな空気感で行くか…うーん…

 

「ま、まぁ…ここにいても何もないし、入るか…」

 

俺はついに意を決した。ドアノブに手をかけ、豪快に開け放つ!

 

「やぁ、諸君!君達が信じるレイさんが帰ってきたぞぉ!」

 

玄関で高らかに自身の帰還を告げる!…しかし、中から何も返事は帰って来ず、なんなら人の気配もまるでなかった。

 

「ありゃ?誰もいないじゃん。なんでぇ?」

 

ここは皆家に構えてて、俺が来た瞬間っ!皆わっと驚きつつも生きていた事実に歓喜して皆で俺の胸に飛び込んでくる展開だろ。

 

俺が想定外の展開に少し驚き、疑問に思っていると、二階から誰かが足早に降りてきている音が聞こえてきた。

 

おっ、誰だろ?

 

 

 

 

「──────レイ...?」

 

一人降りて来たのは我らが主神、アストレア様。アストレア様は俺の存在に気づくと驚いた表情を浮かべる。

 

「あ、アストレア様は居たんですね。あなたのレイが今帰りまし────」

 

「ッ!!」

 

すると、俺が言い終わるよりも先にアストレア様が足早に俺に近づいてきて俺を抱きしめてくる。

 

おっと!なんか凄い既視感(デジャヴ)

 

俺が内心でそんなことを思っていると、アストレア様がポツリポツリと涙を落としながら話し始める。

 

「あぁ、よかったわ...!貴方が生きていてくれて!私は貴方の主神(おや)ではないから、神血(イコル)で繋がってない。だから、アリーゼ達にあなたが見つからなかったと伝えられてから信じるしかなかった...!それがどれほど、辛かったか...!」

 

…自分の眷属(ファミリア)じゃないってのに、この(ひと)はこの人はホントに優しい神だなぁ...

 

「アストレア様、俺は確かに貴女と神血で繋がってはいない。それでも、今の俺は【アストレア・ファミリア】のレイ・オーガです」

「!!」

「だから、貴女が私を思っていてくれる限り、私は貴女の、彼女等(あいつら)の元に帰ってくる...必ず約束します」

「そう...」

 

アストレア様はそう呟くと抱きしめるのを止めて俺から離れる。

 

「約束よ?破ったら、アリーゼ達と一緒にボコボコにするわね?」

「いや怖。益々死ぬわけにはいかなくなりましたよ」

 

そんな会話をすると、俺とアストレア様は一緒に笑い合う。

 

「ふふっ。本当に、貴方は面白い子ね。それに少し見ない内に何処か吹っ切れて、心做しか前より男前になったようにすら見えるわ。惚れちゃうかも」

「まじですか?いやあ、神をも虜にしてしまうとは...俺はなんて罪深い男なんだ!」

「勿論冗談よ」

「……デスヨネー」

 

分かってはいたものの、嘘だと言われて肩を落とし、少し落ち込む。アストレア様はそんな俺を見てまた少し口を抑えて笑い出す。

 

くっ、この人は神なんかじゃない!悪魔だ!

 

「そういえば、アリーゼ達は何処行ったんです?」

 

俺はアストレア様以外誰もいないホームを見て、そのように問いかける。

 

「アリーゼ達なら街に出て、怪我を負った人たちの治療や人命救助をしているわ」

「そうですか。なら俺も行ってきますわ」

 

俺はそのまま後ろの玄関の扉から外に出ようとすると、

 

「────レイ」

「なんです、アストレア様?」

 

 

 

 

 

「────行ってらっしゃい」

 

アストレア様は当に子供を見守る親のような慈愛が籠った笑顔で俺に言い放つ。その姿に俺も思わず笑みがこぼれる。

 

「行ってきます。アストレア様」

 

俺は振り向いて返事をすると、扉を開けて外に出て街を歩き始める。

 

────────────────────―

 

周りの様子を見回すと、都市の各地からは煙が上がり、建物は崩れ去り、道の端には多くの怪我人が苦しそうな顔で倒れ込んでいる。その光景を見ていると先の『大抗争』における被害は計り知れないものだと思い知らされる。

 

「それでも、前に進むんだ。大切なものを守るために」

 

俺が改めて心の中で強く思いながら歩いていると、何やら遠くの方が騒がしくなっていた。俺は気になって駆け寄り、何が起きているのか遠巻きに見ていると、そこには数人の民間人と向き合っているアリーゼ達の姿があった。

 

「────みんなを助けてくれるんじゃなかったの...?みんなを守ってくれるんじゃなかったの!?」

「【アストレア・ファミリア】は正義の派閥じゃなかったのかよ!」

「嘘つきっ!あの人を返してぇ!!」

 

その言葉に続くように周りの民衆が「そうだそうだ!」「お前達のせいだ!」と口々にアリーゼたちを責め立て、彼女達の足元に石を投げる人もいる。

 

今まで自分たちを闇派閥から守ってくれていた者に対してなんて酷い仕打ちだろうか。

だが、彼等を責めることは出来ない。

なぜなら彼等も被害者だから、失って苦しんでいるのは変わらないから。

 

彼等と冒険者達の違いは『力』が持つ者か持たざる者であるか、その差だ。力なき民衆にはどうしようもないと分かっていても、目の前の存在に八つ当たりせずにはいられないのだろう。

 

すると、突然アリーゼが前に歩き始め、次の瞬間には民衆の投げた石が当たり、額から血を流す。

 

「っ!あの馬鹿...!」

 

俺はすぐにでも飛び出して行きたかったが、周りの民衆が邪魔で出ていくことが出来ない。

そうこうしているとアリーゼの後ろにいたリューがその光景にショックを受けたようで、気絶して倒れてしまう。

 

そのリューにアリーゼ達がすぐに駆け寄っていくと、それを見ていた周りの民衆は少しバツが悪そうな顔で去っていった。俺はそのタイミングでアリーゼ達の下に歩み寄る。

 

 

 

「ほい、拭け」

 

俺はこちらに背を向けてリューの側で座っているアリーゼの顔の横に自分の懐から取り出した手拭いを差し出す。

 

「あら、誰かは知らないけど助かるわ!」

 

アリーゼはそれで顔を拭きながらこちらを向くようにしながら立ち上がる。

 

「よし。貸してくれて、あり、が、と.......え…」

 

顔を拭き終わって顔の全体を覆っていた手拭いを下ろして俺の顔を見た瞬間、驚いた顔を浮かべたまま固まってしまう。

 

「おう、どういたしまして。まったく、乙女が簡単に自分の顔傷つけちゃ駄目でしょうが」

 

「レ、イ...?」

 

「ッ!?お前...!」

「てめえ、なんで...」

 

アリーゼが俺の名前をつぶやくと同時に輝夜とライラも俺がいるのに気づいて驚いたように声を出す。

 

「いやぁ…昨日はちょっとやらなきゃいけないことがあって帰れなくてね…でもこの通り戻ってきたぜ!」

「そんな...だって貴方はあの時瓦礫に潰されて...!」

「あー、あの時はやばかった、普通に意識失ったからな。でもまぁ、今こうしてお前達のもとに帰ってきたんだから、一件落着!ってことでいいだろ」

「...」

 

俺が軽く笑ってそう言ったら、アリーゼが下を向いて身体をプルプル震わせ始める。

 

 

「....じゃ....わよ」

 

 

「ん?なんて言った?」

 

俺がアリーゼが何を言ったのか聞くために顔を寄せた次の瞬間、

 

「...一件落着、じゃ、ないわよぉぉぉ!!!」

「ぶべらぁぁぁぁ!?」

 

顔を振り上げたと同時に繰り出されるアッパーカットが俺の顎を的確に捉えると、それはそれは綺麗な新月面を描いて吹き飛ばされ、俺はそのまま流れるように頭を地面を強打する形で着地する。

 

「......え?何で?」

 

俺は上体を上げて自分が何故殴られたのか、わけもわからず困惑していると、向こうからアリーゼがズカズカと歩いてきて、俺の体に馬乗りになって両手で胸ぐらを掴み上げる。

 

「え、え?」

「何で、ですって...?人の気も知らないでぇぇぇぇ!!!」

 

アリーゼが激情のままに俺の身体を激しく揺らしてくる。

 

「え、ちょ、待っ」

「貴方が目の前で爆発に巻き込まれるのを見た時、私がどんな気持ちだったかわかる!?次の日、貴方をあそこに探しに言っても何も見つからなかった時だって、どれだけ辛かったか...!それなのに、貴方は呑気に笑って、一件落着?ふざけんじゃないわよぉぉ!」

「待って!アリーゼまじで待って!そんなに揺らしたら吐く!吐いちゃうから!それにこの態勢は非常にまずい!主に俺の息子が!」

「知らない!!これは罰よ!!!」

「えぇ!?ちょ、輝夜、ライラ!このご乱心の団長様を止めてくれ!!」

 

俺は聞く耳持たないアリーゼを置いて、輝夜達に助けを求めるが

 

「断る。何なら私にも一発殴らせろ」

「あぁ。アタシもかなりイラッときた」

 

「えぇぇぇ!!?嘘だろ?」

 

あっさりと断られてしまい、どうしようか考えていると、段々アリーゼの揺らす力が弱くなって来た。

 

「本当に...心配したんだから...!」

 

するとアリーゼは俺の胸に顔を埋めてすすり泣き始める。他の二人もよく見ると薄っすらと目の端に涙が浮かんでいる。俺はそれを見て驚き、同時に彼女達の優しさと自分を大切に思ってくれている事実に温かい気持ちになる。

 

「アリーゼ…ごめんな。お前達が俺をこんなに思ってくれてるとは考えてなかったんだ。どうか許してくれないか?」

 

俺は自身の目の前にあるアリーゼの頭をあやすように優しく撫でる。

 

「......もう少し撫でて」

「はいよ、団長様」

 

俺はアリーゼに言われるがまま頭を撫で続ける。しばらくするとアリーゼが立ち上がり自身の涙を拭うといつもの笑顔に戻るが、その頬は少し赤くなっているように見える。

 

「────よし。いいわ、許してあげる」

「どうも、っと」

 

俺が立ち上がると、輝夜とライラからジト目で睨まれているのに気づく。

 

「てめえら...人の目の前でイチャイチャしやがって」

「全くだ」

「なっ!私は別に、い、イチャイチャなんて...!」

 

ライラに言われて目に見えてアリーゼは動揺し、両手で顔を隠すと「う〜〜!!」となにやら悶え始めた。

 

「まぁまぁ、二人共。そう怖い顔すんなよ。お前らにも俺ができることなら()()()()やってやるから」

「なんでも?......ならば私も、団長と同じように...」

「え、輝夜なんて言った?」

「〜〜〜!!何も言っていない!」

 

小さい声で輝夜がなにか呟いたように聞こえて聞き返すと、輝夜は顔を赤く染めてそのままそっぽを向いてしまう。それを見てライラはニヤニヤしている。

 

「...なんだ、ライラ」

「いーや、別にぃ?おい、レイ。アタシにはまた飲みに行った時に奢ってくれや」

「分かったよ。今度は酔いつぶれるまで付き合ってやる。じゃあとりあえず、倒れてるリューをホームまで運ぶとしますか」

「そうね...じゃあ、レイ」

「ん?」

 

俺がリュー側に歩いていこうとするとアリーゼに声を掛けられてそちらを振り向く。

 

 

 

「改めて...おかえりなさい!」

 

 

 

とびきりの笑顔でそう言うアリーゼ、その後ろの二人も同じように微笑んで俺を見ていた。

 

 

 

「...あぁ、ただいま」

 

 

 

俺もそれに応えるように口の端を軽く上げて微笑み、そう返事を返した。

 




リューとの再会はまだ先です。
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