ヴァナディーズ事変から10年世界は大きく変わった。
ヴァナディーズを襲撃時にグラスレー社幹部であるデリング・レンブランがガンダムの殲滅とカテドラルの設立を宣言した。
その後、MS産業の最大手であるベディット社が頂点となる企業体ベネリットグループがMS産業を引っ張っていくこととなった。
「様……ルーカス様」
「ん……何?」
シャトルの中でルーカスは起こされた。
隣の席にはルーカスを起こしたセシル・グローリーが座っている。
腰まで伸びた銀髪に眼鏡越しにでも分かる鋭い目つきはとてもルーカスと同い年とは思えない。
「ルーカス様。時期に学園に到着します」
同い年ではあるが、ルーカスとセシルの間には対等な間柄には見えない。
実際、2人は対等ではなくセシルはルーカスの身の周りの世話や護衛役として雇われている。
(あれから10年か……なんの因果か俺はルーカス・ナボ・レンブランである事に慣れちまった)
10年前のあの日、ルーカスはヴァナディースを壊滅させたドミニコス隊に保護された。
その後はいろいろとあって現在のベネディットグループ総帥のデリング・レンブランの養子となった。
(あれから親父の力を使って探しても見たが見つからないし、見つけて貰えるようにメディアとかにも出たのにな。おばさんにエリーもどこにいるんだが)
ルーカスはあれからカルドの言葉を信じればフォールクヴァングから脱出したとされているエレノアとエリーの行方を捜しているが、いまだに何の手がかりも見つけてはいない。
ヴァナディースを襲撃させたデリングの養子となったのもその伝手を使うためでもあった。
最近では向こうから見つけて貰えるようにメディア等にも顔を出して名前や顔を変える事もないが、向こうから接触してくる気配もない。
自分一人では探すのは困難だと判断し、養父であるデリングに捜索を頼むこととなり、その変わりにデリングからある命令を受けて今回はセシルを連れてデリングが学園長を務めているアスティカシア高等専門学園へと編入することになった。
「あれがアスティ……何とか学園ね。勉強とかやだな」
「そうは言ってられません。ルーカス様はいずれはベネディットグループを継ぐんですから」
「それも面倒だから嫌なんだけどな。てか、本来は養子である俺じゃなくて、親父の実子であるミオリネが継ぐべきだと思うんだよね。でもなぁ……そんな面倒をミオリネに押し付けるってのもなぁ」
ルーカスは一人ブツブツとつぶやく。
ルーカスは立場的にはデリングが自身の後を継がせるために引き取ったとされている。
だが、数年前にデリングは妻との間に娘のミオリネが出来ている。
ルーカスにとっては血のつながらない妹だがミオリネの事を溺愛している。
「ならいっその事ミオリネの為にもグループそのものを破壊してすっきりさせればミオリネは普通の生活が出来て普通に結婚して……いや、駄目だ。ウチのミオリネをどこに馬の骨かも分からない野郎にやるわけには……」
「物騒な事を言っていないで戻って来て下さい。ルーカス様。つきますよ」
一人で妄想が進んでいるルーカスに呆れながらもいつもの事だとセシルはルーカスを現実に呼び戻す。
シャトルは学園の港に到着する。
「今日から君たちと共に勉強することになったルーカス・ナボ・レンブラン君とセシル・グローリーさんだ。みんなルーカス君にはくれぐれも失礼のないようにな」
学園に到着した二人は自分たちのクラスで紹介された。
アスティカシア高等専門学園には3つの学科がありパイロット科、メカニック科、経営戦略科がある。
ルーカスとセシルはパイロット科に通う事になっている。
紹介されると生徒たちはざわついている。
この学園はベネディットグループが経営している学園で生徒はグループ傘下の企業からの推薦が必要となり将来卒業後はその企業に就職する。
そして、ルーカスは養子とは言えグループ総帥の息子であるため、彼らにとってはいずれは仕える相手ともいえる。
紹介が終わり空いている席に座りホームルームが終わると生徒たちはルーカスを取り巻く。
「面倒だな。セシル」
「了解です」
ルーカスを囲む生徒たちは皆、ルーカスに顔を覚えて貰い好印象を持ってもらうためにいろいろと自分や自分を推薦した会社の事をアピールしている。
いずれはグループを継ぐルーカスに良い印象を持ってもらえば将来的に自身の出世や会社の利益に繋がるからだ。
もっとも、ルーカスはそんな話など一切聞く気はなくセシルを呼ぶ。
「皆さま。ルーカス様への質疑応答は私を通してもらいます」
セシルがルーカスと生徒たちとの間に入る。
「さてと……おい。行くぞ」
ルーカスはこの騒ぎの中、隣の席に突っ伏して寝ている男子生徒を掴むと無理やり連れだす。
「うわ! 何だ?」
連れ出された男子生徒は驚き状況がつかめないまま教室から連れ出された。
「てか。アンタ誰だよ?」
男子生徒はルーカスの腕を振り払う。
「紹介されたときも寝てたもんな。ルーカス・ナボ・レンブラン。まぁよろしく」
「ああ。そういや転校生が来るって聞いたな。よろ……え? レンブランってマジ?」
「マジ」
男子生徒はずっと寝ていたため、ルーカスが紹介されたときは何も言いていなかった。
改めて名乗り始めは普通に聞き流していたが、相手が相手だという事に気が付いた。
「取り合えず学園を案内してくれ。授業の方は出なくても後で俺の方で教師の方には行っておく」
これから授業が始まるのだが、ルーカスは出る気がないらしく男子生徒に案内させようとする。
「てか、お前の名前は? 俺の方は別にお前でもアンタでも呼び方は構わないけど、後々不便になるかも知れないしな」
「ああ。コウタロウ・ハザマ。えっとルーカス君? それともレンブラン君? それか様とかつけた方が良かったりする?」
「変わった名前だな。俺の事はルーカスで良いよ。別に敬語とかもいらないし」
「助かる。生憎と俺はアーシアンなんて育ちが悪くてそういうのは苦手なんだよ」
「ふーん。まぁ良いや。コウタロウ。案内してくれ」
コウタロウと名乗った男子生徒はルーカスが余りにも軽く流したため、虚を突かれた。
「なぁルーカス。俺がアーシアンだって事は気にならないのか?」
コウタロウ以外にもアーシアンは学園にはいるが、ここでもアーシアンというだけで差別され見下されている。
「ああ。ここでもそういうのがあるんだよな。別にアーシアンだろうか関係ないよ。だってさ。ここにいる連中は皆、俺よりも下だろ? ならアーシアンとかスペーシアンとかで区別する意味はなくね? コウタロウに案内させたのも別に誰もよくてたまたま隣の席だったからで、コウタロウが何か特別だった訳でもないからな」
この学園において推薦した企業の序列がそのまま学園での序列となる。
ルーカスはグループの総帥であるデリングの推薦で編入してきたため、この学園においては序列は最上位という事になる。
その立場からすればアーシアンもスペーシアンも関係なく立場は下であるため、アーシアンを特別差別する理由もないらしい。
「そんなことはどうでもいいからさっさと案内してくれ」
「……そうだな」
普段からアーシアンというだけで見下されてきたコウタロウにとっては新鮮な事で不思議と嫌な感じはしなかった。
その後は学園の施設を案内して回ると一通り終わった頃には授業も終わって放課後になっていた。
「そういえばルーカスってどこの寮に入るんだ?」
学園は全寮制であり、寮によって学内に派閥も出来ている。
「俺は理事長室を使う事になってる。いわばルーカス寮ってところだ」
本来はどこかの寮の入るところルーカスは表向きは警備の関係上という事でデリングが学園で使う理事長室を使う事になっている。
実際のところは寮に入ると派閥等でいろいろと面倒だからという理由が大きい。
「流石は総帥の息子ってところか。最後に俺らの寮に案内するよ」
ルーカスが最後に案内されたのはアーシアンの生徒が暮らしている地球寮だ。
他の寮は寮を支援している企業の力を誇示するかのようにホテルのような寮だったが、地球寮は学内の立場を分からさせられるかのように貧相な寮でこれなら部屋の方も10年前にルーカスが暮らしていたヴァナディース機関の部屋の方がよっぽどマシだろう。
「ここが俺らの地球寮。見た目はアレだが住んでみると以外と快適なんだぜ」
「ふーん」
「アレコウ? 帰ってたんだ? それに一緒にいるのは……」
「ああ。フレット先輩。コイツ、今日ウチクラスに転入してきた」
地球寮を見ていると話しかけられる。
相手は地球寮の寮長のフレットだ。
フレットは経営戦略科の3年生でひょろいという印象を受ける。
フレットはコウタロウの腕を引き。
「彼ってアレでしょ? 総帥の……なんでいる訳?」
「先輩のところまで話が知ってるんですか? まぁいろいろありまして」
「いろいろって何! まさか面倒ごとになってないよね? うちみたいな弱小寮なんてひと睨みで潰れちゃうよ」
ルーカスの事は経営戦略科にまで話は聞こえており、その気になれば地球寮を閉鎖すること等訳もない。
「いやいや、アイツなら……やりそうだけど、意外と話せる奴ですよ」
「だと良いんだけど……」
「何コソコソ話してんの?」
「はい! 何でもないです!」
フレットは背筋をピンと伸ばす。
「ん? まあいいや。ここの寮長って誰?」
「……僕ですけど」
「なら話が早い。この寮、今日から俺の傘下に入れる事にしたから」
「はい?」
唐突な話にフレットは首を傾げコウタロウもきょとんとする。
「だから俺の傘下に入れるんだって。これは俺が決めたことだから拒否権はないよ」
「えっと……それはどういう」
「今、この学園っていろいろと荒れてるんだろ? 俺も一旗揚げようと思ってな。まずはここから始めよう取って事」
現在の学園では各寮同士で小競り合いが起こっている。
ルーカスはそこに参戦するつもりのようだ。
「いろいろあるみたいだけど、なんでウチなんだ?」
「特に理由はないよ。どの道、俺が全てを制するつもりだからどこから始めてもよかったんだけど、たまたま地球寮がそこにあったから地球寮から始めよってだけ」
「ねぇコウ、無茶苦茶だよこの人……」
「まぁ俺もさ親父の権限を使って従わせるつもりはないよ。権力の使いどころはここじゃない。だからさ、この学園のルールに乗っ取って地球寮を手に入れる。決闘でね」
このアスティカシア高等専門学園には独特なシステムが存在する。
生徒同士が互いに何かをかけてMS同士で戦う決闘だ。
「いや……でも」
「こっちは構わないけど、ルーカスは何を賭けるんだ?」
「そうだな。俺は俺が将来継ぐであろうベネディットグループの全権を賭ける」
「やっぱり無茶苦茶だよ! この人!」
「……本気なのか?」
流石にコウタロウも驚きを隠せない。
ルーカスはいずれは総帥になるとされている。
つまりはこの決闘に勝てば総帥の座を手に入れる事が出来る。
「当然、俺が負けたとしてもいちゃもんをつけて無効にしたりもしないし、親父にも認めさせる」
「分かった。その決闘受ける」
「コウ!」
「先輩。考えても見てください。この決闘に勝てばグループ総帥の座が手に入るんすよ。俺たちアーシアンがグループ内でのし上がるにはまたとないチャンスなんですよ。それに負けたとしてもルーカスの下に付けばスペーシアンに見下さる事も無くなる。この決闘は俺たちにとっては失うものはない」
コウタロウのいうように一般的な決闘では負ければ失うものがあるが、今回の決闘で負けたところで地球寮がルーカスの傘下に入るだけだ。
勝てばグループ総帥の座が手に入り、負けたところでルーカスの傘下という立場が手に入る。
地球寮にとっては一切のリスクがないと言える。
「それに俺も負けるつもりはないですよ。これでも地球寮のエースなんでね。機体性能だけじゃないってところを見せてやりますよ」
「そうだね。コウ、君に任せるよ」
「話は纏まったようだな」
学園内における決闘は決闘委員によって仕切られている。
まずは決闘の申請が出され、ルーカスのごり押しでその日の内に決闘が執り行われることとなった。
今回の決闘の立ち合いは決闘委員はエマ・スレイドの元で行われることとなった。
エマは他の生徒とは違い白い制服を着ている。
これがパイロット科において最強の証であるホルダーを意味する。
その高い実力と中世的な容姿からエマは男子生徒のみならず女子生徒からも人気が高い。
「双方魂の代償をリーブラに。対戦者はルーカス・ナボ・レンブランとコウタロウ・ハザマ。場所は戦術試験区域13番を使用。1対1の個人戦を採用する。異論は?」
「ない」
「俺もです」
「承知した。ではルーカス・ナボ・レンブランはこの決闘に何を賭ける」
「俺が継ぐであろうベネデイットグループの全権を」
その言葉にエマが一瞬反応するがすぐに表情を引き締める。
「承知した。コウタロウ・ハザマはこの決闘に何を賭ける」
「俺は地球寮の指揮権を賭けます」
「Alea jacta est。この決闘を承認する」
互いが賭けるものを宣言し、それを決闘委員が承認することで決闘は正式に開始することが出来る。
その場は解散し、それぞれが格納庫へと向かいMSに乗り込むとMSコンテナが決闘のフィールドへと移動される。
「決闘を前にルーカス・ナボ・レンブランにより決闘のパイロット変更の申請が出されている。コウタロウ・ハザマはこれを承認するか?」
「変更? 相手は?」
「私です」
コウタロウの機体のモニターにはパイロットスーツを着たセシルが映し出されている。
決闘にルール上は相手が了承すれば決闘中であってもパイロットの変更が認められている。
「……分かりました。承認します」
コウタロウは紹介された時は寝ていたためセシルの事は知らないが、断る理由も無いため変更を了承した。
「承知した。勝敗は通常通り頭部のブレードアンテナを折った方を勝者とする。立会人はグラスレー寮のエマ・スレイドが務める」
双方のMSコンテナが開閉される。
コウタロウの使用するMSはデミトレーナー。
ブリオン社のMSでこの学園では一般的に使われている機体だ。
地球寮では最新式の機体は手に入れる事が出来ないため、数世代前の機体を使っている。
装備はビームライフルとシールド、コンバットナイフと最低限の物でシールドは何度も直したのか、装甲版で損傷を塞いでいる。
一方のセシルの使用するMSはかつてヴァナディース機関で開発されていた試作MSガンダムルブリス。
10年前にルーカスが載せられた輸送艇にバラされていたのは当時開発中だったガンダムルブリスの2号機だった。
その2号機のデータを元に新造された部品でくみ上げたいわば3号機に当たる機体だ。
「LP303。コウタロウ・ハザマ。デミトレーナー。出る!」
「LP002。セシル・グローリー。ガンダムルブリス。出ます」
「両者、向顔」
エマの合図で双方のモニターに相手が映される。
「勝敗はMSの性能のみで決まらず」
「操縦者の技のみで決まらず」
「「ただ結果のみが真実」」
「フィックス・リリース」
コウタロウとセシルが決闘時の向上を述べ最後にエマの号令により決闘が開始される。
「まさかガンダムを使うとはね。どういう事? ルーカス」
決闘が開始されると、エマは普段他の生徒に対する態度とは違いトゲトゲした態度でサロンのソファーに座りこんでいるルーカスを睨みつける。
10年前にデリングが全てのガンダムを否定すると宣言しておきながら、その息子が決闘にガンダムを持ち出したのだ誰もがそう思うだろう。
「親父が10年前にそんなことを言って規制してるけどさ、10年経っても未だにガンダムの完全廃止には至ってないだろ? 学園のルールでもガンダムの使用に関する制限はあっても使用の禁止にまでは至ってはないしな」
デリングはガンダムを否定したが現状ではガンダムを完全に規制している訳ではない。
特に御三家と言われているグラスレー社、ジュターク社、ペイル社の内、グラスレー社以外の2社はガンダムを所有している。
学園のルールでもパーメットスコアを一定以上上げてはいけないという制約の元でガンダムの使用は禁止されてはいない。
もっともガンダム自体すでに10年前に機体とのリンクを強制的に解除するアンチドートにより対応できる。
その上で総帥が否定しているガンダムの性能をいかにしてアンチドートの影響を受けずに維持するかを考えてガンダムの運用を行っているのはジュターク社とペイル社くらいなものだ。
つまりルーカスの父親がデリングであることを除けばガンダムを使う事は問題ないと言える。
「それに編入初日に決闘するのも前代未聞よ」
「入学してから1週間でホルダーに挑んでホルダーの座を手に入れたエマには言われたくはないな」
過去の記録では入学、もしくは編入したその日に決闘を行った生徒はルーカスが初めてだ。
同時に入学して1週間で当時のホルダーを破りその資格を得たエマはホルダー奪取の最短記録を保持している。
「それに編入してくるなんて聞いてないわ」
「言ってないからな。そっちが現状を報告する義務があっても俺が現状を報告する義務はないからな」
エマは今日、ルーカスが編入してくるという事を聞かされてはいない事に不満を持っているようだった。
エマとルーカスの間にはある契約が交わされていた。
それはエマが卒業時にホルダーであればルーカスと婚約するという物だ。
エマの実家はグループ内の企業の1つであるスレイド・ウェポンズという会社でかつては現在の御三家にも並ぶ会社だったが、現在は経営が傾いている。
このままでは倒産する危険性もあるため、それを回避するための策としてルーカスとの結婚だ。
そうすることで会社とベネディット社の傘下に入れて経営の回復を考えている。
その条件としてルーカスが出したのはエマがホルダーとして学園を卒業することだ。
本来は卒業時にホルダーであればよかったが、エマは自身の実力を見せる為に入学して1週間でホルダーの座に就き2年間守り続けてきた。
「それでこの学園で何をするつもりなの? 決闘に総帥の座まで賭けて」
「さぁてね」
企業同士の代理決闘の意味合いを持つ決闘だが、その決闘にグループの総帥の座をかけるなど正気の沙汰とは思えない。
学園に来た理由もそれだけの物を賭ける理由もルーカスは答えるつもりはないようだ。
「それよりもコウタロウって以外とやるね。ルブリスが10年前の機体とは言え粘るな」
セシルのガンダムルブリスは10年前の試作機とは言えある程度はアップデートされて現在でも十分に戦えてるだけの性能はある。
コウタロウのデミトレーナーも古いタイプで性能はたいして高くはないが、今のところ防戦一方だが、粘っている。
「ハザマは単純な操縦技術なら学園でも上位に位置してるわ。地球寮にはまともなMSを用意するだけの資金力がないから古いデミトレーナーを使っている事が惜しいわね」
「ふぅん。以外と面白い拾い物かもな」
ルーカスは端末を操作するとセシルへと通信をつなぐ。
「セシル。コウタロウの実力は大体分かった。これ以上の手加減はいらない。本気で潰せ」
「了解」
決闘の前にルーカスはセシルに一つ指示を出していた。
コウタロウの実力を図るために手加減をするようにだ。
コウタロウの操縦技術は想像していたよりも高い事は分かり、もう手加減させる必要はなくなった。
「パーメットスコア2」
セシルはパーメットスコアを2に上げると光る痣が現れる。
「行け。ガンビット」
ルブリスのシールドが7のビットステイヴに分離する。
「シールドが分離した? あれがガンビットとかいう奴か」
コウタロウのデミトレーナーはシールドで頭部を守りながらビームライフルを撃つもルブリスには当たらない。
「くっそ早い。これがガンダムって奴なのか!」
「これで終わりよ」
ルブリスのレシーバーガンに2つのビットステイヴを合体させてガンビットライフルにしてビームを撃つ。
ビームは正確にデミトレーナーのシールドを破壊する。
「シールドが! なら!」
デミトレーナーはウィルダッシュ機構を最大出力で使い一気に加速するとルブリスに突撃する。
「無駄な足掻きね」
5基のビットステイヴを強引に突破するがビームライフルに被弾してライフルを捨てる。
「ちぃ! 当たってたまるかよ」
コウタロウのデミトレーナーは装甲を削りギリギリまで軽量化されている。
地球寮の経済事情では装甲版を張り付けて補修出来るシールドとは違い、本体の装甲を何度も直す余裕はないため、装甲を削り決闘ではシールド以外は1度も被弾しない事を前提に調整され、コウタロウも相手の攻撃を全て避ける為に全神経を集中し、一撃で相手のブレードアンテナを破壊して勝つ事を狙っている。
ビットステイヴとルブリスからの攻撃をとにかくかわしながら距離を詰める。
「この間合いなら!」
デミトレーナーはコンバットナイフを抜いて接近戦を仕掛ける。
だが、ルブリスのガンビットライフルについていたビットステイヴが外れるとデミトレーナーの両腕を撃ちぬく。
「手頃なところまで来てくれて助かるわ」
両腕を撃ちぬかれたデミトレーナーは追いついたビットステイヴの集中砲火を浴びて両足とバックパックが撃ちぬかれた。
セシルは序盤の戦闘の中でコウタロウのデミトレーナーのカスタムを見抜いた上でコウタロウの技量でギリギリ回避できる射撃を行っていた。
そして、起死回生の一撃を入れる為に接近してきたところを逆に狙い撃ち、起死回生の一撃を潰したのだ。
四肢とバックパックが破壊されたデミトレーナーの頭部をルブリスはレシーバーガンで撃ちぬいた。
「そこまで! 勝者はセシル・グローリー!」
頭部のブレードアンテナが破壊されたことでこの決闘の勝者はセシルとなった。
「あの娘、ただの世話係の護衛とは思っては無かったけど、どこで見つけてきたの?」
「教えない」
セシルの素性に関してはそれなりの付き合いのあったエマですら知らない。
この決闘だけでもセシルの実力は相当なものだという事は分かる。
「なぁエマ。これからこの学園は今以上に荒れるぞ。お前もホルダーの座は死んでも守り抜かないとな」
そういうルーカスは面白そうな表情を浮かべる。
これからこのアスティカシア高等専門学園に何が起こるのか今はただ何も起こらない事を願うしかなかった。