先導の英雄   作:無銘のヲタク

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実力の片鱗

 

朝ごはんを食べ終えて、レイは輝夜との模擬戦を始めようとホームの外に出た。他の団員も新人のレイと輝夜の戦いが気になるようで後ろから付いてきている。外に出るとレイと輝夜は距離を取り、正面で向かい合い、それぞれが腰に差した木刀に手を掛けて構えた。

 

レイたちの間に立つアリーゼにはこの戦いの審判を頼んである。

 

「さぁ二人共準備はいい?」

「「おう(ええ)」」

「それでは...始め!!」

 

アリーゼの合図とともに輝夜はレイに向けて踏み込む。正面から振り下ろされる一刀をレイは同様に木刀を振り下ろすようにして防ぐ。

 

「この程度は流石に防ぎますか」

「いきなりエグいなおい。レベル1だぞ、躊躇しろ!」

「現に防げているのですからグチグチ言うな────んんっ!言うものではありませんよ?」

「おい今何か素が出たぞ」

「そのような細かいことを言っておりますと、女にモテませんよ?」

「グッ!精神攻撃とはなかなかやるな!」

 

レイは木刀を両手で強く握りこむ。そのまま押し切るように振り下ろし、輝夜を後退させて鍔迫り合いを強制的に解除する。

 

そして下から返すように振り上げ輝夜の木刀を弾こうとする。輝夜はレイの狙いに気づいてか距離を取り、木刀を腰に構える。

 

「居合の太刀・一閃」

 

距離を詰めるため地面を強く蹴って踏み込み、放たれた高速の居合。

 

「あっぶね!」

 

その攻撃に瞬時に反応し、レイは右側に身体を動かすことで回避する。

 

「「「「!?」」」」

 

そしてそのまま無防備になっている輝夜の身体の側面に木刀を振り下ろす。

 

輝夜は居合による突撃の勢いのまま回転。

 

こちらの木刀に自分の木刀を合わせ、また鍔迫り合いの状態になる。

 

「おいなんだ今の!避けれなかったら死んでたぞ!」

「死にはしませんよ。そもそも避けて私に一太刀入れようとしていらっしゃったでしょう」

 

輝夜の言う通り先程の技は標準的なレベル1の冒険者であったら、初見では何が起きたかもわからないまま終わっていただろう。それを今レイは初見で躱し、あまつさえカウンターを入れようとしていた。その事実に輝夜以外の団員は驚愕を隠せない。

 

「では、もう少し力を入れさせていただきます」

 

輝夜はそう言うと鍔迫り合いをやめ、先程より速い速度で切り込んでくる。

 

レイはそれを自分の木刀で素早くいなす。輝夜が下段から木刀を振り上げればそれに刀を添えて攻撃を受け流し、レイが上段から振り下ろせば輝夜がレイの木刀の側面を叩き横に流す。

 

「────申し訳ありません、アストレア様。レイは本当にレベル1なのですか?」

 

目の前で行われる高度な戦いを見て、団員の一人が流石に疑問に思って主神に尋ねた。

 

「ええ。あの子がこの前答えたときにその言葉に嘘はなかったわ。けれど…」

「あの輝夜相手に互角以上にやりあってるのに私よりレベル低いのかよ」

「あれはもはや、私達レベル3の冒険者と遜色ない強さです」

 

ライラやリューが信じられないといった表情でそう呟く。

 

全員が驚きや疑問を抱き、僅かに困惑しているそんな中、

 

「強いとは思っていたけどまさかここまでなんて!もしかして私より強いかも。いい人材を見つけたわ!」

 

ただ一人、アリーゼだけは嬉しそうでなんなら少しワクワクした様子でそう話す。

 

「お前そんな気楽な…」

「あれほどの力、何か裏があるのでは…」

 

「別に何でもいいじゃない?」

 

「「は?」」

 

そう当たり前のように言うアリーゼに、二人は思わず声に出る。

 

「だって秘密なんて誰にでもあるじゃない。大体、私たちの力になるっていうレイの言葉は嘘じゃなかったでしょ?」

「「!!」」

「だから、レイのこと、信じてみましょ。それに私のことを綺麗って言ってくれもの!絶っ対!悪い人じゃないわ」

 

真面目なのかそうじゃないかよく分からないようなアリーゼに他の団員がわずかに呆れつつも、その芯にある言葉に先程まで感じていた疑念はなくなった。

 

「それ後半が主な理由だろ…けど、そうかもな」

「今はこの戦いの結末を見届けましょう」

 

 

幾戦と剣戟を繰り広げている最中、輝夜は思考する。

 

「(…何だ?この『違和感』は…)」

 

輝夜が剣を振るえば、それに応じてレイも剣を振るう。攻めとなり先に先にと技を繰り出す自分に対し、レイは常に後手となりその都度対応し、完璧にいなしてみせる。

 

一連の流れから感じられるレイの持つ確かな『技』が、輝夜の中の違和感をより一層強くさせる。

 

その違和感とは、レイという肉体(うつわ)の強度とそこから繰り出される『技』の練度の乖離だ。その若さにしてあまりにも卓越した刀捌きは見事なものだが、ただ優れているという言葉では片付けられない違和感がそこにはあった。

 

力強い剛剣としなやかな柔剣が合わさった、ある意味では完成しているとも言えるようなその剣技には途方も無い研鑽の歴史と経験が積み上げられているように輝夜は感じた。

 

それこそ、レイの若さでは釣り合わない程の『冒険』が…

 

「(レイ、お前は一体…いや今はそれはいい)」

 

目の前の男の正体に疑問を抱きながらも、輝夜は一度その思考を頭の隅に追いやり今の戦いに思考を切り替えると同時に、水平方向に素早く刺突を放つ。だが、レイは突きに対して側面に自分の木刀を沿わせて横にいなす。

 

「(これも防ぐか……ならば、)このままでは埒が明きません。この技を防ぐことができましたらそちらの勝ちといたしましょう」

 

そう言って、輝夜は先程と同じように腰に木刀を構える。

 

「(さっきと同じ...?いや、魔力が集中してんのか...)」

 

レイは放たれる技に対処するためにに木刀を正面に構え集中する。

 

「【禍つ彼岸の花】...」

 

「(来るッ!!」)」

 

短い詠唱とともに輝夜が纏う魔力が解放され、レイの周りを魔力の斬撃が包囲する。

 

「【ゴコウ】!」

 

輝夜が技の名前とともに先程とは比べ物にならないほどの速度で相手を仕留めんと接近する。

 

「!?」

 

「終わりだ!」

 

神速の居合で振るわれた輝夜の木刀がレイの眼前まで迫り、誰もが輝夜の勝利を確信したその時、

 

 

 

「【■■■■■■】」

 

 

 

レイがなにか呟いたかと思うと魔力の斬撃を吹き飛ばすほどの風圧が起こり、砂が巻き上がる。全員がとっさに目を塞ぐ。

 

「な、何だっ?!」

「何が起きて…!!」

 

すこしすると、風が止んできて目を開けると、そこには…

 

「俺の勝ち!」

 

驚いた様子の輝夜の顔に、笑みを浮かべて木刀を突きつけ勝利を宣言するレイの姿があった。

 

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