機動戦士ガンダム 祝福されし子と7人の魔女   作:ケンヤ

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24話

試験の結果、ルーカスは筆記テストで全教科満点を叩き出して文句なしの学年主席であるため、フランも授業に出ない事に対しては文句は言えない。

 他の生徒の成績はセシルが100点満点中で全教科99点で学園2位だった。

 本人曰く、どの強化でも少しづつミスをしたとのことだが、どう見てもその気になれば満点を取れるところをルーカスを立てて2位を取ったようにしか見えない。

 そして、学年3位はシズカで地球寮が2年生の上位3位までを独占する形となった。

 当のフランは武闘派にも関わらず学年3位だった。

 定期試験が終わり学園ではオープンキャンパスに向けての準備が進められていた

 オープンキャンパスはアスティカシアへの入学希望者に対する学園の説明会と言うだけでなく在校生にとっても個人やグループで行っている研究発表の場でもある。

 当日は入学希望者だけでなくグループ傘下の企業の人間も来るため、研究成果の発表でスポンサーがついたり卒業後の進路にも影響が出て来る事もあるからだ。

 

「なぁルカはいつまで学園にいられんだ?」

 

 地球寮では元々予算も無いため、独自で何か研究や開発を行う余裕はない事もあってオープンキャンパスで何かをやるという事も無い。

 そんな中、ふとフランがルーカスに尋ねる。

 フランたちの知らない間にルーカスがペイル社と話しをつけて学園の最後のガンダムを譲渡されたことでルーカスがこの学園に来た理由である魔女狩りは終わった。

 元々卒業する気も進級する気も無かったルーカスがこの学園にいる理由もなくなっている。

 

「んー取り合えずはもう少しはいるつもり。どの道、この学園にはもう1機ガンダムが残ってるしな」

 

 学園で試験稼働しているガンダムはフランやシズカ、レイニーの3機だったが、この学園にはセリカのガンダムが今もどこかに潜んでいる。

 

「そっか。けどよ。まだ見つかってないんだろ?」

 

 セシルが敵に情報を流しているという証拠を掴み、オープンキャンパスでデリングに告発する計画で最大の問題はルーカスがそれまで学園にいるかどうかだった。

 シズカからその話しが出た時はまだレイニーのガンダムがルーカスに譲渡されることが決まっている事を知らずにレイニーにはオープンキャンパスまでガンダムを渡さずにいるようにしてもらうつもりだったが、レイニーの知らないところでルーカスがペイル社と話しをつけてすでにガンダムネメシスはルーカスの手に渡っていた。

 ガンダムを3機とも手に入れた事でルーカスが学園を去ってしまえばこの計画は破綻していた。

 

「まぁな。でも今度のオープンキャンパスの何だっけ?」

「ランブルリングの事か?」

「そう。それ、それにはエマだけじゃなくて多寮連合の奴らとかも参加するつもりなんだろ? それでサクッと優勝して学園の頂点を取ってそのあとにでも仕留めればいいさ」

「そういえばそんなのもいたな。忘れてたけど」

 

 最近は2度の襲撃事件やセシルの裏切りの可能性等があってフランも忘れていたが、学園内の勢力争いはなくなった訳ではない。

 地球寮はジェターク寮を参加に入れて多数のガンダムを所有している事でホルダーの居るグラスレー寮やブリオン寮を筆頭に多数の寮の連合である多寮連合と並ぶ勢力を誇る。

 現在は小競り合いが続き膠着状態となっているが多寮連合にとってはオープンキャンパスの目玉イベントであるランブルリングは状況を変える絶好の機会だ。

 ランブルリングはバトルロイヤル形式で本来ならば自分以外は全て敵だが、同じ寮の生徒同士で徒党を組むことで戦いを有利に運ぶというのは毎年やっている事だ。

 参加する生徒は同じ寮から希望する場合は数に制限が付けられているが多寮連合は複数の寮で構成されているため多くの同志を送り込み数でホルダーのエマや他の寮に対して戦う事が出来る。

 

「で、見つける策とかあんの?」

「考えるのも面倒だし、その内向こうから出て来るでしょ」

「それは分かるけどよ。それって学園が戦場になるって事だろ」

 

 向こうの狙いがルーカスである以上はどこかで仕掛けて来る事は間違いない。

 フロント内を探しているが見つからない以上は向こうから出て来るのを待つのも一つの手と言うのも分かる。

 しかし、向こうが仕掛けて来るという事は学園が戦場になるという事だ。

 戦場になれば学生から死者が出る事だって考えられる。

 

「まぁ大丈夫でしょ。向こうの狙いは俺なんだし、無差別に暴れたところで意味がない事くらいは分かってるだろうしな」

 

 仮に無差別に暴れたとしてもルーカスをおびき寄せる事は出来ないという事くらいは向こうだってわかっている。

 例え生徒たちが危険に晒されたとしてもルーカスが自らMSに乗って守るために戦うつもりは一切なく、周りもその為にルーカスに戦ってもらうという選択肢はない。

 下手に暴れば即座にルーカスをフロントから避難させることになるため、無用な戦闘を起こすことは向こうにとっても逃げられるリスクが高い。

 

 「だと良いんだけどな」

 「どの道、そう何度も仕掛けるのは難しいんだ向こうも慎重になるさ」

 

 学園に潜伏している以上は向こうも部品等の調達は難しい。

 下手に動けば潜伏先もバレる危険性も考えれば動く時は限られてくる。

 

「まぁしばらくはのんびりしてればいいさ」

 

 敵が学園内に潜伏している状況でも普段通りのルーカスだが、今は変に動いてくれなければそれでいい。

 シズカ達の取り決めではルーカスやセシルと距離の近いシズカとフランは普段の生活を続ける事になっている。

 変に動けばどちらかに感づかれる危険性があるからだ。

 作戦の準備はエマとレイニーが行う手筈で、オープンキャンパスの直前までは動くことも無く計画を悟られないようにしなければならない。

 そして、何事も起こる事はなく学園は平和な日常が戻りやがて、オープンキャンパスの当日が訪れた。

 オープンキャンパスは2日間行われる予定でランブルリングは2日目に行われる。

 初日は大きなトラブルもなかった。

 そして、運命の2日目の早朝にシズカ達は以前にも集まった森で集まった。

 

「エマさん。例の物は?」

「これよ」

 

 エマが持って来ていたデータディスクをシズカに渡すと端末に入れて再生する。

 そこにはグラスレー寮の格納庫にあるエマのジークフリートが映されていた。

 これはグラスレー寮の格納庫に設置している監視カメラの映像だった。

 

「ビンゴね」

 

 映像を早送りしていくとジークフリートの横に置いてあった大型シールドに近づく人影が現れた。

 その人物は大型シールドのところで何かをしているようだ。

 

「何かしてんな」

「拡大してみるわ」

 

 映像では距離があって人が何かをしている様子は分かるが、顔までは分からない。

 シズカは映像を拡大し、画像処理ソフトで映像をクリアにする。

 

「マジか」

「確定。間違いない」

 

 映像にははっきりとセシルが映されていた。

 

「まさかここまでうまく行くとはね」

 

 元々、この計画自体に確実性は無かった。

 打てる手としてオープンキャンパスの直前に何らかの工作を行いその場面を記録することだった。

 考えられる工作としてはエマのジークフリートの大型シールドへの細工だ。

 ジークフリートが装備する大型シールドはグラスレーから提供されたアンチドートが内臓された物でランブルリングで仕掛けて来るとしたらアンチドートは相手にとっては最も厄介な装備となる。

 これを使わてしまえば強化型ルブリス改は何もできなくなる。

 

「もうこれだけで証拠にはならねぇか?」

「無理よ。セシルさんがシールドに細工していた証拠にはなるけど、それが裏切りの証拠にはならないわ。ルカを勝たせるためだと言われてしまえばそこまでよ」

 

 現状でエマはシールドにされた細工がどういうものなのかは確かめてはいない。

 確認した事が分かってしまえば、そこから疑っている事を悟られる可能性があるからだ。

 フランはこの映像だけでセシルの裏切りの証拠として告発すれば無用な戦闘を避けられるかも知れないと考えるが、シズカは否定する。

 この映像ではセシルが何らかの細工をしていた証拠としては使えるが、それがルーカスへの裏切り行為とまでは言えない。

 細工の理由がルーカスをランブルリングで勝たせるためだと言われてしまえばそれ以上は追及出来ない。

 ルーカスのルブリスV2もまたガンダムでありアンチドートの影響を受けてしまう。

 機体自体はアンチドートの効果範囲内でも機体とはリンクしないで通常の操縦でも十分な能力を発揮できるようになっているが、それでも戦力ダウンは回避できない。

 それを防ぐために独断でやったとすればそれで終わりの話だ。

 念の為に地球寮のコウタロウのベギルベウの方にもカメラを設置していたが、そっちには何も映されてはいなかった。

 恐らくは工作がばれた時の言い逃れ出来るようにあえてベギルベウには何もしなかったのだろう。

 仮にベギルベウがアンチドートを使ったとしても展開される前にポッドを破壊してしまえばいいという判断で、ホルダーのエマとは違いコウタロウの実力なら工作をするまでも無いという事なのだろう。

 

「だから細工をされた上で襲撃されないとこれと結びつけることは出来ないわ」

 

 これだけでは細工をした証拠でしかないが、その後にランブルリングで襲撃があれば話は変わってくる。

 

「それしかないか……こっちで出来る事は襲撃時に犠牲者がでねぇように避難路を確保しとくくらいか」

 

 襲撃がある可能性が高い事を知りながらも未然に防ぐことも、その可能性が高いと気づいているような素振りも見せる事は出来ない。

 してしまえば向こうも警戒して手を出さなくなるかも知れない。

 そうなれば証拠を作った上で告発することも出来なくなる。

 ルーカスや無関係な生徒を危険な目に合わせる事をフランは歯がゆく思う。

 

「そうね。アンチドートが使えないと仮定しても私の方でも犠牲者が出ないように気を付けておくわ」

「頼む」

 

 今回のランブルリングではホルダーのエマは強制参加だが、他の3人は参加はしない。

 表向きの理由はガンダムの存在を否定したデリングの前でガンダムを使用することを避けるためだと理由をつけている。

 実際は同様に参加しないセシルの監視と有事の際の生徒や来賓の避難が円滑に行えるようにすることとガンダムを3機も投入することで向こうが警戒して襲撃をしてこない事を避けるためだ。

 

「で、シズカ。仮に襲撃があってセシルを告発したとすれば、下手をすれば今のようにルカといられなくなるかも知れねぇ。その覚悟があるんだな?」

 

 これから先、シズカ達がやろうとしている事はルーカスが最も信頼している相手の本性を暴くことだ。

 これがうまく行ったとして、ルーカスが自分たちを恩人だと感謝してくれるとは思えない。

 最も信頼していた相手の裏切りを知ったルーカスはその感情をどこに向けるかは予想も出来ない。

 フランはその辺りは本人の性格もあって割り切りそうなった時は潔く身を引き、金輪際ルーカスと関わらないようになっても構わないと考えている。

 しかし、シズカの場合はそうもいかない。

 以前の決闘で負けたことでシズカは自身の命をルーカスに差し出している。

 今はルーカスに養われているようなものだが、この先も同じようになるとは限らない。

 健康で頑丈な体を持つフランならこれから先、一人でも生きていくことは出来るが、すでにペイル社との関係が切れている上に体にハンデを持つシズカがルーカスの庇護下を離れて普通に生きてける保障はなく、フランも自分一人ならともかくシズカの面倒までは抱えきれない。

 

「分かってる。でも仕方がないわ。それしかアイツを守る事が出来ないんだから」

「そっか。お前も大概だよな」

「そんなんじゃないわよ」

「そういう事にしといてやるよ」

 

 シズカも覚悟を決めている事を確かめるとフランもそれ以上は何も言わない。

 

「それじゃ作戦開始」

 

 4人はそれぞれの持ち場へと向かう。

 ランブルリングの開始時間が近づき参加者たちの準備が進められている。

 

「遅いぞ。ルーカス。どこ行ってたんだよ」

「ちょっと親父のところに顔出してた」

 

 準備が進みルブリスV2とベギルベウがコンテナに入れられていく。

 コウタロウはすでに準備も万全となっている。

 ルーカスは集合時間ギリギリになってようやく格納庫に来た。

 

「そういや総帥も視察に来てるんだよな。てか、滅茶苦茶眠そうだな」

「まぁな。昨日は寝れなかった」

 

 ルーカスは大きな欠伸をする。

 

「何だよ。ルーカスでも親が見に来るってので緊張して寝れなかったのか?」

「そんなとこ」

 

 ルーカスは適当に返事をする。

 すぐにパイロットスーツに着替えてルーカスとコウタロウは自分の機体に乗り込むとコンテナはランブルリングの行われる戦術試験区域へと向かう。

 

「LP001。ルーカス・ナボ・レンブラン。ガンダムルブリスV2。出るぞ」

「LP303。コウタロウ・ハザマ。ベギルベウ。出る!」

 

 コンテナからルブリスV2とベギルベウが出て来る。

 今回のルブリスV2は長距離射撃用パッケージを装備している。

 頭部にスコープと肩の長距離センサーユニットが取り付けられており、スナイパーライフルによる長距離での狙撃用の装備だ。

 両腕の増加装甲には大口径のビームガンが2門内臓されており、脚部の装甲にはスモーク弾が内臓されている。

 

「それではこれよりランブルリングを開始する。ルールはバトルロイヤル形式で頭部のブレードアンテナが破壊されたら失格とする。立会人はべネリットグループ総帥のデリング・レンブラン氏が務める」

「ランブルリング。開始せよ」

 

 立会人であるデリングの号令によりランブルリングが開始された。

 

「前は任せた」

「おう! 任された!」

 

 開始早々にルブリスV2は後退を始める。

 両肩のセンサーユニットにより周囲の地形を把握するとすぐに狙撃ポイントへと向かう。

 

「近くに機影……アイツらか」

 

 前進するコウタロウは接近するMSを補足する。

 

「ジェタークの奴らじゃなければ敵か!」

 

 ジェターク寮は地球寮の傘下に入っているため、ランブルリングでも共闘する手筈となっている。

 まずはジェターク寮のバッツ達と合流することが最優先だったが、その前に他の寮のMSと遭遇したようだ。

 

「アイツらはブリオンの新型デミか」

 

 接近するMSは3機でどれもブリオン寮のデミギャリソンだった。

 すぐに敵と判断してビームガンでけん制する。

 3機のデミギャリソンは散開してベギルベウを囲む。

 

「早い! この前の奴とは練度が違う!」

 

 試験で1度デミギャリソンとは戦った事はあったが、その時の相手とは技術が違う。

 3機のデミギャリソンは2機がビームガンでけん制しながら残る1機がビームサーベルでベギルベウに切りかかる。

 その一撃をソードユニットでいなしてビームガンを向けるが、別のデミギャリソンが妨害する。

 

「なんて連携をしてんだ!」

「アーシアンが生意気なんだよ! そんなMSに乗って!」

「俺たちの連携の前に沈めよ!」

「行くぞ! デミストリ……うぁ!」

 

 3機のデミギャリソンが連携攻撃でベギルベウを追い詰めようとするが、先頭の1機が飛び上がったところを両足をビームが撃ちぬいて倒れる。

 

「フリオ! くそフリオを守るぞ!」

「当然だ」

 

 1機が両足を破壊されて倒れたところを他の2機のデミギャリソンが庇うが足を止めたせいでビームが頭部を撃ちぬく。

 

「ラジット! セン! 俺の為に……」

「何か悪いな」

 

 残る1機も足をやられてまともに動けないところをベギルベウが頭部を破壊する。

 

「容赦ないな」

「足をやられた時点で見捨てれば良かったんだよ」

 

 1機目のデミギャリソンの両足を撃ちぬいたのは狙撃ポイントに付いたルーカスだった。

 足を撃ちぬいて機動力を削いだ上で、まともに動けない仲間を守ろうとした2機を狙撃で仕留めた。

 ルーカスのいうようにスナイパーに足をやられて機動力が大幅に低下した時点で見捨てるべきだった。

 機動力を削いだ敵に止めを刺さずに放置することで見捨てれずに助けに来た相手を狙撃するのは狙撃の基本的な戦い方だ。

 

「見つけたぞ!」

 

 狙撃していたルーカスのところにウォルガの重装タイプのジークフリートがガンランスと共に降ってくる。

 すぐさまルブリスV2は退避する。

 

「お前、エマのところの」

「ここであったが百年目! お嬢様の為にやられろ!」

 

 ジークフリートはガンランスを引き抜くとビームガンをルブリスV2に向けて撃つ。

 

「やだよ」

 

 ルブリスV2はスナイパーライフルを撃つが、重装タイプのジークフリートの装甲に弾かれる。

 

「固すぎだろ」

 

 脚部のスモーク弾で煙幕を張って距離を取ろうとする。

 しかし、ジークフリートは煙幕を突っ切って突撃してくる。

 

「しつこいんだよ。お前、そんなに俺が嫌いな訳?」

「当然だ!」

 

 ジークフリートのランスチャージをルブリスV2は回避する。

 2機が交戦している事を嗅ぎつけてきたのか他の寮のMSが集まってくる。

 

「他の奴らが集まってきた? てかデミトレばかりだな」

「こいつ等……多寮連合の」

 

 10機以上ものデミトレーナーがルーカスとウォルガを囲んでいる。

 明らかに敵同士ではなく徒党を組んでいるようだ。

 

「そうとも! これが僕たち多寮連合の力さ!」

 

 大量のデミトレーナーの内、1機だけで、デミギャリソンが混じっている。

 

「ルーカス・ナボ・レンブラン君。卑劣にもスナイパーに接近戦を仕掛けて追い詰めるという所業、許すわけにはいかない。このブリオン寮寮長のクロノ・ガーランドが義によって君を助けよう!」

「いや、スナイパーに接近戦を仕掛けるのはセオリーじゃね? それに数で囲んでボコるのは良いのかよ。てか追い詰められてないし。大体誰だよアイツ」

「知らないのか? ブリオン寮の寮長で多寮連合のリーダーだぞ」

「知らない。あんまり興味もないし。取り合えず、こいつ等もまとめて始末した方が俺の撃墜数の足しになるな。お前はどうする?」

「決まっている!」

 

 ルブリスV2はスナイパーライフルをデミトレーナーに向けるが、ジークフリートはルブリスV2にガンランスで突撃する

 ウォルガの狙いはあくまでもルーカスのようだ。

 

「そう来る。まぁ良いけどね」

 

 ルブリスV2は頭部のビームバルカンを撃って回避する。

 

「全機攻撃を開始! 総帥の前で彼を助けるつもりだったがまぁ良い。勝って我らの力を見せる時だ!」

 

 クロノの合図でデミトレーナー達も一斉に攻撃を開始する。

 

「邪魔をするな!」

 

 ジークフリートはガンランスで進行上のデミトレーナーの頭部を付き刺す。

 

「乱戦ならコイツが効果的だ」

 

 ルブリスV2は残っていたスモーク弾を射出する。

 周囲に煙幕が張られる。

 煙幕で視界が悪くなり多寮連合のデミトレーナーの動きが悪くなる。

 乱戦状態で視界が悪くなったことで数の多い多寮連合の方は同士討ちの危険性が出てきたせいだ。

 一方の周囲には敵しかいないウォルガは手当たり次第にデミトレーナーを蹴散らしていく。

 

「俺の撃墜数……まぁ雑魚を仕留めてもな」

 

 ルブリスV2はクロノのデミギャリソンにスナイパーライフルを撃つ。

 

「そんな攻撃が当たるものか!」

 

 デミギャリソンはビームを回避するとビームガンで反撃する。

 

「そう簡単に取らせてはくれないか」

 

 ルブリスV2はビームサーベルで近くのデミトレーナーの頭部を切り裂く。

 

「ルーカス! 無事か!」

「遅いぞ」

 

 ベギルベウがソードユニットでデミトレーナーの頭部を切り裂きルブリスV2の前に立つ。

 

「これでも結構急いだんだぞ。てか、数多くね?」

「問題ないだろ。雑魚ばっかだ」

「まぁやるしかないか」

 

 ベギルベウはソードユニットを構えて突撃する。

 

 

 

 ルーカスが多寮連合を相手にしている頃、エマのジークフリートはビームライフルでデミトレーナーの頭部を撃ちぬく。

 すぐに別のMSの頭部をビームライフルで撃ちぬいた。

 

「これで戻れるでしょ」

 

 頭部を破壊されたことで脱落したパイロットはすぐに退避しなければならない。

 襲撃がいつあるか分からない状況ではすぐに脱落して戦術試験区域から退避した方が安全だ。

 タンクタイプのMSがジークフリートにビームキャノンを撃ち、シールドで防ぐとビームライフルで頭部を撃ちぬく。

 

「ここでホルダーに勝てれば!」

 

 デミトレーナーがコンバットナイフで襲い掛かり、ジークフリートはヒートソードでデミトレーナーの頭部を切り落とす。

 

「何?」

 

 コックピット内で警告がなり機体を引かせるとビームが横切る。

 

「この出力……」

「ちっ外した」

「あれは……あの時のガンダム。本当に」

 

 ビームを撃ったのは強化型ルブリス改だった。

 ランブルリングでは多くのMSがコンテナで戦術試験区域に運ばれるため、その中に紛れて入り込むことはさほど難しくは無かった。

 

「あの時の借りを返そうと思ったけど失敗ね。それならもう用はないわ」

 

 エマへの攻撃は以前の襲撃でやられた時の仕返しだったが、失敗してしまえば優先しべきはルーカスの方だ。

 強化型ルブリス改はビームマシンガンでジークフリートにけん制を入れるとルーカスのいる方へと向かう。

 

「運営、すでにテロリストが入り込んでいるわ。すぐにランブルリングは中止、すぐに戦術試験区域からの離脱を指示して」

 

 エマはすぐに運営へと通信を入れる。

 ここからはすぐに生徒たちを非難させる必要がある。

 間違っても戦っても実戦仕様のMSを相手に勝てる訳がないからだ。

 

「あっああ。分かったすぐに避難指示を出す」

「お願い。私はアイツを追うわ。相手がガンダムなら私のジークフリートなら止められる」

「いや、待て! 危険だ……」

 

 エマは通信を切ると強化型ルブリス改を追いかける。

 

 

 

 10機以上もいたデミトレーナーは3機のMSを前にほぼ壊滅状態にまで追い込まれていた。

 デミトレーナーのビームがベギルベウの背後に直撃する。

 幸いにもノンキネティックポッドに直撃しただけで本体へのダメージは無い。

 すぐに被弾したノンキネティックポッドをパージするともう一つもパージする。

 

「だいぶ数が減ったけどきついな」

 

 ベギルベウは脚部のかぎ爪での蹴りをデミトレーナーはビームガンで受け止めるが、背後からのルブリスV2のスナイパーライフルのビームで頭部が撃ちぬかれる。

 

「このままでは終われない!」

 

 クロノのデミギャリソンはビームサーベルでルブリスV2を狙う。

 だが、戦術試験区域全体に警報が鳴った事で動きを止める。

 

「何だ?」

「どうやらお客さんのようだ」

 

 ルブリスV2は上空へ飛び上がるとスナイパーライフルを撃つ。

 その先には向かってくる強化型ルブリス改がいた。

 強化型ルブリス改はビームをかわすとビームライフルで反撃する。

 

「あのMSは一体?」

「アイツ……校外実習の時の奴か!」

 

 情報は秘匿されているため、ウォルガとクロノは相手が一体何者なのか分からなかったが、その場にいたコウタロウは相手があの時の相手だという事が分かった。

 

「アイツの狙いは俺だ。お前らは逃げろ」

「くそ、さっきの戦闘でアンチドートが……」

「見つけた! 今後こそ!」

 

 強化型ルブリス改はビームサイズを構えて向かってくる。

 ルブリスV2はスナイパーライフルを撃つが、強化型ルブリス改には当たらない。

 

「流石に当たらないか」

 

 ビームサイズをかわしながら腕部のビームガンを撃つ。

 強化型ルブリス改は肩のシールドでビームを防ぐと左腕のビームマシンガンで反撃する。

 

「今日こそお前を倒して姉さんを解放する!」

「そろそろミオリネが恋しくなってきたから今日で終わらせる」

 

 ルブリスV2はビームサーベルを抜く。

 強化型ルブリス改がビームサイズを構えて突撃しようとするが、ジークリートとデミギャリソンがビームガンで横やりを入れる。

 

「お前ら」

「お前を仕留めるのは俺だ!」

「誰だか知らないけどさ」

「ちぃ! 邪魔をするな!」

 

 セリカは狙いをジークフリートとデミギャリソンの方に変えた。

 2機は左右に散開すると強化型ルブリス改はデミギャリソンの方に向かう。

 

「こっちに来たか。だがしかし、俺とて多寮連合を率いる身、そうやすやすとはやられんよ!」

 

 ビームサイズの一撃を辛うじて回避するが、二撃目で左腕が破壊される。

 すぐにビームガンを向けるが、それよりも先に強化型ルブリス改の左腕のクローアームがデミギャリソンの胴体に突き刺さろうとしていた。

 しかし、横からベギルベウが体当たりをしてデミギャリソンはやられることは無かった。

 

「済まない!」

「何やってんだ! これは実戦なんだ。やられれば死ぬぞ!」

 

 ルブリスV2がスナイパーライフルで強化型ルブリス改に距離を取らせる。

 

「ルーカス! ウォルガ! みんな無事?」

「お嬢様!」

「遅いぞ。エマ」

「離れてアンチドートを使うわ」

 

 強化型ルブリス改を追って来たエマのジークフリートは到着するとすぐにシールドのアンチドートを展開する。

 アンチドートが展開されたことで強化型ルブリス改とルブリスV2は機体とパイロットとのリンクが切れて力なく項垂れる。

 ルブリスV2はすぐに通常操縦に切り替わった事で動き始める。

 

「お嬢様! 後は俺が!」

「ウォルガ! 待ちなさい!」

 

 アンチドートにより動きを封じた事でウォルガは戦闘能力を奪おうと接近する。

 しかし、エマの機体から警告音がなると、アンチドートの出力が低下し始めてやがて機能が停止した。

 アンチドートの機能が停止した事で再び強化型ルブリス改が動き始めるとビームサイズを振るう。

 ビームサイズはウォルガの両足を切断し、ジークフリートは仰向けに倒れた。

 

「ウォルガ! やっぱり細工が!」

 

 これでセシルがアンチドートが使えなくなるように細工していたことは確実となった。

 それを確認するためにエマは細工されている事を知りながらもアンチドートを使った。

 

「まずはお前から!」

 

 動けなくなったジークフリートに止めを刺そうとするが、ベギルベウがベイオネットを投擲し、ビームサイズで弾く。

 すぐにデミギャリソンもビームガンを連射して距離を取らせる。

 

「戦闘用でもないMSの癖に……」

「そろそろ退場してくれよ」

 

 すでに戦闘用に切り替えていたルブリスV2がビームサーベルで強化型ルブリス改に切りかかる。

 ビームサイズの柄でビームサーベルを受け止める。

 

「くっ!」

「セリカ! 時間だ。撤収しろ」

「キトー! 何を……」

「時間をかけ過ぎた。時期にデリングの護衛についてきたカテドラルのMS隊が来るぞ。フロントの警備とは違ってお前でも単機じゃ不味い!」

 

 相手が警備のMSだけならセリカだけでもある程度は対応が出来た。

 だが、今回はそうもいかない。

 相手がカテドラルのMS隊ならば機体性能も操縦練度も警備のMSとは段違いだ。

 まともに戦っても数機は落とせても勝ち目はない。

 

「撤退ルートを送る。お前は先にフロントから脱出して、近くまで来ている回収艇と合流するんだ。俺たちは後から行く」

「……了解」

 

 すぐに強化型ルブリス改に撤退の進路が送られてくる。

 前回とは違い、今回は公の場で襲撃を行ったため、フロント内に身を隠すことなくフロントから離脱する手筈になっている。

 

「お姉ちゃん。ごめん、先に行くから」

 

 強化型ルブリス改は戦闘を中止すると戦術試験区域から逃亡を始めた。

 

「また逃げる気かよ」

「ルーカス。その装備で追撃は駄目よ」

「そりゃそうか」

 

 ルブリスV2の装備は長距離狙撃用でフロント内部に入り込んで逃げる敵との交戦には向いていない。

 ルーカスも大人しく追撃することを諦めた。

 強化型ルブリス改はカテドラルの追撃を振り切りフロントの外へと脱出するとそのまま回収艇が来ている宙域かまで向かって回収艇と共に離脱してカテドラルの追撃を逃れた。

 襲撃をした敵が逃げた事で警戒態勢は解かれないが、ひとまずは危機は脱した。

 だが、まだ全てが終わった訳ではなかった。 

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