寮に戻ったルーカスだったが、戻りシズカとの決闘が決まった事をセシルやフランに告げるが、フランはルーカスの胸倉をつかんでいた。
「なぁルカ。アタシはお前に惚れてるから大抵の事は笑ってやれるけど、コイツは駄目だ」
「大丈夫だって、俺は負けないから」
「そうじゃねぇよ! お前もさっきいたなら聞いてたんだろ? コウタロウはシズカの事をどうにかしたいと思ってるってそれなのに命を賭けて決闘とかどういうつもりなんだよ!」
ルーカスは自身の命を賭けた事を怒っていると思っていたが、そうではない。
つい先ほど、コウタロウは幼馴染であるシズカにどうにかしたいという事を言っていた。
フランはそんなコウタロウに対して取り合えずは考える時間を持つようにとアドバイスを出した。
それから日を跨ぐこともなくルーカスが互いの命を賭けて決闘をすることになったという。
フランもルーカスが負けるとは思っていない。
ルーカスが勝つという事はシズカは自らの命を差し出すという事だ。
コウタロウの話を聞いておきながら互いの命を賭けた決闘をすることになった事をフランは怒っているのだ。
「聞いてたけどさ。それが何? なんで俺がコウタロウの事情を考慮しないといけないんだよ?」
ルーカスにとってはコウタロウの事情等どうでもよく関係ない事であった。
「それにさ考えたところで無駄だろ」
「あ?」
「フランやコウタロウのように恵まれた奴にはアイツの事は理解できないよ」
「……喧嘩売ってんのか?」
総帥の養子として権力や金をはじめとした多くの物を持っているルーカスに自分やコウタロウが恵まれていると言われるのはフランにとっては馬鹿にされているとしか思えない。
「フランはさ無いでしょ。死にたくなるほど世界を呪った事なんてさ」
そういうルーカスの目にはフランが今まで見たことのない闇が垣間見えて思わず掴んでいた手が緩む。
「……お前はあるのかよ?」
「まぁね。だから分かるんだよ。今のシズカには何を言っても何をしても届かない。だから俺が終わらせるんだよ」
ルーカスはフランの手を振り払う。
「アイツがガンダムに乗る限りはな。全てのガンダムは俺が潰す。俺はそのためにここに来て、生きてるんだから」
「……お前が何を見て来てどんな生き方をしてきたは知らねぇ。けど、信じて良いんだな。アタシはコウタロウの奴にお前を信じろって言っても良いんだな?」
「さぁどうだろ? フランやコウタロウの望む結末なんて興味はないし、この先の事は俺にも分からないからな。それでも俺を信じたければ信じればいいさ。もっとも信じて裏切られたとしてもその責任はとれないけどな」
「わーったよ。けどな、アタシやコウタロウが納得のいく結末じゃなかった時は覚悟しとけよ。そん時は責任を取ってアタシがお前を殺してアタシも死ぬ」
フランはそう言い自分のテントに戻っていく。
「怖いなぁ」
「自業自得でしょう」
事の次第を見ていたセシルがそういう。
翌朝、朝一番にルーカスはエマを呼び出し、シズカと決闘員会のサロンで対峙している。
朝一で呼び出された時点でまともな要件ではない事は察しの付いていたエマはルーカスに非難の視線を送るが、ルーカスは一切気にした様子はない。
「双方魂の代償をリーブラに。対戦者はルーカス・ナボ・レンブランとシズカ・カブラギ。場所は戦術試験区域4番を使用。1対1の個人戦を採用する。異論は?」
「ない」
「ないわ」
「承知した。承知した。ではルーカス・ナボ・レンブランはこの決闘に何を賭ける」
「俺は俺のMSと命を賭ける」
エマは一瞬は反応を見せるが、すぐに感情を殺す。
「承知した。シズカ・カブラギはこの決闘に何を賭ける」
「私も同様に自身のMSと命を賭けるわ」
「Alea jacta est。この決闘を承認する。決闘は1週間後、それまでに双方は決闘の準備を万全にしておくように」
決闘が正式に承認されたところで、ルーカスはエマに今回の決闘の事を追求される前に地球寮へと帰る。
地球寮に戻ると周囲の生徒から明らかに非難の込められた視線を向けられる。
すでに寮生たちにも今回の決闘の話とコウタロウとシズカの事を知っているのだろう。
「ルーカス。任せて良いんだよな」
コウタロウは怒りを抑えながらルーカスに問う。
すでにフランの方から話はしてあるのだろう。
完全に納得はしていないが、自分では何が出来るのか分からないため、今はルーカスに託すしかないとも理解はしている。
「さぁねてね。それよりミーティングだ」
寮のブリーフィングルームにはすでにセシルやフラン、フレットが待機している。
「シズカの使うガンダムなんだけど調べてみたけど全く情報が出てこねぇよ。どうなってんだ?」
「彼女自身が決闘を一度も行ってませんので公には出てないんでしょう。稼働テストはペイル社の管轄ですのでこちらから情報を見るにはいろいろと面倒な手続きが必要になりそうです」
シズカが過去にガンダムを使って決闘を行っていればその時のデータが残っているが、一度も決闘をしていなければデータは残ってはいない。
学内でガンダムの稼働実験のテストは何度か行っているがペイル社が非公式にしているため、生徒の立場からでは閲覧することは出来ない。
その情報を得ようとすればルーカスがデリングを経由してペイル社に圧力をかけて情報を提示させるしかない。
「面倒は嫌いだな。そんなことよりももっと重大な問題が今の俺たちにはある」
ルーカスの言葉で一同の視線がルーカスに集まる。
「俺のV2の修理がまだ終わってない」
相手の情報収集以前にルーカスのルブリスV2はフランとの決闘での損傷が未だに直ってはいない。
「はぁ! おまっ! それなのに昨日はあんなに自身満々に語ってたのかよ!」
「セシルさん。修理はどのくらいで終わりそうです?」
「現状ではこれ以上の修理は無理ですね」
「それでよく、フラン先輩に信じろって言えるな!」
「まぁ落ち着け」
ルーカスはそういうがフレットは動揺し、フランとコウタロウは声を荒げる。
「セシル。アイツがこっちに来るまであと何日だ?」
「予定では7日ほどです」
「分かった。6日で来させろ。修理には1日あれば十分だろ」
「了解しました」
ルーカスとセシルの間で淡々を話しが進んでいく。
「そういう訳だ。今日は解散」
これ以上の話をする気はないらしくさっさとブリーフィングルームから出ていきセシルもそれに続く。
決闘までにどうにかなるのか不安は残るがルーカスにも何か考えがあるのだと無理やり自分を納得させてこの場は解散となった。
それから6日間の間は決闘が行われることが無かったかのように平和な日々が過ぎていった。
そして、決闘の前日になり、再びブリーフィングルームに地球寮の主要メンバーが集められた。
「紹介する。ウチの専属メカニックのマキア・マキナだ」
ルーカスが制服の上から白衣を着て髪はぼさぼさでいかにも研究者と言った風貌の女性とマキアを紹介する。
マキアはルーカスが独自に雇っている技術者で2機のルブリスの専属メカニックでもある。
「どもども」
一応は挨拶をするもマキアは地球寮の面々とは仲良くする気はないように見える。
「それでマキア。これが今のV2の状態な」
「どれどれ……」
マキアは渡された端末を確認する。
少しの間端末を見ていると次第に震え始めやがて表情が崩れていく」
「ぎゃぁぁぁぁ! 私のルブリスがぁぁぁぁ!」
突如叫び出してフランたちは思わず耳を塞ぐ。
ルーカスとセシルだけは特に変わらない。
「ルカ君さぁ! 損傷は大したことは言って言ってたよねぇぇ!」
マキアは声を荒げながらルーカスに詰め寄る。
ここに来るまでにV2が損傷し、マキアが直す必要があるという事は聞いている。
だが、ルーカスから聞いていたよりも損傷は酷かった。
「腕ないじゃん! どこ行ったの! それにルブリスの可愛い顔も潰れてる! 何やってんの?」
「腕はまぁ勝利のための犠牲になったんだよ。顔は雌ゴリラに潰された。後、V2は俺のだから」
ルーカスの胸倉を掴み激しく揺さぶられるが、ルーカスは何事も無かったかのように答える。
「で、そいつを明日までに直しといて」
「無理! 万全にするには3日はかかる!」
「大丈夫だって信じてるから」
「んなもんで出来るかぁぁぁ!」
無茶ぶりにマキアは切れるがセシルが制止する。
「マキアも分かってるでしょう。ルーカス様が決めたことは絶対なのだから」
「分かってるけどさぁ……私はセシルみたいに銀河系よりも広い心でルカ君に接することは出来ないの」
マキアも何とか落ち着く。
マキア自身も分かっている。
ルーカスが言い出した以上はどうにもならないという事に。
それでも文句は言いたい。
「とにかく! セシルさんも手伝ってよね。やってやろうじゃん! このマキア・マキナに直せないMSは存在しない!」
「じゃ任せた」
そして決戦の当日、格納庫には修理の終えたルブリスV2が収容されていた。
マキアは徹夜で修理を続け、決闘開始時間ギリギリに間に合わせてきた。
「……どんなもんよ」
「上出来だ。俺は出来ると思っていたけどね」
ルーカスの物言いにマキアは持っていた工具で殴りたい衝動に駆られるも体力的にそこまでの余裕はない。
「最終調整は私一人で十分ですのでマキアは時間まで休んでいて下さい」
「そーする。セシル後は任せた」
マキアは死にそうな顔でセシルが格納庫に用意してあった簡易ベットに倒れこむ。
本来ならば数日かかる作業をセシルもいたとは言え、実質的には1人でやってのけたのだ疲労も相当な物だろう。
「さて、後は俺が勝ってくるだけか」
後の最終調整をセシルに任せるとルーカスは時間まで一休みすることにした。
決闘開始の時刻が迫る中、ペイル寮の方でも決闘の準備が進められている。
時間が迫りシズカはパイロットスーツに着替える。
無重力なら一人で着替える事も出来るが重力下ではそうもいかず寮の女子生徒に手伝ってもらいながら着替える。
格納庫には黒いガンダム、ガンダムサナトスが最終調整が行われている。
ガンダムサナトスはペイル社が得意とする高機動力に長けた機体で同時に長距離射撃能力に特化している。
右肩の装甲には大型のセンサーユニットが内臓されメインウェポンの狙撃用ビームライフルの命中精度を高めている。
狙撃用ビームライフルはGUNDフォーマットを利用した知覚リンクを採用した試作品でもある。
左肩には小型シールドと裏にはビームサーベルが装備され、左腕には近接戦闘用のビームガンが内臓されている。
バックパックには新型でアームによりあらゆる方向に向けて使えるフレキシブルブースターが2基が搭載され、全身に内臓されているスラスターを使う事で狙撃後に素早く移動することが出来る。
「調整はどう?」
「あっああ。万全だ」
ガンダムサナトスのコックピットから出ているシートに両脇を抱えられて座らせて貰う。
専属メカニックが少し言い淀むが元々必要最低限の関わりしか持っていないため、シズカは気にも留めずシート横のボタンを操作してシートは機体に収容される。
足が使えないため、ガンダムサナトスのコックピットはペイル社の一般的な規格の物ではなく専用に設計されたもので操作の全てが手元で行えるようになっている。
操縦桿も一般的なレバータイプの物ではなく、ボール状のコントロールグリップを採用し、両手の指や掌の微妙な圧で機体のコントロールを行う。
「時間だ。出すぞ」
「ええ」
ガンダムサナトスがコンテナにセットされ、決闘の戦場におくられる。
「勝敗は通常通り頭部のブレードアンテナを折った方を勝者とする。立会人はグラスレー寮のエマ・スレイドが務める」
「LP001。ルーカス・ナボ・レンブラン。ガンダムルブリスV2。出るぞ」
「LP003。シズカ・カブラギ。ガンダムサナトス。出るわ」
双方のコンテナからMSが出て来る。
今回、ルーカスがルブリスV2に装備させたのは高火力パックで高い火力による砲撃戦用の装備だ。
バックパックには大型のビーム砲であるメガビームキャノンとエネルギーパックが搭載され、左腕には肘まですっぽりとハマって固定されているアームガトリングガンに右手には貫通力の高いビームを撃ち出すメガビームライフルを装備されている。
脚部には射程の短いビーム砲が多数内臓された増加装甲により上半身とのバランスを保っている。
「両者、向顔」
「勝敗はMSの性能のみで決まらず」
「操縦者の技のみで決まらず」
「「ただ結果のみが真実」」
「フィックス・リリース」
エマが決闘開始の合図を送りルーカスとシズカとの決闘が開始された。