機動戦士ガンダム 祝福されし子と7人の魔女   作:ケンヤ

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39話

アースリベレイターが撤退したオービット重工のフロントに新たにカテドラルの船が港に泊まり、フロントの周囲をグラスレー社製のハインドリーが数機展開している。

 すでにテイラー率いる部隊は逃亡したアースリベレイターの追撃を始めており、この隊はフロントに残されている職員の救助と被害の調査の為に派遣されている。

 

「隊長! レイナ隊長!」

「どうしたフリード。騒々しい」

 

 フロントの管制で被害状況を調べていたレイナの元に彼女の直属の部下でもあるフリードが報告に来る。

o

「捕まっていた職員を見つけました!」

「そうか」

 

 フリードは他の隊員と共にフロント内で逃げ遅れた職員の捜索に当たっていた。

 港から管制室に来るまで人気がなかったことからどこかに監禁されていると考えられていた。

 

「すぐに行く。案内してくれ」

「こっちです」

 

 レイナは他の隊員にその場を任せてフリードについて行く。

 

「隊長」

「ウォーレン。ご苦労」

 

 フリードに案内された先ではもう一人の部下であるウォーレンが待っていた。

 案内された場所は食堂だった。

 

「これは……」

 

 レイナは食堂の有様をみて眉を顰める。

 食堂に集められていたらしいが、職員たちはみな射殺されていた。

 案内してきたフリートはすでにこの惨状を知っているのか食堂に背を向けている。

 フリードは若いためこの手の状況には慣れてはいないらしい。

 一方のウォーレンはレイナやフリードとは一回り近く歳が違うだけあって、動揺した様子も見せない。

 

「すぐに職員のリストと身元を照合させろ」

「了解です」

 

 ウォーレンはすぐに船の方に連絡を入れると食堂の遺体と職員のリストの照合に入る。

 

「遺体が所有した社員証から身元は分かりました。照合した結果、フロントに残されていた職員と全て一致しました」

 

 管制室に戻ったレイナはウォーレンから報告を受けた。

 その結果は最悪の結果となった。

 

「ただ一人だけ消息不明の人が」

「コウタロウ・ハサマ……ウチのグループ傘下のマツバラ設備からの出向か……」

 

 職員のリストを紹介した結果、見つかった遺体と取り残された職員のリストはほぼ一致したが、一人だけ行く不明の人物がいた。

 それがコウタロウだ。

 

「破壊された区画にいたのか、もしくは拉致された可能性も」

 

 考えられる可能性としてはその2つが挙げられる。

 破壊された部分から宇宙に投げ出されたか、それとも襲撃犯に連れ去られたかだ。

 

「この人……確か」

「知り合いで?」

「いや、直接的な面識はないが、恐らくは私の学生時代の一つ上の先輩だ」

 

 データには簡単なコウタロウの経歴も表示されており、それによればアスティカの出身で卒業はレイナの1年前になっている。

 レイナは当時はグラスレー寮のメカニック科の生徒でコウタロウとは直接的な面識はなかったが、レイナが2年の時、コウタロウが3年生の時、学園のパイロットの中で当時のホルダーだったシズカに次ぐ実力者として有名人だったこともあってレイナも顔と名前くらいは知っていた。

 

「もしや、この襲撃の目的は……」

「そう結論づけるのは早計だな。そもそも彼を拉致するのにここまでする必要性はない」

 

 ウォーレンはこの襲撃自体はコウタロウを拉致することを目的としているのではと考えたが、それをレイナが否定する。

 コウタロウはアスティカシアを優秀な成績で卒業しているが、今はグループ下位の企業の一職員でしかない。

 これがグループ上位の企業の重役ならともかくそんな人物を拉致するためにわざわざフロントを襲撃するとは思えない。

 レイナは結論を出すことはなかったが何か考えている。

 

「隊長? 何か気になる事が?」

 

 ウォーレンの方はそれに気づいて質問する。

 レイナは少し考えて頭の中で整理する。

 

「少し妙だとは思わないか?」

「何がですか?」

「何故、奴らは食堂で人質を皆殺しにしたと思う?」

「そりゃ、顔を見られたとか初めから皆殺しにするつもりだったとかいろいろあるんじゃないですか」

 

 レイナは人質を皆殺しにした事が気になっているらしい。

 

「それならわざわざ射殺する必要もないだろう。奴らはモビルスーツを使いフロントの一部を完全に破壊してるんだ。食堂にビームを一発撃ちこむだけで終わる」

 

 レイナは持っていた端末の映像を切り替える。

 フロントの一部はモビルスーツにより完全に破壊されている。

 この場所には機密情報があるとかでレイナたちにも何があったかまでは知らされていない。

 それ以外でもカテドラルの調査をかく乱するためかフロントの至るところはモビルスーツで破壊しているため、食堂を破壊すれば手間も職員たちの口を塞ぐために一人一人射殺するよりも手っ取り早い。

 

 

「それに見てみろ。フロントの物資のリストから水や食料が持ち出されているが、全てを持ち出さずに残されている」

「それは妙ですね」

「食べきれないのは勿体ないとかじゃないっすよね」

 

 レイナの方で調べていた中でフロントの水や食料がごっそりと持っていかれていたが、全てを持ち去られていた訳ではない。

 水や食料はあって困る事は無いため、わざわざ必要最低限だけ持ち去って残しておいたとは考えにくい。

 情報によれば向こうの1隻は輸送艦であるため、そのサイズから推測できる限りでは持ち運べる物資の量から全て持ち去ったところで持ちきれないという事も無い。

 つまりは向こうは意図的にこれだけの物資を残していったという事だ。

 

「それにクリーニング済みの衣類も相当な数を持ち去っている。100人以上分になるな。他に金目の物を持ち去った形跡はない」

「フロントを破壊する以外に何か目的があったと?」

「私はそう考えている。ガンドルフ司令の対応の速さも含めてこの件は単純なテロではない気がする」

 

 レイナはこの件に関してはまだ何かあると漠然を思っている。

 それはまだ何なのかは分からない。

 

「生存者がいない場合はこのままガンドルフ司令と合流しろと言う事だったな」

「艦長からそう聞いています」

「細かい調査は後続の部隊がって事ですかね」

 

 生存者がいないのであれば優先すべきは逃亡した敵を撃つことなのだろう。

 現状生存者の可能性が低い以上はそれに従うしかなかった。

 

 

 

 

 フロント宙域から離脱したアースリベレイターの母艦は輸送艦と合流し航行していた。

 フロント宙域からまる一日の航海だったが、すでにカテドラルの戦艦が追尾しているようだ。

 ブリーフィングルームではタチアナとゲオルが現在の自分たちの位置と航行ルート、カテドラルの戦艦の位置を把握したうえで今後の対応を話し合っている。

 

「ずいぶんと早く追尾に来たようだね。折角、職員を残してきたのにね」

「ええ。救助よりも追撃を優先したのでしょうか?」

 

 一度は向こうもオービット重工のフロントに入るも、想定よりも早くこちらの追撃に入っている。

 少しでも追撃を遅らせる為に職員を生かしてフロントにおいてきたが、余り意味はなかったようだ。

 

「足の遅い輸送艦を抱えての逃亡だ。いずれは追いつかれるさ。敵の増援はまだと言うのは幸いかな」

「ですね。あの程度であればまだガンヴォルヴァで対応できます」

「まだね……まだアレにGUNDフォーマットが搭載されている事は知られてはいないだろうからね」

 

 アースリベレイターの所有している4機のガンヴォルヴァには運用が禁止されているGUNDフォーマットが搭載されている所謂ガンダムだ。

 今はGUNDフォーマットを使わずに戦わせているため、向こうもガンヴォルヴァがガンダムだという事は気づいてはいないだろう。

 

「そう願いたいですな。アンチドートを使われてしまえばどうにもなりませんから」

 

 ガンダムであることを隠している理由がアンチドートだ。

 未だにガンダムはアンチドートには無力で使われてしまえば力を発揮できなくなる。

 それを避けるためにもガンダムである事はギリギリまで隠しておきたい。

 

「開発部の方では対アンチドート兵器の開発が進められているとは聞いていますが……」

「どうだろうね。私としては開発部が予算を減らされないためにでっち上げただけだと思いたいところだ。ガンダムであることを隠している限りはあの子たちは魔女にもならずに済むし命を削る必要もないからね」

 

 タチアナやゲオルの耳にも組織の開発部の方でアンチドートを無力化する基礎理論が確立し、対アンチドート兵器とそれを搭載する複数の新型ガンダムの開発が始まっているという噂が聞いている。

 だが、タチアナはそれが出まかせであって欲しいと思っている。

 仮に対アンチドート兵器と新型のガンダムが完成すればそのパイロットとして選ばれる候補はリタ達である可能性は高い。

 例えアンチドートを無効化したとしてもガンダムにはもう一つの問題であるデータストームの方はまだクリアしていない。

 組織の上はパイロットは使い潰しても構わないと思っているのか、データストームの問題にはそこまで力を入れてはいない。

 タチアナとしてはこのまま対アンチドート兵器が完成することなくリタ達はGUNDフォーマットを使わず済めばいいと思っている。

 

「隊長! カテドラルに動きが!」

「分かったすぐにブリッジに向かう」

 

 ブリッジからの通信が入り、タチアナをゲオルはすぐにブリッジへと向かう。

 ブリッジのメインモニターにはカテドラルの戦艦が2隻表示されている。

 

「何があった?」

「増援と合流した後に加速を行っています」

「こちらに仕掛けるつもりなのか。このタイミングで」

「向こうの意図が読めないが……」

 

 タチアナは艦長席に座ると相手の意図を推測する。

 

「あの速度で来られると振り切れないか……後少しのところで」

「向こうはそれが狙いなのでは?」

 

 現在の進行ルートはもう少しで目的地に着く予定だった。

 このタイミングで仕掛けるというのはそれを阻止することが目的なのかも知れない。

 

「にしても増援が来たとは言え何か策があるというのか?」

 

 目的は推測は出来たが、現宙域は障害となる物はなにも無いため、伏兵を配置している事はないだろう。

 いずれはモビルスーツを出撃させて来るとは思うが、向こうが何か策を練ってきているとは思えなかった。

 

「まったく……意図が読めない相手は面倒だな。戦闘準備に入る。モビルスーツ隊は出撃準備をさせておけ。このまま少しでも先に進む」

 

 完全に相手の意図を予測できた訳ではないが、今はとにかく先に進むことが優先だ。

 ブリッジは戦闘の準備が始まり慌ただしくなる。

 

「どういうつもりですか! このタイミングで仕掛けるなど! その意図をお聞かせ願いたい!」

 

 母艦に戻りガンドルフ隊を合流したレイナはすぐに出撃準備に入るように艦長より指示を受けるとブリッジに上がり、テイラーに抗議する。

 

「どうこうも無い。増援が到着したのだ。仕掛けるのも当然のことだろう」

 

 テイラーは面倒そうに返す。

 

「だからと言ってモビルスーツ隊を突撃させて叩くなんて策でもなんでもないでしょう!」

 

 戦力で言えば自分たちの方が有利なのは分かっている。

 それでもただモビルスーツ隊を出撃させて敵を倒せと言うのは余りにも何も考えて無さすぎる。

 

「素人は黙っていて貰おう。おたくの会社がもっとましなモビルスーツを寄こしてくれればより確実性が出たんだがな。寄りにもよってあんなモビルスーツを寄こすなんて抗議したいのはこちらの方だ」

「なっ! ハインドリーはわが社の!」

「止さないか」

 

 レイナはハインドリーを侮辱されて怒りを露わにすぐが艦長が制止する。

 レイナは正式にカテドラルに所属している訳ではない。

 元々はグラスレー社の開発部のテストパイロットでグラスレーの新型の試作機の実戦テストの為に派遣されている。

 ハインドリーのテストにも関わっているため、ハインドリーが実戦でも十分に使えるという事は分かっているが、グラスレー社製のモビルスーツの長所は汎用性にある。

 ジェターク社やペイル社のモビルスーツの様に分かりやすい強みはないが、逆に弱みもない。

 テイラーにとってはそれが大したことのないモビルスーツでしかないのだろう。

 

「すぐに出撃準備に入らせます」

「ふん。急げよ」

 

 通信が切れるとレイナは艦長を睨む。

 

「あの人に何を言っても無駄だ」

「ですが……向こうの未確認機は……」

「どの道、あのテロリストは放っては置けんのだ。君とあの試作機なら速やかに仕留める事も出来るだろう」

「……了解です」

 

 レイナもそれ以上艦長に文句を仕方がないと矛を収める。

 艦長のいうように野放しに出来ない相手である事には変わりはない。

 レイナはブリッジから出て行くと格納庫に向かう。

 

「隊長。出撃するんですか?」

「ああ。そうらしい」

「このタイミングでですか?」

「そうだ。つべこべ言うな。すぐに出る」

 

 不機嫌さを見せるレイナは自分のモビルスーツへと向かう。

 レイナのモビルスーツはグラスレー社製の試作モビルスーツ、ハインドラだ。

 ハインドリー・シュトルムをベースにしながら新型機に装備予定の試作装備が搭載されている。

 右腕にはシールドコーティングされた4枚のプレートで構成された多目的複合ユニット、ブレイザーユニットが、左腕には大型のランスと2門のビームガンで構成されたジャベリンユニットが装備されている。

 バックパックも出力の高いものに換装され高い機動力を有している。

 頭部もドーム状のセンサーの試作品に換装され、全身を白で塗装されている。

 

「マジっすか」

「隊長を信じるしかあるまい」

 

 ウォーレンとフリードも自分のモビルスーツに乗り込む。

 2人のモビルスーツはグラスレー社製の試作モビルスーツ、ハインドリー改だ。

 ハインドリーをベースに頭部はハインドラと同タイプの物に換装され、火器は従来の物ではなく大容量のエネルギータンクにツインセンサーを採用することで戦闘継続能力と命中精度を高めた新型の試作型ビームライフルを装備し、シールドは見た目はシュトルムの物と同じだが、ハイングラのシールド同様にビームバルカンを内蔵したタイプにスライド式の装甲を追加したシールド、バックパックはシュトルムの物に換装されているが、ビームキャノンの代わりにビームサーベルが追加されている。

 

「ハインドラ。レイナ・マルカ。出撃する」

 

 

 

カテドラルの戦艦からモビルスーツの出撃を確認したところでタチアナも逃げるだけでなく迎撃を決断した。

 

「くっそ。ゆっくり寝させても貰えないのかよ」

「お前は寝すぎなんだよ」

 

 パイロットスーツに着替えて格納庫でコウタロウは愚痴る。

 フロントから脱出後、コウタロウは自分に割り当てられるとそのまま眠り続けていた。

 自覚はなかったが、ここまでの出来事が想像以上に心身共に疲弊させていたらしい。

 放っておけば更に眠りづ付けていそうだったが、待機命令が出てリタに叩き起こされた。

 

「まともに食ってないんだろ。コイツでもハラに入れとけ」

 

 ヒルダは携帯食料をコウタロウに投げる。

 コウタロウはそれを受け取ると、機体のコックピットで素早く食べる。

 

「敵は増援も含めて数が多い。ガンヴォルヴァで迎撃させる。レグルスは船の護衛だ」

「増援……マジか。向こうは本気で撃ちに来てるって事か」

「そういう事だ。各自、油断しないように」

 

 ただでさえ戦力では劣っている上に増援が来たとなれば状況は更に悪くなる。

 

「ガンヴォルヴァ。コウタロウ・ハザマ。出る!」

 

 母艦から4機のガンヴォルヴァが出撃し、迎撃を始める。

 

「数が増えたってな!」

 

 ヒルダのガンヴォルヴァ02がビームカービンを連射しながら突撃する。

 カテドラルのモビルスーツ隊は散開するとディランザ・ソルがビームバヨネッタで切りかかってくる。

 

「上等!」

 

 ガンヴォルヴァ02はバスターソードを抜いて受け止める。

 その間にザウォート・ヘヴィがガンヴォルヴァ02を抜けて母艦の方に向かう。

 

「わりぃ! 抜かれた」

「行かせない」

「ここで食い止めるぞ」

 

 ガンヴォルヴァ01とガンヴォルヴァ03がザウォート・ヘヴィの行く手を遮る。

 2機からのビームをかわすとザウォート・ヘヴィはミサイルを撃つ。

 それを迎撃している間にディランザ・ソルがビームを連射して2機を足止めする。

 

「装甲の厚いディランザで俺たちの足を止めるつもりか! リタ。こいつ等は俺が相手をする。リタはザウォートを頼む」

「分かったわ」

 

 ガンヴォルヴァ01はビームライフルを撃ち、ディランザ・ソルはシールドで弾きながら反撃をする。

 その間にガンヴォルヴァ03はザウォート・ヘヴィの方へと向かっていく。

 

「素早い」

 

 後方からガンヴぉルヴァ04がビームキャノンで迫るザウォート・ヘヴィを狙い撃ちするが、高い機動力を持つザウォート・ヘヴィには当たらない。

 

「ドロテア!」

 

 ガンヴォルヴァ03がビームカービンでザウォート・ヘヴィを攻撃する。

 それを回避しながらザウォート・ヘヴィはビームキャノンを撃つ。

 ガンヴォルヴァ03はビームサーベルを抜くとザウォート・ヘヴィに切りかかる。

 ザウォート・ヘヴィはビームサーベルで受け止める。

 そうしている間にもディランザ・ソルやザォート・ヘヴィがアースリベリオンの母艦へと向かっていく。

 

「数が多い!」

「それに母艦を優先して狙ってきてる」

 

 ガンヴォルヴァ04はビームキャノンを撃つが、迫る敵を抑えきれない。

 ガンヴォルヴァ03もビームカービンで足止めとしようとするが、完全に止める事は出来ない。

 だが、後方から抑えきれないと判断した護衛のレグルスも前線に出て来て何とか数の上では互角となる。

 

「やらせるか!」

 

 レグルスは左腕のビームマシンガンを撃ちながらチェーンソードを振るう。

 ディランザ・ソルはシールドで受け止めるとはじき返してビームライフルを撃つ。

 レグルスの左肩に直撃して体勢を崩したところに止めのビームを撃ちこもうとするが、間にガンヴォルヴァ03が入りシールドで防ぎ、バックパックのミサイルを撃つ。

 ディランザ・ソルは後退しながらビームバルカンで迎撃する。

 

「前にも後ろに行けない!」

 

 ガンヴォルヴァ01はビームサーベルでディランザ・ソルのシールドを切り裂く。

 

「それにグラスレーのモビルスーツもいつの間に!」

 

 出撃が遅れていたのか、後続のハインドリーもいつの間にか戦闘に参加していた。

 ハインドリーはランタンシールドのランスを展開すると突撃してくる。

 それをシールドで弾きハインドリーを蹴り飛ばす。

 頭部のビームバルカンでけん制を入れながらビームライフルで近くの敵を狙い近づけさせないようにする。

 

「それに……ヒルダの方がヤバイ!」

 

 レーダーにはヒルダの方には3機の敵機がいるようだが、コウタロウは直感的にそっちが危ないと感じていた。

 

「こいつ等新型かよ!」

 

 ガンヴォルヴァ03は腕部のビームバルカンを撃つ。

 

「ウォーレン、フリード。まずはコイツを仕留める」

「任せて下さい!」

 

 ハインドリー改は二手に分かれるとガンヴォルヴァ03を挟み込むように位置取りをしながら試作型ビームライフルを撃つ。

 

「ちぃ!」

 

 ガンヴォルヴァ03は何とかビームを回避するが、ハインドラが右腕のブレイザーユニットを展開すると4枚のプレートが牙の様にガンヴォルヴァ03に迫る。

 ギリギリのところでバスターソードを間に割り込ませるが、ブレイザーユニットはバスターソードをしっかりと掴んでいた。

 

「まずはその武器を貰おうか」

 

 レイナがトリガーを引くとブレイザーユニットの中央から高出力のビームが放たれた。

 

「なっ!」

 

 至近距離からのビームでバスターソードが吹き飛ばされる。

 そのまま、ハインドラは左手のジャベリンユニットを向けてビームガンを撃ちこむ。

 

「ちくしょう!」

 

 メインの武器を失った ガンヴォルヴァ03は両腕でコックピットのある胴体部を守るしかなかった。

 幸いにもビームガンの威力はそこまで高くはなく、ガンヴォルヴァ03の装甲を破壊するだけで胴体部までは届かない。

 

「フリード。行くぞ」

「うぃっす!」

 

 ガンヴォルヴァ03の左右からハインドリー改がビームサーベルで切りかかり、身を守っていた両腕を切り落とした。

 そこに止めを刺すためにハインドラはジャベリンユニットを構えて突撃する。

 

「これで終わりだ」

「ざけんな……こんなところで死ぬのかよ。ドロテア……」

 

 完全に孤立した状態で両腕も武器もない状況ではヒルダも何もできなかった。

 死が迫りその目には涙が浮かんでいた。

 

「ヒルダ! 止めろぉぉぉ!」

 

 コウタロウは何とかヒルダを助けに向こうとしていたが、敵の妨害で思うようにはいかなかった。

 助けに行くことも出来ずにコウタロウはただ叫ぶしかなかった。

 そして、ハインドラのジャベリンユニットがガンヴォルヴァ03を貫こうとしたその時、ガンヴォルヴァ03の胸部のシェルユニットが赤く発光すると、ジャベリンユニットの一撃をかわした。

 

「アイツ!」

「隊長の一撃をかわしやがった! どうなってんだ」

 

 攻撃がかわされるとすぐにハインドリー改は試作型ビームライフルで攻撃するが、ガンヴォルヴァ03は易々とビームをかわす。

 

「私……生きて……それに機体が勝手に」

 

 ガンヴォルヴァ03の中でヒルダは状況が飲み込めずに放心していた。

 この動きはヒルダによるものではなく機体が勝手に動いている。

 

「あの光……やはりあれはガンダムだったのか!」

「それ以上は止めろ!」

 

 レイナも事前に見た戦闘の様子からガンヴォルヴァはガンダムではないかと推測していたが、どうやらそれは当たっていたようだ。

 そして、敵の妨害を突破してきたガンヴォルヴァ01がビームライフルでハインドラをけん制する。

 ガンヴォルヴァ01のシェルユニットも赤く発光し、コウタロウの顔にもGUNDフォーマットによるリンク状態特有の赤い痣が浮き出てた。

 ガンヴォルヴァはGUNDフォーマットを使う事で外部からガンビットの様に遠隔操作することが出来るようになっている。

 タチアナがコウタロウにガンヴォルヴァを貸したのも持ち逃げしようとしたときにこの機能で阻止できるからだ。

 コウタロウは無意識のうちにその機能を使ってガンヴォルヴァ03を遠隔操作して助けたのだ。

 

「コイツ……もしかしてガンダムなのか!」

 

 コウタロウも自身が乗っているモビルスーツがガンダムだという事に気が付くが今はそんなことを気にしている余裕はない。

 ハインドリー改は試作型ビームライフルでガンヴォルヴァ01を狙うが、当てる事は出来ずに接近を許してしまう。

 ビームサーベルでフリードのハインドリー改の試作型ビームサーベルを切り裂いて蹴り飛ばす。

 

 「フリード!」

 

 ウォーレン機が試作型ビームライフルとシールドのビームバルカンで弾幕を張ってフリードを守る。

 弾幕を回避しながらガンヴォルヴァ01は接近してビームサーベルをシールドに付き刺す。

 

「ぐっ!」

「フリード! ウォーレン! 奴から離れろ! 私が相手をする」

 

 ハインドラがブレイザーユニットを展開し連射速度の高いビームマシンガンを撃つ。

 

「お前が隊長機か!」

「貴様がガンダムだというのならここで叩く!」

 

 2機はビームサーベルとジャベリンユニットで切り結ぶ。

 そのまま2機は高速で動きながら火器でけん制を入れては接近して切り合う。

 

「すげぇ。あれはガンダムなのかよ」

「だが、隊長も遅れは取っていない」

 

 2機の戦いにフリードとウォーレンの2人は割って入る事は出来なかった。

 ガンヴォルヴァ01は展開されたブレイザーユニットの一撃をシールドで受け止めるが、ビームキャノンが至近距離から放たれる。

 ビームが撃たれる前にシールドをパージして、ビームサーベルを振う。

 その一撃はブレイザーユニットで防がれて、ジャベリンユニットの先端が射出される。

 ジャベリンはガンヴォルヴァ01の頭部に突き刺さり、体勢を崩しながら左手にビームライフルを持って撃たれたビームがハインドラの左腕を吹き飛ばす。

 

「はぁはぁ……っ! これがデータストームって奴か……こんな中でシズク達は……」

「逃がすか!」

 

 データストームを受けながらもコウタロウはビームライフルをハインドラに向ける。

 ハインドラはブレイザーユニットを展開し、ビームキャノンを撃とうとする。

 だが、横から2機の間にビームが横切る。

 

「何だ?」

「あれは……」

 

 ビームを撃ったのはカテドラルでもなければアースリベリオンのモビルスーツでもなかった。

 

「一つ目のモビルスーツ?」

「隊長。あのモビルスーツは」

「ああ。ギルドのジークフリートか」

 

 すぐにコウタロウもレイナたちも取り囲まれた。

 それはかつてのスレイブ・ウェポン社製のモビルスーツ、ジークフリートを改修したジークフリートⅡだ。

 見た目こそはジークフリートと変わらないが、多彩な装備による汎用性の高い機体で現在はルーカス・アーミィ・ギルド、通称ギルドで運用されているモビルスーツだ。

 

「この宙域は我々ルーカス・アーミィ・ギルドの管理下に置かれている。この宙域における戦闘行為はいかなる場合でも認められていない。ただちに戦闘を中止し、この宙域を離脱するように。これ以上戦闘を続けるのであれば我々が全力で排除させてもらう」

 

 オープンチャンネルから警告が戦場の全てのモビルスーツに送られてくる。

 そして、戦場の全てのモビルスーツが戦闘を中断する。

 誰もがその言葉が嘘偽りではないという事を知っているからだ。

 

「ふざけるな! 我々はカテドラルだぞ! お前たちはテロリストの掃討を邪魔するというのか!」

 

 だが、テイラーだけは通信で怒鳴り散らす。

 

「隊長」

「ああ。何を考えているのだ。あの司令は……」

「どうします?」

「司令、撤退します」

「何を馬鹿な事を!」

 

 レイナは撤退の判断をするが、テイラーはそれを認めるつもりはないようだ。

 

「相手が悪すぎます。ギルドを相手にすれば本部も黙ってないですよ」

「ぐっ!」

 

 テイラーもそれを言われると黙る。

 相手はべネリットグループ内でも独自の立場を確立している企業で、そこと揉めるようなことがあればカテドラルの本部も無視は出来ない事態となる。

 いくら自分たちがテロリストを相手にしているとしても、そんなことはギルドには関係なく、抗議したところでそれを握り潰すだけの影響力を持っている。

 

「撤退します。よろしいですね?」

「……勝手にしろ」

 

 一応はテイラーの許可が出た事でカテドラルのモビルスーツは撤退を始める。

 

「助かったのか? でも」

 

 カテドラルは退いたが、自分たちもすぐに宙域から離れなければ今度がギルドから攻撃を受ける事になる。

 

「我々はフロントへの正式な入港許可証を持っている。今、データを転送する」

 

 今度はタチアナがそういう。

 元々の目的地はルーカス・アーミィ・ギルドのフロントで、フロントに入るための許可証も事前に入手していたようだ。

 少しの間が空いてジークフリートⅡは武器を下した。

 

「確認した。モビルスーツの使用は許可されていないためすぐに船に戻りなさい。その後は我々の指示に従うように」

 

 向こうも許可証が本物であると確認できたようで警戒体勢が解かれた。

 

「何でそんな物まで持ってんだ?」

 

 ギルドのフロントへの入港許可証をアースリベレイターが持っているという事は疑問だったが、今はこの場を乗り切った事の方が重要だ。

 コウタロウはヒルダのガンヴォルヴァ03を回収すると母艦へと戻っていく。

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