ジェターク寮と地球寮との決闘の時間となり双方のMSコンテナが決闘の戦術試験区域に移動する。
今回の戦術試験区域は山岳地帯を模している。
互いに賭けるものの宣言は以前のサロンとのやり取りで承認した事になっている。
それは決闘前に余計なトラブルを防ぐためにと決闘員会で決められたことだ。
「勝敗は隊長機の頭部のブレードアンテナを折った方を勝者とする。立会人はグラスレー寮のウォルガ・ブラウンが務める」
「あれ? 今日はエマの奴じゃないのか? てか確かエマの使いっ走りの」
「私語は謹んで貰いたい。お嬢様は体調が優れない。ここのところ馬鹿みたいな決闘を立て続けにやる生徒がいるせいでな」
今回の決闘の立ち合い人はグラスレー寮メカニック科の2年のウォルガとなっている。
エマは体調不良とのことだが精神的な物らしい。
ウォルガの親はスレイド・ウェポンズの重役で幼い頃からエマに付き従って来た。
エマを慕うが故に会社の為とは言えルーカスと婚約しようとしている事は良く思わず、その相手でもあるルーカスに敵意をむき出しにしている。
「そりゃ大変だ」
「誰のせいだと……そんなことよりさっさと出ろ」
「はいはい。LP001。ルーカス・ナボ・レンブラン。ガンダムルブリスV2。出るぞ」
「LP002。セシル・グローリー。ガンダムルブリス。出ます」
「LP303。コウタロウ・ハザマ。デミカス。出る!」
コンテナから3機のMSが出撃する。
「両者。向顔」
ルブリスV2のモニターにフランが映される。
「勝敗はMSの性能のみで決まらず」
「これ俺も言わないとダメ?」
「良いからやれ!」
「はいはい。操縦者の技のみで決まらず」
「「ただ結果のみが真実」」
「フィックス・リリース」
ウォルガが開始を宣言し決闘が開始される。
決闘が開始せると同時にルブリスV2は高く飛び上がる。
「おい! ルーカス。見つかるぞ!」
「ちまちまやるのも面倒だ。そっちは任せた」
ルブリスV2は着地すると再び高く飛び上がると単機で移動する。
「コウタロウさん。ルーカス様でしたら問題はありません。それよりも来ます」
ルブリスはビットステイヴを展開するとビームが降り注ぐ。
ビットステイヴがルブリスとデミカスに対するビームを防いだ。
「もう来たのか!」
「あれだけ高く飛べば向こうにも丸見えでしょうからね」
ルーカスのルブリスV2が高く飛び上がったせいで相手にも自分たちの位置を教えていたようだ。
「あれがジェターク社の新型機か」
「全機がそれぞれカスタムしているようですね」
二人の前に出てきたのはジュターク社がこの決闘の為に持ってきた新型MSデスルターだ。
数は3機だがそれぞれが専用のカスタムがされている。
3機とも脚部にホバーユニットが装備されており、高い機動力の3機が先行してきたのだろう。
「高機動タイプが先行してきたという事はすぐに増援が来ます。それまでに仕留めますよ」
「ああ!」
2機は速やかに応戦を始める。
「あの2機は姉御の邪魔をさせないように抑えるぞ!」
先頭のデスルターがビームバズーカを撃ち、2機は左右に散開する。
ルブリスの方には大型ヒートアックスを持ったデスルターが回り込み大型ヒートアックスを振るうが、ルブリスのビットステイヴがデルスターの両腕を撃ちぬくとすれ違いざまにレシーバーガンからビームブレイドを展開するとデスルターの両足を切り裂く。
「足を止めれば!」
両手にビームマシンガンを装備したデスルターからの攻撃をかわしながらビームガトリングガンを足元に狙いをつけて連射する。
やがてビームが足に当たりデルスターは体勢を崩して倒れる。
「良し! 次だ!」
コウタロウは1機目を倒して残る1機に狙いを変えようとするが、倒れいたデスルターはヒートナイフを出して、スラスターの推力だけでデミカスにとびかかってくる。
「やっば!」
気づいた時に遅く完全に背後を取られていたが、ルブリスのビットステイヴがデスルターの両腕と頭部、バックパックを撃ちぬいた。
「助かった。セシルさん」
「足を破壊した程度で油断しないでください。本当ならばコックピットを確実に潰しておきたいですけど、決闘のルール上は出来ないのでコックピット以外を確実に潰すまでは敵はまだ戦えると思っていてください」
ルブリスは残る1機のデスルターの胴体を踏みつけた状態で頭部をレシーバーガンで撃ちぬいて破壊する。
決闘のルールでは意図的にコックピットを破壊するような攻撃は禁止されている。
あくまでも決闘であって殺し合いではないからだ。
そして、団体戦においては隊長機以外は頭部を破壊されても失格にはならず確実に無効化するにはコッピットのみを残して破壊することが確実だ。
実力はあるもののコウタロウは複数機の戦闘には慣れていないため、目の前の1機が倒れた時点で別の機体を何とかしようと意識がそっちに向き、目の前の敵が足を破壊されただけで戦闘能力は十分に残っている事を失念していた。
「分かった」
「こちらの位置が分かっているという事は今頃、ルーカス様の方にも……」
上空まで飛び上がった隊長機のルブリスV2ではなく自分たちの方に来たという事は今の3機は足止めが目的なのだろう。
だとすればルブリスV2の方にも敵が言っているとみて間違いはない。
すぐに合流したいところだが、新手がやってくる。
「セシルさん」
「次は6機。今の3機を合わせると9機になりますね。という事はルーカス様の方には」
新手のデスルターは6機、この決闘に10機のMSが投入されているとすれば残るは1機。
つまり向こうは1機が向かっているという事になる。
「どうする? セシルさん」
「ルーカス様なら大丈夫です。私たちの役目はここで敵を殲滅してルーカス様が好きに戦えるようにすることです」
ルビリスは周囲にビットステイヴを戻すと6機のデルスターと対峙する。
「よう。自分から姿を晒すとは舐めてんのか?」
「いんや。面倒だからそっちから見つけて貰おうと思ってな」
高く飛び上がりながら移動していたルブリスV2の前にフラムの深紅のガンダム、ガンダムバルディッシュが立ちはだかっていた。
ガンダムバルディッシュはジェターク社が得意とする重MSで全長が25メートルほどと大型のMSだ。
全身が厚い装甲に覆われており、脚部の大型ホバーユニットと両肩のビームキャノンが内臓された大型シールドブースターにより重MSでありながら十分な機動力を確保されている。
武器はけん制用の胸部大口径ビームバルカンと手持ちにヒートハルバートを持ち、サイドアーマーには予備のヒートホークが収納されている。
「そいつはチキン野郎にしてはいい度胸だ。ならよ。ぶちのめされる覚悟も出来てるんだよなぁ!」
ガンダムバルディッシュはヒートハルバートを構えて突撃してくる。
ルブリスV2もガンブレイドを構えて迎え撃つ。
ヒートハルバートの突きを左腕のガントレットシールドで受け流すと至近距離からガンブレイドを頭部目掛けて打ち込む。
しかし、ガンダムバルディッシュの装甲の一部が外れるとビームを弾く。
「装甲が外れた?」
「効かねぇな! んな豆鉄砲はよ!」
ガンダムバルディッシュはそのままヒートハルバートを横に振るう。
ルブリスV2は腕でガードするがそのまま弾き飛ばされた。
「ちっ! 流石はジェターク社製のガンダムだよ。パワーもダンチかよ」
ルブリスV2は体勢を立て直してガンブレイドとビームバルカンで集中砲火を浴びせるが、全身の装甲が9か所ほど外れてガンダムバルディッシュの周囲に展開されてびーむを弾く。
「装甲が盾に……なるほど、そいつがガンビットってわけか」
ガンダムバルディッシュには全身に10基のガンビットを装備している。
普段は装甲だが必要に応じてシールドビットとして使う事も出来る。
ルブリスのビットステイヴは火器や防御機能、レシーバーガンの強化、本体の機動力強化等用途が多岐に渡るがガンダムバルディッシュのシールドビットは防御に特化したガンビットになっている。
「面倒だが……まぁ何とかなるか」
ルブリスV2はガンブレイドをしまうと背部のバスターソードを構える。
ルブリスV2は加速し、接近するとバスターソードを振るう。
それをガンダムバルディッシュはヒートハルバートで受け止めた。
「はっ! 非力だな! んな攻撃がアタシに通用するとでも!」
ガンダムバルディッシュは力づくでルブリスV2を弾き飛ばすが、ルブリスV2は弾かれた勢いを利用して機体を軸に回転し、勢いをつけてバスターソードでヒートハルバートを弾き飛ばした。
「なっ!」
「悪いな。こちとら10年前の機体を使ってんだ。基本性能で劣る事は分かってんだ。それならそれ相応の戦い方ってのもあるんだよ」
バスターソードの刀が中央から開閉するとハサミのようになりガンダムバルディッシュの両腕ごと胴体を挟む。
すぐにガンブレイドを抜いてガンダムバルディッシュの頭部に向ける。
「やらせるかよ!」
ガンダムバルディッシュのシールドビットがあらゆる方向からルブリスV2に向かってくる。
本来の用途ではないが、シールドビットはその強度から直接ぶつけても十分な威力を持つ。
ルブリスV2はシールドビットをかわしながらガンビットを撃つもシールドビットで防がれる。
「くっそ……この装備や火力が足りないか」
「はっ! こんな拘束!」
ガンダムバルディッシュは拘束していたバスターソードを腕のパワーで破壊して自由となる。
「ちったぁやるようだが。これで終いか? なら、今度はこっちからいかせて貰うぜ!」
ガンダムバルディッシュはヒートホークを抜いてビームキャノンを撃ちながら突撃してくる。
ルブリスV2はガンブレイドで迎え撃つ。
ヒートホークの攻撃をかわして頭部を狙うが、シールドビットに防がれ別方向からのシールドビットがルブリスV2を狙う。
頭部を狙うシールドビットを回避する。
「オラオラ! まだ行くぜ!」
フランはパーメットスコアを2に上げるとシールドビットの動きが更に早くなる。
「スコアを上げて来たか……全く。スコアが2までしか上げられないのはこうも面倒だとはな……仕方がない。後でアイツに怒られるかもだけど負けるよりかはマシか」
動きが早くなったシールドビットがルブリスV2の右膝に直撃するとルブリスV2は体勢を崩す。
そこにガンダムバルディッシュはヒートホークを投擲する。
ルブリスV2は肩の小型シールドでヒートホークを受けるが、ヒートホークはシールドを破壊し、ルブリスV2の肩に突き刺さる。
「どうした! こんなもんかよ!」
ガンダムバルディッシュはシールドブースターでルブリスV2に体当たりをして吹き飛ばす。
更にシールドブースターで加速するとルブリスV2の頭部を鷲掴みにして後方の断崖に突っ込んだ。
「相手は2機だぞ!」
ビームジャベリンを持ったデスルターがルブリスに連続で突きを繰り出すも、ルブリスはギリギリのところで回避してビームブレイドでデルスターの頭部を切り、ビットステイヴにより四肢が撃ちぬかれる。
すぐに別のデルスターにレシーバーガンを撃ちシールドで防ぐも距離を詰められビームサーベルで両足を切断されて倒れたところを無力化される。
「次は」
「くそ……なんだって!」
デスルターがビームガトリングガンを撃つもビットステイヴで阻まれレシーバーガンでビームガトリングガンを撃ちぬかれビットステイヴの集中砲火で仕留められた。
「確かに新型なだけあるけどパイロットが素人ではこの程度ね」
すぐに次のデスルターの方に向かう。
デスルターはビームトーチで切りかかるもビームブレイドで受け止められる。
そして、ルブリスがデスルターを足払いして体制を崩したところをビットステイヴにより無力化される。
「これで後2機」
増援の6機中すでに4機を無力化している。
残るデスルターは2機でその2機はコウタロウの相手をしている。
「くそ! 思うように!」
デミカスはビームガンを連射してデスルターとの距離を保っている。
2機のデスルターの内1機はビームライフルをシールドを装備した中距離仕様でもう1機は大型ビーム砲を持った砲撃仕様の機体となっている。
デスルターのビームライフルをかわしていたが、もう1機の大型ビーム砲は避けきれずにシールドで受けるが、シールドは左腕ごと吹き飛んだ。
「装備をゴチャゴチャし過ぎた!」
メカニックたちと変なテンションでいろいろと盛り過ぎたせいで戦闘時に選択の幅が広がったが、それゆえに判断に迷いが生じてコウタロウは本来の実力が出せずにいた。
左腕を失いビームが自身のビームキャノンに直撃して吹き飛ぶ。
「ならいらねぇ!」
ビームガトリングガンをパージするとビームサーベルを抜いて突撃する。
デスルターのビームを紙一重で回避して接近する。
「そんなMSで! デスルターに勝てると思うなよ! アーシアンが!」
「アーシアンを舐めるな!」
デミカスの頭部をビームに撃ちぬかれながらもデルスターに突撃する。
ビームサーベルをデスルターの右腕に突き刺しながら体当たりをして押し倒す。
「くっ!」
何とか1機は取り押さえられたが、もう1機のデスルターが大型ビーム砲をこちらに向けている。
すぐに撃たないの威力が大きい分、取り押さえられているデスルターに当たる可能性と下手に当ててしまえば相手を殺しかねないからだ。
大型のビーム砲は威力が大きいが、大きい分決闘で使う時はけん制目的か相手の強固な防御を崩す時くらいにしか使えないが、今のコウタロウは下手に動いてしまえば大型ビーム砲の餌食となるため、動くに動けない。
「ヤバイ! どうする?」
硬直状態だが、取り押さえているデスルターがデミトレを押しどけようとしている。
互いに片腕をなくしている状況だが、パワーは向こうの方が上でこのままではデデスルターに逃げられてしまう。
そうなればコウタロウはやられる。
向こうもそれが分かっているのかしっかりとデミカスから砲身を反らさずにいつでも撃てる用意をしている。
万事休すだったが、大型ビーム砲を構えているデスルターを四方からのビームにより無力化された。
「大丈夫ですか?」
「セシルさん……助かった」
大型ビーム砲を持ったデスルターが無力化されたことで残るデスルターも観念したのか抵抗をやめた。
「それで最後です。どいて下さい」
デミカスがどくとルブリスがビームサーベルで最後のデスルターを完全に無力化する。
「うわっ……容赦ねー」
「これで9機目。隊長機はルーカス様が仕留めて終わりです」
「けどなぁ。勝てんのか?」
「勝てます。あの方は面倒だからと私にやらせているだけでガンダムに乗ったあの方は負けません」
セシルはそう言い切る。
普段は立場上、セシルが守っているがガンダムの扱いにかけてはルーカスはセシル以上だ。
そして、ルーカスは一人で勝てると言った以上は必ず勝って帰ってくる。
そうセシルは確信していた。
「たく……スコアが2までしか出せないとか本当に面倒だよ」
「何だ? 負け惜しみか?」
ルブリスV2はガンダムバルディッシュに完全に抑え込まれていた。
頭部を掴まれる寸前に左腕をねじ込ませたため、頭部を破壊されることは無かったが、ガンダムバルディッシュは左腕ごと頭部を押し潰そうとしている。
後ろが絶壁でルブリスV2の胴体にガンダムバルディッシュは膝を押し付けて完全に動きを封じている。
後は自慢のパワーで左腕ごと頭部を潰して勝利するだけだった。
「思った以上に戦えたからチキン野郎って事は取り消してやるよ」
「そりゃどうも」
「まぁ負けたところでアンタには第二の人生が待ってんだ。精々御曹司を自分の思い通りに動かせるように教育でもするんだな」
完全に動きが封じられていたが唯一動かせる右腕を動かす。
伸ばした右手がガンダムバルディッシュの頭部のブレードアンテナに届くとブレードアンテナを握る。
「まだ諦めてねぇってか。面白れぇ。その根性は認めてやるよ」
「生憎とバエルだかグエンだかいうガキのお守りをする気はないんでね。それに俺は……すでに勝利を掴んでんだ!」
ガンダムバルディッシュのブレードアンテナを掴んでいた右手のガントレットシールドの後部が開閉する。
ガントレットシールドには小型のブースターが内臓されている。
普段は接近戦時の加速や方向転換に使う物だが、ルーカスはブースターのリミッターを解除する。
ブレードアンテナを掴んだままブースターを最大出力で使うとやがて右腕の肘関節が限界を迎え破壊されるとルブリスV2の右腕は勢いよく飛んでいく。
同時にガンダムバルディッシュのブレードアンテナを掴んだままでだ。
「ぶっ飛べ!」
「なっ!」
右腕はガンダムバルディッシュの頭部からブレードアンテナをもぎながら空高く飛んでいく。
それはまるで自身の勝利を高らかに見せつけるかのようにだ。
ルーカスは現在の装備ではガンダムバルディッシュの守りを突破できないと判断してこの状況になる事を作った。
どんなにダメージを受けても頭部のブレードアンテナが破壊されなければ負けではない。
逆にどんなに無傷であってもブレードアンテナが破壊されてしまえば負けだ。
「……勝者。地球寮」
ガンダムバルディッシュのブレードアンテナが折れたことを確認したヴォルガが忌々しく地球寮の勝利を宣言した。