ルーカスとシズカとの決闘から1か月が経ち入院していたシズカもようやく退院の許可が出た。
退院したシズカはそのまま地球寮へと向かう。
すでに今日の授業は終わり地球寮にもちらほらと帰ってきた生徒たちがいる。
「シズカ?」
授業を終えたコウタロウが寮に帰ってくるとそこにはシズカがキョロキョロと周囲を見ている。
「コウタロウ」
「……良かった。無事だったんだ」
コウタロウは涙を浮かべながらシズカのところまでやってくる。
「この間はごめんなさい。言い過ぎたわ」
「いや。俺の方も何も知らないで余計な事を言ったかも。けど、今までどこに? ルーカスの奴も……」
ルーカスの名前が出た瞬間にシズカの雰囲気が変わる。
「そうよ! あの男はどこ?」
「は?」
「アイツはまた来るとか期待させておいて一度も来ないし! メールもガン無視! どうなってるのよ!」
シズカはコウタロウに掴みかかりそうな勢いでまくし立てる。
入院していた一か月の間にルーカスは一度も見舞いに来ることも無ければ、シズカからのメールに返事を出すことも無かった。
シズカが地球寮に来たのはルーカスに文句を言うためだ。
「いや、俺に言われても……それにルーカスの奴最近見て無いぜ」
「隠すと為にならないわよ。貴方の恥ずかしい過去を全校生徒に暴露するわ!」
シズカのいう恥ずかしい過去には思い当たる事はないが、今のシズカには話が通じそうにない。
「ルカがいないのはマジだぞ」
騒ぎを聞きつけたフランが仲裁に入る。
シズカはフランを睨みつけるが、フランは気にした様子はない。
「あの決闘の後でアイツはこっちに戻る事も無く行方を眩ませてよ。後から学園に行きたくないからしばらく休むってメールがあったんだよ」
ルーカスはそのメールが送られてきてから一度も学園にも住んでいる理事長室にも戻って来てはいなかった。
そのため、コウタロウもフランもこの一か月の間にシズカが入院していたことも知らなかった。
「アタシはてっきりアンタの説得に失敗してバックレてほとぼりが冷めた頃に戻ってくるつもりだと思ってたんだけどな」
ルーカスが行方を眩ませる理由としてはシズカの説得に失敗したからというのが考えられた。
それによりフランからの制裁を避ける為に一時的に身を隠しほとぼりが冷めたところで何食わぬ顔をして戻ってくるつもりだったと。
しかし、シズカを見る限りではそんなことをする理由もなさそうだ。
「てことは、メールに書かれた学園に行きたくないってのがはマジの理由ってわけか。学園に飽きていたみてぇだしアイツらしいな」
「……いやおかしいでしょ」
フランはそんな理由でいなくなったことをらしいと思うもシズカは冷静さを取り戻して突っ込む。
「いくらルカがその場のノリで生きているような奴だとしても、そんな理由で学園からいなくなるほど無責任ではないわ。それに彼は総帥の命令で魔女狩りの為に学園に来てるんでしょ? ならそれが終わるまでは学園にいるはずでしょ?」
地球寮を牛耳りジェターク寮を傘下に入れ、シズカの命を決闘で手に入れているルーカスがそんなことで一人でいなくなるのは余りにも無責任で、それ以上に自分の意思ではなくデリングから命令を受けている以上はガンダムを全機回収するまでは学園に残り続けるだろう。
「……確かに。けどよ。セシルにマキアもいねぇし、ガンダムを全機持ち出してんだぜ?」
「そういえば……セシルさんたちも見てないですね」
いなくなったのはルーカスだけではなく、セシルやマキアもだ。
それだけでなく、ルーカスとセシルのルブリスと回収した2機のガンダムも学園にはない。
「考えられるのはルカの身に何かあったかも知れないわね」
自発的にいなくなった可能性がないのであればルーカスに何かあって戻ってこれないと考えられる。
メールはルーカス以外の何者かがルーカスが戻らない事を不審に思わないように出した可能性がある。
「だとしたらグループに何か動きがあってもおかしくはないだろ?」
「何かあったとしても大事にはならないように情報は統制されていてもおかしくはないわ」
自発的にいなくなった訳ではないとすれば、ルーカスの身に何かあったのかも知れない。
仮にそうなら大々的に公表することなく、情報は表に出る事もない。
下手に公にしてしまえばグループの威信にも関わってくるため、解決は内々に行われるだろう。
「確かに……でも俺たちはどうしようもないぜ。先輩やシズカはジェターク社やペイル社の方から探れないか?」
「アタシは無理だな」
「私もよ」
情報がないままでは何もできない。
ジェターク社やペイル社なら少なからず情報を持っているかも知れないが、今のフランやシズカでは聞くことも出来ない。
「打つ手なしかよ。くそ……こんな事になるなら一人で行かせるべきじゃなかったな」
ルーカスに何かあったとすれば決闘の後だろう。
あの時、ルーカスを一人にはしないでフランもついていけば最悪の状況になる事は防げたと思うと後悔する。
「……エマさんなら何か分かるかも」
「エマ? なんでアイツが?」
「知らないの? あの人、ルカの婚約者でしょ?」
「はぁ? 婚約者? 聞いてねぇぞ!」
シズカの思いがけない言葉にフランは思わずシズカの車椅子を揺する。
「ちょっと! まだ本決まりって訳でもないけどそうなるって」
「先輩、落ち着いて。けどそれなら何か聞いてるかも知れないですよ。それにシズカもなんでそんなこと知ってるんだ?」
「入院中に暇だったからいろいろとアイツの事を少し調べていたのよ」
少し調べただけでそこまでの事が分かるのか疑問だが、それが事実だとしたら何か情報が入っているかも知れない。
情報が入っていなかったとしてもエマの立場ならある程度は情報を収集できる。
「コウ! アタシ等はグラスレー寮に行くからお前はいざって時の為に寮で待っとけ!」
「は? これから? きゃっ!」
フランはシズカの車椅子を押しながらグラスレー寮の方へと走り出す。
ただでさえルーカス不在で他の寮から狙われかねない状況であるため、フランはコウタロウを寮に残していく。
「……ルーカスが?」
フランはグラスレー寮に押しかけてエマを呼び出すとルーカスが行方不明であること等を説明する。
「道理でこの1か月の間は学園が平和だと思ったわ」
話を聞いたエマは取り乱す様子もなく、むしろ学園が平和だった理由に納得がいったようだ。
「良く落ち着いていられるな。ルカはお前の婚約者なんだろ?」
「……どこからそんな話が……まぁ良いわ。それよりルーカスからメールが来てたんでしょ? ルーカスが学園に来たくないっていうならそうなんでしょ」
「だーかーら! いくらルカでも考えられないんだって!」
エマとフランの話は平行線で終わりそうはない。
「エマさんは何か知ってるんじゃない? だからそんなに落ち着いていたれるんでしょう?」
「本当か? 頼む! 何か知ってんなら教えてくれ。 アタシ等に出来る事なら何でもするからよ!」
フランは土下座しそうな勢いでエマに頭を下げる。
それを見たエマは観念したのかため息をつく。
「私も何かを聞いている訳じゃないけど理由に心当たりはあるわ。恐らくは無事で居場所にもね。ついてくる?」
「本当か!」
フランは頭を上げる。
ルーカスが無事の可能性が出て来て安心して表情が緩んでいるが、それを見てエマは罪悪感が出て来る。
「けど……覚悟はしておいて。この先は見ない方が良いと後悔するかも知れないから」
「何もしないでいるよりかはマシだ。なぁシズカ」
「え? まぁ……」
只ならぬ嫌な予感を感じるがシズカも同意せざる負えない。
それからエマはヴォルガに寮を空ける事を伝え学園を出るための移動手段を用意を用意させた。
小型艇で3日ほどかけて学園とは別のフロントに到着する。
すでにエマが来ることを事前に知らせていたため、移動用の車も用意されており、3人はフロント内を移動する。
「ここにルカがいるのか?」
「ええ恐らくは」
案内されたのはフロント内の居住エリアの中でも一番豪華な屋敷だった。
「正面からカチこむか?」
「その必要もないわよ」
エマは呆れながらも屋敷の使用人を呼び出すとそのまま中に通される。
そして、応接室に通されるとそこにはルーカスがソファーに座っていた。
多少寝不足気味なのか目の下に隈があるが、手荒な扱いは受けてはいないようだ。
「よう。久しぶり」
「ようじゃねぇよ! お前無事だったのか?」
「何とかね」
ルーカスは1か月までと何ら変わった様子は見られない。
「何の用から知らないけど、まぁ座れよ」
ルーカスに言われてフランとエマはルーカスの対面のソファーに座り、シズカも車椅子をソファーの横に着ける。
「で、何があったんだ? 学園に行きたくないとかウソだよな? アタシ等で力になれる事があれば言ってくれ。出来る事は何でもやるからよ」
「……出来る事は何もないし、嘘でもない。俺はもうあの学園に行きたくないんだよ」
完全な拒絶にフランは返す言葉も無い。
ルーカスの表情からも嘘でも何かを誤魔化している様子もない。
本心からフランたちでは何もできず学園にもいきたくないと言っている事が分かってしまう。
ルーカスの拒絶で応接室の空気は重い。
重い空気の中、ガチャリと応接室の扉が開けられた音する。
「お兄ちゃん。お客さん?」
扉の影から銀髪の少女が顔を出す。
不安げに応接室のフランたちを見ている。
「久しぶり。ミオリネ。元気だった?」
そんな中、エマが少女に声をかける。
するとミオリネと呼ばれた少女の表情はパッ明るくなる。
「エマお姉ちゃんだ。このお姉ちゃんたちはお兄ちゃんとエマお姉ちゃんのお友達?」
「そうよ」
「誰だ?」
「確かルカの妹がこのくらいの歳だったと思うわ」
シズカがフランに耳打ちする。
エマはルーカスが総帥からの命令よりも優先する事態はミオリネしかいないと読んでいま、ミオリネのいるフロントを探してフランたちを連れてきた。
「初めましてミオリネ・レンブランです」
ミオリネは相手がルーカスやエマの友達だと知ると安心したのか自己紹介をする。
精一杯大人びようとしている様子が伺えフランも思わず顔が緩む。
「ああもう、ミオリネは可愛いな! なんでこんなにも可愛いんだよ! あの親父の種からこんな可愛いミオリネが出来るとかありえないだろ! それだけがアイツの唯一の功績だよ全く! 本当にもうさ!」
「もう、お兄ちゃん。くすぐったいよぅ」
突然の事態にフランもシズカも思考が停止する。
ルーカスは目にも止まらず速さでミオリネを抱き上げると頬ずりとする。
ミオリネも抵抗することなくきゃっきゃと笑っている。
「なぁ……アタシは何を見せられてるんだ?」
「……知らないわ」
あまりの事態にシズカも考えるのを止めた。
「だから言ったでしょ? 覚悟が必要だって」
エマは何も気にした様子はない。
「ルーカス。その辺にしときなさい。彼女たち引いてるから」
エマは立ち上がるとルーカスの方に行く。
「ミオリネは私と向こうで遊んでましょ」
「うん!」
「あ? 俺からミオリネと引き離そうとかそれとも人間か? お前」
「言いから、ちゃんと説明してきなさい。自分の巻いた種は自分で何とかしなさい」
エマはミオリネをルーカスから引き離す。
ミオリネもエマに懐いているようであっさりとルーカスから離れる。
エマがミオリネを連れていくとルーカスはエマを射殺しそうな視線を送るもやがて再びソファに座る。
「まぁそういう事だ」
「どういう事だよ!」
ソファに座るとルーカスは先ほどまでの深刻な空気を出すが、今更だ。
「貴方まさか学園に行きたくない理由って」
シズカもルーカスの真意は察しは付いたが、どうか外れて欲しいと思いながらも口にする。
「ミオリネが可愛すぎて離れたくないからに決まってるだろ。寝顔も可愛すぎて今日も眺めていたら朝になってたしな」
ルーカスは真顔で当たり前のように言い切る。
寝不足気味なのは徹夜でミオリネの寝顔を見ていたせいらしい。
当たって欲しくない予想が的中し、シズカも頭を抱える。
まさか本当に妹と離れたくないという理由で1か月も学園のあるフロントに戻ってこなかったとは信じられない。
「私のメールを無視したのは?」
「始めは返すのが面倒だったんだけど、流石に毎日送られて来ると怖いぞ。何なのストーカー?」
「それは確かに」
「は?」
ルーカスも始めはミオリネとの時間を優先して返信は後にしようと思っていたが、シズカからのメールが毎日決まった時間に送られてきてやがてメールを見る事すらしなくなった。
「……したり顔でいろいろと推理していた私が馬鹿みたい」
「だな。めっちゃドヤってたしな」
シズカはキッとフランを睨みつける。
ルーカスのメールのおかしさを指摘し何かあったのではないかと推理したが、その推理は全くの見当違いでただのシスコンを拗らせているだけだったようだ。
「お前が妹を大事にしてるのは分かった。ならアタシ等にも紹介してくれよ」
「やだよ。フランのような頭の中まで筋肉で出来てそうな脳筋女やシズカのような性格が捻じ曲がり過ぎて切れてるメンヘラ女はとてもじゃないけどうちのミオリネの教育的に悪すぎるだろ」
「は?」
「喧嘩売ってんだよな?」
ルーカスの物言いにイラっとするも何とか堪える。
「うちのミオリネは見た目通りの純粋可憐だからさフランたちの影響を受けてやさぐれても困るんだよ。将来はどこに出しても恥ずかしくない清楚で可憐な淑女になるんだからさ。それなのにお前らのせいで親父の事を糞親父とか言い出してみろ。いくら父親は年頃の娘から嫌われる宿命と言っても、そんなことを言われると親父泣いちゃうだろ? 可哀そうだとは思わない?」
「……そうね。年頃の娘にとって父親は鬱陶しい存在だけど、同じくらい兄と言うのも鬱陶しくなるのよ。特に過干渉気味の兄はね」
シズカは嫌味を込めてそういうがルーカスは鼻で笑う。
「はっ! それはちゃんと統計を取った話なのか? 仮にそうだとしてもうちのミオリネは特別だからなそうはならないね」
「さぁどうからね」
「とにかく! いつ戻ってくるんだ?」
ルーカスとシズカの口論にフランが割って入る。
「だから行かないって。親父にも少しの間は休む許可は得てる」
すでにデリングの方には話は通しているが、どれだけの期間を想定していたのかは分からない。
「少しってどのくらい何だよ」
「そうだな。大体10年くらいかな。人間の人生からすれば10年なんて少しだし、そうすればミオリネも学園に通う歳になるから一緒に学園に行ける。我ながら天才的だな。それだけの間残る魔女であるレイニーには留年し続けて貰ってさ」
「なぁ……アタシ等こんなのに惚れてんのか?」
「知らないわよ。後、それ私も含めてるの?」
無茶苦茶な事を言うルーカスに呆れるしかない。
「ルーカス様」
するとセシルが応接室に来てルーカスを呼ぶ。
今まで姿を見せていなかったが、ルーカスがここにいるという事はセシルもここにいるのは当然のことだろう。
「総帥がお呼びです」
「げっ……会いたくないから、病気で死にそうだからとでも言っといてよ」
「ルーカス様が体調を崩したこと等一度もないでしょう」
「俺はミオリネ欠乏症って不治の病だから」
「馬鹿な事言っていないで行きますよ」
セシルは嫌がるルーカスの腕を掴むを引きずっていく。
「ではルーカス様をお借りします」
「いーやーだー」
そのままルーカスを応接室から連れていく。
道中でいやいやだが覚悟を決めて屋敷のデリングの執務室まで来る。
「何か用?」
ルーカスはノックをすることもなく執務室に入る。
執務室でデリングは自分のしていた様だが、無断で入ってきたルーカスの事を気にした様子はない。
ルーカスはそのまま椅子に座るとデリングは仕事に一区切りつける。
「お前はここで何している」
特に前置きもなくデリングが切り出す。
「何ってそりゃ毎日、ミオリネと楽しく過ごしているけど?」
ルーカスは悪びれる事もなく答える。
「親父にも言っておいたはずだけど?」
「ひと月前だったと記憶しているが?」
「ひと月前に言ったからな。耄碌するには早すぎるぞ。それに別に問題はないだろ? 次でラストなんだしさ。その前にミオリネと戯れて癒したい訳だよ。面倒な仕事を押し付けられるし、今回も拉致られるしさ」
1か月前、シズカとの決闘が終えた後にデリングの指示を受けた人間によって半ば強制的に連れてこられた。
学園に編入してしばらく経つが、ルーカスは一切の進捗状況を報告していなかったためだ。
すでに2機のガンダムを回収した事でデリングも少しなら休んでも問題ないと判断した。
「それがお前を引き取る時の契約だろう。ルーカス。お前をそこまで育てるのにいくらかかったと思っている。
ようやく戦えるのだ。自らの役目を果たすのは当然のことだ」
元々、デリングがルーカスを引き取ったのは境遇に同情したからでも、ヴァナディースを襲撃した罪悪感からでもない。
ルーカスにはガンダムの力を最大限引き出すことが出来てそれは強大な力となるからだ。
今まではMSに乗って戦えるような歳ではなかったが、すでに戦える歳になっている。
「分かってるさ。それでも少しくらいいいじゃん。俺だって少しは人間らしい事したいし」
「ならば、ノートレットにも連絡の一つでもしてやれ。連絡がない事を気にしていたぞ」
「それはまぁ……その内ね。まだ区切りが付けれてないし。いつでもできるでしょ」
ルーカスとデリングの親子関係は互いの利益で成り立っている。
デリングの妻でありルーカスの義理の母親でもあるノートレットとの関係はルーカスの方から距離を取っている。
ヴァナディース事変から10年が経った今でもルーカスはあの後脱出させると言われていたエルノラとエリクトの行方を捜している。
流石に10年間も見つからず手がかりすら掴めない状況ではもう生きていない可能性も過っている。
それでも生死をはっきりさせるまではルーカスの中ではノートレットの事を義母と呼ぶことは出来なかった。
「それでそんな説教をするために俺を呼んだの? 総帥って暇なの?」
「そんな訳がないだろう。銀河の獅子と言う組織は知っているな」
「えっと確かスペーシアン至上主義者の過激派だろ? MSとか結構持ってるでかい組織だよな? それが何?」
アーシアンを差別する者たちは多いがその中でも銀河の獅子は過激派の組織でアーシアンはスペーシアンの為に働いて死ぬことが唯一の存在理由とまで言い切る組織だ。
その思想に共感した企業が極秘裏にMSを横流しし、旧式のMSを中心にかなりの数のMSを所有していると聞く。
「ウチとも折り合いが悪かったよな?」
ベネディットグループの傘下にもアーシアン系の企業もあり、アスティカシアにもコウタロウやフレットを初めとしたアーシアンが通っている。
デリングはスペーシアンだろうがアーシアンだろうが使える物は使い、使えない物は容赦なく切り捨てる為、アーシアンであってもグループに利益を出せるなら使う。
それが銀河の獅子は気に入らないらしく、何度かアーシアンの待遇改善を要求する抗議が行われているがベネディットグループは完全に無視している。
「最近になってグループ傘下の企業を標的とした抗議テロが何件か発生している。お前も用心しておけ」
「まどろっこしいなぁ。邪魔なら潰せばいいだろ? 何なら俺が魔女狩りの後でやろうか?」
「実際に前線でテロをさせられているのは奴らに使われているアーシアンだ。そんな奴らをいくら叩いたところで意味はない」
カテドラルの方でも銀河の獅子に関して調査を進めているが進展はない。
恐らくは銀河の獅子を支援している企業が情報を隠蔽しているため、中枢を叩き壊滅させることも難しい。
「面倒臭いな」
「お前は学園での魔女狩りを優先し、間違っても自衛以外で首を突っ込むなよ。ただでさえ自身を顧みない無茶をする傾向が強いからな」
「一応は親らしく心配はしてんだ」
「何もなしえないまま死なれればこれまでの投資が無駄になるだけだ」
「そういう事にしといてやるよ。要件はそれだけ? なら俺はこれからミオリネとの至福の時間を過ごすから」
これ以上の話はないらしく、デリングもルーカスを引き留める事はしなかった。
話しを終えるとルーカスはフランたちを待たせている応接室に戻る。
「なぁ……コレどういう状況だ?」
応接室に戻るとエマがミオリネを連れて戻ってきていた。
ミオリネはフランの膝の上に座っている。
「おう。ルカ。コイツ可愛いな。お前と違って素直でさ」
「そうね。貴方と違ってね」
デリングを話している間にミオリネもフランたちと打ち解けていたようだ。
「エマ」
「ルーカスは過保護なのよ。そんなんじゃいつか嫁に行く時に困るわよ」
「は? 俺のミオリネを嫁に出すことなんてねーし。ちゃんと普段からミオリネには男は俺以外みんな獣だって教えいるから男に汚されることなんてありえないね」
「呆れた。いい加減に妹離れしたら?」
「無理だね。そうしたら俺が死ぬ」
ルーカスとエマがにらみ合う。
「あっ! お兄ちゃんだ」
ミオリネもルーカスに気づいたらしくフランの膝の上からルーカスのところまで来ると足にしがみ付く。
「フランお姉ちゃんから聞いたよ。お兄ちゃん凄く強いんだってね」
「当然だろ。お兄ちゃんは宇宙一強いんだよ」
「パパからもお仕事頼まれてるんでしょ? お兄ちゃん頑張ってね!」
満面の笑顔でそうい言われるとルーカスは少し考え込む。
「セシル。すぐに学園に戻る手筈を整えろ。すぐに戻って秒で片付ける」
「了解です」
先ほどまでとは打って変わりルーカスはやる気となった。
「うわっチョロ」
「チョロいわね」
「言ったでしょ。ルーカスはミオリネの言葉を最優先にするって」
それを見ていたフランたちは呆れるしかない。
ミオリネのたった一言で先ほどまでとは変わってやる気を出している。
余りにも単純すぎる。
それからすぐにセシルが学園に戻る準備を整える。
「ミオリネ。学園に付いたら連絡するからな。メールも毎日10回はするからな」
「うん!」
「ねぇ。何なのアレ」
「気にすんな」
毎日メールをした事でストーカー扱いされたが、シズカもさすがに1日1回で多い時でも2,3回しかしていない。
「ほら行くぞ」
「ああ……ミオリネ。やっぱ行くの止める。それかミオリネも連れてく」
「お兄ちゃん! いってらっしゃい!」
ミオリネに見送られながらルーカスはフランに引き摺られながらセシルが用意した輸送艇に連れていかれる。
「今回はずいぶんと早かったわね」
すでに小型艇にはマキアがこのフロントに持ち込み修理をしていた4機のガンダムを積み込んでいた。
決闘で大破したルブリスV2も完全に修理され、頭部を破壊されたシズカのガンダムサナトスも修理とシステムの細工を外して万全の状態となり、ペイル社から予備パーツも買い取っていつでも使えるようはされていく。
「ああ……ミオリネ」
「大丈夫なの? コレ」
「問題はありません。その内治ります」
セシルはルーカスをブリッジの席に座らせると縛り上げて動けなくする。
「これで大丈夫です」
動きを完全に封じたため、変な行動を取れなくなり、いずれは諦めて正常な状態に戻るはずだ。
虚ろな目でブツブツとミオリネの名を呟いているが、フランもシズカももう慣れて気にしない。
そのまま輸送艇はフロントを出ると学園のあるフロントに向かった。