ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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僕はあなたの味方だよー

 粗方用件も済ませたことだし、僕とレリエさんは孤児院を出て帰路についた。

 レリエさんのことをミホコさんにお願いできたり、ついでにミシェルさんとも軽く運動できたりとそれなりに充実した時間だったよー。

 

 スラムを抜けて平民街に出る。もうそろそろお昼だしギルドに行く前にどこか、そうだなーこの辺だと最寄りの商店街の中にあるステーキハウスとか行きたいなー。

 そんなことレリエさんに提案すると、彼女もそこそこお腹が空いていたのか一も二もなく頷いた。お腹を擦りながらも話す。

 

「サクラもこの町のお肉は美味しいって言ってたから楽しみだわ! 昨日作ってもらった彼女の料理は、お野菜中心でヘルシーだったし今日のお昼はワイルドに行きたいわね!」

「結局、彼女の家に滞在することになったんだよね。問題なさそう?」

「ええ、余ってる部屋を使わせてもらってるわ。至れり尽くせりで申しわけないくらいよ」

 

 苦笑いしながらも嬉しそうに語る。そう、レリエさんは当面、サクラさんのお家に住まうことになっているのだ。

 

 目覚めて初日こそギルドの仮宿に泊まってもらったりしたんだけれど、もう彼女も新世界旅団のメンバーだからねー。

 どなたか団員のお家に転がり込むって選択肢が、パーティー的にもギルド的にも彼女的にもベターだねって話になったんだよー。

 

 僕は男だからさすがに泊めるのはまずいし、シアンさんは貴族のお家だ、いろいろ憚られるし。

 そこで同性、かつしがらみの少ないサクラさんのお家で彼女と一緒に暮らすって形になったんだ。いつまでかは分からないけどしばらくはそうなると思うよ、レリエさんの収入だって今のところ、安定してないわけだしね。

 

「本当に、目覚めて最初に会えたのが杭打ちさんで良かったわ……自分本意な話だけど、こんなにトントン拍子で生活基盤が整ったなんて奇跡的な話だし」

「僕もだよ……というか、目覚めた後のことを考えて眠りについたわけじゃなかったんだ。事前準備とかなかったの?」

「え…………ええと、ね」

 

 嬉しいことを言ってくれるからついマントと帽子の奥、ニヤニヤしちゃう僕だけど気になったことを尋ねてみる。ちょっと気にはなってたんだよね、目覚めた後について何も考えずに寝たのかなーってさ。

 さすがに数万年は予想外だったみたいだけれど、それでも数百年くらいは眠ることを想定していたっぽいし。誰も知るもののない世界にタイムスリップするからには、それなりに備えはしていてもおかしくないように思うんだよねー。

 

 そんな僕の質問にレリエさんは一瞬、息を詰まらせたように呻いた。少しの逡巡して、それからぽつぽつ話す。

 

「もちろんそういうマニュアルはあった……とは思うわ、知識はあるもの。ただ、それどころじゃない状況だったって記憶もうっすら、あったりするのよ」

「それどころじゃなかった?」

「ええ……たしか、そう。私達が眠りにつく時は、もう本当に瀬戸際の……ギリギリって状態だった感覚があるわ。何がギリギリなのかってところは、ごめんなさい覚えてないけど」

 

 申しわけなさそうに言う姿からは、嘘偽りがあるようには見えない。つまりは本当に何かしら、危機的な状況に陥りかけていた中で彼女やヤミくん、ヒカリちゃん、マーテルさんは眠りについたみたいだ。

 

 うーん、ギリギリ……永い眠りにつかなかったらその時点でアウトだったってことかな? となるとそれって、命の危機とかそういうレベルの話にも思えてくるし。

 そうなるともしかして、古代文明が滅亡する直前に彼女達は眠りについたってことなんだろうか。

 

 うわーっ! ロマンだよー!!

 滅びゆく文明の最後の希望、何人かの人類だけを遺してかつて隆盛を誇った超高度文明が消え去ったなんて、めちゃくちゃワクワクするよーっ!!

 

 いやまあ、レリエさんにはこんなこととてもじゃないけど言えないけれど。僕はあくまでオカルト雑誌から得た情報でミーハー視点からものを言ってるだけだからねー。

 本当にすべてを失って何万年という時を超えた彼女のことを思うと、人間かどうかも疑わしい僕でも胸が痛むよー。

 

 何が原因で滅びたのか知らないけれど、せめてレリエさん達だけでも未来に送り届けようとしてくれた古代文明の意志を汲んで、ぜひとも彼女達を受け入れて共存していけたらいいなって思う。

 僕はレリエさんに、励ますように声をかけた。

 

「……僕はあなたの味方だから」

「杭打ちさん……」

「もちろん、新世界旅団のみんなもね。困ったり苦しいことがあったら、迷わず頼ってくれていい」

「…………うん。ありがとう」

 

 目尻に涙すら浮かべて微笑むレリエさん。

 これからもっともーっと、彼女の笑顔が見れるといいなって思うよー。

 

 さしあたってまずは、美味しいものを食べた時の笑顔を見たいね。

 そして僕らは、歩いているとやがてステーキ店に辿り着くのだった。




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