エアリアルにガンダムの疑いがかけられた事で審議会が開かれることとなり、ルーカスはシャディクを連れて学園からグループ本社のあるフロントへと到着する。
学園からはルーカスとシャディクのみでセシルには引き続き自分のいない間の学園を任せてきている。
すでにフロントにはグループ上位の普段は本社フロントにはいない企業の代表も集められている。
「やぁ。エマ。久しぶり」
審議会の会場へと向かう道中でルーカスはエマを見つけて声をかける。
エマも今回の審議会に出る為に本社フロントに来たのだろう。
エマとの関係はギルドの代表の座を奪われた後も普通に続いている。
ルーカスを見つけたエマはルーカスに詰め寄る。
「アスティカシアでガンダムが使われたと聞いたけど、何やってるのよ」
胸倉を掴みルーカスの耳元でそういう。
ルーカスに同行していたシャディクには会話の内容までは分からなかったが、気を利かせて先に行った。
「今回の事は俺が悪い訳じゃない。流石の俺もアレを学園で使うほどまだ好き勝手には出来ないって」
「……まぁ。そうよね。今はセシルもいるし」
エマも審議会はアスティカシアでガンダムが使われたという事しか聞いてはいない。
今はルーカスが理事長をしているため、ルーカスがまた何かやらかしたのではないかと思っていたが、アスティカシアにはセシルもいる。
セシルがいるのであればルーカスも表立って好き勝手な事は出来ない。
特に審議会が開かれるほどの事はだ。
「ヴィムのおっさんのところのグエルが負けた事をなかった事をするために難癖をつけて来たんだよ」
今回の審議会はジェターク社の難癖で開かれるようなものだ。
「まぁ問題のエアリアルはガンダムなんだけどな」
「大丈夫なの?」
審議会そのものは難癖であってもエアリアルがガンダムだという事は事実だ。
シン・セー開発公社が上手く誤魔化すことが出来ればいいが、エアリアルがガンダムだと確定されてしまうとルーカス達にとっても良い状況とは言えない。
禁止されているガンダムが表舞台に出て来て問題となればグループ全体で傘下企業でGUNDの研究開発が行われていないかの大規模な調査が行われる恐れもある。
それは面白くはない。
「さてな。ただエアリアルとパイロットの方は少し気になる。可能ならこっちで確保しときたい。場合によっては俺たちの計画に使えるかも知れないし、逆に妨げになるかもしれない」
「言っておくけど、私は何も出来ないわよ」
「分かってる。シン・セーがどうなろうとどうでもいい。後で多少強引な手を使ってでもエアリアルとパイロットを確保するさ」
審議会の結果自体は自分に面倒な疑いがかからなければ問題はない。
必要なのはエアリアルとそのパイロットのスレッタだ。
後はシン・セー開発公社のCEOであるプロスペラくらいだ。
それらを確保する手段はいくらでもある。
むしろ社会的な地位を失ってくれた方が手を差し伸べやすくなり都合がいい。
「分かったわ」
「んじゃ行こうか」
2人の間で話しは纏まり審議会の会場へと向かう。
審議室にグループ上位の代表たちが集まり審議が始まろうとしていた。
代表たちの視線の先にはプロスペラがいる。
これから審議にかけられる立場にあるが、プロスペラは追い詰められた感じはなく余裕すら見える。
「これより審議会を始める」
進行役の幹部がそういい審議が始まる。
「シン・セー開発公社代表、レディ・プロスペラに問う。お前は魔女か?」
「いいえ」
「ではヴァナディース機関との繋がりはあるか?」
「いいえ」
デリングからの問いに対してプロスペラは何の躊躇もなく即答する。
「ガンダムをどうやって作った?」
「エアリアルはガンダムではありません。わが社で開発した新型ドローン技術です」
プロスペラの言葉に会場がざわめく。
プロスペラはあくまでもエアリアルはガンダムではなく新型ドローン技術として押し通すつもりだ。
「その件に関してはご子息……ルーカス理事長にも確認をと許可を得ております」
その言葉に今度は視線がルーカスに集まる。
(ちっ面倒な……)
周囲はルーカスに説明を求めているようだ。
「あのエアリアルが学園で決闘した時のデータは用意してきた。シャディク」
「はい。理事長」
シャディクが端末を操作すると審議室のモニターにデータが表示される。
「決闘時のパーメット流入値は基準値を超えていてこれは過去の学園でガンダムが使用されたときのデータとも近い。だけど、エアリアルからはガンダム特有のデータストームは出ていない。パイロットの身体検査でもデータストーム汚染の形跡は確認できない。つまり、エアリアルはデータストームは出していないからガンダムではないと推測できる」
ルーカスはデータを使い説明をする。
グループ下位のシン・セー開発公社の代表であるプロスペラの説明であればいろいろと難癖はつけられたが、総裁の息子であるルーカスの説明であれば簡単には難癖をつける事も出来ない。
データで説明するだけなら自分でもできたが、あえてルーカスに説明させることで難癖を付け難くすることが狙いなのだろう。
「それだけではガンダムではないと言い切れないわ」
ペイル社の方から指摘が入る。
ルーカスの説明ではあくまでもデータストームが出ないからガンダムではないと主張しているが、だからと言ってGUNDフォーマットが搭載されていないという証拠と言う訳でもない。
「ですが断言も出来ません。我々も末席ながらグループの一員。信用して頂きたい」
どちらの意見も決定打に欠けている。
後はプロスペラやシン・セー開発公社を信用できるかどうかの問題になってくる。
「その風体で信じろと?」
どうにかしてエアリアルとガンダムだとしたいヴィムが口を開く。
信用するにしても普段から顔の半分の仮面で隠し素顔を見せない相手をどう信用するのかというのは一理ある。
それに対してプロスペラは上着を脱ぐを右腕の義手を外して見せる。
どよめく会場を気にすることも無く義手をヴィムの方に投げる。
何とかヴィムは投げられた義手をキャッチして文句を言おうとするが、それよりも先にプロスペラが話始めた。
「水星の環境は過酷です。私自身も右腕と仮面の下をその磁場に持っていかれました。ですが、エアリアルの新型ドローン技術であればその身を危険に晒すことなくパーメットの採掘事業が可能となります。そうなれば私のような犠牲者を出すこともありません。そのためにもグループの支援が必要なのです」
会場がシンと静まり返る。
義手を外して見せるというパフォーマンスのインパクトと水星でのパーメット採掘の危険性、新型ドローン技術の必要性とそこから来るグループの利益、それらにより会場の空気は新型ドローン技術として認めるべきだとなりつつあった。
「あれはガンダムだ。私がそう判断した。異論がある者はいるか?」
しかし、デリングの一言で状況が一変する。
これまでの流れを全て無視してデリングはエアリアルをガンダムだと決めた。
それに対して異論があったところで誰もそれを口にはしない。
デリングを納得させられるだけの材料がなければ異論を唱えたところで意味はない。
「決まりだな。あのモビルスーツは廃棄、パイロットは抹消する」
誰にも意見はさせるつもりはなく、審議会はそれで終了するかと思われた。
だが、突如学園にいるはずのミオリネが審議室に乱入する。
デリングの娘としれこの場の誰もがミオリネの事は知っているため、突然の乱入にどよめく。
「何でミオリネが……」
ミオリネは今も学園にいるはずだ。
独力でここまで来る手段はない。
セシルが協力したとなれば何らかのメッセージが来ているのではないかと自身の端末を確認すると、セシルからではないが運び屋からミオリネをグループの本社フロントへと連れて行くとのメッセージが来ており、ミオリネがここに来た手段の謎は解けた。
「何の様だ」
「アンタに一言言ってやりたくて来たのよ。自分でルールを作っておいて自分の都合で勝手に変えるな! このダブスタ糞親父!」
ミオリネの言葉に会場はシンと静まり返る。
グループの中でデリングに大したここまで言えるのはミオリネくらいだろう。
ルーカスですらもそこまでは言わない。
「お前は何故ここに立っている?」
「は?」
ダブスタ糞親父とまで言われたデリングだったが、一切動じる様子もない。
「ここに立てるのはグループ上位の力のある者たちだけだ。お前は何の力も持たない学生でしかない」
「……いつもそう。上から目線で説明も相談も無く勝手に決めて!」
「その必要はない。お前はただ従えばいい」
今までの鬱憤を晴らすかのようなミオリネの言葉もデリングには届かない。
「何それ……アンタ王様にでもなったつもり?」
「そうだ。私にはそれだけの力がある。力のない者は力のある者に従う。それが世界のルールだ」
もはや話し合いの余地すらなかった。
絶対的な権力を前にはただ従うしかない。
そうやって今の世界は動いている。
「……進めば2つ」
今までならそれ以上は何も言えなかった。
だが、今は違った。
「なら決闘よ! 私が勝てばアンタはスレッタを私の婚約者として認める。負ければ好きにすればいい」
「受ける道理はないな」
「逃げるの? こっちはアンタの決めたルールで戦ってやるって言ってるの! アンタは王様なんでしょ? それなのに逃げる訳? 力のある者に従うのはルールなんでしょ? なら私を力でねじ伏せてみなさいよ!」
完全に挑発だった。
デリングにこの決闘を受ける意味はない。
それでもミオリネに出来る事はそれしかなかった。
権力や経済力ではどうあがいても勝ち目はない。
だが単純な武力であればまだやりようはある。
真向からの戦いでは勝てない。
しかし、学園での決闘であるなら算段はある。
後はデリングが受けるかどうかだ。
「良いんじゃね。受けてやればいいだろ」
そこにルーカスが助け船を出す。
ルーカスにとってはミオリネの意見が最優先事項だからだ。
「私もご子息の意見に賛成ですな。偶然とは言えあのモビルスーツはわが社のディランザに勝っています。今しばらくは運用してみてはいいのでは?」
それにヴィムが便乗する。
その際にディランザが負けた事は偶然だと主張することも忘れない。
「近年は他社のモビルスーツの需要も高まってきています。あのモビルスーツはグループ全体の業績回復の起爆剤となりえるかと」
デリングもグループの業績が落ちてきている事は知っている。
業績下位のシン・セー開発公社が高性能モビルスーツの開発に成功したという事実はグループ全体に発破をかける事に繋がるかも知れないというのは最もな事だ。
「俺が学園でエアリアルとパイロットを管理すればいい。あれがガンダムだったとして、俺以上にガンダムと魔女の扱いに長けた奴もいないだろ」
ルーカスがGUNDの規制が緩かった時代に自らガンダムを駆り何機のガンダムを倒してきたことは事実で、何人の魔女を自身の妻にしている事も周知の事実だ。
エアリエルがガンダムだとしてルーカス以上にガンダムの扱いに長けた人材はグループ内にはいない。
「仮に学園で運用したとしてその実戦データはグループ内で共有していただけるのかしら?」
「当然だ。グループ全体の発展はグループの一員として当然のことだからな」
と心にもない事を言う。
そのデータは当然、ルーカスにとっては都合の良いデータのみだ。
「何を勝手にカテドラルの条約を破るつもりか!」
そこに今まで事の流れを静観していたサリウスが糾弾する。
サリウスにとってはエアリアルがガンダムだというのであればどんなにグループの利益に繋がろうと受け入れる事は出来ない。
「爺さん。俺だってGUNDが危険なのか分かってるさ。本当にエアリアルが危険なら俺が責任をもって始末する。けど、そんなことよりもミオリネが決闘を望んでるんだ。それは何よりも優先すべきことだ」
もはや議論にすらならない。
グループの利益やGUNDの危険性よりもルーカスはミオリネの意見を優先する。
どんなに理論をかざしたところで何も変わらないだろう。
「で、どうすんの? 受けるの? 受けないの?」
すでにエアリアルの存在を認めるメリットは提示されている。
その上でデリングがミオリネの今後をかけた決闘を受けるかどうかは分からない。
意見は出し合って後はデリングの判断を待つだけだ。
「……いいだろう。好きにしろ」
判決は出た。
どんなに議論を交わしたところでデリングの言葉一つで結果は決まるが、今回はミオリネの決闘を認めるという事となったようだ。
これにて審議会は終了しエアリアルの件は決闘で決める事となった。