機動戦士ガンダム 祝福されし子と7人の魔女   作:ケンヤ

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49話

ミオリネの将来を賭けた決闘は査問会から数日後にジェターク社側の準備が整った事で開始されることとなった。

 決闘開始の当日に決闘委員会に呼び出されたスレッタはそのことを告げられてそのまま決闘する運びとなった。

 

「珍しいですよね。理事長が圧力を受け入れるなんて」

 

 双方の準備が進められる中、サロンでシャディクはソファーで寛いでいるルーカスにそういう。

 今回の決闘はジェターク社の方から準備が整ったため、速やかに始めるようにと通達があった。

 理由としてこの決闘を視察するジェターク社CEOのヴィムのスケジュールだ。

 そのせいでスレッタは決闘の日程を事前に知られることもなく当日いきなり決闘をすることとなった。

 だが、そうなったのはジェターク社が少しでも決闘を有利に運ぶためなのは明らかだ。

 決闘を視察するだけならわざわざ学園フロントまで来る必要も無い。

 

「まぁね。たまには年長者のいう事も聞いておかないと思ってさ」

「また心にもない事を」

 

 ルーカスのいう事をシャディクは一切信じてはいない。

 そうこうしている間に準備が整い双方のコンテナが戦術試験区域に移動させられる。

 コンテナが開閉する。

 

「グエルのモビルスーツ。ジェターク社の新型ですよね」

「フランのところで試験運用してたダリルバルデ。ジェターク社でオーバーホールしてたのを持って来たんだよ。代わりに開発中の新型機をフランに送ったみたいだけど、そいつがまともに使えない未完成品だとかで愚痴られたよ」

 

 そう言ってルーカスは肩をすくめる。

 その様子から散々フランに愚痴られて滅入っているようだ。

 

「KP001。グエル・ジェターク。ダリルバルデ。出るぞ!」

「LP041。スレッタ・マーキュリー。エアリアル。出ます」

 

 2機のモビルスーツが戦術試験区域へと降り立つ。

 

「スレッタ・マーキュリー。口上を」

「こう……じょう? あっそう、でした。えと……勝敗は……モビルスーツの性能のみで決まらず」

「パイロットの技量のみで決まらず」

「たっただ結果のみが真実」

「ただ結果のみが真実」

 

 初めての口上で内容を覚えきっていないスレッタとそれに苛立つグエルとで決闘前の口上は合う事はなかった。

 

「フィックス・リリース」

 

 今回の決闘の立会人であるエランは淡々を決闘の開始を告げる。

 

「決闘に勝ってミオリネさんと学園に残ります」

「父さんに認めて認めて貰うためにも俺は勝つ!」

 

 決闘が開始されるとエアリアルはエスカッシャンをビットステイヴに分離させる。

 そして、先制攻撃のビームライフルを撃つ。

 

「コイツは囮だ。本命のドロンもどきは3字方向から」

 

 グエルは即座に先制攻撃はビットステイヴによる攻撃のための囮だと気づいて加速する。

 

「接近戦ならこっちが有利だ!」

 

 ビットステイヴの攻撃をかわして距離を詰めてビームジャベリンを振るう。

 だが、その攻撃は近くに残していたビットステイヴにより防がれてその間にエアリアルは背後に回り込んでビームライフルを撃つ。

 

「これで!」

「しまった!」

 

 グエルは反応が遅れてスレッタもこの一撃で勝負がついたと思ったが、ダリルバルデの肩のシールドが動いでビームを防いだ。

 

「防がれた! あれが理事長さんからデータにあった」

「ちっ! AIに助けられたか……けどなんだこの感じ。前よりやりやすい」

 

 ダリルバルデは一度距離を取る。

 グエルは完全に反応が遅れていたが、ダリルバルデにはジェターク社が開発した意思拡張AIが搭載されており、AIの判断で攻撃を防いだ。

 そして、グエルは決闘前の慣熟訓練で乗った時よりも意思拡張AIの判断が自分好みに判断してやりやすくなっている事を感じていた。

 これはルーカスが少しでもグエルとスレッタとの実力差を埋める為にセシルに指示して作らせたデータが意思拡張AIに入れられているからだ。

 グエルの過去の決闘時のデータからグエルの操縦時の癖をAIに学習させて、AIの判断をグエルに最適化させている。

 そのことは当然、ジェターク社側も知らないことだ。

 同時にジェターク社側はダリルバルデの操縦を意思拡張AIにさせるつもりだったが、ついでにそれも解除してある。

 学園に搬入されてからジェターク寮で厳重に管理されていたが、所詮は学生レベルの警備でセシルにとっては痕跡を残すことも無く警備を掻い潜りダリルバルデに細工をすることは容易な事だ。

 

「今度は勝たせて貰う!」

「……動きが……遅い」

 

 グエルは防御を意思拡張AIに任せて自身は攻撃に専念することにした。

 エアリアルのビームを掻い潜ってビームジャベリンを振るう。

 ビームバルカンを撃ちながら後方に飛び退くエアリアルにダリルバルデの背部のイーシュヴァラが射出されてエアリアルを襲う。

 左手でビームサーベルを抜きイーシュヴァラを弾き飛ばすが着地したところを、ダリリバルデが接近してくる。

 ビームライフルを撃つも、シールドで防がれてビームジャベリンをビームサーベルで受け止める。

 

「あれだけ接近されるとガンビットの攻撃はやり辛い。グエルも考えたな。それに水星ちゃんの動き。動きを先読みし過ぎている感じがする。理事長。何かやりましたね」

 

 決闘を見ていたシャディクは二人の戦いを分析していた。

 グエルは前回の決闘でガンビットによるオールレンジ攻撃で何もできずに敗北した経験から近接戦闘でオールレンジ攻撃を封じていた。

 それに対してスレッタはグエルの動きを必要以上に先読みし過ぎて逆にグエルに対応されて後手に回っている。

 

「スレッタには事前にダリルバルデの運用試験のデータを渡してる。それで事前にダリルバルデの動きを頭に入れて来てるんだよ」

「成程。そういう事でしたか。貴方はどっちの味方なんですかね」

 

 シャディクもそれだけでスレッタの動きの理由を理解した。

 スレッタは事前情報でダリルバルデの動きは頭に入れている。

 本来ならばそれは決闘を有利にするはずだった。

 しかし、スレッタに渡されたデータは運用試験時の物で、それを動かしているのはドミニコス隊の現エースであるフランだ。

 運用試験時とは違い決闘用のOSと調整に加えてグエルの操縦技術は高いがあくまでも学生レベルの中の話で、フランとは比べるまでも無い。

 それ故に実際に戦っているダリルバルデの動きはスレッタの頭の中のダリルバルデの動きよりも遅くなり、先を読み過ぎてグエルに対応されてしまったのだ。

 

「ミオリネに決まってるだろ」

 

 ルーカスはスレッタとエアリアルの力を計るためにわざと情報を流し、それが実際に戦う相手とは違い参考程度に留めるべきだという事も言わなかった。

 

「……怖い人だ」

 

 ルーカスはスレッタに味方するように見せかけてあえて不利になるような情報を流した。

 その罠に気づくかどうか、気づかなかったとしてどう対応するのか等スレッタの実力を決闘の中で見極めようとしている。

 その結果としてスレッタが負けて退学となったとしてもルーカスにとってはどうでもいい事なのだろう。

 重要なのはスレッタがミオリネの隣にいるにふさわしい実力があるかどうかだ。

 

「それにもう対応してきている。大した修正力だよ。自分の機体を完全に把握して扱えなきゃああは出来ないな。ありゃ相当乗りなれてる。一体、いくつの時から乗せられてるんだがな。こりゃグエルにはまだ荷が重かったな」

 

 ルーカスの策略で後手に回っていたスレッタだったが、決闘の中で自分のイメージと実際の相手とのずれを修正して次第にダリルバルデの動きに対応し始めている。

 

「くっ! こっちはAIまで使ってるんだぞ」

「もう、慣れました」

 

 ガンビット対策の接近戦も次第にやり辛くなっていく。

 AIによる防御でまともな被弾はないが、このままでは押し切られるのも時間の問題だった。

 

「俺じゃ勝てないっていうのかよ」

 

 不本意ながら使わされている意思拡張AIは完璧に作動し、これがなければ何度もやられていて、防御を任せたお陰で自分は攻撃に専念出来ている。

 それでも攻め切れない。

 防御は完璧なのに攻撃は届かない。

 まるで自分がAIの足を引っ張っているかの様にすら思えて来る。

 それがグエルは苛立ちを募らせていく。

 エアリアルがビームライフルを撃つが突如、戦術試験区域のスプリンクラーが作動しビームがかき消された。

 

「え?」

「何だ?」

 

 スプリンクラーにより大量の水が雨の様に散布されたことで状況は一変する。

 エアリアルはビーム兵器が主体でこの状況ではほとんどの装備が無力化される。

 一方のダリルバルデにはビームが使えなくても十分に戦うだけの装備を持っている。

 

「ちょっと! どういう事!」

 

 モニターにミオリネが映され怒鳴る。

 

「どうとは?」

「今すぐ決闘を中断させて。異常も無いのに管理システムが作動するわけがない。アンタ達決闘委員会の不備じゃないの?」

 

 状況が変わった事を察したミオリネが状況を変える為に抗議をして来る。

 作動したスプリンクラーは本来は戦術試験区域での火災等に対して作動し被害を抑える為に使われるものだ。

 本来ならば決闘中に作動することはない。

 あるとすれば普段、戦術試験区域の管理をしている決闘委員会の怠慢による誤作動だ。

 

「決闘は平等じゃないよ。これが誤作動でどちらかの有利になってもそれは運が悪かったと諦めるしかない。それに生徒のバックによっても用意できるモビルスーツもサポートメンバーも変わってくる。仮に偶然じゃなかったとしてもそれも含めて彼の実力だよ」

 

 立会人のエランは相変わらず淡々とミオリネの抗議を封殺する。

 スプリンクラーの作動が決闘委員会の怠慢だったとしてもこのタイミングで誤作動し、状況が不利になるのは運が悪かったと諦めるしかない。

 もっと早く決着をつける事が出来ていたら不利になる事も無かったのだから。

 同時にエランはもう一つの可能性も抗議を受ける前に潰しておいた。

 このスプリンクラーの作動が誤作動ではなく人為的に作動した可能性だ。

 スプリンクラーが作動すればエアリアルが不利になる事を見越して何者かが作動させた可能性もあった。

 その場合、実行はジェターク側である可能性が高い。

 しかし、決闘で戦うパイロット以外のメンバーを集めるのも実力の内とされ、意図的に決闘に介入する行為も明確には禁止されていない。

 どちらにしても現状では決闘を止めるだけの理由はないというのが立会人であるエランの判断だ。

 

「なら私もスレッタの力って事で良いのよね?」

 

 ミオリネも本気で抗議が通るとは思っていなかった。

 後者に関しては自分たちも事前にルーカスからジェターク社の機密情報であるダリルバルデの情報を流して貰っている。

 その辺を突っ込み過ぎると自分たちにまで流れ弾が飛んでこないとも限らない。

 ミオリネが確認したかったのは外部からの介入に対しては決闘委員会もある程度は黙認する意思があるという事だ。

 少なくともエランは一々事を荒立てるつもりはないという事だ。

 確認したい事を確認したミオリネは通信を切ると今度はエアリアルに通信を繋ぐ。

 

「スレッタ! 聞こえる?」

「ミオリネさん!」

「私が何とかするから持ち堪えて!」

 

 ミオリネは一方的に要件だけ告げると通信を切って格納庫のモビルクラフトを起動させる。

 

「あそこの制御は確か……」

 

 ミオリネは戦術試験区域の制御室の位置と現在地からの最短ルートを考える。

 

「……行ける。アイツの思惑通りなのかも知れないのはムカつくけど」

 

 制御室の場所がすぐに出てきたのも、事前にルーカスに戦術試験区域の情報を全て覚えるように言われていたからと言うのは癪だった。

 だが、それ以上にこの決闘で負ける事の方が嫌だった。

 

「あの糞親父の思い通りになる方がもっとムカつくのよ!」

 

 ミオリネはモビルクラフトを動かして制御室へと向かった。

 

「持ち堪えろって言われても……」

 

 ミオリネの一方的な指示に狼狽えながらもスレッタはダリルバルデの攻撃を防ぐ。

 スプリンクラーのせいでビームバルカンは使えず、ビームライフルも至近距離でしか使えない。

 残る装備のビームサーベルもルール上使用可能な最大出力で何とか使えるレベルだが、それでも普段よりも威力は落ちている。

 ダリルバルデのビームジャベリンをビームサーベルで弾き頭部を狙おうとするが、ビームサーベルはエアリアルの手からすっぽ抜けてしまう。

 

 「あっ!」

 「貰った!」

 

 その隙を逃さずにダリルバルデはビームジャベリンを突き出すが、ビットステイヴを戻しシールドにして防ぐ。

 その間に後退し、ビットステイヴを全身に装着したビットオン状態にする。

 

「とにかく集中しないと……」

 

 ビームライフルをバックパックに付けると残るビームサーベルを抜いて構える。

 スレッタが時間を稼いでいる間にミオリネがモビルクラフトを使って制御室へと向かっていた。

 そこまでの最短ルートを最大速度で移動しているが、その速度のモビルクラフトを完全に扱いきる事も出来ずに途中で何度もぶつけている。

 幸いにもモビルクラフトは宇宙での作業も想定しているため、多少ぶつけた程度では壊れて動かなくなることも無かった。

 

「あそこね」

 

 何とか管制室が見えるところまで到達することが出来た。

 後は管制室を制圧して戦術試験区域のスプリンクラーを止めるだけだ。

 だが、最大の問題として管制室を制圧できるかと言うのがあった。

 管制室の状況は分からないが、人がいた場合はたどり着いたところで向こうがこちらの指示に素直に従う訳がない。

 流石に武装をしている事はないが、強制的に従わせるほどの腕っぷしも無い。

 となればとれる手段は一つしかなかった。

 ミオリネは管制室にモビルクラフトを一直線に向かわせる。

 最終手段として強硬策で制圧するしか手は残されていなかった。

 頭を抱えて守りうずくまり少しでも衝撃から身を守れるようにした状態で管制室にモビルクラフトごと突っ込んだ。

 

「っ……」

 

 モビルクラフトは管制室に突撃するも、完全に管制室の外壁を破壊すには至らなかった。

 モニターも辛うじて生きており、皹が入ってはいるが、管制室の中の様子が見る事が出来た。

 

「やっぱりアンタ達ね!」

 

 管制室の隅でジェターク寮のパイロット科2年のフェルシー・ロロとメカニック科2年のペトラ・イッタが震えながら抱き合っていた。

 流石にモビルクラフトで突っ込んでくるとは思ってなかったようだ。

 

「モビルクラフトとか卑怯だろ!」

「どっちが!」

 

 フェルシーが震える声で抗議するが、ミオリネはモビルクラフトのアームを振り上げる。

 

「何でもありません!」

「痛い目を見たくなかったらさっさと止めなさい! アンタ達がケガする程度なら不運な事故として処理できるわ」

 

 相手が完全にビビっていると分かると、強気に出る。

 流石にそこまでの事をすれば不運な事故で済む訳も無かったが、理事長のルーカスがミオリネを溺愛している事は学園の誰もが知っている事だ。

 ミオリネに何らかの責任が問われる事態になれば平気でやる事もだ。

 そして、普段のグエルに対するミオリネの言動を見ている2人からすれば命までは取らないにしても、ケガくらいなら負わされるかの知れないという身の危険も感じた。

 2人は顔を合わせると頷きすぐに停止の作業に入る。

 モビルクラフトの突撃でも制御室は操作することが出来たらしく、スプリンクラーの作動が停止させることが出来たようだ。

 その後、フェルシーとペトラは一目散に管制室から逃げていく。

 

「こっちは何とかしたから後はアンタが勝つだけよ。スレッタ」

 

 ミオリネが制御室を制圧していた頃、スレッタはダリルバルデからの猛攻を凌ぎ続けていた。

 ダリルバルデの攻撃に対しては最低限の動きでいなす事で動きを減らして先ほどの様にビームサーベルをすっぽ抜けないようにしている。

 

「持ち堪える。持ち堪える。持ち堪える」

 

 余計な事を考えずに今はただミオリネに言われた通りに持ち堪える事しか考えていない。

 

「くそ! 何で!」

 

 状況は有利だったが、攻撃が全て防がれている事でグエルの方が焦り始めている。

 スプリンクラーの作動でビームが封じられて有利になっているとは言え、いつまでこの状況が続くかも分からない。

 だが、ミオリネの方でスプリンクラーの停止させたため、戦術試験区域の散水も止まった。

 

「雨が止んだ? ミオリネさんがやってくれたんだ。エアリアル。今後は私たちの番だよ」

 

 散水が止まった事で状況は再び一変する。

 エアリアルの全身のビットステイヴが展開し、ダリルバルデの方に向かっていく。

 

「ちぃ!」

 

 ダリルバルデはビットステイヴの攻撃をかわし近接戦闘を仕掛けようとするが、ビットステイヴのビームに進路を防がれている。

 

「誘われている! ぐっ!」

 

 ビットステイヴの動きはダリルバルデの動きを制限し、被弾を避ける為には向こうの思惑通りに逃げなければならない。

 それが分かっていてもどうしようも無かった。

 エアリアルのビームライフルの一撃がダリルバルデの肩のシールドを撃ちぬいて破壊する。

 

「グエル! 何をやっている!」

「父さん!」

「せっかくお膳立てをしてやったのにグズグズしているから!」

「……まさか!」

 

 グエルはヴィムの言い方から気づいてしまった。

 先ほどまでの散水は偶然によるもので運が自分に味方しているからだと思っていた。

 しかし、それはヴィムがグエルを有利にするために仕込んだことだった。

 事前に状況を有利にするための仕込みを否定するつもりはない。

 今回も勝つためにヴィムに頼んで試験運用中のダリルバルデを使わせて貰った。

 前回の戦いを何度も見直して対策も立ててきた。 

 グエルも外からの妨害工作が黙認されている事は知っていたが、1度もその手の妨害工作はした事はなかった。

 自分の実力に絶対的な自信を持っていたからだ。

 1度はスレッタに負けたがモビルスーツの性能差や油断がなければ負ける事はなかったとこの決闘で証明するはずだった。

 ヴィムがわざわざダリルバルデを用意して、決闘を視察に来るのもそれを見届ける為だったと自分に期待しているのだと思っていた。

 だが、実際のところは違った。

 グエルは知らないが、はじめからこの決闘はグエルはダリルバルデに乗っているだけで意思拡張AIにやらせるつもりだった。

 その上で少しでも勝率を上げる為にジェターク寮の人間にスプリンクラーを作動させていたのだ。

 ヴィムはたった1度の敗北で見切りをつけてグエルが自身の実力で勝つことを諦めて、確実に勝てる手段を取った。

 

「俺を信じてたんじゃなかったのか……」

「だからお前は子供だというのだ! 重要なのは結果だ」

「兄さん! 集中して! まだ!」

 

 父と共に決闘を見ていたラウダの言葉でハッとする。

 グエルの方の事情は関係なしに決闘は続いている。

 エアリアルからのビームをAIの判断で残っているシールドで防ぐ。

 

 「……AIに守られなきゃ何度もやられていた。俺は弱かったんだな」

 

 この決闘でスレッタとエアリアルと戦えていたのも意思拡張AIに防御を任せていたからだ。

 それがなければ攻撃に専念できずにとっくに負けていたかもしれない。

 ダリルバルデの性能は折り紙付きだ。

 それでも勝てないのはパイロットの自分が弱いからだと受け入れた。

 

「それでも……俺は勝って父さんに認めてもらう!」

 

 ダリルバルデはビームジャベリンをエアリアル目掛けて投擲する。

 それをビームサーベルで弾くとダリルバルデは突撃する。

 エアリアルのビットステイヴがダリルバルデを攻撃して足止めをしようとする。

 グエルは意思拡張AIを停止させるとシールドで頭部を守りながら多少の被弾は無視して突っ込む。

 

「動きが変わった」

 

 さっきまでとは動きが違う事はスレッタも気づいていた。

 同時にパイロットの気迫まで伝わってくるようだ。

 

「これはそのための決闘だ!」

 

 ダリルバルデはシールドで体当たりをする。

 ギリギリのところでビットステイヴをシールドにして受け止めるが機体のパワーではダリルバルデが勝っていたようでエアリアルの方が押し込まれていく。

 事前の情報で機体のパワーでは向こうが勝っているという事は知っているスレッタは真向からのパワー勝負は避けて後ろに倒れこむ勢いを利用してダリルバルデの胴体部を足で持ち上げるとそのまま蹴り上げる。

 空中で体勢を整えようとするダリルバルデにビームライフルを向けるがダリルバルデも足のシャクルクロウを射出してビームライフルの砲身を掴むと電撃を流す。

 電撃を流し込まれてビームライフルは爆発をおこし、エアリアルはシールドで爆風から身を守る。

 

「この人……強い」

 

 前回は勝利していたころで少なからず自分の方が強いと自負していた。

 だが、ここに来て戦い方を変えて来て翻弄してくるグエルの事を素直に強いと感じた。

 爆風から身を守っている間にダリルバルデのイーシュヴァラがバックパックと両腕の4つが飛んで来ていた。

 すぐにシールドをビットステイヴに分離させて向け討つ。

 4つのイーシュヴァラを撃墜するが、その間にダリルバルデはビームサーベルを出して突撃してきていた。

 

「今のは囮!」

 

 ダリルバルデに接近を許してしまいビームサーベルの一撃をかわすと逆にビームサーベルでダリルバルデの腕を切り落とすが、もう片方のビームサーベルがエアリアルの頭部を狙う。

 頭部のブレードアンテナを破壊されるギリギリのところでビームサーベルを捨てて両手でダリルバルデの腕を掴んで何とか受け止める。

 

「これで俺の勝ちだ!」

 

 今度は勢いを利用されないようにエアリアルの足を踏みつける。

 両手でつかんでいるとは言ってもパワーではダリルバルデに分があり、ビームサーベルはじりじりとエアリアルの頭部に迫る。

 ビットステイヴで攻撃しようにも自分との距離が近すぎて攻撃出来ない。

 

「……まだ、やりたい事リストが埋まってない……ミオリネさんがチャンスを作ってくれた。だから負けない。私とエアリアルなら!」

 

 完全にパワー勝負に持ち込まれて窮地に追い込まれるが、エアリアルのシェルユニットが一瞬だけ青く光り、出力が上がるととダリルバルデの肘の関節が負荷に耐え切れず捥げてしまう。

 そのまま、エアリアルが腕を持ったままダリルバルデのブレードアンテナを破壊した。

 それによりこの決闘の勝者はスレッタとなった。

 

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