機動戦士ガンダム 祝福されし子と7人の魔女   作:ケンヤ

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22話

ルーカスとレイニーの決闘方式の実技試験のフィールドはフロント宙域であるため、両機はフロントの出撃用のカタパルトに固定されている。

 レイニーのガンダムはガンダムネメシス。

 シズカのガンダムサナトスとは兄弟機として開発されたガンダムだ。

 ガンダムサナトスは機動力を活かして素早く狙撃ポイントを確保しながら戦う高機動狙撃型に対してガンダムネメシスは機動力を活かして相手よりも有利な位置を確保して戦う高機動白兵戦型のガンダムとなっている。

 機体の基礎フレームは共通の物を使用し、全身にスラスターが取り付けられている。

 バックパックにはガンダムサナトスと同じフレキシブルブースターが装備されている。

 特徴的なのは両肩の装甲に大型スラスターと重力下での高速飛行をするためのウイングが2枚つづ取り付けられている。

 更にはGUNDフォーマットによる慣性制御を高次元化させることで従来のMSを遥かに凌駕する高機動型MSとして完成した。

 両腕部には近接戦闘用のトンファーユニットと手持ちのハンドライフルが装備されている。

 足は歩行機能を最低限の物として割り切り対象を掴むことが可能となる可変クローとなっている。

 

「これより実技試験を開始する。両者全力を尽くすように」

「KP002。レイニー・アダムス。ガンダムメネシス。出る」

「LP001。ルーカス・ナポ・レンブラン。ガンダムルブリスV2高機動パッケージ。出る」

 

 監督役の教員の合図で2機のガンダムがフロントから射出される。

 

「さてお手並み拝見と行くか……って!」

 

 射出された勢いに全身のスラスターを使って更に加速したガンダムメネシスがトンファーユニットを展開してルブリスV2に襲い掛かる。

 頭部を狙った一撃をギリギリのところでルブリスV2は回避する。

 

 「あっぶねぇ……いきなりかよ。てかなんつー加速してんだよ。あれじゃ中のパイロットが持たないだろ」

 

 MS開発が進みコックピット内にかかるGは年々軽減されてはいるが、それに伴うMSの高機動化により完全にGを軽減出来てはいない。

 高機動型MSを得意としているペイル社のコックピットの対G性能は他社製品よりも優秀とされているが、それでもガンダムメネシスの加速性能から推測できるだけでもパイロットにかかるGは相当な物で並の体であればもたない。

 

「あれも薬物強化のお陰ってか。データ通りとだな。それなら行けるか」

 

 ルブリスV2は一気に加速する。

 

「早い。加速性能はネメシスと同等?」

「追いついた」

 

 最短距離でガンダムネメシスに追いついたルブリスV2はビームライフルの先端からビームサーベルを出して切りかかる。

 それをガンダムネメシスは回避するとハンドライフルで応戦する。

 

「旋回性能も負けてない。何で?」

「生憎とこっちも普通じゃないんでね」

 

 ビームを回避しながらルブリスV2もビームライフルで応戦する。

 2機のガンダムは高速で移動しながらもビームを撃ちあい距離を詰めては接近戦を仕掛ける。

 

「どうした? そんなもんか?」

「……振り切れない」

 

 機動性能を最大限に使いながらもルブリスV2を振り切れない事に表情を変える事は無かったが、レイニーは驚いている。

 自身は薬物を使う事で身体機能を強化することで高機動戦のGに耐えている。

 それについて来ているルーカスにも同じだけのGを受けているにも関わらずついて来ている。

 

「貴方は一体、何なの?」

 

 ガンダムネメシスはハンドライフルを連射する。

 

「パーメットスコア2。ガンビット。行って」

 

 レイニーはスコアを2に上げると肩の装甲に内臓されているガンビットを射出した。

 

「ガンビットを使って来たか。データには無かったな」

 

 今回は事前に過去のレイニーの決闘時のデータを見てきた。

 それで機動力に関しては事前の情報にアップデートされている可能性を加味した予測データの範囲内だったが、過去の決闘の中でレイニーは一度もガンビットを使用していない。

 今までに決闘で戦った相手は圧倒的な機動力だけで対応できずに負けているからだ。

 

「あの形状は火器が内臓されているタイプじゃないな。防御用か取りつくタイプと見た」

 

 射出されたガンビットは小さな円盤状の物でルブリスのガンビットのような火器が内臓されているタイプではなく量産試作機に搭載されていた対象に取りついて機能するタイプか防御機能に特化しタイプだとルーカスは予測する。

 ルブリスV2は迫るガンビットにビームを撃つが、ガンビットはビームを避けて向かってくる。

 

「守らずに来るって事は取りつくタイプって事か。それなら」

 

 ルーカスはガンビットがビームから自身を守らずに避けて向かってくることから防御用の物ではないと判断した。

 ルブリスV2はガンビットにビームバルカンで弾幕を張る。

 ビームの弾幕でガンビットの何基かは撃墜できたが、その間にガンダムネメシスが回り込んでトンファーユニットで殴り掛かる。

 

「隙あり」

「作ってやったんだよ」

 

 ルブリスV2のバックパックの一部が稼働し、サブアームとなる。

 サブアームの先端にはビームサーベルが内臓され、ビームサーベルでガンダムネメシスを迎え撃つ。

 

「貰った」

「やらせない」

 

 ビームサーベルをガンダムネメシスはギリギリのところで回避する。

 

「やるな。けどまだだ」

 

 今度は脚部の追加装甲の脛の部分の装甲が稼働し、新たなサブアームとなりビームサーベルを展開する。

 蹴りと同時にビームサーベルを振るい、ガンダムネメシスはトンファーユニットで弾き、ハンドライフルを撃つ。

 ビームをビームライフルからビームサーベルを出して弾くが、その間に距離を詰めていたガンビットが右手のビームライフルに取りついた。

 

「やっべ!」

 

 ビームライフルにガンビットが取りついたことでルーカスは即座にビームライフルを手放すがビームライフルは何も起こらない。

 

「何だよ。不発か? 脅かしやがって」

 

 ルーカスは再びビームライフルを回収し、距離を取っていたガンダムネメシスに向ける。

 ルーカスがトリガーを引くが右手のビームライフルからビームが撃たれることは無かった。

 

「は? こっちも不発って……マキアの奴、いい加減な事を……する訳ないよな」

 

 いい加減に整備されている武器だと戦闘時の衝撃等でトラブルが起きてしまう事もあるが、少なくともマキアはルーカスがどうなろうと余り興味はないが、ルブリスV2が傷つくことを嫌っている。

 マキアの整備が原因ではないという事はルーカスも分かっている。

 

「システムエラー? コイツのせいか」

 

 右手のビームライフルが使えなくなった理由が整備不良でないのだとしたら考えられる理由は一つしかない。

 ビームライフルに取りついたガンビットは不発などではなく正常にその機能を発揮していたのだ。

 ガンダムネメシスのガンビット「スタンビット」は対象に取りつくことで取りついた部分の機能をマヒさせる機能を持ったガンビットだ。

 それにより右手のビームライフルは機能不全を起こして使用が出来なくなっていた。

 

「剥がせばいいとは思うんだけど怖いな」

「よそ見しないで」

 

 スタンビットのせいでビームライフルが使えないのであればスタンビットを剥がせば使えるようにはなるはずだ。

 問題は素直に外せるようになっているかだ。

 強引に外そうとすればスタンビットそのものが爆発して取りついているビームライフルだけでなく剥がそうとした手まで負傷しかねない。

 そうしている間にガンダムネメシスは旋回して距離を詰めていた。

 脚部のクローで掴みかかるが、ルブリスV2は右手のビームライフルで受け止める。

 

「コイツは使えないからやるよ」

 

 ビームライフルは銃身をガンダムネメシスの脚部クローに掴まれて潰される。

 すぐにルブリスV2はビームバルカンと左手のビームライフルで集中砲火を浴びせる。

 ガンダムネメシスは急加速をして射線から退避する。

 ルブリスV2は右手にビームサーベルを抜くとバックパックのサブアーム2本と脚部のサブアームからもビームサーベルを展開すると左手のビームライフルを撃ちながらガンダムネメシスを追撃する。

 

「そろそろいいんじゃないか? 十分に実力を見せただろ」

「駄目。まだ足りない」

 

 ガンダムネメシスは反転してハンドライフルを撃つ。

 

「まだなのかよ。レイニーさ、何からアンタと母親を守らせるつもりなんだよ」

「世界の全て」

 

 トンファーユニットを展開したガンダムネメシスの一撃をビームサーベルで弾く。

 

「世界はママを認めなかった。だから世界の全てがママの敵」

 

 ガンダムネメシスの撃ったビームがバックパックのサブアームを撃ちぬく。

 

「ちっ! そんなに良い物かよ。母親って奴は」

「そんなの知らない。でもママには私しか認める人はいないから」

 

 ガンダムネメシスは残っていたスタンビットを全て展開する。

 

「だから私がママを守るんだ。ママを認めない世界から」

 

 四方から迫るスタンビットを回避していたが、ガンダムネメシスの脚部クローに右腕を掴まれてしまう。

 ルブリスV2の右腕を脚部クローで掴むとガンダムネメシスはルブリスV2を掴んだ状態で加速する。

 

「私が勝って証明するんだ」

「ああそうかよ」

 

 ルブリスV2も掴まれた状態でバックパックのスラスターを最大出力で使う。

 

「根比べと行こうぜ」

 

 2機は通常時以上の加速で戦術試験区域を飛び回る。

 

「ぐっ……」

「どうした? さっさとギブしないと危ないぞ」

 

 2機分の加速力で通常時よりも高い速度で移動しているため、ルーカスとレイニーにかかるGも普段以上だ。

 レイニーは話している余裕はないが、まだルーカスには軽口を叩けるだけの余裕は残されているようだ。

 

「わ……たしは……まけな……」

 

レイニーは次第に意識が遠のいていくが、レイニーよりも先にルブリスV2の腕の方が持たずに肘の関節が捥げて2機は離れる。

 

「うっ!」

「ガンビット」

 

 二人は何とか制動をかけて機体を安定させるが、ルブリスV2にスタンビットが向かっていく。

 ルブリスV2はビームバルカンで弾幕を張るが、スタンビットはビームを避けて迫る。

 迫るスタンビットをビームライフルから出したビームサーベルで切り落とすが、全てを落とせる訳もなくビームライフルにスタンビットが取りつきビームライフルはシステムエラーを起こして使用が出来なくなる。

 ビームライフルが使えなくなり残るスタンビットをルブリスV2はビームライフルで受け止めた。

 

「どうせ使えないんだ。コイツに集めさせて貰う」

 

 スタンビットが1つ付いた時点でビームライフルが使えなくなっているため、2つ以上ついたところで変わらない。

 残るスタンビットを使えなくなったビームライフルに集める事で使えなくなる部分を最低限に抑えた。

 

「で、コイツは返す」

 

 使えなくなったビームライフルをルブリスV2はガンダムネメシスの方に投げつける。

 ハンドライフルで撃ち落とそうとするが、その前にルブリスV2がビームバルカンでビームライフルを破壊する。

 その爆風を目眩ませにしてルブリスV2は左手でビームサーベルを抜いて突撃する。

 

「っ! 何なの……一体」

「俺は俺だ」

 

 ルブリスV2のビームサーベルをガンダムネメシスはトンファーユニットで弾く。

 すぐにルブリスV2は蹴りを入れようとするが、ガンダムネメシスが脚部クローでサブアームを潰しながらルブリスV2の右足を掴む。

 

 「俺は俺の実力で自分の存在を示して認めさせて全てを手に入れる。だからお前のガンダムも手に入れる!」

 

 ルブリスV2はビームサーベルで自身の右の太ももを切り、そのままビームサーベルを振るう。

 

「ついでにお前たちもな」

「……なら勝って証明して見せてよ」

 

 ガンダムネメシスはビームサーベルをトンファーユニットで受け止める。

 もう片方のトンファーユニットでルブリスV2の左腕を殴りビームサーベルをはたき落す。

 

「そのつもりだ。俺はガンダムには負けない。俺が一番ガンダムを上手く操れるってところを証明しなきゃいけないからな」

 

 ルブリスV2は残る左足で蹴るが、ガンダムネメシスはトンファーユニットで足のサブアームを破壊する。

 左足はサブアームだけでなく追加装甲にまでダメージが行くが、本体までは到達していない。

 

「だから勝って見せるさ!」

 

 ガンダムネメシスはハンドライフルを撃つ。

 ビームはルブリスV2の肩に直撃し、肩の装甲を吹き飛ばす。

 体勢を立て直しながらバックパックのブースターをパージしてガンダムネメシスの方に突撃させてビームバルカンを撃ち込む。

 ブースターはビームで爆発を起こす。

 

「また同じ手? それともフェイク?」

 

 レイニーはビームライフルの爆発を利用して突撃してきた時の事を思い出す。

 今度は同じことをする振りをして別の手を使う可能性も考えて周囲を警戒していたが、ルブリスV2は真向から爆風を突っ切って接近していた。

 

「来るな」

 

 ガンダムネメシスはハンドライフルを撃ちながら後退しようとする。

 追加のブースターを失ったルブリスV2の機動力ではガンダムネメシスの機動力にはついて来れない。

 距離を取って加速してしまえば勝利は確実だ。

 しかし、コックピットの中で警告がなる。

 

「何? しまった。戦闘可能区域から出る」

 

 フロント宙域での決闘では他の戦術試験区域と違って閉鎖空間ではない。

 だが、戦闘可能区域が決められており、そこから出た時点で敗北となる。

 すでにガンダムネメシスの居る場所は戦闘可能区域の端でここから下がり過ぎると戦闘可能区域から出てしまい負けとなる。

 取れる手をしては後退ではなく左右に逃げるか迎え撃つかだ。

 

「逃げるなよ。逃げたところで何かを守れる程世界は優しくはないんだよ。欲しいなら勝ち取るしかない」

「っ! 分かったようなことを……」

 

 ルーカスの言葉でレイニーの中で逃げるという選択肢は消えた。

 ここでルーカスを迎え撃って勝つ。

 そうすれば母の研究がペイル社に認められることだろう。

 

「ママは……私が守る!」

「悪いな。それでも勝つのは俺何だよ」

 

 ルブリスV2はサイドアーマーに被弾しながらもガンダムネメシスに接近する。

 ガンダムネメシスはトンファーユニットを振り下ろす。

 それをルブリスV2は左肩で受け止める。

 肩の装甲は完全に破壊されフレームまで到達するが、ルブリスV2はガンダムネメシスの胴体を両足で挟み込む。

 右足は自身で太ももを切り落としていたが、ガンダムネメシスの胴体を挟み込むだけは辛うじて残っていた。

 

「捕まえた」

「そんな機体で」

 

 ルブリスV2は左腕でガンダムネメシスの腕に絡みつかせて腕を振れなくなる。

 左腕しかないルブリスV2に対して両腕が残っているガンダムネメシスは右手に持っているハンドライフルをルブリスV2の頭部に向ける。

 この試験は決闘方式であるため、勝敗は従来の決闘同様に頭部のブレードアンテナを破壊した方が勝者となる。

 至近距離でハンドライフルを撃ち込めばルブリスV2の頭部は確実に破壊できる。

 レイニーはこの状況で勝利を確信した。

 

「私の……」

「俺の勝ちだ」

 

 勝利を確信していたレイニーだったが、ルブリスV2の左手にある物を見落としていた。

 ルブリスV2の左手には目眩ませに使ったブースターのサブアームの先端が握られていたのだ。

 あれはただ接近するための目眩ませにするだけでなく、最後の武器としてサブアームの先端をもぎ取った事を悟らせないという思惑もあった。

 左手に握られていたサブアームの先端からビームサーベルが展開される。

 その先にはガンダムネメシスの頭部のブレードアンテナがあった。

 ビームの刃はギリギリのところでブレードアンテナまで到達することが出来た。

 

「え?」

「ブレードアンテナの破壊により勝者はルーカス・ナポ・レンブラン!」

 

 教員がルーカスの勝利を告げたが、レイニーもすぐには何が起きたのか理解は出来なかった。

 ボロボロのルブリスV2にガンビットを失った以外は無傷のガンダムネメシス。

 状況は圧倒的に有利なはずだった。

 

「……負けたの? 私」

「ああ。俺の勝ちだ。これでも遺伝子レベルで弄られてんだ。薬で強化されただけの人間に負ける訳にもいかないんでな」

「そう……私の負けか」

 

 始めは信じられなかったレイニーだったが、次第に負けたという実感が沸いてきた。

 圧倒的有利な状況からの敗北だったが、レイニーには悔しさはまるで無かった。

 

「これで俺の実力は証明できたろ」

「うん。君は強い。このガンダムはあげる。だから」

「約束は守るさ」

 

 ルーカスが勝ったことでレイニーに自分の実力を見せる事が出来た。

 それによりレイニーもペイル社を見限りルーカスの保護下に入る決心も出来た。

 学園の3機目のガンダムに勝ったことで学園内のガンダムは全てルーカスの手の内に入ったという事になった。

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