スレッタの退学とミオリネの将来を賭けた決闘はエアリアルの勝利で終わった。
「満足ですか?」
「うん。まぁグエルならこんな物か」
シャディクの問いにルーカスがそう答える。
スレッタの実力を図るための決闘だったが、まだ納得がいかないようだ。
(最後のあれはスコア5、いや6ってところか)
決闘の最後にエアリアルのシェルユニットは一瞬だけ青く光ったように見えた。
瞬間的にスコアが6まで上がっていた可能性を示している。
「エラン。後は任せた(ミオミオか……俺は悪くないんだけどな)」
「分かりました」
エランは生徒手帳を弄っていたようで視線を生徒手帳から逸らすこともなく返事をする。
ルーカスはスレッタの生徒手帳に仕込んだ盗聴プログラムでコックピット内でのやり取りを外からは見えないようにつけているイヤホンで聞きながら後の事は立会人のエランに後を任せて立ち去ろうとする。
だが、スレッタがコックピットのハッチを空けたため、立ち止まる。
スレッタは生徒手帳をコックピット内に置きっぱなしで降りていてスレッタの声が拾えなくなった。
「何話してんだ? ロウジ。ハロで声を拾ってくれ」
「はい。近くの奴を向かわせます」
戦術試験区域内にはいくつものハロのついたドローンが待っていて、ロウジがそれの制御を担当している。
ダリルバルデから降りて座り込んでいるグエルにスレッタは何か話しているようだ。
一番近くのドローンを向かわせているがすぐには声を拾える距離まではいけない。
そうしている間にグエルはスレッタに近づくを手を取って跪いた。
「スレッタ・マーキュリー。俺と結婚してくれ」
ようやく、声が拾える距離まで近づいて拾えた声がそれだった。
「なぁシャディク。何がどうなってそうなった?」
「さぁ?」
流れは分からないが、グエルがスレッタにプロポーズをしたらしい。
「けけけけっ結婚!」
「いや……今のは」
グエルは我に返るがスレッタは完全に引いている。
「嫌です!」
完全に拒絶してグエルの手を振りほどくとスレッタはエアリアルに乗り込むと飛び去って行く。
「振られたな」
「ええ。見事に振られましたね」
その一部始終はサロンだけでなく学園中に放送されていた。
スレッタに逃げられたグエルはハロの1つが近くまで来ている事に気が付いた。
「グエル。ちょっと理事長室に来い」
ハロのスピーカーからルーカスの声が聞こえ、今のやり取りを聞かれていた事に気が付き血の気が引いた。
「……分かりました」
今はただそう答えるしかなかった。
「で、何で呼び出されたか分かる?」
「いえ……」
決闘後、制服に着替える事も無くグエルは理事長室まで来ていた。
あそこまでお膳立てをして貰っても負けて、それ自体に悔いはないもののやはり父やジェターク寮の仲間とはすぐには顔を合わせ辛かったこともあってすぐにきたが、理事長室で待っていたルーカスを前にすると本当にそれでよかったのかと思ってしまう。
「さっきの事でしたら何というか……俺も本気でそんな田舎臭い水星女この事を……」
「見事に玉砕してたしぶっちゃけどうでもいい。俺はね。今、とてもいい気分なんだよ。何故だか分かるか?」
「いえ」
ホルダーになって以来、まともに話すことはなかった、ルーカスが上機嫌だがそれはそれで怖い。
「ようやく目障りだった悪い虫を駆除することに成功してね。だからさ、お前がフランのダリルバルデを壊したのもアイツから貰ったディランザを壊したことも俺の方から上手く言っといてやるよ」
「……はぁ」
グエルはダリルバルデがフランが使っていた機体をジェターク社が半ば強引に持って来た事は知らない。
以前に使っていたディランザはフランが使っていた専用機をダリルバルデに乗り換える時に譲り受けて学園仕様にしたものだ。
どちらも負けて壊している。
いずれはドミニコス隊に入りエースを目指す身としては現エースであるフランの耳に変に入る事はけは避けたいが、ルーカスが上手く伝えておいてくれるのであればそれの越したことはない。
そして、ルーカスのいう悪い虫と言うのは自分であることは言うまでもない。
「で、これからどうすんの? あのオッサンの事だ。負けたのは相手が悪かったとかグエルは最善を尽くしたとかそういうのはないと思うぞ」
「分かってます」
グエルもそのことは十分に理解している。
先の決闘も始めから自分が実力で勝てるとは思われていなかった。
その上で負けた以上はヴィムも自分を見放してもおかしくはない。
「不幸な行き違いがあったとは言え、俺はお前の実力は買ってるんだ。オッサンの出方次第では俺がカテドラルに口利きをしてドミニコスにねじ込む元も出来る。あそこの司令とは古い仲だしな」
不幸な行き違いはルーカスはホルダーとなりミオリネの婚約者となった時に一方的に敵意を向けられていたに過ぎない。
「理事長が俺の事をそこまで買ってくれていた事は素直にうれしいです。ですけど、今回の事で俺は自分の弱さを思い知りました。今のままではドミニコスに入ったところでエースどころかただの足手まといにしかなりません。だから俺は学園で卒業までに1から鍛えなおし、成果を出してもう一度父さんに認めて貰います。ドミニコスに入るのはそれからです」
グエルはそう言って頭を下げる。
決闘に負けた事で自分の実力を思い知った事で、今のままではドミニコス隊に入ったところでやっていくことは出来ない。
そして、グエルにとってはドミニコス隊に入る事以上に父親に認めてもらう事の方が重要な事だった。
そのためにも今は学園で実力をつけて結果を出さなければない。
「父親にね……他人の評価なんてどうでもいいと思うけどな。俺には理解は出来ない感情だな」
ルーカスにとっては他人からの評価には何の価値もない。
精々、成果を出すことでデリングに今の立場を維持させる程度で父親に認めて欲しいと言うグエルは理解できない。
「まぁ良いか。どの道、俺にとっては損にはならない事だしな」
グエルがルーカスの案を蹴ったとしても、それ自体は損にはならない。
いずれは実力をつけてジェターク社を継げば、グループへの利益になるからだ。
「話はそれだけでしたら戻ります。負けたままで逃げ出す訳にもいかないですから」
決闘が終わってグエルはそのままここに来ている。
今頃、ダリルバルデは回収されて後処理が行われている頃だろう。
決闘に負けたグエルがそのまま何もしないという訳にもいかない。
「分かった。気が変わったらいつでもくればいい」
「ありがとうございます。ルーカスさん」
グエルは再度深く頭を下げると理事長室から出て行く。
「俺も振られたな」
決闘から数日が経った。
決闘に勝ったことでスレッタの退学は取り消しとなり、エアリアルのガンダム疑惑も一時保留となった。
グエルに勝利した事で正式にホルダーとなったスレッタはグエルの公開プロポーズもあり学園内では好奇の目で見られることもあり、授業後は未だに寮が決まらない事もあって第二理事長室に帰ってきている。
そこでルーカスから出されるおやつを食べながらその日の授業の事をルーカスに話すことが日課となっていた。
普段は初めて同年代の子供と一緒に学校で授業を受ける事が楽しくて喜々として話していたが、その日は明らかに落ち込んでいた。
「成程な。そういやそういう実習もあったっけ」
話を聞くと今日の実習ではサポートスタッフが必要でスレッタはそれを知らずに実習に臨み実習を受ける事も出来ずに失格となり追試となったらしい。
落ち込みながらもルーカスが用意したケーキを頬張る。
「確か実習の概要にも書いてあったはずだけど」
「……すみません」
実習の内容が公表された時に説明はあったが、その時はスレッタは学園に編入する前で聞いてはいなかった。
概要にもきちんと書かれていたが、普段の授業の遅れを取り戻すための勉強とルーカスに渡されたミオリネの取り扱いマニュアルを覚えるのに時間を使ってそこまでは把握しきれてはいなかった。
「まぁ済んだことは仕方がない。それよりもサポートメンバーは集まりそうか?」
「うっ……それは」
スレッタは分かりやすく視線を泳がせる。
「知り合いの人に聞いては見たんですけど、その人も後輩のサポートをしないといけなくて……」
「成程。他に頼めそうな友達とかはいないの?」
スレッタの行動を常に把握しているルーカスはスレッタの交友関係も把握している。
当然、サポートスタッフを頼める相手がいない事を把握している。
「友達は……いませんけど、エランさんが何か困った事があれば言って欲しいとメールが来ていたのでご迷惑でなければ頼んでみるつもりです」
それも把握している。
ペイル寮筆頭のエラン・ケレスが何かとスレッタを気にかけている。
エランは他人に興味がなく、ルーカスに対しても媚びる事もなく必要最低限しか関わろうともしてこない。
そんなエランがスレッタに対しては気にかけている。
恐らくはエランを推薦したペイル社の指示があったと推測し、その真意を調べさせてはいる。
「あのエランがね。でもアイツは氷の君とか持てはやされているけど、友達もいないボッチだぞ。エランに頼んだところで人が集められるとは思えないけどな」
「……そう、何ですか? 意外、です」
スレッタの知る限りではエランは自分に優しくしてくれるいい人で、初対面の自分にもそこまでよくしてくれているエランは皆の人気者で友達も多いと思っていた。
だが、エランも友達がいないと知り少し親近感も沸いた。
「仮にエランが一人でやるとしても全部を一人でやるのは無理だな。まぁ俺なら余裕だけどな」
「……ですよね」
実習はサポートメンバーが一人でもいれば受ける事が出来るが、一人では負担が大きすぎて上手くは出来ないだろう。
「仕方がない。俺の方で手配しとく」
「……いいんですか? それってズルじゃ……」
教師からはメンバーを集めるのも実習の一環と言われている。
それを学園側のルーカスが手配するというのはズルをしている気になる。
「この学園で一番偉いのは俺だ。つまりは俺がルールで法だ。その俺が良いって言ってんだ。なら良いんだよ」
「はぁ……そうなんですか」
無茶苦茶な事だが、実習を受けるためには仕方がない。
「見つけた!」
ルーカスがどこかに連絡を入れようとすると部屋のドアが勢いよく開くとミオリネが怒鳴り込んでくる。
「ミオリネさん!」
「来なさい!」
ミオリネはスレッタの腕を掴むと部屋から連れ出す。
『理事長?』
「いや……何でもない。大丈夫そうだ。悪かったな、サビーナ」
ルーカスはミオリネがスレッタを連れていったことを確認すると通信を切る。
「ミオリネさん! どうしたんですか!」
理事長室から連れ出されたスレッタはミオリネに引っ張られていたが、学園の中庭の辺りまで来たところで抵抗して足を止める。
「実習で追試ってどういう事? てか何でアイツのところに!」
「えっと……あそこにいたのは理事長さんの部屋でお世話になっていまして……」
「はぁ! どういう事なのよ! それ!」
取り合えずはあそこにいた事を説明しようとするが、ミオリネはスレッタに詰め寄る。
「はっ……確か」
ミオリネに圧倒されながらもふとある事に気が付いた。
「大丈夫です! 盗ったりしませんから!」
「は? 何の事よ」
「これです。この385項目にあります。ミオリネさんは嫉妬深くて独占欲が強くて理事長さんが自分と家族以外が親しくするとやきもちを焼くとあります。大丈夫です。私は理事長を盗ったりしませんから」
スレッタは生徒手帳を出すと中に入っているデータを表示して見せる。
「……ミオリネ取り扱いマニュアルゥゥゥ!」
スレッタから生徒手帳をひったくると表示されているデータを読むとミオリネの声は次第に怒気を増していく。
それはルーカスが作成し、スレッタに渡したマニュアルだった。
「まだ3030項の中で半分くらいしか覚えてませんけど、全部覚えます。でも凄いですよね。理事長さんはミオリネさんの事を良く分かってます。それに気づきました? 項目の数もミオミオですよ」
スレッタはルーカスに対して尊敬の眼差しを向けているが、ミオリネはそんなことをお構いなしに生徒手帳を操作していた。
「嘘でしょ。消せないようにプロテクトまで掛けてる」
ミオリネはマニュアルを削除しようとしたが、データには削除が出来ないようにプロテクトを賭けられていて削除することが出来なかった。
「こうなれば!」
「ミオリネさん!」
ミオリネは持っていた生徒手帳を振り上げる。
スレッタはすぐにミオリネが何をしようとしているのか気が付いてミオリネにしがみ付いて止める。
「スレッタ! 離しなさい!」
「駄目です! 私が怒られちゃいます!」
「大丈夫よ! 私がやる事はここじゃ正当化されるから! 後で新しいの用意させるわよ!」
ミオリネはスレッタの生徒手帳を地面に叩きつけて生徒手帳ごと破壊するつもりのようだった。
もっとも生徒手帳はミオリネの力で地面に叩きつけた程度では破壊することは不可能だが、二人にそこまで考えている余裕はない。
二人の攻防はミオリネの体力が尽きるまで続いた。
「はぁはぁ」
息を切らしているミオリネから生徒手帳を取り返すとすぐにしまう。
「……とにかく私の部屋まで来なさい。話はそこでするわよ」
ミオリネが騒いだこともあり、周囲に他の生徒が集まってきている。
このままでは落ち着いて話も出来ないため、スレッタも大人しくミオリネについて行った。
「ここって理事長室……ですよね」
「そうよ。私が奪ってやったのよ。アイツも糞親父が理事長だった時に昔はやってたみたいだしいい気味よ」
ミオリネが使っているのは第一理事長室。
ルーカスが学園にいた時にも使っていた場所だ。
スレッタは今まで気にもしていなかったが、ルーカスが使っているのは第二理事長室。
第一はミオリネが使っているため、急遽新しく第二を作っていた。
中に案内されるとスレッタはそわそわしながら周囲を見る。
「何よ。ちゃんと片付けはしてるわよ」
さも当然かの様に言っているがセシルが定期的にチェックに来ているからで、それがなければ自分ではまともに掃除をすることも無かっただろう。
「えっと……私、友達の部屋に来たのって初めてで……あっコレご家族の写真ですか?」
スレッタは棚に置かれている画像データを見つけた。
それは学園の正門で撮ったものだ。
データにはミオリネを中心にセシルやエマ、フランやシズカと共に映っている。
尚、他にもいくつかのデータにはセシル達と映っている物はあるが、ルーカスと映っている物は一つも無かった。
もっともスレッタはこの数日でルーカスから自分と幼いミオリネと撮った物をいくつも見せられている。
ルーカスと撮られているデータのミオリネは幼く、ここにあるデータの年代のミオリネと撮った物がない意味をスレッタは気が付くことはなかった。
「義姉さんたちよ」
「お姉さんですか……いいですね。あの理事長にたくさんのお姉さんがいて……私は一人っ子なので羨ましいです」
「そう? まぁ良い人達よ。私も可愛がって貰ってるし、良かったじゃない。私と結婚すればスレッタにとっても義姉になるわね。でも男の趣味は最悪よ。その人たち、アイツの嫁だから」
「お嫁さんがたくさんなんですね。凄いです」
「そんなことよりも早く座ったら? 本題に入るわよ」
「あっはい」
ミオリネは近くの椅子に座るとスレッタもソファーに座る。
「で、何で実習を落ちてるのよ」
「実はですね」
スレッタはこれまでの経由を改めてミオリネにも説明した。
「と言う訳でして……エランさんに頼もうとしたんですけど、理事長さんがエランさんはボッチだから無理だろうって」
「まぁエランは友達はいないし人を集めるのは難しいかもね」
ミオリネの知る限りではエランに個人的に手伝いを頼める友人はいない。
動かせるのはペイル寮の人間くらいだ。
「てか、エランの奴、他人には興味ないって顔しといてスレッタにちょっかいをかけてた訳? 迂闊だったわ」
スレッタとエアリアルは学園中から注目を受けている。
グエル以外の御三家が動くことも十分に考えられた。
「良い? スレッタ、御三家は私の敵よ」
「……敵ですか?」
「そう。アンタが倒したグエルはアイツの子分みたいな物で、グラスレーのシャディクってのはアイツの腰巾着のイエスマン。エランは……とにかく! みんな敵なの。みんな私を手に入れたがってる。私を手に入れればアイツを自由に制御できると思ってる。ばっかみたい! そんなんでアイツをどうにか出来る訳がないじゃない」
ミオリネは日頃の鬱憤を晴らすかの様に話す。
ルーカスがミオリネを溺愛している事は学園のみならずグループ内でも有名な話だ。
そんなミオリネを手に入れて、ミオリネを通じてルーカスを思い通りに動かそうとしている。
ミオリネからすれば自分を手に入れたところでルーカスを思い通りに動かせるとは到底思えない。
「そんな訳だから御三家と関わる必要はないわ」
「はぁ……」
ミオリネのおかれている状況を今一つ飲めないスレッタは曖昧に返事をする。
「それよりもサポートスタッフよ」
「それでしたらさっき理事長さんが手配してくれるって言ってました」
「アイツに借しなんて作ったら徹底的にむしり取られるわ。大体、私がいるのに何でアイツを頼る訳?」
不満そうにするミオリネを見てスレッタはピンときた。
マニュアルの中にミオリネは口では面倒臭がるが頼られたいと。
「お願いしたいんですけど、理事長さんも言ってました。一人でやれるのは自分くらいだと」
「は? アイツに出来て私に出来ない訳がないじゃない。 マニュアル見せて。一晩で覚えてやるわよ」
スレッタとしてはルーカスくらいしか出来ない事をミオリネ一人に押し付けたくはなかったが、逆にミオリネのやる気に火をつけたようだった。
「実習はサポートスタッフとパイロットの連携も重要になって来るわ。その辺も詰めないといけないから今日からアンタもここで寝泊まりしなさい」
「うぇ? ここでミオリネさんと二人でですか?」
「何? 嫌なの? 大体今までアイツのところで寝泊まりをしていたのがおかしいのよ。アンタはもうちょっと危機感を持ちなさいよ」
「はぁ」
スレッタはイマイチピンと来ていない。
一般的に学園の女子生徒を自分の部屋で寝泊まりをさせるという事はいろいろと誤解を招きかねない。
ミオリネもスレッタがどこかの寮に入ったか、フロントの宿泊施設を使っていると思っていた。
まさかルーカスが自分の部屋を使わせていたとは思っていなかった。
流石に自分と歳の変わらない生徒にまで手を出すとは思いたくはないが万が一と言う事もある。
スレッタがルーカスのところからミオリネのところに移ってから数日後に実習の追試が行われてスレッタはその報告をルーカスのところまで来ていた。
「追試はミオリネと一緒にやって合格できたんだな」
「はっはい。ご心配おかけしました」
無事に合格した事とその過程でのトラブルの事はぼかしたが、ルーカスの方にも報告は上がっている。
試験の最中に場外乱闘が起きて試験を監督していたアイビーが当事者全員を鉄拳制裁で黙らせたらしい。
その場に居合わせて巻き込まれたスレッタも例外ではなくアイビーからげんこつを食らっている。
「それといろいろあってニカさん……地球寮にお世話になる事にもなりました」
「ああ、そういえば寮もまだ決まってなかったからな」
表向きはスレッタを受け入れられる寮を探している事になっていたが、実際は手元に置いておいた方が監視もしやすい事もあって本気で探していた訳ではなかった。
「またあそこか、地球寮とガンダムは余程縁があるだか」
ルーカスが学園にいた頃も地球寮を拠点に使い学園のガンダムが集まっていた。
今度もまたガンダムと関わる事になったとなれば何かしらの縁も感じてしまう。
「それとさ。スレッタは正式にミオリネの婚約者になったんだし、いずれは俺の義妹になるんだし、俺の事は理事長なんて他人行儀な呼び方じゃなくて兄って呼んでくれてもいいぞ」
「うぇ……おおおおおお義兄、さん」
スレッタは呼びなれていないため、顔を真っ赤にして俯く。
「ん良くできました。でだ、そろそろスレッタも学園になれて来た事だろう」
「えっと……はい」
「ならそろそろ俺と決闘しようか」
スレッタはルーカスが何を言っているのかすぐには理解できなかった。
次第に言った事を理解し始めると今度は顔が青ざめていく。
「うぇえええええええ!」
スレッタの悲鳴が部屋中に響き渡った。