先導の英雄   作:無銘のヲタク

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誤字報告・コメント・評価してくれた方、ありがとうございます!

また今回、物語的に大きな変更をさせてもらいました。

それは、レイのレベルを5から4に変更しました。これは…彼の魔法とかに関わってくる調整なので、気になった方は少し見直してもらえたら幸いです。




絶望

 

咆哮も爆炎も鳴り止み、階層に残るは辺りを埋め尽くす残り火と、散りゆく有象無象の断末魔。静寂が支配し始めたその場所で、女は『風』が消えた先を冷徹に見つめていた。

 

「──────オラリオを終焉へと招く『獣』は塵に還ったか…まあいい。潰えたのならばそれまでだ。それに…都市程度、私一人でも滅ぼせる」

 

 黒衣の女────アルフィアの表情に動揺はない。あるのは落胆と、確かな破壊意思。

 18階層(ここ)を抜け、風前の灯火となったオラリオの熱を、自らの手で鎮めればいいだけのこと。

 

「ましてや──────

 

 無様にも抗う愚かな小娘共など、余程容易い」

 

「ぐっ………っあ……!」

「っ………ク、ソっ………!」

 

『悪』の女王を前にして、無惨に倒れ伏す正義の眷族たち。

 

「私を屠ると威勢よく啖呵を切った結果がこの様か…やはりお前たちは戯言を嘯くだけの『雑音』に過ぎない」

 

 苦痛に喘ぐ彼女たちを、アルフィアは価値なきものとして冷酷に切り捨てる。

 

「……出鱈目、すぎる……!」

「おいっ……話と、違うぞ…!どうなってやがる……!」

 

 相手との実力差に苦虫を嚙み潰したような表情のリューに対し、ライラはまるで不安や愚痴を溢すように口を開く。

 

「フィンの話じゃ……あの怪物は不治の病のせいで限られた時間しか、戦闘が出来ねぇはずだろ…!けど、今のアイツは…」

「あれほどの連携と連撃を浴びてもなお、彼女の魔法も…戦いの冴えも。全く衰える様子がない……!」

 

 満身創痍の少女たちとは対照的に、佇むアルフィアには汗一つ、呼吸の乱れ一つない。

 

「……」

 

 実のところ、この事態はアルフィア自身にとっても想定外であった。

 

 いくら彼女と言えど、病に蝕まれた肉体(からだ)で、これほど長時間の戦闘を続けていれば吐血の一つや二つ起こしてしまってもおかしくなかった。

 だが、今の彼女はどれだけ攻め立てられようとその肉体が音を上げることもなく、寧ろ…以前より体が軽いとすら感じている。

 

 そして、そんな違和感が生まれたのは、最初に『彼』と一戦交えた時からだった。

 

「(……まさか、な…)」

 

「不治の病を、()()()()()とでも言うのかよっ!」

「ッ!有り得ないだろ、そんなこと!どんな魔法も道具も使っても快復しなかったんだろ!?」

「それは……そうだけどよぉ……!」

 

「…………喚くな、小人族(パルゥム)

 

 絶望的な事実に声を荒らげるライラを一瞥し、アルフィアは静かに一歩、踏み出す。ただそれだけの動作で、周囲の空気が絶対的な重圧となって彼女たちを押し潰した。

 

「お前が何を嘆いたところで、私を前に屈するお前達のこの惨状…この結末は揺るがない」

「っ…!」

「ただ現実から目を逸らし、不幸を嘆くだけならば────潔くここで果てろ」

 

 アルフィアは今一度、正義の息の根を断たんと、その掌を前に掲げる。

 

「…………いいえ、まだよ!!」

 

 その重圧を前に、紅花の少女は剣を支えに立ち上がった。

 

「! アリーゼ…」

「『正義』は決して……『悪』に屈しない!あの人との約束のためにも、最後まで抗う!!」

 

「……来い。ここでお前達を葬り、私は……試練を始める」

 

 アルフィアの静かな、だが絶対的な宣告と共に、地獄の再戦が幕を開けた。

 

「行くわよ、リオン! 【アガリス・アルヴェシンス】!!」

 

 アリーゼが全身に紅蓮の炎を纏い、目にも留まらぬ速さで突っ込む。それを補佐するように、リューが翡翠が嵐の如き連撃を放ち、アルフィアの意識を正面に釘付けにする。

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!!」

「シッ!!」

 

 盾役のガレスを欠いた今、一撃でも喰らえば終わり。だからこそ、彼女たちはこれまでの人生で最も研ぎ澄まされた連携を繰り出す。互いの動きを呼吸で読み、死力を尽くしてアルフィアの『静寂』を突き崩そうとする。

 

「策もなくよく攻めるな、小娘共。ただ勢いに任せるだけ……遮二無二か?」

「だって貴方、射程(レンジ)関係ないじゃない!近くても遠くても、簡単にぶっとばされるもの!」

「魔法を撃ち合っても、まず勝てない!ならば懐にもぐり込み、私達の得意な間合いで撃ち合うのみ!」

 

 だが、崩れない。どれだけ淀みのない連携を続けようと、アルフィアは涼しい顔で受け流す。

 

「(隙がどこにも見当たらない…!)」

「(死角が存在しない……!)」

 

 幾重にも重ねられた剣戟の嵐。しかし、その中心に立つ魔女は、まるで静止した時間の中にいるかのように、全ての攻撃を嘲笑うかのような精密さでかわし続けていた。どれほど激しく打ち合おうとも、彼女の纏う「静寂」が乱れる兆しは微塵も感じられない。

 

「(化物(バケモノ)が…!だが……まだ勝機はある…!)」

 

 全員の焦燥が募る中、ひとりライラは、自身の背負う『盾』に意識を向ける。

 

 それは、レイの助言を形にしたアスフィ渾身の魔導具──先刻、アルフィアに接触した際に彼女の『魔法無効化』の|付与魔法(エンチャント)を奪い取り、保持した盾。

 

 ライラの狙いは、アルフィアの持つ必殺の第三魔法。あの【福音】ですら凌駕する絶望的な一撃が放たれる瞬間こそが、唯一の勝機。それまでこの盾の存在を悟られてはならない。ライラはそう確信し、必死に『時』を待っていた。

 

「(こいつが決まれば……!)」

 

 それまではただ、自分達の命を繋ぎ止めることに尽力すればいいと──────

 

 

 

 

 

「──────お前はいつまで、その(がらくた)に縋っている」

「なっ……!?」

「ライラ────ッ!?」

 

 ライラの戦慄を置き去りに、アルフィアが踏み込んだ。回避不能の速度。女王の手指がライラの細い首を確りと捕らえた。

 

「ぐっ……がぁ……! は……な、しやがれ……っ!」

 

 自身の首を掴んで引き剝がそうとするが、相手はレベル7の怪物。圧倒的なステイタスの差を前に、ライラはただ藻掻くことしかできない。

 

「先程から私を見る打算に満ちた眼差し…煩わしいことこの上ない……。お前の願うは『勝機』は、(これ)だろう?」

 

 空いた手で、アルフィアはライラの背負う盾を無造作に奪い取る。

 

「この感触……やはり私の『魔法無効化(シレンティウム・エデン)』か」

「て、めぇ……いったい、いつから……!」

レイ(あれ)が私の魔法の絡繰りを暴いていた時点で、何かしらの小細工を弄するのは目に見えていた。その中、体躯に見合わぬ盾を背負い、意図の見えぬ『盾の突撃()シールドバッシュ』」

 

 敵に自身の魔法の性質を把握されているという状況下で、異質な行動を取る存在に、アルフィアは目をつけていた。

 

「極めつけは私の魔法(【サタナス・ヴェーリオン】)を喰らった時だ。自身の身を守るべき状況下でお前は、この盾を掲げることもしなかった」

 

 盾は当然、自分の身を守るためにある。それ故に、絶体絶命の場面でのライラの行動は、アルフィアの疑念を確信へと変えてしまった。

 

「これほどの証左があれば、莫迦でも合点がいく」

「っ……くそ、がぁ……!!」

「まずは一つ。お前たちの『希望』を除く」

「っ!!やめ──────」

 

 粉砕。

 ライラの静止を求める間もなく、アルフィアの魔法を打ち破る切り札は、あっけなく崩れ去る。

 

「…ちく…しょう…!!」

「次は…お前自身だ」

 

 首を捉える腕にさらなる力が込められ、ライラの意識が遠のいていく────

 

 

 直前────鋭い斬撃が側面より、突如襲い掛かる。

 

 アルフィアは咄嗟に手を放し、自らの腕を切り裂こうと振るわれた刃から距離を取った。

 

「──────大丈夫か、ライラ!」

「がはっ……! げほっ、ごほっ……はぁ、はぁ…輝夜」

 

 極東の女剣士が再び、アルフィアへと刀剣を構える。

 

「極東の娘…闇派閥(イヴィルス)共め。勝手に来たかと思えば、小娘一人に退けられるとは…他愛ないな」

 

「てめえ……遅えんだよ…!」

「悪いな。存外、あの害虫共を駆除するのに手間取った。ここからは私もこの女をぶちのめすのに参加する!

 

 合わせろっ!団長、青二才っ!!」

 

「「了解っ!!」」

 

 輝夜の号令と共に、三人が同時にアルフィアへと地を蹴って走る。

 

 アリーゼの炎の剣が────

 リューの疾風の如き一撃が────

 輝夜の鋭い抜刀が────

 

 それら全ての攻撃が殺到する戦場の中心で、アルフィアはなお『静寂』の中にいた。

 

 真正面から迫る輝夜の刀を、その側面に手の甲を添えるように受け流し、背後から迫るリューの刺突は体を旋回しながら最小限の動きで回避。そして、回転の勢いそのままに、振りぬかれた脚がアリーゼの剣を弾き出す。

 

 さらには、自身の横を過ぎてゆくリューの剣を左手で掴めば、その細腕では信じがたいほどの膂力で剣ごと輝夜へと投げ飛ばし、アリーゼには空いた右拳を叩き込む。

 

「「────ッ!」」

「重────ッ」

 

 直前に引き戻した剣の腹で拳を受けたアリーゼだったが、剣から伝わる衝撃を殺しきれず大きく後退する。

 

「小娘一人が加わったところで、何も変わりはしない」

 

 後方から飛んできた魔法がアルフィアの周りに着弾し、土煙を巻き上げる。

 周囲を覆う土煙がアルフィアの視界を遮り、アリーゼ達の姿を隠した。

 

 その機に乗じて、リューがアルフィアの背後から奇襲を仕掛ける。

 

「────無為だと言っている」

「がはっ────!?」

 

 だが、不意を突いたと思われた一撃でさえ、読み切られていた。掴まれた剣と共に地面に叩きつけられ、リューは苦悶の声を上げる。

 

 すぐさま、残る二人が左右から同時に剣を振るうが…

 

(くど)い」

 

「これも……!」

「化け物め……!」

 

 それすらも、アルフィアは顔色一つ変えることなく、指先一つで受け止める。

 

「っ…お前ら離れろぉ!」

 

 ライラの叫び声が聞こえると同時に、三人はアルフィアから距離を取る。直後、ライラの投擲した数個の爆弾がアルフィアの至近で炸裂し、爆炎と黒煙が彼女を飲み込んだ。

 

「ありがとう、ライラ!」

「ああ……これで多少は────」

 

「何度言わせれば気が済む」

 

 ライラの思惑とは裏腹に、爆炎の晴れた先に立つアルフィアには僅かな手傷も見られなかった。

 

「くそ……バケモンが…!」

「私達の全てが通用しない…!」

「っ!みんなっ、諦めちゃ駄目よ!」

 

 アリーゼの叱咤で再び武器を握る正義の眷族たち。だが、その心底に芽生えた『諦念』を完全に拭い去ることはできなかった。

 

 そこから再び始まる、怒涛の連携攻撃。炎を纏う少女が決死の表情で剣を振るい、一人のエルフは絶望に抗い、必死に大地を駆け、黒髪の極東姫は瞳に宿した怒りと共に僅かな隙へと刀を振りぬき、参謀を担う小人族(パルゥム)は狡猾に勝機を狙う。

 

 正義の眷族の誰もが全身全霊で、目の前の『悪』を倒すために、自らが持ち得る全てを賭して立ち向かう。

 

 

 

 

 ──────だが、その全てが届かない。

 

 少女が懸命に振るう剣は指先一つで弾き出され…

 纏う鎧は女王が振るう徒手一つであっけなく打ち砕かれ…

 浴びせられる魔法(ほうげき)も、彼女の魔法の前に塵と消える。

 

 少女たちがどれだけ必死に立ち向かおうと、女王はその全てを嘲笑うように撥ね退ける。

 

 その光景は、もはや戦闘と呼べるものではなかった。

 どれほど鋭い一閃も、漆黒の衣を掠めることすら叶わない。

 どれほど熱い紅蓮の意志も、氷の如き冷徹な「静寂」に触れた瞬間に凍りついていく。

 

 圧倒的な「個」の暴力。レベル7の真髄が、残酷なまでの現実となって正義の眷族を蝕んでいく。

 

 一度、二度、三度。

 

 何度地面を蹴り、立ち向かおうとしても、次の瞬間には冷たい土の味が口の中に広がっていた。

 肺は酸素を拒み、折れた肋骨が悲鳴を上げ、握りしめた剣は、もはや鉄の塊としての重さしか感じられない。

 熱狂は冷め、希望は煤け、残るのはただ、抗いようのない絶対的な力への戦慄。

 

 ──そして。

 

 気づけば、少女たちは『悪』を前に再び膝をついていた。

 

「はぁっ、はぁ……ッ!!」

「…理解したか。自分達がどれほど無力な存在なのかを」

 

 ひれ伏す彼女達を前に、ただアルフィアは事実を語るように淡々と告げる。

 

「…くそっ…」

「私達じゃ…どう足掻いても倒せねぇってのかよ…!」

「その通りだ。もはやお前達に残されたのは、あの男の怒りを引き出す(にえ)となるくらいの役割しか持ち得ない」

「っ…貴女ってば、さっきから口を開けばレイのことばっかり…!」

「彼の何が、貴女を固執させているのですか…?」

 

 リューの問いかけに対し、アルフィアは一度沈黙し、数瞬してその口を開く。

 

「──────あれが『英雄』だからだ」

「「「!!」」」

「あの男が都市を救う『英雄』である限り、私達は『試練』を与えなければならない」

 

 故に。そう言葉を続けた彼女の体から爆発的な魔力が溢れ出る。

 

「────ここで潰えろ。

 

福音(ゴスペル)】────サタナス・ヴェーリオン」

 

 轟音。

 再び紡がれた『音』の叫喚が、彼女達が驚く間もなく…全てを飲み込んだ。

 

 轟音が鳴り止み、吹き上がった土煙が晴れた先に広がるのは、正義の眷属の惨状──────

 

 

 

「──────ちっ」

 

 

 

 なんてものは存在せず、代わりにそこにあったのは…彼女達の前に聳え立つよう()()()()()()()の壁。

 

そして…

 

「────舌打ちはやめてくんない?悲しくなる」

 

 その後ろに現れた、腰に刀を携える男──────レイの姿だった。

 

 ────────────────────

 

 いやぁ、間一髪ってとこか。

 

「生きてるか、お前ら?」

「レ、イ……」

「よし、生きてんな。目はちゃんと見えてるか?俺の男前な(ナイスフェイス)がちゃんと映ってる?」

「はっ!……憎たらしい男の顔なら、今もしかと目に映っている…!」

 

 憎たらしい……?駄目だ、重症らしい。幻覚見えてるし。

 

「お前、ちゃんとあの怪物を…ぶっ飛ばしてきたんだろうなぁ…」

「ああ、勿論」

 

 とは言っても、とどめを刺したのはアイズだけどな。あれ…そういえばアイズはどこに……あぁ、リヴェリアさん達のとこか。

 

「しかし…ここまで派手にやられるなんて、相変わらず出鱈目だなぁ、あんたは」

「その魔法を真っ向から防ぎ切り、小娘たちを守り抜くお前に言われたくはないがな」

 

 お褒めに預かり光栄だよ。

 

「だが、その娘たちを守ることに注力するあまり、自分の方の守りは疎かになったようだが」

 

「「「!!」」」

 

「おい、バラすなよ。折角かっこつけてたんだから」

 

 こちとら頑張って全身を走る痛みを、我慢してんだから。

 

「レイ、貴方…!」

「気にすんな。俺の方は傷はすぐ治るから」

「ですが…!」

 

 悔しげな表情で俺を見つめるリューの姿は、傷だらけで装備もボロボロ…他の連中も似たようなもんだな。

 

「そっちの方が余程きついだろ。今は自分の身を案じとけって」

「…私はまた…貴方に守られてしまった…」

 

 はい?この堅物エルフは、まだそんなこと言ってんのか。

 

「はぁ…仲間を守るなんて当たり前だろ」

「…!」

「当然のことを一々気にする必要はないの!わかったらポーションでも飲んで、さっさと体を回復させとけ!」

「は、はい…」

 

 まったく、手が焼ける。さて……。

 

「ここからは俺も参戦するが、文句ねえよな?」

「ああ。もとより私の目的はお前だ」

「美女から狙われるなんて、俺はなんて罪深い男だ…!」

「相変わらず、口の減らない男だ」

 

 アルフィアが呆れたように溜息をつくのと同時に、リヴェリアさんたちの元へ向かっていたアイズが戻ってきた。

 

「レイ、やる…?」

「おう。化け物とやった後だが行けるか、アイズ?」

「うん。レイが一緒なら、負けないよ…!」

 

 ふんすっとこぶしを握るアイズ……可愛い。それにやる気も十分だ。

 こっちには、傷を負っているとはいえアリーゼ達もアイズもいる。これなら楽勝──────

 

 

 

「って、言いたかったんだがなぁ…」

「? レイ、どうかしたの?」

「いや…うん。まぁ()()よなって…」

 

 さっきからこっちを…というか俺を、獲物を狙うように見てくる視線に、俺は思わず顔を顰める。

 

「ほう、気づいたか。もとより、()()()()手筈だった」

「うげぇ…どこまでもあの神の掌の上かよ。つくづく気に食わねえなぁ…」

「おい、レイ。お前さっきから何を言って────」

 

 

 

 

 

「────まだ、この俺が喰らう料理(デザート)は残されているか?」

 

 その声は突如として、この階層に響いた。

 

 

 

 

 

「「「!!」」」

 

 俺とアルフィア以外の全員がその顔を驚愕に染める。

 

 それも当然だ。その声はこの場に存在するはずがなく、同時に……聞こえることがあってはならない男のものなのだから。

 

「…………おい……」

「………なんで……」

「…………奴は、今地上にいるはず…!」

 

 絶望の色を濃くしたライラたちが呟く中、男の足音が重く響く。

 一歩踏み出すごとに、分厚い鎧がぶつかり合う音が徐々に、だが確実に近づいてくる。

 

 やがて、爆炎が渦巻く戦場の中から、その男は姿を現した。

 

 頑強な漆黒の鎧。その巨躯に見合う巨大な大剣を肩に担ぎ、顔には幾多の死線を潜り抜けた証である無数の傷跡。

 

 ああ、本当に…できれば来ないでほしかったなぁ。

 

 

「──────ザルド」

 

 

 アルフィアと並ぶ、オラリオにとっての『絶望』の姿がそこにはあった。

 





暗黒期が終わったら、原作の方も書いていきたいので、ぜひ楽しみにしておいてもらえると幸いです。
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