先導の英雄   作:無銘のヲタク

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途中で視点が変わるとこがあります。


悪役と英雄の戦戯曲

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

アルフィアからもう一度魔法が放たれる。

 

「【迸れ(ナルカミ)】!」

 

俺は今度は魔法で防がずに、『ナルカミ』の雷光を纏い、横に大きく飛ぶことで回避する。その瞬間さっきの所から少し離れた場所でクレーターができる。

 

「先のように、魔法で防がないのか?」

「防げても魔道士相手に足止めてたら、的になるだけだろ!

 

【此ノ身に鬼ノ万力を】!」

 

俺がアルフィアとの間合い管理のために走りながら、唱えると共に、自身に階位昇華(レベルブースト)を付与すると、額から角が生えてくる。

 

「精霊の力の次は、()。英雄が屠った()()()()()()()さえ使うか。貴様はつくづくその者と縁があるようだな」

「...まぁな!」

 

俺は足に力を込めて、一気にアルフィアとの距離を詰めて刀を振るうが、アルフィアはすぐさま反応してバックステップで回避し、そのまま俺から距離を取ろうとする。そうなる前に俺は再度接近して詠唱する余裕を与えないように攻撃を続ける。

 

「先程よりさらに(はや)いな。さっきの魔法は自身のステータスの強化をしたのか。面倒だな」

「涼しい顔して対処されながら、言われても説得力ないねぇ」

 

遠距離から攻撃する魔道士は間合いを詰めて、詠唱する余裕を与えなければ、楽にやれるんだが...この人明らかに後衛の動きじゃないな?

 

おまけにこの人の魔法、俺と同じ超短文詠唱だから、『魔法』纏ってなきゃ近づく前にお陀仏なんだが。理不尽すぎない?

 

「一旦距離とるか」

 

アルフィアに防がれながらも掌底を押し込み、その反作用で距離を取る。そこから俺が【降れ降れ】と詠唱すれば、今度はアルフィアの頭上から無数の雷が降りそそぐ。

 

アルフィアはそれらをバックステップしながら右に左に回避し、いくつかは手を詠唱とともに横薙ぎに振るって霧散させる。その間に俺は頭上に手を向け魔力を集めて体より一回り大きい火の玉を作ってぶっ放す。

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

放たれた2つの魔力は中間で衝突し、激しく土煙が立ち、どちらも相手の姿が視認できなくなるが俺はアルフィアの気配を読んで、煙の中に突っ込み刀を振り下ろす。

 

だがその奇襲も体を捻って回避され、振った風圧で煙が晴れるとそのまま再度切り結ぶ。

 

そんな一進一退の攻防の中、アルフィアの手刀が迫る。首元に向けて放たれたそれに即座に反応し、体を仰け反らせて、その後、体勢が崩れたところに迫ってきたアルフィアの回し蹴りは屈むことで回避する。

 

その時、

 

「あっ」

 

()()を視認した瞬間、俺は一瞬にして動きと思考を止めてしまい、その隙をアルフィアが見逃すはず無く、俺から距離をとって、『福音(ゴスペル)』と唱える。

 

俺はなんとか意識を戻して、おそらく迫ってきているだろう魔法を右に避ける。追撃されないように二発炎を放つが、やはりアルフィアが手を向けるとそれは消失する。

 

「戦闘中に考え事か?随分余裕だな」

「いや、そういうわけじゃないんだが...」

 

見えてしまった...黒き帳(スカート)の内に隠された黒曜の秘宝が...!大人の女性って感じでした。

 

「うん...とりあえず、ごちそうさまでした」

「??何を言っている」

 

気づいてないっぽいし、切り替えていこう!

 

「あ、レイお前まさかアルフィアのパn」

 

エレボスが何か言う前に魔法をぶっ飛ばして無理やり口を封じる。

 

よし。さっき牽制で放った炎が消失したのを見て、少し思ったことがあるから試してみるか。

 

俺は今度は建物の壁に跳び、そこから反対の壁、地面に連続で飛び回りながら、アルフィアの照準が定まらないように撹乱する。

 

「速度を活かして、私に捉えさせないつもりか」

 

高速移動を繰り返し、アルフィアが俺に背を向けて完全に死角に入った瞬間に壁を蹴って接近し、刀を振るうが、まるで分かっていたように俺が攻撃するタイミングで完璧にカウンターを合わせられて、そのまま腹に良いのをもらって吹き飛ぶ。

 

「ぐっ!?」

「お前のように速さが武器の者は一瞬でも隙をさらせば直ぐに食い付く」

 

誘われたってわけか...でもな!

 

俺は吹っ飛ばせれながらも空中で体勢を整え、両手をアルフィアに向ける。

 

「【集え】!!」

 

さっき飛び回っている最中に仕掛けた炎の玉を、両手を合わせて詠唱し、それぞれを少しタイミングをずらしながら全方位から収束させる。

 

「『魂の平穏(アタラクシア)』」

 

だが、アルフィアの死角から迫るものも合わせたその全てが詠唱と同時に────いやアルフィアに()()()()()()()消え去り、彼女は平然とその場に立っている。

 

あー、やっぱりそういうことか。

 

「何度も学習しないな。私に魔法は効かな────」

 

 

 

 

「あんたの無効化の魔法、向かってくる魔法に逐一発動してんじゃなくて、常に纏ってんだろ?」

 

 

 

 

その言葉に追撃しようと突き出されていたアルフィアの手が下ろされる。

 

「...ほう。なぜ?」

「今あんたが魔法を使った時、あんたに近いところから消えていった。それに、一つだけあんたに当たる前に停止させた炎は今も残ってる。これで一定の範囲を無効化ってのも当てはまらない。だから一々手を向けて詠唱してたのはブラフってわけだ」

 

「────あぁ、確かに私の魔法は『付与魔法』だ。だがそれが分かってどうした?」

「ぶっちゃけ厄介なのは変わってねえ。なんなら、ずっと纏ってるなんて面倒すぎるだろ...でも、『魔法無効化』なんて大層な効果の『付与魔法』だ。消費する精神力が段違いだろ」

「....」

「だから、俺は()()()重視で行かしてもらうぜ?」

 

俺は右手に持った刀を突き出し……今までより強く踏み込む。

 

「ッ!?」

「────さぁ、勝負はこっからだ」

 

アルフィアのその腕に僅かに俺の刀が傷をつける。

 

────────────────────―

 

アルフィアの周りを先程より強い雷光を纏ったレイが駆け巡る。アルフィアが魔法を打とうにも、放つ瞬間に離脱する。

 

「(先程とは比べ物にならない速さと身のこなし。なるほど、今までの動きすら小手調べに過ぎなかったわけか──)」

 

レイがアルフィアの背後に回ると振り上げるように刀を振るう。その際、刀の峰から炎を噴出することで加速した一閃は回避が遅れたアルフィアの腕を掠める。

 

そのまま胴体と足に横薙ぎの二連撃。これには寸前で反応し、服が僅かに裂けつつも回避に成功する。そして目の前のレイに掌を向けようとするが、そこには既に敵はいない。

 

「!! 上か」

 

飛び上がったレイが刀を振り下ろす直前に気づいたアルフィアは先程より大きく距離を取る。

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

そして離れた直後、地面に刀を叩きつける構えで立ったいるレイへと魔法を放つ。

 

衝撃で土煙が立ち込める中、アルフィアは打ち終わった手をおろし、視線を魔法を撃ち込んだ場所ではなく隣の建物の屋根に向ける。

 

「────ふぅ...危ない危ない」

 

そこには服についた土埃を払いながら、ダメージを食らった様子が見えないレイが立っている。

それを反対の建物から見たヴィトーは目を見開く。

 

「(今の一瞬で、あそこまで...!?)」

 

レイが屋根から降りると、そこから両者が構えるとともに、瞬きしたその一瞬で近づいたレイの突きを躱すアルフィアの姿が映ると、また高速の打ち合いが始まる。それを見た時、ヴィトーは両者ともに自身とは隔絶した次元の強者であることを再認識する。

 

「レベル7を速さで翻弄し、その体に傷を付ける....これはもはや【猛者(おうじゃ)】よりも....」

 

だが、あのアルフィアがただやられるだけな訳はなく、レイが刀を振る度にまだ僅かにアルフィアは傷を負うが、だんだん攻撃を躱し反撃を加えるようになる。そして遂にレイの刃を躱すと、その腕と胸ぐらを掴んでレイの動きを止める。

 

「(あの速度にもう対応したのですか...!)」

(とら)えたぞ」

 

そのまま胸ぐらを掴んだまま、その細い腕からは想像できない膂力でレイの身体を空中に放り投げ、魔法を放つ。

 

満足に動くことのできない空中ではアルフィアの魔法は避けられず、レイは為すすべなく音の弾丸にその身を打たれる────はずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「【猛り、集い、切り裂け】」

 

かすかにそう唱えると、洗練された青い炎が刀身から溢れ、その刀身を包み隠す。

上から下に振り下ろされた業炎を纏うその斬撃は瑠璃色の軌跡を描き──────魔法を()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!(私の魔法を切った...だと?)」

 

そもそも不可視の彼女の魔法を見切ること自体が到底不可能であり、挙句の果てには刀による防御や衝突ではなく、魔法を一方的に裂断するなんてそれこそ荒唐無稽な話である。だが、目の前の男はそれをやってのけた。その事実に驚愕するとともに今も激しく燃え上がる炎の剣にアルフィアは視線をやる。

 

「(この異質な炎…厄介な)」

 

魔法を切断可能な炎。

 

確かに魔法を戦闘の主体とするアルフィアにとってこの炎はこの上なく厄介なものだ。

 

もっとも、アルフィアの魔法も同じような効力を持っている手前、知り合いの男が聞いたら「お前が言うか?」と突っ込まずにはいられないだろう。

 

宙で回転し着地するレイに再度魔法を放つが、炎刀を横一閃してまたも掻き消される。

 

「【噴き上がれ】」

 

レイが手を地面に置くと道の端まで炎が噴き上がりアルフィアからその姿を覆い隠す。姿が見えなくなったことでアルフィアは先程のような奇襲に警戒を強める。

 

そして次の瞬間、目の前の炎の壁から複数の炎の刀が飛来してくる。

 

「今さら魔法による遠距離攻撃。どういうつもりだ?」

 

これでは牽制にもならないと、複数の角度から飛んできて、アルフィアの体に触れて消える炎の刀に気にも止めず、魔法を放とうと手を向ける。

 

その手に向かってきた炎の刀も触れた瞬間に炎がかき消え....()()()()()()()()()()()()()

 

 

「「!!」」

 

その光景に見ているエレボスたちも目を見開き、アルフィアでさえもその顔に動揺が見て取れる。

 

「────ッ!?これは奴の刀か...!」

 

「(あの魔法と同時にあの刀を投擲していたのですか!)」

 

『魔法無効化』という魔法に対する絶対防御を持つアルフィアが故に生まれた油断、その歪みをレイは逃さない。

 

手に刀が刺さった衝撃で体を仰け反らせ、アルフィアが隙を晒した瞬間、炎の壁を突き破ってレイが高速で接近。

 

無防備に晒された身体に、レイは拳を振りかぶる。

 

 

 

 

 

その瞬間、アルフィアの表面から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「【福音(ゴスペル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────【サタナス・ヴェーリオン】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、膨大な魔力の解放が全てを蹂躙した。

 

────────────────────―

 

「あ゛ぁ...!痛ってぇ...」

 

吹き飛ばされた俺は魔法の衝撃で身体中に痛みで痺れ、服は所々裂けてしまいボロボロになっていた。

 

結構、この服気に入ってたんだけどなぁ...

 

 

そう名残惜しく思いながらも俺は徐々に痛みが引いてきた体を起き上がらせる。

 

その時、視界に映ったのは、吹き飛ばされた俺とアルフィアの間の道が全て抉り取られ、更地のようになっている光景だった。

 

「なんつー威力…だよ。まじで、バケモン…だな...」

「どの口がほざく。あの一瞬で、幾重に壁を張って私の魔法威力を弱めただろう。だからあれを喰らっても喋る余裕がある。全く、腹立たしい」

「最期のいるか?にしても、なんだよこの魔法。隠してたのか?」

 

俺が軽口を叩いた後でそう問い質すと、アルフィアは自身の手に突き刺さった刀を抜いてから答える。

 

「私の魔法、『静寂の園(シレンティウム・エデン)』は確かに、外部からの魔法を無効化する。だが同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから付与魔法を解いて、魔法を撃った、それだけだ」

「今までのは、弱められた力の末端に過ぎなかったってことか。ふざけやがって」

「それはお互い様だ。お前こそあの時、どうやって私の魔法を切った」

「俺の炎は元々害意を拒絶する性質を持ってんだよ。だからあんぐらい炎を凝縮すれば魔法も裂断できる。と言っても込める言霊が多くなる程その分消耗も激しいけどな」

 

まぁ、それはアルフィアも同じようなもんか。あんな砲撃ばかすか連発できてたんなら服だけじゃなくて体もズタボロだわ。おそらくあっちにも、それなりにリスクがあるんだろ。

 

「私の魔法をどうやって捉えた?」

「それは、まぁ...()

「勘...勘か」

 

俺の発言を聞くと、アルフィアはくつくつと笑い始める。

 

「いやまぁ、自分でも馬鹿っぽいとは思ったけど、笑うことはないだろ...」

「そう怒るな。別に馬鹿にしているわけではない。ただ...お前も存外、人の領域を越えているな」

「それ、褒めてんの?貶してんの?」

「好きに捉えろ」

 

そして、アルフィアに投げられ突き刺さった目の前の刀を引き抜き、もう一度構えようとしたその瞬間────

 

そう遠くないところから大きな爆発音が聞こえてきて俺は驚いて振り向き、アルフィアは不快そうに顔を顰める。

 

 

「────やれやれ、オリヴァスの奴。控えろと言ったはずだが...しかも、よりによって俺達の目の鼻の先とは」

 

 

そんな中さっきまで傍観を决め込んでいたエレボスがそう言ってこちらに歩いてくる。その横にはさっきまでいたはずのヴィトーとかいう男の姿は見えなかった。

 

「アルフィア、用事ができた、悪いが今日は帰らせてもらう」

 

俺は刀を鞘に収め、アルフィアたちに背を向けて走り出そうとする。

 

「まぁ待て、レイ」

 

それを後ろからエレボスに呼び止められる。

 

「なんだよ。生憎と今あんたと問答するつもりはないぞ」

「そうツレナイこと言うなよ。それに今お前があそこに行くなら、アルフィアもそっちへ向かわせることになる。果たして、アルフィアと戦りあったらどれだけの無垢の民が犠牲になるだろうな?その点、今俺の話に付き合ってくれたなら、彼処には俺からは手を出さないことを約束する」

 

「おいエレボス。私に雑音の増長を手助けしろと?巫山戯るな。眷属はおろか、貴様の犬に成り下がったつもりもないぞ」

 

「そう言うな。これが終われば、俺はもう余計なことは一切しないと約束しよう。お前たちの望み通り、『計画』を一気に進めてやる」

「....」

「だから今は、お前はここで周囲一帯を守れ。この場所に誰も近づけるな。レイとの会話を邪魔されたくない」

「....いいだろう。最初に誓った『契約』に従って、騙されてやる」

 

アルフィアは嫌々ながら仕方ないといった様子でこの場を離れていく。それに少し周囲に意識を向けると自分たちを大きく数人で取り囲んでいる気配を感じる。

 

なるほど、アルフィアと戦う間にまんまと舞台に上げさせられたってことか。本当にこの神は気に食わねえな。

 

「はぁ…この前が最後だったんじゃねえのか?」

「俺は邪神だぞ?嘘なんて平気でつく」

「自分たちは子供に嘘を許さないのにか?神ってやっぱいけ好かねー」

「神は総じてそういうものだ」

 

俺はため息をついて、目の前の男神と正面から向き合う。

 

「早くしろよ」

「そうだな。じゃあ始めるか....『絶対悪』と『英雄』の語らいを」

 

そう言ったエレボスは、その薄気味悪いその顔がより一層不気味に笑う。

 




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