戦闘が終わりルーカスとセシルもフロントに戻ると管制室まで向かう。
管制室には実習の指揮を取っていた経営戦略科の生徒や教師が集まっているが想定外の実戦で空気が重い。
「さてと。アイツらどこの奴らだ?」
「不明です。使用していたMSはガンダムタイプ以外はペルセウスと恐らくは先日強奪されたレオ・コーポレーションの新型機かと」
襲撃に使われたMSからでは相手を特定することは難しそうだ。
ペルセウスは様々な組織に出回っているため、そこから割り出すのは不可能で、量産試作機のルブリスもオックスアースの当時の販売履歴を調べたところで10年も経てば別の組織に渡っている事もある。
後はレグルスだが、レオ・コーポレーションから奪った相手がそのまま実戦に投入してきたことは確かだが、その相手は未だに分かっていない。
時間をかけて調べればある程度は分かる事だが、今の状況でそれを調べている時間はない。
「そっか、じゃ何で襲撃してきたのかってのは……まぁ俺か」
話の途中で視線がルーカスに集まる。
流石に誰も直接は言えないが、襲撃された理由で真っ先に出て来るのはルーカスが狙いだという事だ。
ルーカスはベネディットグループの次期総帥になる可能性が高いと見られている。
グループへの恨みか次期総帥の座を狙ってなのかは分からないが、比較的警護が薄くなる校外実習を利用してルーカスの命を狙っている可能性が高い。
「俺はともかく親父はいろんなところで恨みを買ってそうだからな。全く、迷惑な話しだ。そもそも無駄に敵を作り過ぎなんだよ。だいたいな……」
「それよりもカテドラルからの救援はどのくらいに?」
話が脱線仕掛けたところをセシルが修正する。
セシルの問いに教師たちは浮かない顔をする。
「それが……」
「例年この実習をするときにはカテドラルの方にも予定を伝えて定期巡回のコースを有事の際には24時間以内に救援に来られるように変更して貰っているのですが……」
教師が管制室のモニターにフロント宙域を表示する。
フロントから最も近いカテドラルの部隊は相当な距離があり教師のいう24時間以内にここまで来るのは不可能だ。
「最短で3日はかかりそうだな」
「ええ、どういう訳かカテドラルは実習時の特別巡回のコースではなく通常時の巡回コースで巡回しているようで」
「事前の連絡はどうなってたんですか?」
「何度も確認済みです。今回は特に……」
実習は生徒主導で行われているが、有事の際の備えは学園側が手配している。
緊急時の備えとしてカテドラルにもいつでも動けるようには手配している。
特に今回は急とは言えルーカスが参加するため、いつも以上に気を使って万全の体制を取っていたはずだ。
しかし、カテドラルは定期巡回コースを巡回している。
教師たちもどこでそんな手違いが起きたのか分からない。
「セシル、人為的なミスはどこにでも起こるもんさ、それよりもすぐに荷造りをさせろ」
「荷造りですか?」
「そうだろ? 向こうの戦力は確認できるだけでMSが7機。こっちはガンダムが3機で俺のV2とシズカのサナトスは装備を持ってきてないし、サナトスは決闘仕様で実戦仕様にしている時間はないから実質セシルのルブリスだけだ」
警備として同行してきた実戦用のデミトレーナーはすでに全滅している。
戦闘になった場合はルーカスのルブリスV2とセシルのガンダムサナトスは固定装備とビームサーベルしか使えない。
その上、ガンダムサナトスは実戦仕様ではなく、実戦仕様にするためには時間がかかる。
装備が万全の実戦用のMSはセシルのルブリス1機のみだ。
「こっちの増援は見込めない上に向こうはまだ戦力があるかも知れないってのにここで籠城しても勝ち目はないよ」
フロントには緊急時の迎撃システムも無いため、このままここで敵を迎え撃つことは出来ない。
「なら心身共に余裕のあるうちに荷物をまとめて逃げた方がマシだ。すぐに敵の進行ルートと撤退ルートから敵の母艦の方向がある程度は割り出せるだろ。それと脱出の準備と並行してこのフロントは完全に破棄するから爆破の準備も進めておけよ」
「このフロントをですか? 流石にそれは……」
「向こうの狙いは恐らくは俺だろうけど、フロントに回収したジャンクをそのままにしてアイツらにやる義理はないし、注意も引かせられるかも知れないからな。責任は親父が取る」
向こうの狙いはほぼ確実にルーカスではあるが、ただフロントから逃げるだけでは後で襲撃犯にフロントを占拠される可能性がある。
このフロントは規模は大きくはなく普段は使われていないため、重要なデータは残ってはいないが、実習で回収したデブリは直せばまだ使える物は多く、売ればそこそこの金額にもなるため、連中の戦力増強に使える。
それを防ぐのと爆破することで相手の注意を引き付けて少しでも逃げ切れる可能性を上げる狙いもある。
教師たちも襲撃された落ち度もあってルーカスの指示に強くは否定できない。
「ここからは時間との勝負だ。向こうが準備を整える前にここを出る」
ベストは向こうが襲撃の準備を整える前にフロントから出て戦闘をすることなく安全圏まで逃げ切る事だが、そう簡単にはいかないだろう。
ルーカスはセシルを連れて格納庫へと向かう。
2人が格納庫に向かうまでに管制室から生徒たちに指示が出されているため、すでにモビルクラフトを使い水や食料が輸送艇に運びこまれている。
予期せぬ襲撃で不安な空気がフロント内に漂っていたが、明確な指示が出されることで不安を打ち消すかのように脱出の準備が進められている。
「まさか実戦になるなんてな」
「そうね。それりもコレ、使えるの?」
「分かんないけど、ロンたちがいうのは使えなくはないらしい」
格納庫で回収されたベギルベウのコックピットでコウタロウとシズカはコンソールを弄っていた。
回収されたべギルベウはグラスレー社製のMSの残骸から使えそうな部品を使って一応は修理は形となっていた。
「戦力は多いに越したことはないしギリギリまでやれることをやるしかないだろ」
「コウタロウ、シズカ。コイツ使えんのか?」
格納庫に到着し、セシルは自分の機体の方に向かいルーカスは急ピッチで作業を進めているベギルベウの元に来る。
「コイツのアンチドートは?」
「そっちは駄目みたいだった。取り合えず動かせるようにはなりそうだ」
べギルベウにはアンチドートが搭載されているため、使えればルブリス改を無力化できたが、そこまで都合よくはいかない。
「仕方がないか。シズカは自分のMSをいつでも使えるようにしといてくれ。何人かこっちに回す。コウタロウ、コイツで出るつもりなら動かし方も覚えておけよ。デミトレーナーとは違うからな」
「おう。任せとけ」
「分かったわ」
シズカは自分の作業を切り上げるとガンダムサナトスの方に向かい、ルーカスもそれに続く。
コウタロウもすぐにメカニック科の生徒の中でグラスレー社のMSの動かし方が分かる生徒からベギルベウの操縦方法を頭に叩き込む。
「シズカ。お前のガンダムは狙撃も出来なければ実戦仕様でもないから。戦闘になった時は輸送艦から離れるなよ。輸送艦の護衛にはセシルを付かせる」
「セシルさんが? ルカはどうするの?」
「俺は向こうのルブリスを叩く」
シズカは機体に乗り込むとシステムを立ち上げる。
ルーカスもハッチに寄りかかる。
「大丈夫なの?」
「ガンビットもあるから守りは問題ないよ」
「そうじゃなくて」
ルーカスのルブリスV2はビームサーベルとビームバルカンしか武器がなく防御用の装備も精々回収したジャンクパーツを強引に外付けして簡易的なシールドをつけるくらいしかない。
そんな状態で相手のルブリス改を抑えるのは無茶な話だ。
「何でルカが敵のガンダムと戦わないといけないの? セシルさんは貴方の護衛なんでしょ?」
本来ならばルーカスは戦う必要はない立場にある。
場合によっては他の生徒や教師を全て囮として使って犠牲にして自分一人だけ生き残ろうとしてもベネディットグループとしては問題ない。
むしろ他のそうすべきだという声だってあるかも知れない。
それなのにルーカスは自ら戦場に出て敵のエースと思われるルブリス改と戦うという。
少なくとも自分がみんなを守らなくてはと言う正義感や義務感から来るものではないとシズカも分かっている。
エース機を抑える役目ならセシルでも十分に可能で、セシルの役目を考えればセシルが相手をするのが妥当だ。
「まぁね。でもガンダムは別だ。ガンダムは願いを呪いに変えた。ガンダムは生まれて来るべきじゃなかったんだよ。だから俺が全てのガンダムを潰す」
「何でそこまで……」
「強いていうなら単なる八つ当たりだよ」
「ルーカス様」
ルーカスの真意を測りかねているところに機体の調整を終えたセシルがやってくる。
「すぐ行く」
話しを切り上げてルーカスはセシルの方に向かう。
「ルーカス様。せめて私のガンビットだけでも」
「いらないって。普段から使ってないを結構使い辛いんだよ。アレ」
ルブリスV2は改修されているが、セシルのルブリスとの装備の互換性はある。
装備は予備はないが、セシルがガンビットやライフルを持たずに出撃すれば、ルーカスは武器を装備して出撃することが出来る。
少なくともガンビットだけでも持っていけば生存率は大きく変わってくるが、ルーカスにはその気はないようだ。
「まぁ実戦なら何とかなるでしょ」
「ですが、マキアさんが言うにはスコア4は長時間は持続出来ないとのことですが」
「分かってるって」
ルーカスはデータストームの影響を受けず、決闘ではないため、スコアに制限はない。
その気になれば危険域であるスコア4まで上げても問題はない。
しかし、スコア4で戦闘を続ければ機体の方が先に耐え切れなく可能性がある。
「そろそろ積み込みも終わる頃だろ?」
物資の積み込みはトラブルが起こる事も無く予定通りに終わっているようだ。
後はMSを積み込んでフロントの爆破用意が完了し次第逃げるだけだ。
その準備も問題なく終えて輸送艦はフロントを出港する。
フロントから輸送艦が出たことは銀河の獅子の母艦の方でも補足している。
銀河の獅子もすぐに追撃の為にMSを出撃させて輸送艦を追う。
出撃したMSはまずは二手に分かれて挟撃する形を取った。
「向こうもMSを出してきたけどターゲットはいないわね」
セリカの方でも輸送艦から出てきたMSを確認できたが、その中にルブリスV2は確認できない。
「3機か。先行したレド達で余裕だな。俺たちは輸送艦を沈めればどの道一緒に始末出来る」
銀河の獅子の方はセリカの方にスペーシアン仕様のペルセウスとレグルスの3機編成で、先行して仕掛けているのはレグルスと3機のペルセウスアーシアンだ。
ルーカスのルブリスV2は出て来てはいないが、輸送艦を沈めてしまえばどの道同じであるため、輸送艦を全て沈めてしまえばそれかにルーカスは乗っているため、問題はない。
後発の3機がフロントを通り過ぎようとする頃にフロントのあちこちから爆発が起こる。
「何?」
「ちっ! アイツらフロントを爆破しやがった!」
「所詮アーシアンと一緒に暮らしてる奴らだ。宇宙を汚すのも平気なんだろうよ。コイツは注意を引くための陽動だ。気にすんな」
フロント爆破時の残骸に気を付けながらも輸送艦を目指そうとする。
派手に爆発を起こして注意を引くための囮であるのであればそれでもよかった。
「後ろががら空きなんだよな」
残骸の中からルブリスV2が飛び出してくるとビームサーベルでペルセウスを背中から突き刺し胴体まで貫通する。
フロントから輸送艦が出れば当然全員が脱出したと向こうに思わせる事が出来る。
始めは逃げる事を最優先にしていたが、ルーカスがただ逃げるだけも癪だからと一人残っていた。
ルーカスはあえてフロントに残る事で輸送艦を追う敵の背後を奇襲することが出来る。
爆破のタイミングも奇襲するために都合がいいようにルーカスが遠隔操作で行った。
「ポール! くそ! この野郎!」
レグルスはルブリスV2にビームマシンガンを連射するが、ルブリスV2はペルセウスからビームサーベルを抜くとレグルスの方に向けて蹴り飛ばす。
ビームはペルセウスに直撃して爆散し、爆発に紛れてルブリスV2はルブリス改の方に向かう。
「今度は最後まで相手してくれよな」
「この! ガンビット!」
ルブリス改はガンビットを射出して迎え撃つ。
「フロントが爆発した。向こうは始まったようだな」
「ええ、こっちも来るわよ」
輸送艦を追った部隊も追いついたようでビームを撃って輸送艦を沈めにかかる。
ルブリスがビッドステイヴを展開してビームを弾きレシーバーガンで敵を散開させる。
「無理に撃墜する必要はありません。とにかく輸送艦を沈ませないように時間を稼いでください」
「分かりました!」
コウタロウのベギルベウはビームライフルを撃つ。
「くっそ! 思った通りに飛ばねぇ!」
べギルベウは修理で辛うじて動けるようにはなっているが、コックピットは別の機体のMSを強引に取りつけて、両腕はハイングラの物をつけて装備もハイングラのライフルとシールドをつけているが、シールドのビームバルカンは使えず、ライフルも出力が安定せず照準もほとんど定まらない。
戦闘用のMSだけあってビームライフルも直撃させれば十分に敵を撃墜出来るが、そもそもそうは当たらない。
「下手くそが!」
ペルセウスアーシアンの1機がビームサーベルを抜いて接近戦を仕掛けて来る。
「コイツ!」
ベギルベウのビームを避けながら接近しビームサーベルを振り上げるが、横からのビームで妨害される。
「コウタロウ! 離れて!」
「シズカ助かった! けど離れたところで!」
シズカのガンダムサナトスが腕部のビームガンでペルセウスアーシアンの足を止めさせたところにベギルベウはペルセウスアーシアンに突っ込む。
「これなら外さないだろ!」
ベギルベウはビームライフルをペルセウスアーシアンに至近距離から当てる。
これならばライフルの照準が正確でなくとも外すことはない。
「コイツで……」
コウタロウはペルセウスアーシアンの武器を持っている腕に銃口を向けるが、すぐに銃口の向きを胴体部に変えた。
腕を破壊すれば無力化は出来るが、確実なのは撃墜することだ。
今まで決闘で勝ったことは何度もあるが引き金を引けば人を殺す。
自分でも今まで以上に心臓の鼓動が早まっているのが分かる。
「このスペーシアンがぁぁぁ!」
「こんのぉぉぉ!」
コウタロウは迷いを振り切り引き金を引く。
ビームが撃たれてペルセウスアーシアンの胴体が撃ちぬかれた。
ペルセウスアーシアンは爆散し、ガンダムサナトスがベギルベウの前に来るとビームガンを連射してペルセウスアーシアンをけん制する。
「コウタロウ」
「大丈夫だ。迷ってなんていられない。俺たちでみんなを守るんだ」
「ええ、そうね」
コウタロウは手が震えるが操縦桿を強く握る。
ガンダムサナトスはビームサーベルを抜く。
「シズカ。シズカは足止めを頼む。止めは俺が刺す」
「良いの?」
「ああ」
コウタロウは深く息を吐いて自分を落ち着かせる。
シズカのガンダムサナトスでは直接的に撃墜は出来ない。
だからこそシズカは敵の足止めに徹してコウタロウが止めを刺すというのは理に適っている。
シズカは理屈の上では正しい判断だと理解はしているが敵を殺す役目をコウタロウ一人に押し付けるのは気が引ける。
「アイツは一人で命張って戦ってんだ。俺たちが日和って輸送艦が沈められるようなことあっちゃならないんだ」
「そうね。止めは任せるわ」
ガンダムサナトスはビームサーベルでペルセウスアーシアンのビームサーベルを受け止める。
「何コイツ。頭を直してないの?」
目の前のペルセウスアーシアンには頭部が無かった。
前の戦闘で破損した頭部を直しては貰えずに出撃させられたようだ。
「お前らスペーシアンのせいで俺たちは!」
「実戦仕様じゃなくてもこっちは最新型のガンダムなのよ!」
シズカはパーメットスコアを2に上げてフレキシブルブースターをフル出力で使う。
その勢いでペルセウスアーシアンを弾き飛ばすと機動力を活かしてビームサーベルでペルセウスアーシアンの両腕を破壊する。
「コウタロウ」
「任せろ!」
ベギルベウはビームライフルを連射しながら突っ込む。
距離が近くなるほど、ビームのずれは小さくなりペルセウスアーシアンにビームが直撃するようになりやがて爆散する。
「くそ……ライフルが」
無理に連射したせいでビームライフルが機能不全を起こしてしまった。
べギルベウはビームライフルを迫るペルセウスアーシアンの方に投げる。
ペルセウスアーシアンはビームサーベルで飛んできたビームサーベルを破壊するが、背後にガンダムサナトスが回り込みビームサーベルを突き出す。
とっさに振り向きながらビームサーベルを振るうが、ガンダムサナトスのビームサーベルは頭部に刺さり、ガンダムサナトスの右腕を切り裂いた。
「コウタロウ!」
ガンダムサナトスはペルセウスアーシアンの頭部に刺さるビームサーベルを思いきり蹴り飛ばす。
ビームサーベルはビーム刃を出したままペルセウスアーシアンの頭部を貫通して飛んでいく。
「任せろ!」
ビームサーベルが飛ばされた先にはべギルベウが突っ込んできていた。
強引な加速でスラスターへの負荷が大きくなり警告がなっているが止まる事はない。
ベギルベウはビームサーベルを掴むとそのままペルセウスアーシアンの胴体に付き刺そうとする。
「くそ! 刺さらねぇ!」
「やらせるか!」
「させないわよ!」
決闘用の調整では出力が小さくペルセウスアーシアンの胴体部の装甲を貫くのに時間がかかってしまう。
その間にペルセウスアーシアンはベギルベウを殴り飛ばそうとするが、ガンダムサナトスは使える左腕でペルセウスアーシアンの腕にしがみ付いて妨害する。
「刺されよぉぉぉ!」
「ぐっ……あぁぁぁぁ!」
やがてビームサーベルはペルセウスアーシアンの胴体を貫く。
すぐにガンダムサナトスがベギルベウをペルセウスアーシアンから引き離して距離を取る。
「はぁはぁ……これで終わりか?」
「そうね……もう1機はセシルさんの方で抑えてくれているから」
ペルセウスアーシアンは全機撃墜することが出来た。
残るはセシルが交戦しているレグルスのみだ。
セシルが最も高性能のレグルスを輸送艦を守りながら抑えていてくれたからこそ、コウタロウとシズカはペルセウスアーシアンに専念できた。
輸送艦を守りながらではここまではやれなかった。
「コウタロウ、そっちの状態は?」
「まだ動くけど、駄目だ」
「これ以上は私たちも足手まといになるわね」
ベギルベウは武器は残されてはいない。
スラスターも負荷をかけすぎていていつ使えなくなってもおかしくはない。
シールドはほとんど使ってはいないが、シールドの重みで左腕も限界に近い。
ガンダムサナトスもビームサーベルと右腕を失い小型シールドと左腕のビームガンは残っているが、戦力としては機動力を使ってかき回すくらいしかできそうにない。
そんな状態で戦場にとどまっていてもセシルに守る対象を増やしてしまうだけだ。
「後はルカとセシルさんに任せて戻りましょう」
ガンダムサナトスがベギルベウを抱えながら輸送艦へと戻っていく。
「ちっ! 全滅かよ。使えねぇ奴らだな」
「よそ見は厳禁ですよ」
ルブリスのレシーバーガンのビームがレグルスを掠める。
ルブリスはビットステイヴを輸送艦の守りに使い、レシーバーガンのみでレグルスを抑えている。
「邪魔臭いんだよ!」
レグルスはビームマシンガンを乱射するが、ルブリスは完全にかわしてビームブレイドでレグルスの左腕を切り落とす。
すぐにレグルスもチェーンソードを振るうが、軽くかわしてレグルスを蹴り飛ばす。
「ルーカス様を一人で戦わせるのは嫌な予感しかしないというのに」
ルブリスはレグルスにレシーバーガンを連射する。
ビームはレグルスの右足に直撃して装甲を吹き飛ばす。
「コイツちょこまかと!」
レグルスはビームマシンガンでルブリスV2を願うが、ビームは当たる事はない。
「新型だがなんだか知らないけど、お前はお呼びじゃないんだよな」
ルブリスV2はビームをかわしながら接近してビームサーベルを頭部に突き刺す。
「ちぃ!」
「ほら、頭を潰したぞ。ウチの学園じゃもうお前は負けてんだよ」
ルブリスV2はレグルスを蹴り飛ばしてビームサーベルを引き抜くと頭部のビームバルカンを撃ちぬく。
ビームバルカンの威力ではレグルスの装甲を完全には破壊は出来ない。
「今日のところは逃げて良いからさ。俺の相手はそっちのルブリスだからな」
「キトー!」
ルブリス改はビームライフルを撃ちながらガンビットでルブリスV2を囲んでビームを浴びせる。
ルブリスV2はビームをかわしながらビームサーベルで避けきれないビームを弾き飛ばす。
「俺もまじめにやるからさ。パーメットスコア4」
ルーカスはスコアを4にまで上げるとルブリスV2のシェルユニットが発光する。
「アンタも本気出さないと死ぬよ」
ルブリスV2はガンビットの包囲から抜けるとルブリス改に切りかかる。
ルブリス改もビームサイズで応戦する。
「っ! 早い。それにあの動き……どこまでスコアを上げているのよ」
小回りの利くガンビットでもスコアを4にまで上げたルブリスV2の動きを止めきる事は出来ない。
「このままでは……こっちがやられる。スコアを上げるしかないの?」
「止せ、セリカ! スコアを上げてお前が死ねば代わりにそいつを扱えるパイロットがいなくなる!」
スコア3のままではスコア4のルブリスV2には勝ち目はない。
セリカはキトーの制止を無視してスコアを4に上げる。
「っ! 流石に……でもまだいける!」
データストームの影響が出ながらもセリカはルブリスV2に挑む。
更に加速してルブリス改はビームサイズを振るう。
ルブリスV2は回避してビームサーベルで切りかかり、それをビームサイズの柄で受け止める。
「スコアを4に上げたか。死ぬ気か」
「ここでお前を……倒せば。終われる……終われるの。だから死んでよ!」
ルブリス改はルブリスV2を弾き飛ばしてガンビットで追撃する。
「死ぬ気で来る奴は面倒なんだよな」
ルブリスV2は最低限の動きでガンビットの攻撃を回避していく。
「あんまり長々と戦っていてもおいていかれるしそろそろ終わらせるか」
「……この感じ。何か」
「それ、借りるぞ」
交戦する中、セリカは何か変な感じがした。
すると自分が制御していたはずのガンビットのリンクが途切れた。
制御を失ったガンビットはルブリスV2の周囲に集まっていく。
「ガンビットの制御が……奪われたというの!」
ルーカスは更にパーメットスコアを上げる事で強引にルブリス改からガンビットの制御を奪った。
「……あり得ない。そんなことが!」
制御を奪われたガンビットはルブリス改を攻撃し始める。
「やっぱ、たまには使っておかないとダメだな。全然扱えないな」
「私を嬲るつもり!」
ルブリス改はビームバルカンを撃ちながらガンビットの攻撃に対応していく。
普段からガンビットを使っていないため、ガンビットの攻撃の精度は低い。
「っ! 不味い」
強制的にガンビットの制御に割り込まれてスコアを4で戦っていたこともありセリカへのデータストームの負担が操縦にも影響が出始めている。
「もう、これ以上は……」
ガンビットのビームがルブリス改の左肩に直撃する。
「きゃっ!」
被弾し体勢が崩れてコックピット内が揺れてセリカの意識も遠退いていく。
(お姉ちゃん。ごめん)
「何だ? お姉ちゃん? コイツは……」
セリカの薄れゆく意識の声がルーカスにも届いた。
「強引にガンビットの制御を奪ったせいで干渉してるのか」
ルーカスがルブリス改のガンビットの制御を強引に奪ったせいで互いのガンダムから出ているデータストームが相互干渉を起こしてパイロット同士の意識も混線しているのだろう。
「さっさと仕留めないとヤバイな」
ルーカスはルブリスV2に止めを刺そうとするが、その前に機体の機能が停止し、モニターも完全に消えた。
「あ」
元々スコアを4より上で使う事は想定していないため、ルーカスがスコアを上げ過ぎたせいでルブリV2の方が負荷に耐えきれずに機能が完全に停止してしまった。
同様にルブリス改の方も機能が停止している。
「何だか知らないが好都合だ」
2機のルブリスの戦闘についていけなかったレグルスが機能を停止したルブリスV2に向けてビームマシンガンを撃つ。
ルブリスV2は動くことは出来なかったが、ビットステイヴがルブリスV2の周囲に展開されて守る。
「ちっ!」
「ルーカス様はやらせません」
セシルのルブリスがレシーバーガンでレグルスをけん制する。
「悪い。キトー。連れてきた奴らがまるで役に立たなかった」
「全滅したのかよ。粗悪なパーツを使っていたと言っても安くは無かったのによ」
ペルセウスアーシアンが全滅したというのにレグルスのパイロットたちにとってはパイロットよりもMSの損失の方が先に考えるようだ。
「これ以上は無理か」
「ああ。こっちもポールがやられてセリカもあのザマだ」
「ポールが? くそ次は必ず仇を討つ!」
「そうだな。今回は最低限の仕事は果たした。セリカを回収して撤退する」
すでに輸送艦は安全圏まで離脱されて追撃すれば下手をすればカテドラルの部隊とも戦わなければいけなくなる。
戦力の大半を失った今の状況ではこれ以上の戦闘は出来ない。
レグルスがルブリス改を回収して後退する。
「撤退……ルーカス様?」
セシルはルブリスV2に通信を試みるが応答はない。
外から見た限りでは損傷はないようだが、機体は完全に機能を停止している。
セシルはすぐに機体同士のコックピットを近づけると機体から降りてルブリスV2のコックピットハッチをハッチ横のコンソールを操作して外から強制的にハッチを空けた。
「ルーカス様」
「よう。やっぱ忠告は聞いておくもんだな。マジで死ぬかと思った」
軽口を叩けるだけの元気はあるようでケガをしている様子もなくセシルは一安心する。
「またマキアさんが倒れますよ」
セシルも軽口を叩きながらルーカスに手を差し出す。
ルーカスはセシルの手を取りルブリスのコックピットに移る。
「流石に少し疲れた。寝てるから後よろしく」
「了解しました」
ルブリスのハッチが閉じられて、ルーカスはコックピットのシートの後ろの方まで行くと狭い隙間に入り込むように体を丸める。
余程疲れていたのかすぐにルーカスは寝息を立て始めた。
セシルはシートに座るとルブリスV2を回収して輸送艦に向かう。