先導の英雄   作:無銘のヲタク

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まじで久し振りに書く気がおきて、出させていただきました。

もうみんな覚えてないでしょ…これからはちょくちょく書いていきます。




勇者の決断

 

 レイ達が地下でアルフィアとの戦闘中、地上では冒険者と闇派閥(イヴィルス)の総力戦が続いていた。

 

 開戦と同時に四方の門を破り大量のモンスターが侵入、街中に冒険者があまりのいないのを見て、闇派閥達は氷壁で囲まれた中央広場(セントラルパーク)内にザルド討伐のための部隊が待ち構えていると踏んで、数人の冒険者で守られている五箇所の防衛拠点をそのモンスターで攻め落とそうとする。

 

 しかし彼らの思惑は外れ、中央広場には完全装備のオッタルがいて現旧最強の冒険者の一騎打ちがオラリオ全体を戦いの衝撃で激しく揺らす。

 

 さらには市民たちが匿われている防衛拠点は囮、街中から姿を隠してきた大量の冒険者達が現われ、一世一代の防衛戦が始まった。

 

 苦戦しながらも都市に溢れるモンスター達を減らしていると、戦いの衝撃とは違う、下から響く震動が都市を襲う。

 

地下(した)は随分盛り上がってるみたいだな」

「ヴァレッタ様っ、この衝撃は....!」

「狼狽えんじゃねえ。この衝撃が募れば募るほど、私達の勝ちが近づく。オラリオ崩壊の秒読み(カウントダウン)ってなぁ....だが、()()()()()()()。僅かだが震動(これ)で奴らの()()()()()()()()()()

 

 ヴァレッタは都市を滅ぼす『大最悪』(モンスター)の到来が近づいていることに動揺する様子を見せる冒険者達を見て、その邪悪な笑みを強く深める。

 

「絶好の『潮』だ。ここで『札』を切る!調教師共(ジュラたち)を呼べ!都市を護る冒険者(バカども)を絶望させてやる....!」

 

 ────────────────────

 

「!!今度は何だ....」

 

 突然、都市の各地から激しい音が響き、防衛の司令拠点にフィンは驚き、目を見張る。

 

「団長ッ!」

「ラウル、何が起きた?」

()()()()()()()()()()!!しかも、今までとは比べ物にならない強さの大型モンスターが多数出現して、防衛に回る冒険者達が次々とやられていくっす!!」

 

 ラウルから伝えられた情報に驚愕し、フィンは頭を悩ませる。

 

「!!(ヴァレッタめ、まだ僕達が感知していない『隠し玉』を持っていたか....!)」

 

 突然現れたモンスター達は、闇派閥が人造迷宮(クノッソス)に隠してきたダンジョン由来のモンスター。そのどれもが『下層』や『深層』から連れてきた上級冒険者でもやられるようなモンスターばかりで、その強さは先程までの有象無象のモンスター達とは比べ物にならない。

 

「それらのモンスターのせいで、都市に散らばっていた斥候部隊は全滅!『砦』の守備隊も瓦解寸前!各部隊、闇派閥を包囲していた陣形を維持できません!!」

「....ッ!陣形を変更、『砦』の防衛を最優先!街に被害が出てもいい!迎撃を『魔法』主体に切り替えろ!」

「は、はいっ!」

 

 ラウルに指示を出し、打開策を練ろうと頭を働かせていると、今度は中央広場の方から轟音が響く。

 

「今の音は....まさか!」

 

 ────────────────────

 

「ぐっ、うぅ....!!」

 

 ザルドの猛撃を受け、傷だらけになったオッタルが膝をつき、苦悶の声を上げる。

 

「.....もう終わりか、糞ガキ。これならばアルフィアの方に行って、アイツと戦り合った方が良かった」

「アイ、ツ.....?」

 

 オッタルはザルドに戦いたいと言わしめる者が思い浮かばず、疑問を浮かべる。

 

 

「今から死ぬお前が知る必要はない。貴様が息絶えた後は、そうだな....この『バベル』の頂上に鎮座するお前の主神(はは)の命をいただくとしよう」

「ッッ!!あの方には....指一本触れさせんッッ!!」

 

 敬愛する自身の主神を『殺す』と、目の前で言われ、誰よりも忠誠心の強い彼が黙っていない。体中の傷から滲み出す血などお構いなしに、自身の巨体に力を込める。

 

 

「ならば立てッ!その得物で身体(にく)を裂きっ!俺を喰らってみせろッ!!」

 

「────────オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 戦士の叫びとともに、再び両者は激しく衝突する。

 

 

 

「【猛者(おうじゃ)】が立った....!」

 

「....ッ!指揮を立て直せ!この剛剣の音が途絶えない限り、オラリオは負けない!」

 

「【猛者】がつけた火を無駄にしてはならない!!都市に灯ったこの炎が消えた瞬間、私達は負ける!!」

 

「全員....戦えええええ!!」

 

 

 

 再び響き始めた戦いの轟音は、他のものに投資を伝播させる。冒険者達は終わらせまい、と自身を奮い立たせ、剣を執り、迫り来るモンスター達に敢然と立ち向かう。

 

 

 ────────────────────

 

「オッタル....!」

 

 都市最強の奮起で、オラリオは辛うじて息を吹き返す。だが、士気がどれだけ上がっても戦力が上がったわけではなく、都市中に溢れ返るモンスターの進撃は止まることがない。

 

「!!中央広場北部に敵のさらなる増援を確認!結界にモンスターが流れ込もうとしています!」

「ッッ!ヴァレッタ、闇派閥の雑兵を『餌』にモンスター達を中央に....!ザルドとの決着が着く前に終わらせる気か!」

 

 モンスターによってオッタルがやられ、抑えられていたザルドが解放され、都市は壊滅....最悪の展開(シナリオ)を思い浮かべ、フィンは苦虫を潰したような表情になる。

 

「(どうする....!『砦』の防衛をする冒険者を中央に少し回すか?いや、駄目だ。『砦』の方も今の戦力でギリギリ現状を保っている状態だ。あくまで最優先は『砦』にいる市民の防衛、人員が減ってそれが崩れれば、それこそオラリオの終わりだ。それに生半可な戦力では、モンスター達に返り討ちにされるのがオチ....)」

 

 かと言ってこのままにしておけば、それこそザルド解放によって終焉(ジ・エンド)。それをわかっているが故に、フィンも焦り、思考を巡らせ続ける。

 

「団長、何か作戦をっ!」

 

「(考えろ...!考えろ、【勇者(ブレイバー)】!!どうすれば市民を犠牲にすることなくモンスターを殲滅できる....!)」

 

「団長....!」

 

 いつもその化け物じみた頭脳で自分たちの窮地を脱してくれたフィンが、必死に考え、苦悩している様子に少し心配になりながらも、彼を信じるように団員は声を上げる。

 

 

「(何かないか!この状況を逆転できる何か....!何かないか....何か──────っ?)」

 

 目を少し開いた一瞬、ほんの僅かに見えた光景にフィンは思考を止める。

 

「団長?何を見て....え?あれは....」

 

 

 

 

 

「......ノアール?」

 

 

 

 

 

 動揺するフィン達の目に映ったのは、自分たちのファミリアの老兵(ロートル)、ノアール、ダイン、バーラの三人、配置された陣形を離れ、三人で()()()()()()()()()に向かって走っている様子だった。

 

「皆さん、何を....!そっちには増援されたモンスター達がっ!」

「ノアール......まさか」

 

 

命を懸けた『特攻』

 

 

 衰え行く自身の肉体を恨む者達が、ならばせめて命の最期の輝きを以て、未来を歩む若者に希望を託さんと怪物共の荒波へとその身を投じる。命の灯火を燃やし、モンスターに突貫するその姿には鬼気迫るものを感じに、周りの者も彼等の意志に同調を始める。

 

 

「おい....嘘だろう?────―行くなっ、おい!!」

「待てっ!!勝手は許さん!持ち場にもどれ!」

「そうだよっ!みんな、何処行くの!!」

 

 

 奴らにだけ良い格好をさせまいと、周囲の『砦』から熟練の冒険者達が次々と出ていく。勇敢な獣人の大男が、青髪の少女が、いつもは冷静な団長でさえも声を上げ、彼等を呼び止めようとも彼等は決して振り返らず、最後の戦場へ向かう。『死の風』に煽られ加速する彼等を止めるものはもう何もない。

 

 

「あぁ?都市中からぞろぞろ出てきやがって。馬鹿共がっ!そんなんで大群(モンスターども)が止められるかよ!!『特攻』だぁ?笑わせんな!!てめえ等はただ無駄死にするだけだぁ!!」

 

 

『悪』の嘲笑う声が聞こえようと、泣き叫ぶ声も置き去りにして、死に場所を求める老兵達はモンスター大群へと集っていく。

 

 彼等の顔に恐怖はない。

 

 あるのは未来に全てを託して散る華々しい最期を迎えることのできる喜びや興奮で浮かぶ笑み。

 

 笑いながら、モンスター達に立ち向かう彼等の気迫に、闇派閥達もたじろぎ、恐怖すら覚えた。

 

 

 だが、彼等の決死の突撃も限界を迎える。

 

 怪鳥の翼が────

 

 飛竜の息吹が────

 

 白虎の爪刃が────彼等の身体に傷を増やし、血を吹き出させ、急速に彼等を『死』へと近づけていく。

 

「団長っ、早く援軍を!ノアールさん達を助けに!!」

 

 自分の恩師達が死地へと向かうのをそう安々と看過することができるわけもなく、必死な表情でラウルはフィンにノアール達も救援するように指示を仰ぐ。

 だが、フィンは俯いて…まるでこれから発する指示に抵抗するように口を閉ざす。

 

「........()()()()()()()()。残っている部隊は『砦』の防衛を続行」

 

 数瞬の沈黙の後、絞り出すように零れた言葉。彼が下したのは何処までも合理的で、かつ非情な決断。

 

「ッッ!!そ、そんな....!!」

「ノアール達の『()()』のせいで、陣形に穴が空いた....それを塞ぐように徹底。反抗は許さない」

「うぅ....!団長ぉ!!」

「各拠点....民衆の護衛を最優先だ。従え、ラウル」

「嫌ですっ、嫌だ!!自分はっ、俺はぁ!!あの人達に助けられてばっかりで!何も返していないのに!!」

「........」

 

 

 泣き喚くラウルを前に、フィンも鉄仮面の内で歯を食いしばる。彼だって冒険者としてあらゆることを教えてくれた彼等を死なせたくない。だが、先も言ったが最優先にすべきは民衆の護衛。隊列を乱した彼等を助けるために兵を使えば、その分『砦』が手薄になる。

 民衆が危険になるような選択を彼は、【勇者(ブレイバー)】は決して行わない。

 

 けれど決して、彼の判断が『間違ってはいない』。

 

 彼等によって北部にモンスターが僅かに集中したしたところで、『砦』付近の敵を弾圧、その後老兵達の奮闘によって留まっていた中央部のモンスターを全戦力を以て殲滅する....死にゆく老兵を犠牲に都市の勝利を、次の世代の未来が手に入る。

 

 それの何が間違っていようか。その決断を下した彼を誰が責めることができようか....だから、

 

 

「(これでいいんだ。ノアール達老兵という最小の犠牲で、都市を生存させる。それが【勇者】(ぼく)がするべき『最良』の選択......)」

 

 

 拳を血が滲むほど握りしめながら、自分自身にそう言い聞かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは【勇者】じゃなくて、ただの小人族(パルゥム)への贈り物です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 苦悩するフィンの脳裏に、決戦前の夜に、御礼の品を渡しに来たレイと、その時にした会話が思い出される。

 

 

 

 

『これは....魔剣、いや魔槍か』

『正解。急拵えで一本しか作れなかったけど、その分威力は保証しますよ』

『!!驚いた....これは君が打ったのか』

 

 少し驚いて、フィンはその青と赤で彩られた槍を手にとり、その完成度に舌を巻く。

 

『......うん、ありがとう、レイ。大事に使わせてもらうよ』

 

 フィンが魔槍をテーブルに置いてから、レイにそう感謝を告げる。

 

 

『それはもう、フィンさんの好きなようにしてくださいよ。例えば、ムカつくやつの尻にぶっ刺したりとか....』

『しないよ?』

『え、しないの!?』

 

 

 そんな馬鹿なことに使うと、驚いているようレイの様子を見るに本当に思っていると感じて、フィンは肩肘をついて、ため息を漏らす。

 

 

『君は僕を何だと思ってるんだい....』

『人の皮を被った悪魔』

 

『『それは間違ってない』』

『....』

 

 

 リヴェリアとガレスの二人に即答され、フィンは何とも言えないような表情になり、レイはフィンに背を向けると、堪えきれずに笑う。それがひとしきり収まるとレイは「すいません、すいません」とさっきの冗談を謝罪する。

 

 

『まぁ、ホントのところ、そいつはフィンさん個人へのプレゼントなんで、フィンさんの自由に使ってください』

 

 

 そう言うレイは笑っていながらも、その目はどこまでも真剣だった。

 

 

 

 

 

 

 

「──────ラウル。中央通りにいるノアール達以外で、各地区の新たに現れたモンスターに向かった熟練冒険者達に中央に集めるように指示を出せ」

「え?」

「ノアール達の所には()()()()。だから、少しの間、ここの指揮を任せたよ」

「!!そ、そんな団長一人でですか!?危険ですッ!!」

「そんなのは百も承知さ。じゃあ、頼んだよ」

「ちょっ!?だ、団長!!?」

 

 フィンは声を上げるラウル達を置き去りに、立てかけておいた『魔槍』を手に持つと、高台から一気に飛び降りて、中央通りまで地を駆ける。

 

 

 

 

「!!おいおい、大将が一人でのこのこ敵陣に出てくるたぁ、いつもの冷静さがどっか行っちまったのか、フィン!!」

 

 いつものフィンらしくからぬ、『単騎駆け』という行動に、土地狂ったのかとヴァレッタは狂喜に嗤い、そして何か指示を飛ばす。

 

 すると、どこからともなく闇派閥の冒険者達がフィンの行く手を塞ぐように姿を現す。

 

 ヴァレッタはフィンの瞳の色が青であることを視認し、理性と引き換えに自身のステータスを大幅上昇させる狂化の魔法が使われていないことを確認した。故に彼女はフィン用に隠していた冒険者達を向かわせたのだ。

 

 複数いる冒険者の中にはレベル2、3の冒険者だけでなくレベル4の冒険者も含まれており、レベル5のフィンでも容易にあしらうことは出来ず、例え、狂化の魔法を使おうとも、理性を失った状態で暴れさせた後でなら自身で対処できる。

 

 敵の大将を仕留め、戦局が一気に傾く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

「────────邪魔だ」

 

「「「「ぐわぁぁぁぁ?!!!」」」」

 

 

 

「..................は?」

 

 

 

 十数人に及ぶ上級冒険者達が数瞬の内に斬り伏せられる。

 

「何がどうなって....!確かに今もフィンの野郎の()は変わってねぇ!だってのに....何だその馬鹿げた()()はっ!?!」

 

 自分の描いたシナリオが一瞬にして崩れ去り、ヴァレッタは大きく狼狽し叫び声を上げる。

 

 そんなヴァレッタを横目に、フィンは魔槍から溢れ出る()()を身に纏い、目標へと加速する。

 

「(この雷、これがこの槍の力....確かに今なら何でもできる気がするよ)」

 

 そこから出てくるあらゆる敵を次々と瞬殺し、一度も足を止めることなく、全速力で駆ける。そして────

 

 

 ────────────────────

 

 

「.....ここ、までか」

「俺もだ。もう腕が上がらん」

「私も、全員ぶち殺してやるつもりだったんだがねぇ。まったく....年は取りたくないもんだ」

 

 

 押し寄せるモンスター達を我武者羅に、武器が駄目になれば倒したモンスターの武器を手に取って、身を守る盾が壊れれば、そこらにまだ消えていないモンスターの残骸を盾に身を守る....

 

 あらゆる手段を使い、意地でも粘って、できるだけ多くのモンスターを殺し続ける。

 

 だがそれでも、時間が経つにつれて、その老いた身体に傷が増えてきて、息も荒く、動きは鈍く、口から多量の血を吐き出している。

 

「なら、最期くらい派手に散るとするかのぅ....」

 

 ノアール達は自分達の懐に隠し持った大量の()()()を、そして今も尚迫りくるモンスターの大群を前に、自分の命を犠牲にする覚悟を決める。

 

「(フィン....後は頼むぞ──────)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、目の前に流星が落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ッ!!?」」」

 

 衝撃による土煙が視界を埋め尽くし、表情を驚愕に染めたノアール達がそこで目にしたのは....

 

「フィン.....!!」

 

「やぁ、手伝いに来たよ、ノアール」

 

 いつも通り、涼しい顔で槍を掲げ、こちらを向く団長の姿だった。

 

 

 ────────────────────

 

 

「フィンッ!!何故来た!!?」

「そんなの、ノアール達を助けに来たに決まってるだろう?」

 

 

 必死な形相で言葉を投げ掛けるノアールと違い、飄々とした様子でフィンはそう答える。その間にもモンスター達は迫ってくるが、魔槍による付与(バフ)によって加速したフィンが瞬時に処理し、その様に他のモンスターも少し押し下がる。

 

「....私等はもう冒険者としての人生は長くないんだ。だから、未来を残すために」

「新しい希望を潰えさせんがために犠牲になろうとしたっ!それなのに....彼等の代表たるお前が来ては意味がないだろう....!!」

 

 そんなフィンの様子にノアールに次いでバーラもダインも声を大にして言うが────

 

 

 

 

 

 

 

()()()

 

 

 

 

 

 

「「「......は?」」」

 

 いつもの彼ではなく、それはそう、かつて【ロキ・ファミリア】に来て、荒れていた頃のフィンのような口調で、流石の三人も口をあんぐりとさせて思わずそう声を漏らす。

 

「勝手に預けて、全部若い奴等に任せて、自分たちは先に行く?冗談じゃない。楽しようとしてるのか?お生憎様、僕は使えるものは何でも使う主義でね。老兵の君たちにも休む暇なんて与えるつもりはないよ」

「お、おい、フィン。今は冗談を言っている余裕は──―」

「それに....」

 

 

 

 

 

『まぁ、ぶっちゃけ…半分くらいは俺のお節介というか、我儘の部分もあるんですけどね』

『我儘....?』

『俺の昔の知り合いでですね?それはもう、皆の前じゃ無理にでも気丈に振る舞ってるけど、根は誰よりも小心者で好きな女の子に思いも伝えられないような臆病なやつだったんですよ』

 

 そう楽しそうに語るレイの姿は、昔を懐かしむようで、加えて何処か楽しそうにも見えた。

 

『おまけにフィンさんと似て、手段を選ばないタイプでして。『九』を得るために『一』を犠牲にするような現実家なところもあったせいなんですかね?最期は自分っていう『一』を犠牲にして、そいつは何千、何万の命を救った』

 

『!!』

 

『けどアイツがいなくなったせいで、たくさんの仲間が泣いてた....『最良の未来』のために自分すら犠牲にする…そういう意味でもアイツは誰より『勇気』を持ったやつだった。それは認めます』

 

 でも…そう続けて、レイはフィンと向かい合うと笑って言い放つ。

 

『そんなん夢物語だって言われるかもしれないけど、俺は....』

 

 

 

 

 

 

「『大切な人を誰も失いたくない』」

 

 

 

 

 

「!!」

 

 突然溢れた、彼らしくもなく、戦いに身を置く者にとっては夢物語のような....そんな『願い』を聞いて三人は目を見開く。

 

「誰かが悲しむ姿を見たくない。誰も失うことなく、皆が【ロキ・ファミリア】(家族みんな)が笑っている姿を見ていたい」

 

『仮面』を崩し、内から溢れ出す感情を言霊に乗せ、全て吐き出す。

 

「だから──────

 

 

生きてくれ

 

 何処までも続く空の如き、その蒼き双眼は真っ直ぐノアール達を見つめる。

 

「何かの犠牲の先にある『最良』の未来じゃなくて、全員が笑ってる『最高』の未来を得るために....最後まで僕たちと一緒に戦ってくれ」

 

 その言葉は【勇者】(フィン)ではなく、『ただの小人族』のフィン・ディムナが芯に願う理想論。どこまでも現実主義な彼が言うとは思えない言葉。それに三人は面食らうが、僅かに微笑み…そして────

 

 

「........はぁ、仕方ないのう。他ならぬ団長の頼みじゃ。断るわけにはいかんなぁ....!」

「折角、もうお前らの面倒を見ずに済むようになる思ったのにのぉ」

「まったく....こんな衰えゆくだけの老兵すらこき使うなんて、人使いの荒い団長だね」

 

 

 そう悪態をつく三人だが、言葉とは裏腹に表情はどこか嬉しそうで、そこからはさっきまで浮かんでいた『死』に対する諦めのような感情は綺麗サッパリ消えていて、それを見たフィンも自然と笑みをこぼし、三人に自分が持っていたポーションを渡す。

 

「......して、フィン。なにか作戦はあるのか?」

「ああ。そろそろかな?」

 

 フィンがそう言った瞬間、各地で戦っていた熟練冒険者達が次々と現われ、ドワーフ達は盾を、エルフは弓を、各々が自身の持てる武具を構え、ある方向を見据える。見つめた先にある中央通りには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がこちらに迫ってきているのが見えた。

 

 

「フィン....!これは....」

「さっきラウルに他の老兵たちにモンスターを中央通りに誘導するように伝えさせた、ここで一気にモンスターを殲滅する」

「どうやって?あの数の化け物共だ。生半可な策では飲み込まれて終わりだぞ」

『魔槍』(これ)を使う。使えるのは一回きり、放つのに少し時間がかかる、それまで僕の事を守っていて欲しい」

「勝算はあるのか?」

「さぁ?これに関しては正直わからないね」

「おいおい....」

 

「でも....僕はこれを託してくれた『英雄』(かれ)の言葉に信じて賭けてみるよ」

 

「!!はっ!お主が確証もなく、『信じて賭ける』と言うかっ!」

「明日は槍でもふるんじゃないか?」

「君等の僕の評価って、全員そんな感じなのか....」

 

 フィンは同期の幹部二人にも同じように言われたのを思い出して、思わずため息をつく。

 

「さて....そんな珍しい明日を得るためにも、いっちょ気張ろうかいっ!!」

「「おう!!」」

 

 そうして、三人は自分の心を奮い立たせるように大きく叫びを上げ、再びモンスター達に武器を振るう。

 

 今度は老兵達の我が身を賭した『特攻』ではなく、今ある『希望』を護るため、そして()()()()()()の防衛戦が始まった。

 

「頼もしいね....じゃあ、僕も始めようか」

 

 自身を護る彼等の背中を前に、フィンは槍を横にして、もう片方の手を刃に添えて構えると、

 

 

「──────【不断の蒼炎。萬滅の紅雷。(しん)に眠りし英雄の願い(ゆめ)】」

 

 

()()を開始した。

 

 

「【唸り、轟き、盛り、嘶き、遍く力の双流は世界に満つ】」

 

 

 

「うおおおぉぉぉ!」

 

 老兵たちの『死への覚悟』は、今度はフィンという切り札を『護る覚悟』へと変わり、その強さは先程までの戦士の猛りを甦らせる。

 

 

「【刮目せよ。未来明かす勇槍の奮迅を】」

 

 

「ガアァァァァァ!!」

「ぐうっ!?」

 

 オラリオの中の老兵が集まった。それは怪物たちの収束を表すのと同義。その猛攻は今までとは比にならない。だが……

 

「おい!なに力負けしてんだっ!」

「お前らドワーフ(ジジイ)はその盾で護るぐらいしか能がないだろうが!守れない盾なんて役立たねえぞ!」

「っ!うおおおお!!!」

 

 彼らは折れない。自分達が最後の砦だと、持てる全てで立ち向かい続ける。

 

「クッソ!儂は元々こんなことせずとも普通に引退できたってのに。何でこんな無茶しとんじゃ!」

「無駄口叩いてる暇があったら一匹でも多くモンスターを討て!それにただ普通に引退するより、勇者を守りきって辞めたほうが格好がつくだろ!」

「はっ!それもそうだな!」

 

 

 

 

「お主ら!護れ!但し死ぬことは許さん!この場に人間全てを守り抜け!!!終わる筈だった人生だ。せめて冒険者じゃなくなる前に、最後の『冒険』じゃ!!」

 

 

 

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

 

 

 

 

 ノアールの言葉を口火にモンスターたちへ驚異的な反撃を見せる老冒険者達。それを見てフィンは少し微笑む。

 

 

「(ありがとう。僕達より長くこの街で生き抜いてきた歴戦の猛者たちよ)

 

【蛮勇を叫ぶ歌は今終わる】

 

【剣に願え。勝利を望め。渇望の先に理想はある】────!!

 

 ノアール!!」

 

 

「!!お前らどけぇぇぇ!」

 

 ノアールの号令でフィンを守る全ての冒険者が眼前より消え、モンスターの波が勢いを増す。

 

 だが、フィンの表情に恐れはまるでない。彼が授けたこの槍には目の前の怪物全てを屠る力があると理解できるから。故にフィンはその顔に彼のような()()()()()が浮かべる。

 

「ッ!!おい!化け物どもっ!そいつを…フィンを今すぐ殺せぇぇぇ!!」

 

 フィン、そして彼が持つの槍の異常な存在感に怪物達に号令を上げるが、もう遅い。

 

 フィンはその槍を頭上に掲げ、()()を込める……!

 

 

 

『フィンさん。そいつを使うってなったら願ってください』

『願う……?』

『願えば…その思いの分だけそいつはあんたに力を与えてくれるはずです』

 

 

 

「(とっくに真の英雄を諦め、『人工の英雄』になったにすぎない僕でも赦されるのならば……

 

『俺』は全てを守りたいっ!!)」

 

 そんなフィンの願いに呼応したのか、魔槍に宿る光が増すした。

 

「………ありがとう、英雄(レイ)…!」

 

 逆手に持って掲げた槍に自分の全身全霊の力を込め────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────【駆け抜けろ】!『颯牙』(ソウガ)!!」

 

 ────放たれた。

 

 

 

 一人の願いが籠った猛る雷炎は投擲共にその苛烈さが、進むごとに増し、迸り、目の前の恐ろしい怪物達を有象無象の如く蹂躙していく。それはまるで嘗ての勇者の一走の如くひたすらに前へ……前へと突き進む…!

 

 

 

 そして、その槍が突き抜けた場所から……

 

「…………嘘だろ」

 

 

 

 あれほど溢れかえっていた怪物達の姿が()()()()()()()()()()

 

 

 

 上級冒険者も苦戦するようなモンスターもその全てが一掃された。

 

 いや、それ以上に可笑しいのがモンスター達を消し去るほどの威力であった筈にもかかわらず………

 

 

 道や街には()()()()()()()()()()()()()

 

 

「(『全てを守る』……僕の願いに呼応して、街や人以外を焼き尽くしたのか……?)ははっ。これは凄いな……!」

「おい、フィン。これは……」

「お生憎様、僕にも分からないよ。ただこれだけは言えるさ……情勢が変わった

 

 そう言うと、精神力疲労(マインドダウン)で倒れそうな体を奮い立たせ、自分の本来の槍を持って掲げる。

 

 

「見たか!オラリオの冒険者達よ!今戦況は一変した!恐ろしき怪物の大群を()()()()()()()()によって打ち倒した今こそ、反撃の時だ!

 

お前達の持つ全ての力でこの戦いに決着を着けろ!

 

 

 

「「「「ッ!うおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

 

 

 オラリオ中の叫びを聞いてから、フィンは突然膝を着くが、周りが心配するような声を上げる暇なく槍を支えに立ち上がる。

 

「ほれフィン、マジックポーションだ」

「ありがとう、ノアール………はぁ」

「しかし、あれほどのモンスターを壊滅させるとは……お前の言う英雄は何者なんだ?」

 

「……僕だってよく分からないよ。ただ分かるのは女の子と約束は必ず守る男ってことだけさ」

 

「何だそれ。それはそうと……」

「………何だい、そのニヤケ顔は…」

「いやなにお前が儂らのことをそんなに大切にしてくれてるのかぁ~と思ってな?」

 

「……掘り下げないでくれよ。恥ずかしい」

 

「断る!お前が泣くまではこの話は擦り続けてやる」

「他の奴等にも広めてやる」

「精々、私らを生き長らえさせたことを後悔しなっ!」

 

「ははは…やれやれ、参ったなぁ」

 

 口ではそう言いつつ、フィンは笑みを浮かべたまま空を見上げる。

 

 見上げた空は快晴とは言えずとも、その戦いの変化の兆しを示すように確かにその雲間から眩い光が差し込んでいる。

 

「(……レイ、そっちは任せたよ)」

 





ご都合主義すぎないって言われたら何も言えません……でも書きたかったんよ……!
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