機動戦士ガンダム 祝福されし子と7人の魔女   作:ケンヤ

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40話

ルーカス・アーミィ・ギルド、通称ギルド

 数年前にルーカスがスレイド・ウェポン社の技術を吸収して設立した会社だ。

 自社で兵士の育成や兵器は開発を行い格安で派遣する傭兵派遣業として活動をしている。

 その立ち位置はべネリットグループでも独自の立ち位置で、カテドラルに対しても圧力をかける事すら出来るとされている。

 ギルドの所有しているフロントの宇宙港にアースリベレイターの船と輸送艇が入る。

 

「取り合えずは何とかなりましたな」

 

 すでにカテドラルの戦艦はフロント宙域からギリギリ離れたところまで後退しているため、ひとまずは難を逃れた。

 

「だな。それにしても……」

 

 タチアナは先の戦闘の様子を思い出す。

 ガンヴォルヴァのシェルユニットが赤く発光している。

 

「ゲオル。ガンヴォルヴァのリミッターはかけてあったんだろうね?」

「無論です」

「となると強引に解除したって事か……」

 

 ガンヴォルヴァは普段はGUNDフォーマットを使用できないようにリミッターがかけてある。

 リミッターが正常に作動しているとなれば、コウタロウは一時的に高スコアで強引にリミッターを外したという事になる。

 

「ちょっとした拾い物かと思ったけど、これはとんだ拾い物なのかもね」

 

 始めは数合わせでそれなりに腕が立てばいいくらいに思っていたが、実際に戦ってもらった結果としては想定以上の実力を持っていた。

 その上でリミッターを強引に解除してGUNDフォーマットを使っての戦闘を見る限りでは一般的なパイロット以上にデータストームへの耐性があると推測できる。

 

「データストーム耐性は訓練でどうこう出来る物でもないからね。高い耐性を持つ彼がガンダムに乗る事になったのも運命と思いたいが。さて、いつまでもここに留まる訳にもいかない。モビルスーツの修理と整備を急がせろ」

 

 今はカテドラルも手は出せないが、入港許可証は無制限にフロントに留まる事は出来ない。

 期限が過ぎてしまえばこちら状況もお構いなしに追い出される。

 カテドラルはすぐに仕掛けて来るだろう。

 そうなれば先の戦闘の様に逃げ込むことも出来ないため、後はやられるしかない。

 それを避けるためにも滞在中に万全の体勢を整えなければならない。

 

 

 

 

 

「ここ良いか」

 

 待機命令が解除されたことでコウタロウはようやくまともな食事にありつくことが出来た。

 食事の乗ったトレーを持ちながらヒルダとドロテアの前に座る。

 

「なぁあのガンヴォルヴァってガンダムだったのか?」

「はぁ? 何だよガンダムって」

 

 コウタロウは先の戦闘での事をヒルダ達に尋ねるもヒルダはきょとんを首をかしげる。

 

「昔の特殊なシステムを搭載したモビルスーツの事。呪われてるとかで使用が禁止されたとか」

 

 一方のドロテアもそこまでガンダムについては詳しくはないようだ。

 

「呪い? なんだそりゃ。このご時世にくだらねぇ」

「二人ともガンダムの事は良く知らないのか?」

「ええ。確か開発元のヴァナディース機関を壊滅させたのが18年前で私たちの生まれる前の事だから私たちもよく知らないわ。ヒルダは勉強してないから知らないだけだけど」

 

 すでにヴァナディース事変から18年が経ち、当時の事も語られることはなくなった。

 その後にGUNDフォーマットに関する規制も強まり、コウタロウが学生時代にはまだ規制を掻い潜って使用されていたガンダムだったが、現在ではルーカスが所有していたガンダム・ルブリスV2をはじめとした全てのガンダムタイプのモビルスーツは廃棄されて完全に表舞台からは消えている。

 その上で所持だけでなく研究などにも規制が入っているためガンダムやGUNDフォーマットの事を詳しく知る機会も少なくなり、その危険性も昔の呪われたモビルスーツ程度の認識しか持たれないのも無理はなかった。

 

「まぁ、俺もヴァナディースの事は詳しくは知らないし、そっかもう生まれたのがそれよりも後ってのもあるのか……ってちょっと待て! ヒルダはともかくドロテアも?」

「ええ。私もヒルダと同じで16なので」

「……マジで?」

 

 コウタロウは思わずヒルダとドロテアを見比べる。

 ヒルダが16歳と言うのは言動が若干子供っぽいところがあるが分からないでもない。

 だが、ドロテアも同い年と言うのはにわかに信じ違い。

 見た目や言動が年相応の物ではない事や隣にヒルダがいる事も原因なのだろう。

 

「まさかとは思うけどリタも……」

「そんな訳ないでしょ。私は貴方とそんなに変わらないわ」

 

 リタもまた同じ年かも知れないと思ったが、そうではないらしい。

 呆れながらもリタはコウタロウの隣に座る。

 

「だよな」

「んな事よりもガンダムって強いのか?」

「……強いよ。リスクはあるけどな」

 

 コウタロウも実際にガンダムの戦うところを何度も見ている。

 その性能は現在のモビルスーツを相手にしても十分に戦えるほどだ。

 

「隊長から指示があったけど、ここに滞在している間にGUNDフォーマットの使い方を覚えるようにって」

 

 すでに先の戦闘で敵にはこちらがガンダムを所有しているという事は知られている。

 今後はGUNDフォーマットを使用した戦いも視野に入れるというのはタチアナの判断だ。

 

「あれがあればもう負けないよな」

「なぁリタ。この組織って何なんだ? ガンダムを4機を所有してるし、このフロントへの入港許可証だって簡単には手に入れられないだろ?」

 

 コウタロウは疑念を口にする。

 ガンダムの所有も開発も禁止されている。

 そんな中で独自にガンダムを開発できるところは多くはない。

 その上でルーカス・アーミィ・ギルドのフロントの入港許可を得る事も簡単ではない。

 

「私たちも組織の事はそこまで詳しくはないわ。ただアーシアンの現状を変える事を目的としている事くらいしか」

「ここの入港許可証は支援者のプリンスが用意したとは聞いているわ」

「プリンスだぁ? ずいぶんを気取った名前してんな」

 

 リタ達も組織の全てを知っている訳ではないらしい。

 独自のモビルスーツの開発が出来る辺りはどこかの企業や大きな組織がバックに付いているのだろう。

 

「本名って訳でもないわ。数年前からアーシアンに対する支援活動をしている人物と言う事くらいしか知られてはいないわ」

「俺も噂程度は聞いたことはあるけど、実在してたんだな」

 

 コウタロウも噂程度だったがプリンスと言う人物の事は聞いたことがあった。

 その素性は不明だが、アーシアンの孤児等への支援活動をしている人物と言う事だが、それ以外にも武装勢力へと支援までしているらしい。

 そして、そのプリンスはギルドに対しても顔が利くらしく、今回の入港許可証もプリンスが用意したようだ。

 

「プリンスはギルドにも顔が利く……待てよ」

 

 コウタロウはふとある事を思いついた。

 

「ギルドならカテドラルにも圧力をかけられる。ならアイツに頼めば……いや駄目か」

 

 しかし、段取りを考える時点でそれは無理だと判断する。

 

「一人で何考えてんだよ」

「いやな。ギルドの方から圧力をかけてカテドラルの動きを一時的にでも鈍らせることが出来るかもって思ってさ」

「やろうと思えばやれるかも知れないけど、ギルドにそこまでやる義理もないし、金を積んでも受けてはくれないわ」

 

 コウタロウが考えたのはギルドに頼んでカテドラルの動きを封じるという事だ。

 ギルドがその気になればそれも可能だが、問題はギルドを動かすことが無理だという事だ。

 

「俺はこれでもあのルーカスとは学生時代に同じクラスだったこともあってそれなりに仲も良かったんだよ。だから俺が頼めばそのくらいはやってくれるかもって思ってさ」

 

 ギルドを直接動かすことが出来なくても、個人的な繋がりが使えるかも知れなかった。

 

「けどよ。そいつ、ギルド追い出されてんじゃん。私でも知ってる」

「そうなんだよな……」

 

 コウタロウが無理だと判断した理由がそれだ。

 ギルドを作ったのはルーカスだが、設立当初はギルドの代表をしていたルーカスだったが、数年でその座をはく奪されて追い出されている。

 追い出したのはルーカスの妻の一人であるエマで、ルーカスの代表解任に関しては彼女の義理の父でもあるデリングも全面的にバックアップしていた事や元々エマの実家であるスレイド・ウェポンズの技術者や社員も多かったことからクーデターは何の問題も無く終わった。

 現在はエマ代表としてギルドを運営し、ルーカスは経営には直接かかわってはいない。

 ルーカスならともかく、エマとは面識はほとんどなく、カテドラルに圧力をかけて欲しいと頼むことは出来ない。

 仮に頼んだところでやってくれるとも思えなかった。

 

「やっぱ人の権力をあてにしても仕方がないって事か」

 

 結局のところは自分たちの力で何とかするしかなかった。

 

 

 

 ギルドの所有しているフロント宙域から離れたところにカテドラルの戦艦が待機している。

 下手に近づけばギルドから攻撃を受けるため、今は出て来るのを待つしかなかった。

 

「どういう事です? 本部に報告を入れないというのは」

 

 ブリッジではレイナがテイラーに問い詰める。

 レイナは一度、本部に連絡をして増援を求めるべきだと進言したが、テイラーはその必要はないとしている。

 

「一々こんな事で本部に報告を入れてどうする。そんなことは全て終わらせてからでいい」

「ですが、向こうにはガンダムがいます。本部だけでなくこちらの会社の方にも連絡を入れてアンチドートを用意すべきです」

 

 先の戦闘で向こうにガンダムがあるという事は分かった。

 レイナは相手がガンダムである以上はアンチドートを用意すべきだと考えている。

 アンチドートであればグラスレー社に連絡を入れれば持ち出すことも可能だ。

 

「ふん。ガンダムがなんだ。あんなものは所詮は過去の遺物だ。わざわざそんな物を用意する必要はない。それに本部にガンダムがいると報告してみろ。アベリーのドミニコスが派遣されるに決まっている。奴に手柄を横取りさせて溜まるか」

 

 ガンダム自体が表舞台から消えて数年が経っているが、その性能は侮って良い訳がない。

 実際に先の戦闘でレイナはガンダムと交戦してそれを実感している。

 1機でもそれだけの脅威となるのに、向こうには装備違いの同型機があと3機も確認できる。

 その全機がガンダムだとして本気で来られると現状の装備でも勝てるかどうかは怪しくなってくる。

 だからこそ、アンチドートを用意した上で対処すべきだった。

 しかし、テイラーはそれを報告することで対ガンダム戦においてはカテドラルの中でもトップクラスで魔女狩り部隊とも言われているドミニコス隊が派遣されることを嫌っている。

 ドミニコス隊の戦力ならばアンチドートを使わずとも十分に対処できるかもしれない。

 そうなるとガンダムを仕留めたという功績が得られない事が原因だろう。

 そして、自分の指揮かの部隊でガンダムを仕留める事でドミニコス隊にも劣らないという事を示したいとも考えているのだろう。

 

「どの道、オービット重工から人員と試作兵器が送られてくる。それで十分だ」

「オービット重工から? あそこにそんな」

 

 レイナが最後までいう前に通信が切れた。

 

「どういう事だ?」

 

 オービット重工に独自に兵器開発が出来るだけの技術も資金もあるとは思えない。

 仮にあったとしても状況を打開できるだけの性能がある保証はない。

 今回の任務に関しては不審な点が多い。

 レイナはブリッジから出るとウォーレンとフリードがレイナを待っていた。

 

「指令は何と?」

「上には報告はしないで待機だ。そうだ。連中もいつまでもあそこに留まっている事も出来ないからな」

 

 こちらの読みでもギルドのフロントに入港することは出来ても長期の滞在は出来ないと考えている。

 下手にこの場から離れるよりもここで出て来るのを待って仕掛けるつもりだ。

 

「マジですか? せめて会社に連絡を入れてアンチドートを用意させるくらいはさせて欲しいっすよ」

「そういうな。アンチドートだって完璧ではない。技術である以上はいずれはそれを上回る技術が出て来てもおかしくはない」

 

 レイナ自身もアンチドートを用意すべきと言う点は同じだが、テイラーが許可しない以上は勝手にグラスレー社の方に連絡を入れる訳にもいかなかった。

 いくら外部から来ているとは言っても今は彼の指揮下に入っているからだ。

 

「相手はガンダムだ。油断は出来ない。せめてパイロットの間だけでもそれを共有すべきだな」

 

 この部隊の中にガンダムとの戦闘経験もガンダムに関わった事のある兵はいない。

 彼らもガンダムの事は知っているが、実際にどの程度の力を持っているかを具体的に把握してもいない。

 増援も望めない以上は今の戦力で最善を尽くすしかない。

 その程度であれば一々テイラーに許可を得る必要もない。

 レイナはすぐに艦のパイロットを集めるように二人に指示を出した。  

 

 

 

 

 ギルドのフロントに入港してから3日が経過した。

 プリンスが用意した入港許可証ではフロントの滞在期間は3日間であるため、これ以上の滞在は出来ない。

 その間にモビルスーツの修理と整備、物資の補給を済ませてある。

 

「これより本艦はフロントを出て地球降下の為に地球へと進路を取る」

 

 タチアナは艦内にアナウンスをする。

 最終的な目的地は地球で、地球に降りる為に地球軌道付近に仲間が待機している。

 そこまでたどり着き保護したアーシアンを地球に降ろすことが今回の仕事だ。

 地球に降ろしてしまいさえすれば後はどうにでもなる。

 

「フロント宙域を出てからカテドラルによる攻撃がいつ始まるかは分からない。各員はいつでも攻撃を受けても良いように準備と心構えをしておくように」

 

 タチアナもカテドラルが諦めて大人しく撤退したとは思ってはいない。

 流石にここを攻撃することはなかったが、フロント宙域を出てしまえばいつ攻撃があってもおかしくはない。

 次に攻撃を受けた時は前回の様にここに逃げ込むことは出来ない。

 この3日間でパイロットたちもGUNDフォーマットの練習はさせてある。

 元々、データストーム耐性の強いからこそガンヴォルヴァのパイロットに指名されたこともあって、3日間で最低限はGUNDフォーマットを使えるようにはなった。

 向こうがアンチドートを使ってくる危険性はあるが、3日間で用意することは出来ないと考えるしかない。

 どの道、GUNDフォーマット無しで切り抜けるのも難しいからだ。

 

「では行こうか」

 

 フロントからアースリベレイターの母艦と輸送艦が出向し、進路を地球に向けて航行を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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