出撃したルーカスとエマはセリカと交戦しているフランの元へと急ぐ。
「行けるか?」
「大丈夫よ」
エマは実際に動かしてみて機体の反応を確かめる。
ガンダムヴァルキュリアの反応速度はジークフリートを上回っているが、十分に扱える範囲内だ。
「上出来だ。来るぞ」
前方に最終防衛戦まで到達したレオルとペルセウスが接近してくる。
ルブリスV2はビットステイヴを展開する。
「ペルセウス……ウチの機体を撃墜するのは気が進まないけど、それ以上にいつまでも使われるのはもっと気分が悪いわ」
ヴァルキュリアはビームライフルでレオルを撃墜するとライフル下部のヒートソードを展開するとペルセウスを切り裂く。
「結構、押し込まれてきてるな」
ルブリスV2はアームガトリングガンで弾幕を張る。
「ルカにエマさん?」
ペルセウスアーシアンのビームマシンガンを避けながらサナトスが狙撃用ビームライフルで反撃する。
体勢を崩したところをコウタロウのベギルベウがソードユニットを後ろから突き刺して破壊する。
「もう少しだ。ここは突破させるなよ」
「簡単に言ってくれるな」
「まったくよ」
サナトスが狙撃用ビームライフルを撃ち、ベギルベウがビームガンを連射する。
そこにビットステイヴで敵の死角から攻撃する。
「すぐに終わらせる。エマ」
「ええ、分かってるわ」
ヴァルキュリアはレオルからヒートソードを抜く。
「お嬢様!」
「ヴォルガ。ここは任せたわよ」
「はい! 必ずやお嬢様が戻る学園は俺がお守りします!」
ウォルガのジークフリートはガンランスを振り下ろしてペルセウスの頭部を潰す。
その場を任せるとルーカスとエマは先へと向かう。
「来た」
ガンダムネメシスがハンドライフルで2機のペルセウスアーシアンを撃ちぬく。
背後からビームサーベルで切りかかって来たペルセウスの攻撃をトンファーユニットで受け止めると、もう片方のトンファーユニットで殴り飛ばしてハンドライフルで仕留める。
「各機、戦闘はもうすぐ終わる。気合を入れて」
戦場をルブリスV2とヴァルキュリアが駆け抜けて行き、レイニーも戦闘が終盤へと向かっている事を確信する。
スタンビットを全て射出し、脚部クローでレオルの頭部を掴むとハンドライフルを撃ちこんで仕留める。
「おらおら! どうした!」
ガンダムバルデッシュは両肩の大型シールドブースターに内臓されているビームキャノンを撃つ。
強化型ルブリス改は下がりながらビームを回避する。
「そんなもんかよ!」
「この!」
強化型ルブリス改はビームサイズを振るうが、バルデッシュはヒートハルバートの柄で受け止めると軽々と弾き飛ばす。
「っ! 出力が違い過ぎる」
強化型ルブリス改は近代化改修をされているとは言っても10年前に開発された機体だ。
一方のバルデッシュはジェターク社の最新技術で作られている。
量産機が相手なら十分な性能だが、最新鋭のガンダムを相手にするにはすでに性能不足になっていた。
「フラン! やり過ぎんな」
「ルカか。遅ぇよ」
「これでも急いでここまで来たんだよ」
ルブリスV2はガンビットライフルで強化型ルブリス改をけん制する。
「後は俺に任せろ。フランはセシルの方を頼む」
「分かった。そっちはアタシに任せろ」
ルーカスが到着した事でフランも戦闘を中止するとその場を離れる。
「あの機体……今日こそ!」
セリカはパーメットスコアを一気に4まで上げて突撃する。
「いきなりフルスロットルかよ」
ルブリスV2はアームガトリングガンで応戦する。
「エマ!」
「まだよ。もっと数を減らさないと!」
ヴァルキュリアはビームライフルでレオルを撃墜する。
「だよな」
ルブリスV2はビットステイヴで周囲の敵を撃墜していく。
「ちっ! あの2機を仕留めるぞ! レド」
「ああ!」
シドーとレドのレグルスがヴァルキュリアへと向かっていく。
レド機のチェーンソードをヒートソードで受け止める。
その隙を付いてシドー機がヴァルキュリアにチェーンソードを振るおうとする。
「パーメットスコア3」
エマはスコアを3に上げると高機動ウィングからスレイドソードビットが射出される。
スレイドソードビットは目にも止まらず速さでシドー機を切り刻む。
「へ?」
何が起きたのかも分からない内に機体に衝撃が走り、シドー機は爆散する。
「シドー! てめぇ!」
レド機は距離を取り左腕のビームマシンガンを撃つ。
ヴァルキュリアはビームライフルのロングバレルを展開して撃つ。
ビームはレド機の右腕を撃ちぬいた。
「くそ! 何なんだ!」
レド機はビームマシンガンを乱射するが、ヴァルキュリアの機動力には追い付けない。
すぐさま距離を詰められるとヒートソードで左腕が切り捨てられる。
「この……魔女が!」
そのままヒートソードを振り下ろしてレド機は頭部から真っ二つになって爆散した。
「っ……」
データストームが発生し、エマは顔を少し歪ませるが、そのままスレイドソードビットを駆使して周囲の敵を減らしていく。
「お前のせいで姉さんが!」
「今日は一段と気迫が違う」
ルブリスV2は後退しながらアームガトリングガンで応戦する。
強化型ルブリス改は肩のシールドを掲げて突撃してくる。
距離を詰めた強化型ルブリス改はビームサイズを振るいルブリスV2のアームガトリングガンを切り裂く。
すぐにルブリスV2はレシーバーガンを撃ちながら左腕の破損したアームガトリングガンをパージする。
「姉さんを返せ!」
強化型ルブリス改は被弾を気にすることなく突っ込んできてビームサイズを振るう。
ルブリスV2はレシーバーガンからビームソードを出してビームサイズを弾く。
「流石にヤバイか……エマ!」
「分かったわ」
ヴァルキュリアは大型シールドをパージする。
増設された姿勢制御用のスラスターでその場に制止すると大型シールドはアンチドートを展開する。
ヴァルキュリアは自身がアンチドートの効果範囲内に入らないように退避する。
「こっちは余り長くは持たないから早くね」
「分かってる」
ヴァルキュリアは左腕のワイヤーハーケンを射出してレオルの頭部に付き刺すとそのまま別のペルセウスにぶつける。
ビームライフルを撃ちながら左手でスレイヴソードを抜いてペルセウスアーシアンを両断する。
「くっ……また機体とのリンクが……なら!」
「スコアを上げるつもりか? 止めろ! それ以上スコアを上げると死ぬぞ!」
すでにセリカはスコアを4にまで上げている。
アンチドートで機体とのリンクを強制的に切られてそれに対抗するために更に高いスコアにしようとしていた。
ルブリスV2は余計な装備をパージすると強化型ルブリス改に取りつくとコックピットのある胴体を殴りつける。
その衝撃でコックピット内が揺れてセリカのスコアを上げる事を阻止する。
「聞こえるか?」
「接触通信?」
「お前がセシルの妹のセリカだな?」
ルーカスは強化型ルブリス改に通信を繋いだ。
「その声……お前が!」
セリカも以前に学園に潜入していた時にルーカスと接触しているため、声で相手がルーカスだという事が分かった。
相手が姉を奪った相手だと知りセリカは再び怒り始める。
「お前が私の姉さんを!」
「ああ。お前の姉ちゃんは俺が貰った。そのセシルが望んでんだセリカも一緒にって」
「姉さんが? 何を馬鹿な……私は……」
セリカもセシルが裏切ったと聞かされていた。
その時、漠然と思った。
自分は捨てられたのだと。
これまで自分が姉に守られて来たことは自覚している。
少なからず自分がいなければ姉はこんな事をしないで自由に生きられたかも知れないと思っていた。
「本当の事だ。アイツは自分の意思で俺のところにいる。けどな、お前とも一緒にいたいと思ってんだ。当たり前だろ。妹と一生一緒にいたいと思わない奴はこの世界のどこにもいない。いるとすればそいつは人間じゃない」
「私は……」
「だから来い! そんなもんから降りて俺のところに。面倒は俺が見てやる。セシルと2人でだ」
「お姉ちゃんと……一緒に」
「ああ」
セリカが銀河の獅子で戦う理由は生きていくためでしかない。
セシルと共に生きていけるのであればそれはどこでも構わなかった。
自分は捨てられた訳ではなく、セシルも自分と生きる事を望んでいた。
それを理解すると先ほどまでルーカスに対して抱いていた怒りや憎しみがすっかり消えていた。
セリカは機体のコックピットを開く。
それを見たルーカスは説得が上手くいったことでこの戦闘の最大の目的を果たせたと気が抜けていた。
だからこそ、気づけなかった。
強化型ルブリス改の背後からレグルスのチェーンソードが突き刺さる。
チェーンソードは機体を貫通し、先端が胸部から出ている。
「邪魔だ!」
レオン専用に調整されたレグルスは強化型ルブリス改からチェーンソードを乱暴に抜く。
ルブリスV2は強化型ルブリス改と接触回線をつないでいたため、通常通信でエマがアンチドートの効果範囲内に敵が入ったという事を知らせようにもルーカスは気づかず、エマが外からけん制射撃をするも止めきる事は出来なかった。
だが、そんな理屈はルーカスにはどうでも良かった。
乱暴にチェーンソードを抜く時にコックピットからセリカが投げ出されるところをルーカスは鮮明に見えてしまった。
それを見た瞬間にルーカスの中で何かが切れた感じがした。
「所詮はアーシアンのゴミか。姉妹揃って役に立たねぇ」
「お前か……」
「あ?」
「お前がやったのか!」
突如、ルブリスV2のシェルユニットが赤く発光を始める。
赤く発光するとすぐに青く光りやがて白く輝き始めた。
ルブリスV2のシェルユニットからは放たれた白い光は戦場全体を包み込んで行く。
「何だ? 何が起きてやがる!」
白い光に包まれたモビルスーツは敵味方関係なく機体の制御が出来なくなり戦闘が止まっていく。
それはモビルスーツに留まらず双方の船ややがては学園のフロントにまで広がっていく。
「嘘……あり得ないでしょ。戦場やフロントのパーメットを完全に制圧してる。こんな事はまだ理論が確立すらされてないじゃん」
学園のフロントでルーカス達を送り出した後で戦況をモニターしていたマキアがこの戦場でいち早く何が起きているのかを把握していた。
同時にそれは理論的にはあり得ない事が起きているという事もだ。
「こんなのスコア6でも出来ない。それ以上のスコアを出してるって事?」
マキアの中で次々と仮説を立てていく。
その仮説を今は確認することは出来ないが、自然を笑いが止まらなくなる。
「最っ高じゃん! 研究のし甲斐があるって!」
他に誰もいない格納庫でマキアの高笑いだけが響いていた。
「っ! ヤバイ。コレあの時と……同じ」
「シズカ?」
戦場全体が広い光に包まれて戦闘は完全に止まっていた。
そんな中でガンダム全機のシェルユニットが赤く発光を始めた。
ガンダムのパイロットたちは自分の意思に関係なくスコアが上がっていくのを感じ、やがてデータストームを受けていた。
「ぐっっやべぇだろ……」
「一体何が……」
「……不味い」
「……これはルーカスのガンダムが起こしているとでも……」
自身ではスコアの制御が出来ずただデータストームを受けるしかなかった。
しかし、それはガンダムのパイロットだけに留まらなかった。
「おい……どういう事だ!」
レグルスのコックピットの中でレオンの顔や腕に赤い痣が浮き出していた。
レオンもそれが何なのか理解すると同時にデータストームを受ける。
「馬鹿な……ぐっぁぁぁぁぁあ!」
スコア5を超える量のデータストームがレオンに流れ込んできてレオンは一瞬のうちに意識がなくなる。
「何だコレあああああ!」
「魔女ののろ……」
「ぎっああああああ!」
戦場の銀河の獅子のモビルスーツや宇宙船の中でも同様の事が起こり次々とデータストームで命が失われていく。
やがて戦場の全ての敵が息絶えたところでルブリスV2から発せられた白い光が収束していく。
「シズカ! おい!」
機体の制御が戻りコウタロウは力なく漂うサナトスの近くまで来る。
サナトスのシェルユニットは先ほどまでとは違い赤ではなく青く光っている。
「どういう訳か生きてるわ。それに」
シズカは自分の腕を見るとスコアを上げた時に赤い痣が青くなっている。
それは他のガンダムとそのパイロットにも同じことが起きていた。
「セシル。生きってっか?」
「ええ」
「死ぬかと思った」
「ルーカス!」
ルーカスの一番近くにいたエマがルーカスの安否を確認する。
呼びかけてもルーカスはコックピット内で意識を失っているため、返事はない。
銀河の獅子は全滅し完全に戦闘は終わっていた。
最後は何が起きたのか誰も分からなかったこともあって、すぐに戦闘が終わった事を理解して帰投することはなく時間だけが過ぎて行ったが、議会連合の艦隊が到着し事態は収拾することとなった。
この1戦において銀河の獅子は全滅に対してアスティカシアはけが人は出たが、1人の死者も出なかったことから後にアスティカシアの奇跡として歴史に刻まれることとなった。