学園に銀河の獅子が迫っていると宣告してから数時間後には銀河の獅子の艦隊がアスティカシアの近くまで迫っていた。
アスティカシアからも学園艦にモビルスーツを搭載し防衛線を張って待ち構えていた。
「数は事前情報よりも多いな」
「向こうは包囲する気はないようですが」
フロントの管制室でルーカスは相手の布陣を見ていた。
事前にセシルから得ていた情報よりもレオ・コーポレーションの船が増えている。
数では圧倒しているが、向こうはアスティカシアを包囲するわけではなく艦隊を2つに分けているが、正面から仕掛けるつもりなのだろう。
「こっちが逃げるつもりがないってわかっての布陣か。まぁ囲まれるよりかはマシか」
包囲されていないため、フロントを捨てて逃げる事は簡単だが、向こうもその気がないと考えているのだろう。
その上で真っ向から叩き潰すつもりなのだろう。
包囲されていれば全方位から来る敵に対応しなければいけなかったが、敵が来る方向が限られているのであれば対応は多少はマシになる。
「囮の可能性もある。周囲の索敵は疎かにするなよ」
「ルカ。予定に変わりがないならアタシ等は出るぞ」
「ああ。セシルにフラン。手筈通りに始める。先陣は任せた」
すでにジェターク寮所有の学園艦が第一防衛線を張るために出ている。
ルーカスの座る席のモニターにはコックピットで待機しているセシルとフランの様子が映されている。
「了解」
「おう。任された」
モニターの映像が切れると学園艦のカタパルトにセシルのガンダムルブリスとフランのガンダムバルデッシュが出撃準備に入る。
「ガンダムルブリス。セシル・グローリー。出ます」
「ガンダムバルデッシュ。フラン・ベルカ。出るぞ!」
ガンダム2機が射出されると次々とジェターク寮のデスルターが出撃していく。
「あれはレオ・コーポレーションのレオル」
モニターにはペルセウス以外にもレオ・コーポレーション製のモビルスーツ、レオルが出ている。
レオルはレグルスのベースとなった機体で中近距離での戦闘を得意としている。
武器は射程の短いビームライフルに戦端が90度曲がりL字で先端に突起が付いたナックルシールド、バックパックにビームサーベルが装備されている。
「野郎ども! 気合入れて数減らすぞ! セシル!」
「了解」
ルブリスのビットステイヴが展開し、レシーバーガンに装着されてガンビットライフルを構える。
狙いをレオルに合わせてセシルは引き金を引く。
ビームは正確にレオルを撃ちぬきレオルは撃墜された。
「何!」
「アイツらは殺さないお遊びしかした事がなかったんじゃないのかよ!」
先制攻撃で撃墜されたことで銀河の獅子のパイロットは動揺していた。
彼らにとってアスティカシアの学生たちは決闘で命までは奪わない温い戦いしかしてこなかった素人だと侮っていた。
それを先制攻撃で正確にコックピットを撃ちぬいて撃墜してきた。
動揺している間に2機目が撃墜され、バルデッシュがヒートハルバートでレオルを撃墜する。
「学生だからって舐めんなよ。こっちもハラァ括ってんだ。アタシ等の学園に土足で踏み込もうって輩は全力で叩き潰してやんよ!」
バルデッシュはシールドビットを展開するとヒートハルバートを振るい敵を薙ぎ払っていく。
「この数だと全てを抑えるのは不可能。学園艦は後退しつつ次の手を。モビルスーツ隊も下がりながらで構わないから敵の武器を潰せばいいわ」
レシーバーガンでペルセウスアーシアンの腕を撃ちぬき、セシルは周囲に指示を出す。
第一陣の役目は敵の数を少しでも減らすことでここで守り切る必要はない。
どの道、いずれは数で押し切られる。
ビットステイヴで友軍機を守りながらビームサーベルでペルセウスの腕を切り捨てると蹴り飛ばしてビームバルカンを胴体部に撃ち込む。
「それとフランさんは突撃し過ぎ。そろそろ持って」
「わーってる!」
「誰かフランさんの後退支援をお願い」
「俺らに任せてくだせぇ!」
「姐さんの退路を確保するぞ!」
デスルターの何機からビームライフルでフランの退路を切り開く。
第一陣は性能の高いデスルターと防御能力を持つガンビットを持つ2機のガンダムで友軍機への被弾を防ぎながらデスルターも確実に敵を無力化させているが、次第に突破されて後退していたジェターク寮の学園艦に迫る。
学園艦は積んできていたコンテナを捨てながら逃げる。
捨てられたコンテナが開き中から液体が飛び出て来る。
「何だ?」
「こんな子供騙しが通用するとでも思ってんのか」
迫るモビルスーツは液体を頭からかぶるが特に何かが起きる訳もなく学園艦に狙いを定める。
「コイツで……何だ!」
引き金を引こうとしたその時、モニターが黒くなって視界が遮られる。
「何が起きた!」
パイロットはすぐに機体の状況を把握するが機体のシステムに問題はなく、ジャミングでカメラをやられた様子もない。
パイロットは混乱するが外から見れば何が起きたのかすぐにわかった。
先ほどの液体を被った部分が黒く染まっている。
これは学園での妨害工作で使われることのある遅効性塗料の仕業だった。
始めは無色だが時間が経つにつれて変色する塗料だ。
それによりメインカメラを塞ぐことで視界を封じたのだ。
いくら機体のシステムを調べたところでカメラに異常は見られないため、パイロットは何が起きたのか分からない。
その間に学園艦は退避し、学園から出てきた機動力に長けたペイル寮のモビルスーツ隊が視界を奪われた敵を攻撃する。
「くそ! ふざけた真似を!」
運よくカメラが無事だったレオルはビームライフルを構えるが、レイニーのガンダムネメシスのトンファーユニットで頭部を潰されてバランスを崩したところを他のモビルスーツにより無力化される。
「何だ! アイツ!」
「早い!」
ネメシスが機動力を活かして敵の注意を引き付けハンドライフルで体勢を崩しては他の寮生が戦闘能力を奪っていく。
その中でスタンビットをバラまいていき敵モビルスーツに取りつく。
遅効性塗料で視界を奪っている事はすぐにバレるも、今度はスタンビットで部分的にシステムエラーを起こしたことで更に混乱は広がっていく。
そこをペイル寮生が戦闘能力を奪い、ペイル寮生の中に混じっているフロント警備のモビルスーツが戦闘能力を奪われても尚戦闘を継続しようとするモビルスーツに止めを刺していく。
更には最終防衛戦からシズカのガンダムサナトスが狙撃支援を行い数を減らしていく。
ジェターク寮の第一防衛戦とペイル寮の第二防衛戦で相手を翻弄しながらも数の差は簡単には覆せず第二防衛戦を突破してくるモビルスーツも出てきている。
それをシズカが狙撃しているが、次第に狙撃の精度も落ちて来ていた。
「ハァハァ! ヤッバ……後は任せた」
シズカは精密射撃を行うためにスコアを3まで上げていたため、すでにデータストームの影響が出始めていた。
シズカの狙撃精度が落ちてきたところで最終防衛戦を展開される。
シズカは後ろに下がり、その穴を埋める為に旧式のデミトレーナーに大型ビームライフルを装備した射撃支援隊が前に出る。
最終防衛戦はグラスレー寮とブリオン寮を筆頭にした多寮連合が任されている。
「ここから先へは1機たりともと押すな! われらの学園お守り切るぞ!」
クロノを先頭にブリオン寮のデミトレーナーが隊列を組んでビームガンの一斉掃射で迫る敵を迎え撃つ。
「フリオ、ラジット、セン。得意のアレを不埒ものたちに見せつけてやれ!」
「了解! 行くぞ!」
3機のデミギャリソンが飛び出し、3機で円を描くように動き始める。
同型機が同じ軌道で動くことで敵はどれがどれだかわからなくなり、混乱したところを3機の流れるような連携で敵を仕留めるデミトトリュームアタック、ランブルリングではルーカスに初動を潰されて不発に終わった連携技がうまく決まった。
「よくもあんな変な動きで……各機、グラスレーがお嬢様だけではないという事を見せるぞ!」
ウォルガのジークフリードを先頭にグラスレー寮のモビルスーツ隊も突撃する。
今回の戦闘ではエマはルーカスと共に学園で待機しているため、ウォルガがグラスレー寮の指揮を取っている。
ジークフリードはガンランスのビームを連射して弾幕を張る。
弾幕を強引に抜けてきたレオルを他のジークフリードがビームライフルで撃退する。
「ふん。やるじゃないか。御三家の名は伊達ではないという事か」
「ジークフリードはグラスレー社のモビルスーツではないがな!」
レオルのナックルシールドをガンランスで弾きクロノのデミギャリソンがビームガンでレオルの肩を撃ちぬき、ガンランスで頭部を潰す。
「それでこそ倒し甲斐があるという物!」
「黙って戦え」
デミギャリソンがシールドでビームを弾きながらビームガンで応戦し、ジークフリードがガンランスでレオルのナックルシールドを打ち砕く。
その後方からは一休みをしたシズカがスコアを上げる事なく狙撃支援をしている。
「より取り見取りなんだけどさ」
ペルセウスに狙いを定めてシズカは引き金を引く。
ビームはペルセウスの腕を撃ちぬき、フロント管理のデミトレーナーがビームサーベルを胴体に付き刺して止めを刺す。
「しんどいから早いところ終わって欲しいわ」
サナトスは狙撃用ビームライフルで狙撃しているとペルセウスアーシアンがビームサーベルを出して接近してくる。
距離的に狙撃は出来そうにないため、距離を取ろうとするが、別のペルセウスアーシアンもビームマシンガンで攻撃してくる。
「シズカ!」
ビームサーベルを持ったペルセウスアーシアンの腕をコウタロウのベギルベウがソードユニットで切り落とすと、もう片方のソードユニットをペルセウスアーシアンの胴体に付き刺した。
「コウタロウ。助かったわ。でも」
「シズカ達が覚悟決めて戦ってんだ。俺だけ逃げる訳にはいかないだろ?」
コウタロウのベギルベウはペルセウスアーシアンを撃墜した。
つまりは決闘仕様ではなく、実戦仕様になっているという事だ。
「この学園には仲間がいるんだ。こいつ等の勝手にはさせねぇよ!」
ソードユニットのビームガンでもう1機のペルセウスアーシアンを撃墜する。
「だから、俺も躊躇ってはいられないんだよ!」
ベギルベウは加速するとソードユニットでレオルを切り裂く。
そのまま後方の射撃支援隊を狙おうとする敵モビルスーツを確実に仕留めていく。
「どうだってんだ! 何故学生風情に抑えられている!」
銀河の獅子の旗艦でレオンは声を荒げている。
相手は学生で数で勝っている自分たちが数で押し切れると踏んでいた。
しかし、開戦してみればアスティカシアの学生は想像以上に強く戦況は銀河の獅子が不利になりつつあった。
「くそったれが! セリカとレグルスを出せ! それと俺のレグルスの準備も準備させろ!」
そう怒鳴りつけるとレオンは出撃するためにブリッジから出て行く。
「おらっ!」
バルデッシュがヒートハルバートの先端でペルセウスの胴体を突き破る。
串刺しとなったペルセウスをそのまま近くのレオルに叩きつける。
「バッツ! きつくなったら下がれよ」
「何言ってんですか姉御! まだまだやれますよ」
「上等だ。最後まで音を上げんじゃねぇぞ!」
ヒートハルバートでレオルをナックルシールドごと粉砕する。
「新手か? 嫌……違うな。アイツか。バッツ! ちょい抜けるわ。お前らは後退しつつセシルの隊と合流しろ!」
「了解! お前ら退くぞ!」
フランはそういうとその場から離れる。
フランが離れてしまえばここを維持することも出来ないため、バッツも大人しく指示に従いセシル達の方へと向かう。
「ルカ! アタシの方に来た! 時間は稼いどく!」
一方的にフロントの管制に通信を入れるとフランは増援部隊の方に向かう。
増援部隊はセリカの強化型ルブリス改を先頭にレグルスが数機付いている。
「おら! 邪魔だよ!」
バルデッシュはヒートハルバートでレグルスを薙ぎ払う。
「お前がセシルの妹って奴か。悪いがアタシに付き合ってもらうぞ」
「何? コイツもガンダムなの?」
強化型ルブリス改はビームサイズを構える。
2機のガンダムは互いの武器を構えて突撃する。
「良いね! 真っ向勝負は好きだけどな!」
バルデッシュは強化型ルブリス改を軽々と弾き飛ばす。
「くっ! 何て馬鹿力なの」
「手加減は苦手なんでね。殺すなって言われてるから殺しはしねぇけど多少のケガは許せよな!」
強化型ルブリス改は左腕のビームマシンガンを連射し、バルデッシュはシールドビットで身を守りながら突撃する。
「まさかここまで予定通りに事が運ぶとは……」
フロントの管制室で全体の戦況を把握している教師の一人が戦況を見てそういう。
現在のアスティカシアのモビルスーツは被弾こそあるが1機も撃墜されていない。
事前の作戦会議でもいかに撃墜される数を抑えるかが勝つために必要な要素と考えられていた。
「まぁこのくらいは当然でしょ」
一方のルーカスはこの結果に驚くことも無かった。
「向こうは実戦経験があると言っても所詮はカテドラルやセキュリティフォースのように戦いで飯を食ってるプロじゃないし、そいつ等ほどの技量も無いのにあの布陣を見る限りこっちを学生だと侮って真向から来るような2流以下の奴らだろ。アイツらの中にモビルスーツの操縦訓練だけじゃなくて実戦を想定した戦闘訓練をきちんとしているやつらはどのくらいいるんだろうな。そんな奴らに比べたら決闘の方がよっぽど実戦に近い環境での訓練になってるよ」
ルーカスの見立てでは向こうのパイロットの実力はたいして高くはない。
それでいてこちらを学生だと格下に見て舐めている。
だからこそ、数で勝りながらも包囲をすることも策を用意することも無く数に物を言わせた真向からの力攻めをして来るのだろう。
「それにアイツらにはまともな装備を持ったモビルスーツを優先するように伝えてある。貧相な装備のモビルスーツはアーシアンが乗ってるから士気も練度も低いからな」
事前情報では銀河の獅子の中でアーシアンのパイロットはまともなモビルスーツと装備を与えられていないという事は分かっている。
その上で、スペーシアンの乗るモビルスーツを優先的に狙わせている。
単純な機体性能だけでなく、アーシアンのパイロットは士気も練度もそれほど高くはない。
彼らの扱いは底辺で戦場で活躍したところで報酬が追加される訳でもなく、役に立たなければペナルティが課せられる。
勝っている戦闘ならともかく、分の悪い戦闘では何とか戦果を出して戦闘後のペナルティを回避しようと無理に戦おうとするか、損傷しても早々直しては貰えないため、少しでも自分のモビルスーツの被弾を避けるかのどちらかだ。
どちらにしても戦列を乱し足を引っ張る事になる。
「だからこっちの生徒たちが普段の実力を発揮できる状況にしてやればこのくらいはやって見せるさ」
「ルカ! アタシの方に来た! 時間は稼いどく!」
戦況を把握しているとフランからの通信が入る。
通信は一方的に切られたが、要件は伝わりルーカスは席を立つ。
「来たか。指揮は任せる」
「了解です」
事前に向こうがガンダムを投入した時の手筈も確認済みだ。
ルーカスが指揮を教師に任せて管制室から出て行く。
パイロットスーツに着替えると格納庫に到着する。
そこにはガンダムが2機、出撃準備を終えていた。
「エマ」
「分かってる。いつでも出られるわ」
格納庫ではパイロットスーツに着替えたエマがすでに待機している。
今回の作戦ではセリカが出て来た時はルーカスとエマの2人で確保する手筈になっている。
そして、エマのジークフリートはスレイド・ウェポンズから送られた来た部品によりガンダムヴァルキリアへと改修されていた。
基本フレームはジークフリートの物を使っているが、胸部をコックピットごとシェルユニットの内臓された専用の物へと換装され、外装も頭部以外の大半が新しくなっていた。
サイドアーマーとリアアーマーはスラスターユニットでスカート状になっており、サイドアーマーには特殊合金を使った実体剣で会社の名を冠するスレイドソードが1本づつ収納されている。
肩の装甲には大口径のビームバルカンが内臓され、両腕にはワイヤーハーケンが装備されている。
手持ちの装備として中近距離用のビームライフルにライフルの上部に長距離射撃用のロングバレルが、下部には近接戦闘用のヒートソードが付いていて、状況に合わせて展開することでビームライフル一つで全ての距離での戦闘に対応できるようになっている。
バックパックには高機動ウイングユニットが装備され、翼状のフライトユニットと翼に左右それぞれ5基づつ装備されたスレイドソードと同様にと特殊金属製のガンビット「スレイドソードビット」が取り付けられている。
本来はシールドの類は装備しないが、今回はアンチドート内臓型の大型シールドを改修したシールドを装備している。
「緊張してんのか?」
待機していたエマの表情は普段に比べても目に見えて固い。
「そりゃね。私も実戦は初めてだし、いきなりガンダムよ。これで何も思わないほど図太くはなれないわ」
学園の生徒の中でも実戦を経験しているのはルーカスにセシル、シズカにコウタロウくらいだ。
フランもレイニーも実戦は初めてだが、2人とは違いエマはそこまで割り切れなく、同時にガンダムで戦う事も初めてだ。
改修作業がギリギリまで続いたこともあり、ヴァルキュリアも稼働テストだけで実戦に投入することになり、エマ自身もガンダムは事前に他のガンダムでスコアを少し上げてデータストームを体験しただけだ。
そんな状態で実戦に出るのだ緊張するのも無理はない。
「大丈夫だろ。改修の指揮はマキアが取ってるし、スレイド・ウェポンズの総力をつぎ込んだガンダムなんだ性能も補償されてる」
緊張するエマにルーカスは不安要素を否定していく。
「それにエマはただ俺に付いてくればいい。俺が守るから絶対に落とさせはしないから」
「まったく……貴方って人は……」
エマはため息をつく。
ルーカスは特に意識した訳ではなくただ思った事を言っているだけに過ぎない。
だが、どんなに理屈を並べるよりもその言葉の方が緊張を解してくれる。
エマはルーカスに近づくと両手でルーカスの顔を掴むと強引に自分の方に引き寄せる。
ルーカスが抵抗する間も無く、エマは目をつむるとルーカスの唇を奪う。
数秒後にエマはルーカスから離れると背を向ける。
「……アンタの為に命をかけるんだからこのくらいは当然よね」
「……おう」
ルーカスはきょとんとして生返事を返す。
「後、初めてだったんだから責任は取りなさいよね」
エマは返事を待つこともなく機体に乗り込む。
エマの顔は真っ赤だったが、ルーカスからは見る事は出来ない。
「人が最終調整してるところで何変なフラグ立ててるのさ」
ボケっとしていたルーカスを後ろからマキアが蹴りを入れる。
二人きりの雰囲気を出していたが、出撃ギリギリまでマキアが機体の調整をしていたため、二人のキスシーンをしっかりと目撃していた。
戦いが始まれば後は見届けるしかないマキアはここ数日はまともに休むことも無く作業をしている事もあって二人のそんなシーンを見せつけられて機嫌が悪い。
「悪い。それでV2の調整は?」
「完璧……と言いたいんだけどね」
ルーカスはマキアから端末を受け取りながらコックピットに入る。
マキアもコックピットまで付いてくる。
「全部乗せは始めの設計にはなかったから機体バランスは滅茶苦茶」
今回の戦闘ではルブリスV2は全てのパッケージの武装を少しづつ装備させたフルパッケージとなっていた。
左腕には砲撃戦用パッケージのアームガトリングガン、サイドアーマーとリアアーマーには近接戦闘用パッケージの大型スラスターとガンブレイド、バックパックと脚部には高機動パッケージのブースターと装甲、頭部と肩には長距離射撃用パッケージのスコープと大型センサーユニット、右腕には通常仕様のルブリスのレシーバーガンとコンポガンビットシールドが装備されている。
本来は別々に装備させることが前提となっているため、同時に装備させるとそれぞれの特徴が完全には出し切れず、機体のバランスも最悪だ。
「まぁ、私にかかれば動かせる程度にまでは調整出来てる。後はルカ君次第」
マキアがギリギリまで調整していたこともあってフルパッケージは一応は戦闘可能レベルまでのバランス調整は出来ているようだ。
「流石」
「やっぱ全部乗せはやりたかったから前々から温めてはいたんだけどね」
「成程な」
短期間でバランス調整が上手くいったのはマキア自身が以前からルブリスの全装備を同時に装備させることを考えていたからだった。
もっとも、マキアもそれをこの局面で使うとは思っていなかったが。
「乗りこなして見せるさ」
「んじゃ頑張ってよ。くれぐれも私のルブリスを壊さないでよ!」
マキアはそういいコックピットから離れていく。
それを確認したルーカスはハッチを閉じる。
「エマ。行くぞ」
「ええ。分かってるわ」
エマも先ほどまでとは違い気を引き締めている。
「エマ・スレイド。ガンダムヴァルキュリア。出るわ」
「ルーカス・ナボ・レンブラン。ガンダムルブリスV2フルパッケージ。出るぞ」
フロントから2機のガンダムが射出され、戦闘は最終局面となった。