昔、極東にいた時に、男神が俺にどうしようもなく絶体絶命な状況になったら使いなさいと、ある技を伝授した。その技はどんな状況でも打開できる可能性を持った絶技らしい。その技こそ!
「いや本当にやましい気持ちはないんです!この美(小)女たちに囲まれている状況を一言で表すとしたらその言葉しかなくてですね、それがここの中から少しポロッとこぼれ落ちてしまっただけなんです、はい!後こういう状況に男の子として少しの願望と憧れがあるだけなんです!ほんとすいませんでしたァァァ!」
土下座である。この技は極めれば極めるほどなぜか「あれ?自分が悪いのか?」と錯覚させるほど威力を発揮するらしい、さぁどうだ!
「な、なんだこいつ?頭おかしいのか?」
おっと桃髪の方からは随分と辛辣な言葉をいただきました。
「あら、見事な土下座ですね」
極東の出身と思われる黒髪の方は感心したような声を上げていた。
「アストレア様?本当にこの人誰なんです?」
「彼の名前はレイ・オーガ、私も詳しくは知らないのだけどアリーゼたちの手伝いをしてくれたみたいよ。オラリオでの拠点が欲しいと言ったらアリーゼが連れてきたようだわ」
「アリーゼが連れてきたのか。道理で変なやつなわけだ...」
「あの団長が気に入って連れてきた人ですものねぇ」
あれ?この感じ…アリーゼもしかして団長なのに信用されてない?
「二人共もう少しアリーゼを信用してあげてね?とにかくさっきの言葉に嘘はなかったから、本当にやましい気持ちはないわ。だからもう顔上げて、ね?」
アストレア様から許しの言葉が得られたので顔を上げる。
「本当に申し訳ない。美しい女性を見るとつい衝動が...改めまして俺は姓はオーガ、名をレイと申す者。この度は貴女方の傘下に入る許可をしてもらいたく参上仕りはべらせていただいた次第で御座候」
「固い固い、固いしなんか敬語がめちゃくちゃだ。別に怒っちゃいないから普通に喋ってくれ」
「すまん。えーと...」
「ライラだ。こっちの二人はゴジョウノ・輝夜とネーゼ・ランケットだ」
「「よろしゅう(よろしく)」」
軽く他のファミリアのメンバーとも自己紹介を行ったあと、楽にしていいと言われ、正座を解いて立ち上がる。
「よろしく。しかしアストレアファミリアの眷属は皆女の子なのか…流石にびっくりしたわ」
しかも、みんな顔面偏差値高いし。彼女達目的で加入しに来る人も五万といるだろ。
「男も何人か入団希望には来たぞ?ただ、たいていの奴が下心満載だったからライラやリューが速攻追っ払ってたけど」
「まぁな。お前は変な奴だが、さっきそのこと知ったみたいだし。そういう目的で来たわけじゃなさそうで安心したぜ。ブッとばさなくて済んだ」
おっかねぇ……
「それにしても貴方のその格好…」
「ああ、極東の服だよ。と言っても俺自身が何処出身なのかは分かんないけど」
「──?それはどういう……?」
「赤ん坊の時からもう両親がいなくてな。何処かもよく分からん森の中に置き去りにされてたもんで」
「っ!!…申し訳ありません」
「良いの良いの。俺の出自なんて些末なことだし、それに俺を拾ってくれた育ての親はいるし…俺にとっては親はその人達だよ。この名前もその人達がつけてくれたものだしな。だから気にしなくていい」
「そうですか…」
「はい!暗い話お仕舞い!何でここに来ることになったとか細かな経緯があるからそれを話させてもらおう!」
そこから俺は諸々の事情を全員に話した。説明している途中からは俺の話を聞いて若干暗くなっていた空気も緩和され、話が終わる頃にはアリーゼ達も戻ってきていて【アストレア・ファミリア】の面々が全員集合した。
「────という感じなわけで、皆レイがファミリアに入るのに反対な人はいるかしら?」
「まぁいいんじゃねぇか?私はこいつは面白そうだから問題ないぜ」
「私も同感ですね」
「先程の大声での謝罪が聞こえてきて多少不安になりましたが、アリーゼが認めるのならそれに従いましょう」
「じゃあ決まりね!これからアストレア様の眷属(仮)だわ!アストレア様いいですよね?」
「構わないわ。ただ少し条件があるの」
アストレア様は俺の方に顔を向けると、こちらの真意を確かめるような鋭い視線が俺を貫く。
「まずあなたのレベル、あとはあなたの主神、最後にあなたは何のためにここに来たのか、それを教えて」
嘘は許さないと言わんばかりに、その青き瞳で俺を見定める。
「わかりました。まず俺のレベルは1。主神は...すいません、言えません」
「言えない?」
「はい」
「では、名前はいいわ。何処の神なのかしら?」
「……それも言えません」
「おい、レイお前……」
それは如何なものかと、苦言を提そうとしたライラをアストレア様が手で制した。
「レイ…何故言えないのかしら?」
「……背中のこれは俺の罪なんです…」
「罪……?」
この背中に刻まれた
敵を前にして何も護れやしなかった弱者の印であり、俺の今の力は決して、俺なんかの力ではないという戒め。だから…
「俺がこの罪の重みを覚悟できるまでどうか待って欲しいです……」
「……そう、分かったわ」
アストレア様は俺の顔を見ると真剣な表情で言った。
「嘘はついていないようだし良しとしましょう。けど、あなたの言う『覚悟』ができた暁には必ず教えてもらうわよ?」
「承知しました」
「じゃあ最後、貴方は何のためにここに来たの?」
「この
今の俺は弱いから、せめて自分のモンくらい守れるように強くならないと…これを背負う資格なんてない。
……だから俺は
「弱いなんて……さっきひったくりを捕らえた時のレイは凄かったわよ?」
「そうですね。あの動きはそこらの有象無象とは別格でした」
「おぉ!美少女に褒められるなんてっ!光栄の極み!」
……でも足りないんだよ。まだ、この程度じゃ駄目なんだよ。これじゃ彼奴には届かない。
「────ねぇ、レイ」
「はい、何でしょうか」
さっきの俺の言葉を聞いた後、アストレア様は再度俺に呼び掛ける。
「理由は
「!!」
「アストレア様、『それだけ』とは…?」
「うーん……『強くなりたい』というのも間違ってはいないとは思うのだけど、それ以上に何か理由が有る気がするの。どうかしら、レイ」
…驚いた。嘘は言ってなかったんだが。流石、女神の勘ってところだな…この
「……確かに俺にはもう一つ大事な理由があります」
「それは?」
アストレア様は俺の真意を問うようにその瞳を真っ直ぐ俺に向ける。そんな彼女に俺は告げる。
「次代の『英雄』を探しに来ました」
「っ!!……『英雄』?」
「はい。何を馬鹿なことをって思うかもしれないですけど、俺は見つけなきゃいけないんです。今の世界を救える英雄を」
「それは何故?」
「親友に頼まれたから…自分の代わりに、と託されたから」
俺は彼奴に英雄の船を
「……それは望みではなく『義務』でしょう?貴方自身の望みはないの?」
アストレア様は俺のことを心配するかのように言葉をかける。
あぁ、この人は本当に良い神なんだな。でも…
「これは彼に直接任された俺のやらなきゃいけないことなんです…他の誰でもない俺が。俺の望みなんてその後でいい」
「そんなっ……いいえ、あなたがそう言うのなら私は何も言わないわ。でも……」
アストレア様はその顔に僅かな悲哀の感情を浮かべながら俺を見つめてくる。
「誰かの代わりになろうと思って自分を見失うこと、これだけはしないで欲しい。だって貴方という人間は一人しかいないのだから」
……所詮俺は代替品で、弱者の俺が『俺』のままではまた何も護れない。だから俺は『アイツ』に……
「レイ、返事は?」
俺が黙っていると、アストレア様は否が応にも承諾させようと迫ってくる。
「うおっ!……わ、分かりました」
「よしっ!じゃあ改めて」
アストレア様は先程までの真剣な顔を崩し、美しい笑顔を向けて言った。
「ようこそ、アストレアファミリアへ。歓迎するわ、レイ」
「こちらこそ…よろしくお願いします!」
こうして俺の正義の使徒としての物語は始まった。