先導の英雄   作:無銘のヲタク

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たくさん評価・コメントしていただいて、ありがとうございます…!

今後とも、自分の作品を楽しんでいただけるとありがたいです!


戦う理由

 

「────おい…なんで…なんでお前がいやがる!!」

 

 突然現れた、もう一人の『最強』の存在へとライラは叫ぶ。

 

「貴方は上で、【猛者(おうじゃ)】と戦っていたはずだ…!まさか…」

「……負けたの…?あの【猛者(ひと)】が…?」

 

 ここにザルドがいる。それはつまり、上でこの人と戦り合っていたはずのオラリオ現『最強』は必然的に敗れたことになる。

 

 ただ…

 

「その(感じ)…【猛者(おうじゃ)】はアンタのお眼鏡にはかなったのかな」

「……ああ。あの糞餓鬼の最後の黄金(いちげき)…あれは(うま)かった」

 

 そんな、攻撃を飯みたいに言われても…

 

魔道具(マジック・アイテム)か…死を偽装してきたってわけ?」

闇派閥(イヴィルス)の奴等が持っていた、偽の死体を作りだす物を頂戴してな」

「それはまた、手の込んだ真似を……そうまでしてわざわざ迷宮(こっち)に来た理由は…」

「勿論……お前だ」

 

 ですよねー……はぁ、求められるなら絶世の美女とかがよかったなぁ。

 

「っ……私達を忘れてもらっちゃ困るわ…!」

「ああ…!この男一人に戦わせるわけにはいかん…!」

「私達も…貴方と共に…戦います…!」

 

 ボロボロの体で何とか立ち上がり、アリーゼ達はその手にある武器を敵に定める。

 

「……正義の眷族共。お前達にもう用はない」

「俺達の目的は、レイ(そいつ)ただ一人。だが、それでも立ち塞がると言うならば────」

 

 ザルドが担いだ剣を前へと掲げる。

 

「────お前達から、先に喰らうとしよう」

 

「「「!!」」」

 

 放たれる『殺気』。

 アルフィアと同格の締め付けられるような『重圧』に気圧されながら、なおもアリーゼ達は武器を構え続ける。

 ただ、俺にはその姿が、遥かな『絶望』を前に虚勢を張って、必死に抗っているように見えた。

 

 …………。

 

 

 

「…………いや、あの二人は俺一人で相手するよ」

 

 

 

「「「…は?」」」

 

 うん、やっぱりその方がいい。

 

「アリーゼ達は、周囲のモンスターの制圧を頼む」

 

「………け…」

 

「流石の俺も、モンスターに邪魔されながらだときついからさ」

 

「…ざ……な…」

 

「あっ。できれば、魔石はあとで俺にも少しは分けて────」

 

 

「────ふざけるなっ!!」

 

 

 俯いていた輝夜が、突然ばっと顔を上げたと思えば、俺の胸倉を掴んで怒鳴る。

 

「あの化け物達と、一人で戦うだと…?馬鹿も休み休み言え!!」

「おうおう。どうした、輝夜。いつもの大和撫子振りはどこ行った…」

 

 ……いや、別にいつもこんな感じか。

 

「よもや貴様は、自分一人の犠牲で如何にかしようという腹積もりではあるまいな…!」

「……」

「っ!私達はお前に守られる姫ではない!隣で剣を執る仲間だ!!それとも……」

 

 俺をつかむ輝夜の力が僅かに緩むとともに、輝夜は顔を俯かせる。

 

「お前にとって……私達は足枷に過ぎないのか……!」

 

 憤り…嘆き…そういった感情をぶつける輝夜。そして、彼女の後ろにいる他の者達も同じ気持ちと言わんばかりに俺を見つめていた。

 

 ……はぁ。

 

「お前らは何をそんなややこしく考えてんだ?」

「は…?お前は何を────」

 

 

 

「俺がアイツらを倒す────それが誰も死なない最善の道だろ」

 

 

 

「「「!!」」」

 

 何で驚いてんだ、こいつらは……。

 

「大体、万全のお前達ならともかく、今の満身創痍のお前等が戦っても…勝ち目ないだろうが」

「それは…そうだけど…!」

「だったら、あの二人は俺に任せて、お前らはモンスターに集中、そんで最後は仲良く地上に帰る。これが一番合理的な案だろ」

 

 普段はあんだけ、現実主義なのにらしくないなぁ、ほんと。

 

「お前、あの化け物二人に一人で勝てると────」

 

 

勝つよ

 

 

「なっ!?」

「お前らさぁ…散々、自分達が信頼されていないとかどうとか言ってるけど、お前等だって俺のこと信頼してねえんじゃねえの?」

「そ、そんなことはありません!私達は貴方を誰よりも信頼している!」

「なら────」

 

 自分の胸倉を掴む輝夜の細腕をそっと掴み、優しく剥がす。

 

「俺に…任せてくれよ」

「……!」

 

「必ず勝つ。だから…俺に委ねてくれ」

「……何を根拠に…」

 

「お前達がいるからだ」

「──────」

 

 お前たちが俺を信じて待っていてくれる限り、俺は必ずお前たちのもとに帰ってくる。

 帰る場所であるお前たちがいる限り……俺はどこへだって行けるんだ。

 

「それに…俺は『英雄』って言われる男だぜ?あんな『悪』には絶対負けねえよ」

 

 だから、と言葉を続けて俺は輝夜の手を強く握る。

 

「────どうか…俺に賭けてくれないか」

 

 お前らが本当に俺を信じてるっていうなら…この都市の命運をどうか俺に託してくれ。

 

 

「──────わかっ、た」

「…!」

「お前はもう何を言おうと曲げる気はないのだろう。であれば、こちらが折れるしかないだろうに…だ、だからっ、その目で私を見つめるのをやめろ!」

「あれ?もしかして照れてる?」

「~~~~っ!!」

 

 輝夜は少し顔を赤く染めると、それを誤魔化すように俺の手を無理矢理振り払った。

 

「はぁ…私達も納得するしかないみたいね」

「散々、信じてほしいと願ったのだから…今度は私達が彼を信じなければ不平等というもの」

「ったく、うちの黒一点は強情だな…。まぁ、私としては多少は楽できて万々歳だっ!」

 

 別にお前達にも働いてもらうからな?何なら、今溢れてるモンスターの中にはは深層域のやつもいるだろうし、別にきついと思うぞ。

 

「……レイ…」

「!アイズか…お前もモンスターの方頼めるか?」

「……ほんとはレイと一緒に戦いたい……でも、私の『英雄』は負けない、から。私も信じるよ…!」

「……おう。任せとけ。戻ったら一緒にじゃが丸君食べに行こうな」

「うんっ!」

 

 笑顔で頷くアイズの頭に手を置き、俺も自然と笑みを溢す。

 

「……ねえ、ライラ。レイが幼女を手懐けてるわ」

「ああ。はたから見たら完全に事案だな」

 

 おいそこ!誰が事案だ。人聞きの悪いこと言うんじゃねえ。

 ついつい頭を撫でたくなるのはアイズが可愛いからだ。俺は悪くない。

 

「ほら見ろ。奴の【剣姫】を撫でるときのあの顔。あれは正しく変態の顔だ」

「おうこら。さっきから聞いてりゃ誰が変態だって?さっき手を掴まれたのが恥ずかしかったからって当たるのやめてくれますかー?」

「殺す…!」

 

 うわっ。殺すとかなんて野蛮な!ほれ、アイズは離れときな。

 

「大体さっき自分のこと『姫』とか言ってたけど、お姫様扱いされたいならもっと慎みを持ってほしいねぇ」

「~~~~ッ!!もういい…お前はここで死ね」

 

 危ねッ!だから、そういう所が淑女じゃないって言ってんだよ…!この皮だけ大和撫子が!

 

「貴様、今…何か不愉快なことを考えたな?来い。その首今すぐ刎ねてやる…!」

「あーもう!輝夜落ち着いて?大丈夫よ。私は輝夜の普段は強気だけど、時々乙女な時があるって分かってるから!」

「団長、それ以上口を開けば、お前から斬首刑に処すぞ」

 

 あらら…収拾つかなくなってきちゃったよ…

 

「誰のせいかねぇ…」

「いや、どう考えてもお前のせいだろうが」

 

 えぇ?そんなことはないですよ、ライラさん。

 

「……本当にやれんのかよ」

「まぁ、やれるだけやってみるよ」

「そこは絶対勝つって言えよ、『英雄』様」

「そうだなぁ……誰か美少女が俺の頬にチューしてくれたらやる気出るかもなー」

「はぁ?」

 

 ははっ。なんて冗談──────

 

 直後、突然右肩が下に引っ張られるような感覚と同時に、右頬に触れた柔らかい感触。

 

「…………え?」

「…これで、いいだろ?」

 

 恐る恐る首を回せば、そこに映ったのはほんのり頬を赤く染めながらも、いつものように不敵な笑みを浮かべるライラの姿。

 

 ……えっ……えっ?

 

「!!??ら、ライラ!貴女何をっ!?」

「何だよ。私らの『英雄』様が求めたことをやってやっただけだぜ?」

「そ、そのような行為は、ちゃんとそういった関係になってからで────!」

「そ、そうよライラ!私だってまだやってないのに…!

「あー、うるせーうるせー」

「レイ!貴方からも何か言って……」

 

「…………」

 

「「「……初心か」」」

 

 う、うるせぇ!男の子はなぁ、こういう不意を突いた一撃に滅法弱いんだよ。

 だから、そんな「うわっ、慣れてないんだ」みたいな顔するのやめろ!

 

「くそっ!ほらっ、時間ないんだから!行った行った!」

 

 俺はアリーゼたちからの視線を外すために、そそくさと振り返る。

 

「────レイ」

「……なに」

 

 

 

「「「頼んだぞ(頼みます)」」」

 

 

 

「……おう。任せとけ!」

 

 駆け出したアリーゼ達を横目で見送ってから、俺はもう一度目の前に視線を戻した。

 

「────茶番は終わったか」

「悪い悪い。待たせちゃった?」

「問題ない。こっちとしても、お前一人の方が都合がいい」

 

 なら良かった。あっ、そうだ。

 

「始める前に確認しときたいことがあったんだよねぇ」

「…何だ?」

「あんたらは何でこの都市を崩壊させようとするのか…いや────なぜ、俺達を試すような真似をしてるんだ」

「「……」」

 

 ずっと考えていた。

 かつては都市最強の二柱として、オラリオを守ってきたらしい眷族達が、その都市に牙を剥く理由。

 ただ、それに関しては大方察しが付く。

 

 彼らは俺達を試している。

 

 絶対的な理不尽を前にして、俺たち冒険者が如何にしてそれに抗い、そして…乗り越えるのか。

 彼らはそれを見極めようとしている。

 

 例え、その過程で都市が戦火に包まれようと、その『絶望』を越えた先の姿(こたえ)を彼らは求めている。

 

「…とまぁ、そこまでは俺にも分かる。分からないのは、あんたらがそうなるに至ったきっかけだ」

 

 ここまでのことをしでかすに足る理由とは……いったい何なのか。

 

「聞かせてくれよ……こんな『試練』を与える意義ってやつを」

 

 

 

「「────────『失望』だ」」

 

 

 

『失望』……だって?

 

「我々の『失望』とは、『無力』。あまりにも単純で、この上なくありふれた虚無感だ」

 

 アルフィアは告げる。俺の目の前で、火の粉の輝きに灰の髪を照らされながら。

 

「無力…虚無感……か。いったい何に対して?」

「オラリオ、いや世界に対して……何より、自分達に対して」

 

 そう語るアルフィアに浮かんだのは、確かな『自嘲』と『哀切』。

 

陸の王者(ベヒーモス)を討ち、海の覇王(リヴァイアサン)を滅した私達は、敗れた。────あの禍々しき『黒竜』に」

 

 それって…フィンさん達の言ってた、三大冒険者依頼(クエスト)ってやつか。

 

「神々をも認めさせる強者(つわもの)どもが、いともたやすく薙ぎ払われ、かつて味わったことのない『蹂躙』に遭った」

 

 この人達を率いるファミリアでも、手も足も出ないって…どれほど…。

 

「そして、生き残った者達は……『最強の英雄』と讃えられていた者達は、()()()()()

 

 それまで『静寂』を保っていたアルフィアの顔が、確かに歪んだ。

 

「私は目に映る血の海(惨状)を見て、確信した。『嗚呼、このやり方では駄目だったのだ』と」

「このやり方……?」

 

 疑問を浮かべる俺を前に、アルフィアの語気に熱がこもっていく。

 

「真の絶望に抗えない冒険者ども。世界の悲願に届くことのない、英雄を騙る無力の(ともがら)!神に縋るこの時代では、あの『黒き終末』には決して敵わないと!」

 

「──────世界は『英雄』を欲している」

 

 ザルドは言う。まるで『終末』を乗り越えるための真理を説くように。

 

「ならば、世界が欲する『英雄』とはどのようにして生まれる?『真の英雄』とは、果たして本当に、今の時代から生まれ落ちるのか?」

 

 疑念を否定するように、ザルドは首を横に振る。

 

「いや、図らずとも『黒竜』に敗北した俺達が実証してしまった。今のやり方ではならん…神時代に()()()()『英雄』では、あの化物には勝てない!ならば!」

 

 怒号と共に、『覇者』は結論を告げた。

 

 

「今も語り継がれる俺たちの誇り──────『英雄の時代』を取り戻すしかあるまい!」

 

 

「……!!あんたら、まさか……」

「そうだ!|()()()()()()()()!かつての『英雄神話』を再現するために!」

 

 胸の高さに持ち上げられたザルドの右手が、あらん限りに握りしめられる。

 

「怪物どもが地上を席巻し、恐怖と絶望に支配されていた古の時代!強大な絶望を前に己を賭し、限界を打ち破った!そう、あの時代が!猛々しくも勇ましい昔日の『英雄』を──────『最強の伝説』を!」

「……そのために、迷宮(ダンジョン)の蓋をこじ開けて、今の平和を破壊する…と?」

「その通り。この下界を混沌で満たし、『英雄』を生む礎を用意する。それこそが俺達の計画…()()()

「…?『だった』…?」

 

 それじゃ、まるで今は違うみたいな……。

 

「ああ。未来(さき)の無いこの下界に、今一度、古の『英雄』を誕生させる、そのための破壊。だが──ー」

 

 アルフィアの突きたてられた白い指を差し伸ばし、前へ────俺へと差し向ける。

 

「────お前が現れた」

「!!」

 

「『悪』に蹂躙され、神々が天に還ったあの夜。お前は突如として姿を現し、『絶望』に暮れる冒険者を、都市を蘇らせた」

「古の時代の『英雄』たちのように、精霊の力を振るい、『絶対悪』に吠えてみせた」

 

「ならば」と、言葉をつづけ、二人は瞠目する。

 

 

「俺達は、新たな『英雄』に試練を与えねばなるまい!」

「『絶望』に抗い、『大最悪(モンスター)』を屠った。最後は…神時代に生み出された『最強』(わたしたち)を越えて──────」

 

 

 

 

 

「「この下界(せかい)を救うに足る存在だと!我々を納得させてみせろ!!」」

 

 

 

 

 

 ……そっか。アンタらもこの下界を救いたいんだな。

 

 自分達は失敗したから、その後に続く奴等には、自分達が出来なかった『悲願(ゆめ)』を成し遂げてほしいと…

 

 自分達を超えてみせろと……期待しているのか。

 

「ははっ…いやぁ、随分勝手な望みを言いやがって…」

 

 俺に下界の希望になれと…?

 

 いや、重いよ!重すぎるよ!

 

 大体、俺なんてつい最近まで、過去にしがみついてウジウジしてたやつだぞ?荷が重いことこの上ないわ!

 

 俺は、ただ大切なものを守りたいってだけで……『英雄』(かれら)のような、崇高な意志なんてないんだけどなぁ……はぁ。

 

 

 

 ……でも、そんな俺に期待してくれてる奴がいる。

 

 

「────その期待には応えなくちゃな」

 

 

 ────こんな俺にも、何かを望んでくれる人がいる。

 ────こんな俺にも、力を貸してくれる友がいる。

 

 

 そして────こんな俺の帰りを待っててくれる場所がある。

 

 

 そもそも俺は、親友に太鼓判を押され、精霊(あいぼう)に力を託された『英雄』だぞ?

 だったら────

 

 

 

 たった二人の『失望』を、覆せない理由がどこにある。

 

 

 

「────見せてやるよ。ザルド、アルフィア……」

 

 闇派閥(イヴィルス)の企みも……『最強』の苦悩も……邪神(かみ)の思惑も。

 

 その全てを超える────

 

 

「『英雄』の姿を…!」

 

「「──────来い…!」」

 

 

 それを合図に、俺は駆け出した……この『大抗争』、最後の決着をつけるために。

 





ちょっとキャラ崩壊かも…?

ダンまちのキャラクターって全員、複雑な背景とかあって魅力的な人ばっかりですよね。
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