機動戦士ガンダム 祝福されし子と7人の魔女   作:ケンヤ

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41話

ギルドのフロントから離脱したアースリベリオンは地球を目指していた。

 カテドラルの追撃を警戒しながらの航行だったが、上手く隠れながらの航行で見つかる事なく進むことが出来ていた。

 

「やぁちょっと良いかい?」

 

 戦闘配備は解除されて今は通常シフトに移行されてコウタロウは艦の展望デッキで時間を潰していた。

 そこにタチアナがやってくる。

 

「良いですけど」

 

 タチアナはコウタロウの横に座る。

 

「後、数時間で仲間と合流できる。君には感謝してるよ。君がいてくれたおかげでここまで来ることが出来た」

 

 タチアナ達も十分な戦力を用意していたが、前回の戦闘ではコウタロウがいなければヒルダはやれていた。

 

「仲間と合流できれば君もお役御免となるわけだが、そのあとはどうするつもりだい? 無論、我々としては出来る限りのことはするつもりだが」

 

 仲間と合流することが出来れば地球に逃げる算段もある。

 地球にさえ逃げる事が出来ればカテドラルの追撃からも逃れる手段はいくらでもある。

 そうなればコウタロウがアースリベレイターと行動を共にする理由もなくなる。

 コウタロウもそこまでの事は考えてはいなかったらしく考え込む。

 

「正直なところ。何も考えてないんですよね。ただ、俺は今回の事で思い出したんですよ。アーシアンがどんな扱いをされてきたのか」

 

 コウタロウもアーシアンだ。

 運よく今の会社からアスティカシアへの推薦が貰えて学園に通う事が出来た。

 そこでも差別はあったが、ルーカスが編入してきてから学園は変わり、アーシアンに対する差別を実力で黙らせることが出来た。

 卒業後も差別はあったが、自身の実力から来る自信があった。

 しかし、そんな物は自分だけの事だったと今回の事で思い知った。

 

「俺に何かできるとは思わないけど、このままアーシアンが搾取され続ける事を放っておいても良いのかっていうのもあるんですよ」

 

 コウタロウも世界を変える等と大層な事を言う事は出来ない。

 そんなことが出来るのは一部の選ばれた存在だけだ。

 だが、アーシアンの現状を再度知った事でそれをそのまま見て見ぬふりをすることも出来なくなっていた。

 

「……ならば、私たちと……いや、済まない」

 

 タチアナは途中まで言いかけるが止めた。

 そこから先は言うべきではないと思ったからだ。

 言ってしまえばコウタロウは応じてくれるという確信はあった。

 ここまでの航海でコウタロウの事はある程度は分かっている。

 世間一般の正義よりも自分の信じる正義を優先出来る人間だ。

 その先の事はコウタロウのこれからの人生を変えてしまう。

 

「その感情は一時の物さ。事が終われば全部忘れてしまった方が良い」

 

 これ以上は巻き込むことを避けるためにはそういうしかなかった。

 コウタロウもどこか納得が出来ない様子だったが、通信機がなる。

 

「私だ」

 

 タチアナにとっては都合が良く、すぐに出る。

 通信はブリッジのゲオルからでその内容は都合が悪いものだった。

 

「分かった。すぐに行く」

「タチアナさん?」

「悪い知らせだ。すぐに準備してくれ」

 

 コウタロウもそれだけで敵が来たのだと確信して無言で頷く。

 タチアナもすぐに頭を切りかえてブリッジへと向かう。

 

「ゲオル。状況は?」

「カテドラルの戦艦からモビルスーツの出撃を確認しています」

「まったく……もう少しだというのに。少しは空気を読んで自重してくれても良いんだがね」

 

 愚痴を言いながらもタチアナは艦長席に座る。

 

「直に合流ポイントだ。そこまで奴らを連れて行く訳にはいかない。ここで撃退する。モビルスーツ隊の出撃はどうなってる?」

「すでに出撃命令は出しています」

「結構。さぁここが踏ん張りどころだ」

 

 母艦から搭載機が次々と出撃していく。

 同時にカテドラルの戦艦から出撃してきたモビルスーツも真っ直ぐこちらに向かってきている。

 

「今日の私らは一味違うんだよ!」

 

 先陣を切ったのはヒルダのガンヴォルヴァ03だ。

 

「パーメットスコア3!」

 

 ガンヴォルヴァ02のシェルユニットが赤く発光し、ヒルダにも赤い痣が出る。

 バスターソードを抜いてビームライフルを撃つディランザ・ソルに切りかかる。

 

「くそ! 本性を表してきたか! 魔女が!」

 

 バスターソードの一撃を肩のシールドで受け流そうとするが、流し切れずにディランザ・ソルはシールドを破壊されて体勢を崩したところに前に出てきたドロテアのガンヴォルヴァ04のビームキャノンで撃ちぬかれて撃墜された。

 

「よっしゃ! カテドラルが何だってんだ」

「油断しないの」

 

 ドロテアもスコアを3にまで上げるとハインドリーのビームをかわしてビームカービンで返り討ちにする。

 今までは後方からの砲撃支援をしていたがGUNDフォーマットを使う事で砲撃使用の04でも十分に前線で戦えることが出来るようになった。

 

「ヒルダ、ドロテア。足の速い奴を優先して母艦に向かわせてはいけないわ」

 

 リタのガンヴォルヴァ03はバックパックのミサイルを撃つと散開して対応するザウォート・ヘヴィの1機にビームカービンを撃ち込む。

 

「パーメットスコア3」

 

 リタもスコアを3に上げると機体を加速させる。

 

「何だコイツ! 早い!」

「遅いわ」

 

 ビームサーベルを抜こうとしたザウォート・ヘヴィをビームカービンで仕留めるとすぐにビームサーベルを抜き、別のザウォート・ヘヴィをすれ違いざまに胴体を切り裂く。

 

「隊長! アイツら」

「ああ。もはや隠す気はないらしいな」

 

 レイナのハインドラは3機のガンヴォルヴァの方に向かおうとするが、コウタロウのガンヴォルヴァ01がビームライフルで足止めをする。

 

「アイツらのところには行かせない!」

「フリード、ウォーレン。コイツが一番厄介だ。私たちで仕留めるぞ」

「了解」

 

 2機のハインドリー改が試作型ビームライフルを撃ちながら左右から挟み込む。

 それを回避しながら2機にビームライフルを撃つが、2機は上手く回避する。

 

「ちぃ! この2機も並じゃない!」

「良い腕をしているが、3機がかりで仕留めさせて貰うぞ! ガンダム!」

 

 ハインドラは距離を詰めるとブレイザーユニットを展開して攻撃する。

 その攻撃はかわされるが、ジャベリンユニットのビームガンでけん制する。

 

「くそ! ここまで来たんだ。あの人達を地球に帰すんだ。邪魔をするな!」

 

 ガンヴォルヴァ01のシェルユニットが赤く発光し、パーメットスコアが4にまで上がる。

 コウタロウはデータストームの負荷に耐えながらも突撃する。

 

「はぁぁ!」

「でやぁぁ!」

 

 ハインドラはジャベリンユニットを構えて迎え撃つ。

 ガンヴォルヴァ01はビームサーベルを抜いて切りかかり、2機は激しく切り合う。

 2機が離れたところをハインドリー改が援護射撃を入れる。

 ハインドリー改のビームをかわしながらビームバルカンを撃ちながらハインドラに向かう。

 ビームサーベルをジャベリンユニットで弾き、ブレイザーユニットを展開して攻撃するが、ガンヴォルヴァ01はシールドで弾きハインドラの頭部を蹴り飛ばす。

 

「くっ!」

 

 体勢を整えるハインドラにガンヴォルヴァ01はシールドのビームガンを撃ちこみ、それをブレイザーユニットで防ぐ。

 

「隊長!」

「ちぃ!」

 

 2機のハインドリー改がけん制のビームを撃ちこむ。

 ハインドラの攻撃に対応し、チャンスを作ろうとするが、2機のハインドリー改が隙を潰して決定打を与える事が出来ずにいた。

 

「はぁはぁ……流石にヤバイ」

 

 戦闘自体は3体1でも互角に戦えているが、時間が経てばデータストームによる負荷の影響が出て来て不利になっていく。

 向こうもそれを見越してハインドラ以外の2機は無理に攻めては来ないでフォローに回っているのだろう。

 長期戦に持ち込めば勝機があるというのがカテドラル側の考えなのか、リタ達の方も序盤は優勢だったが、ガンダムの性能に慣れてきたのか撃墜出来ずに膠着状態に持ち込まれつつあった。

 

「くそ……なんだ? 何か……来る!」

 

 コウタロウは直感的にそう感じて機体を回避行動を取らせる。

 すると戦場を高出力のビームが横切った。

 

「何だ! この攻撃は! 不味い……タチアナさん!」

 

 ビームは真っ直ぐ母艦の方へと向かっている。

 そのビームは母艦に直撃こそしなかったが、横を掠めて母艦の左舷から爆発が起きていた。

 

「タチアナさん!」

「やられたよ全く……沈みはしないがね」

 

 すぐに通信を入れて状態を確認した。

 幸いな事に撃沈はしなかったが、被害は軽くはなく、遠目から見るだけでも明らかに航行速度が落ちている。

 

「よくも!」

 

 ガンヴォルヴァ01はビームライフルを連射する。

 

「隊長。今の砲撃は」

「ああ。例の奴が到着したらしい」

 

 レイナたちも事前に増援が来る事は聞いていた。

 その増援の詳しい情報までは教えられることはなかったが、どうやら今のビームはその増援からの攻撃のようだ。

 

「何だよ。アレ……」

 

 ガンヴォルヴァ01のモニターに映る機体を見てコウタロウは絶句する。

 モニターに映る機体は明らかに人型ではない。

 2本の大型クローアームに高出力のビーム砲を先端に持つそれは人型のモビルスーツではなく、モビルワーカーを重武装して大型化したように見える。

 それこそがオービット重工製の試作大型モビルアーマー、オービットブラスタ。

 オービットブラスタにガンヴォルヴァ01はビームライフルを撃つ。

 その巨体が故に旋回性能はそこまで高くはなかったが、オービットブラスタの装甲にはシールドコーティングがされておりビームは弾かれる。

 

「ビームが……なんなんだよ! コイツは!」

 

 オービットブラスタは機体各部に配置されているビーム砲を全方位に向けて撃ち始める。

 ガンヴォルヴァ01はビームをかわしながら反撃するが、オービットブラスタの装甲を破る事は出来ない。

 そして、ビームはガンヴォルヴァ01のみならず近くにいたレイナたちにも襲い掛かっていた。

 

「おい! こっちは友軍だぞ!」

 

 レイナはビームをかわしながらすぐにオービットブラスタへと通信を繋ぐが、通信は繋がる事はなかった。

 

「司令。すぐにこちらへの攻撃を中止させて下さい」

 

 仕方がなく今度は母艦へと通信を繋いだ。

 ハインドラからでは繋がらなくとも増援だとすれば流石に母艦からなら通信は繋げるはずだ。

 

「何を言っている。テロリストを始末するいい機会ではないか。君たちのようなエリートならば友軍の攻撃に当たるような間抜けではないだろう」

 

 テイラーは心底馬鹿にしたようにそういう。

 モニターの端に映っているブリッジクルーもどこか暗い表情をしている。

 それだけでも向こうの思惑が理解出来てしまった。

 テイラーは元から個人的に企業から金を受け取っているという噂はあった。

 今回の件でオービット重工からも金を受け取っている可能性がある。

 その上でグラスレー社の試作機のテストをしている自分たちを戦場で死なせたうえで敵をオービット重工製の兵器が破る事で、その性能はグラスレー社の試作機よりも優れていると上に報告するつもりなのだ。

 

「……ふざけるな! 血迷ったかガンドルフ!」

「ふん! 女風情がカトンボのようなモビルスーツに乗って良い気になるなよ。これからの時代はオービットブラスタのようなモビルアーマーが戦場の主力となるのだ! 精々、犬死でもするんだな」

 

 テイラーはそれだけ言うと強制的に通信を切った。

 

「隊長!」

 

 通信をしている間にフリードのハインドリー改が被弾し体勢を崩していた。

 

「フリード!」

「隊長! 危ない!」

 

 フリードが被弾した事に気を取られて隙が出来ていた。

 その隙を付かれてビームがハインドラに直撃しそうなところをウォーレンのハインドリー改が体当たりをして突き飛ばした。

 

「ウォーレン!」

 

 ウォーレン機は攻撃を防ぐことが出来ずに直撃して爆散する。

 

「くっ!」

「隊長はにげ……」

 

 そして、すぐにフリード機もビームに撃ちぬかれた。

 

「……済まない。ウォーレン、フリード……仇は取る!」

 

 ハインドラはオービットブラスタへと突撃する。

 テイラーはここで自分たちを始末するつもりだったが、レイナも部下がやられて素直にやられるつもりはなかった。

 オービットブラスタのビームを掻い潜り接近してジャベリンユニットで突き刺そうとするが、機体下部の3つ目のクローアームが展開されて捕まる。

 

「しまった!」

 

 何とか抜け出そうとするが、パワーが違い過ぎて抜け出すことも出来ず、後はこのまま潰されるしかない。

 

「何がどうなってんだ?」

 

 ビームをかわしながらコウタロウは事態が飲み込めずにした。

 オービットブラスタが敵だという事は分かる。

 だが、攻撃は明らかに自分だけでなく他の3機へも行われてすでに2機が撃墜されて1機も攻撃するために向かっていき拘束されている。

 

「考えるのは後だ。今はとにかくアイツを何とかしないと」

 

 あの火力で母艦を狙われたら簡単に沈められてしまう事は確実だ。

 状況は分からないが、このまま放っておく訳にもいかない。

 ガンヴォルヴァ01はビームサーベルを抜くとオービットブラスタへとむかっていく。

 

「いくら火力が高くても下に回り込めれば」

 

 外から見る限りではオービットブラスタは下の方には火器はほとんど搭載されていないように見える。

 ビームを掻い潜りながら下まで回り込んでビームサーベルでハインドラを拘束していたクローアームを切り裂いた。

 

「よし! 全身がビームを弾ける訳じゃないんだな。それなら行ける!」

 

 オービットブラスタは火力の少ない下を取られないようにミサイルを撃つ。

 ガンヴォルヴァ01は頭部のビームバルカンでミサイルを迎撃する。

 その間にオービットブラスタは母艦の方に機体を向ける。

 

「アイツ! 狙いを母艦の方に!」

 

 母艦を狙いオービットブラスタの高出力ビーム砲がチャージされる。

 コウタロウはとっさに機体を高出力ビーム砲の射線に入れる。

 チャージされて放たれたビームをガンヴォルヴァ01はシールドで受け止める。

 

「持ってくれよ……」

 

 ビームを正面から受け続けてシールドは次第に破壊され始め、ビームの余波で機体もダメージを受けていく。

 

 

 「……ここまでなのかよ。こんなところで俺は死ぬのか?」

 

 いずれは耐え切れない事を悟りコウタロウは自身がここまでなのかと諦めかけた。

 だが突如、ビームの掃射が止まり、ガンヴォルヴァ01はシールドごと左腕が吹き飛ぶ。

 

「……助かったのか?」

 

 モニターにはオービットブラスタの高出力ビーム砲から煙が上がっている。

 どうやら向こうの機体にトラブルがあったらしい。

 そして、オービットブラスタは旋回すると敵の戦艦の方に撤退していく。

 同時にリタ達と交戦していたモビルスーツも後退を始めていた。

 

「アイツ……」

 

 カテドラルは撤退する中、先ほどまでオービットブラスタに捕まっていたハインドラが力なく漂っていた。

 見た限りではクローアームで拘束されて押し潰されそうになった損傷はあるが、胴体部分の損傷はないため、パイロットは死んではいないだろう。

 だが、先の戦闘を見る限りでは向こうも一枚岩ではないのかも知れない。

 

「たく……仕方がないよな」

 

 このまま見捨てる事も出来ずに動かないハインドラに近づく。

 攻撃する様子も抵抗する素振りも見せないため、コウタロウはハインドラを掴んで母艦へと帰投する。

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