ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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暗殺阻止だよー!

 ガルシアさんを確保して退散しようとして、そこをサクラさんにカットされることになった襲撃者最後の一人。

 これが意外にも僕やシアンさんが相手していたのよりは格上らしく、Sランクにふさわしい威力と速度の斬撃を受け、それでもある程度は対応してくるかなりの手練だった。

 

「くっ、おのれっ!?」

「ガルシア置いてけでござるー!!」

 

 振るわれるカタナはただひたすらに敵の腕、すなわちガルシアさんを掴んでいる手首をメインに狙う。

 彼を連れて逃げられることが今回、一番の敗北になると僕らは考えているためだ。そのためまずは引き離すべくと、サクラさんは神速の剣閃を放っていたわけだねー。

 

 しかし敵も中々やるようで、空いてる手に持ったショートソードを振るいカタナを防いだ。生半可な実力だと見えても反応できないだろう斬撃に、しっかりと対応してきたんだ。

 金属同士がぶつかり合って火花を散らす。目と鼻の先で修羅場が展開されていて、当のガルシアさんが恐怖に慄く声がここまで聞こえてきた。

 

「ひ、ひぃいいいぃっ!?」

「チ、ィ──ッ!!」

「そらそらそらそらそらぁぁぁっ!!」

 

 さっきまでの余裕とか増悪はどこへやら、目の前のリアルにひたすらパニック状態になっている。

 仮にも調査戦隊メンバーだったなら、豪快に笑えとまではいかなくても冷静さは保っといてほしいんだけどねー。残念。

 

 ただ、パニックなのは彼だけで闖入者のほうは短く舌打ちするに留まっている。

 サクラさんの攻撃を、一撃だけでも防げただけでも大したものなんだけどー……その後に続く連撃にさえ、体はともかく目では追えている。

 

「おのれ、サクラ・ジンダイ……!!」

「はははー! いい腕してるでござるなあ、いつまで保つか試すでござるよー!!」

 

 真っ先にガルシアさんの確保と逃走のために動いた最後の一人。その男はサクラさんの猛攻に対して、明らかに焦った様子を見せているもののそれなりに凌いでいたりする。

 見事! 善悪はともかく備えた力は間違いなく、冒険者でいうならAランクに到達しているよー。少なくともさっき僕が倒した連中よりは遥かに強い。

 

 片手で彼女の斬撃に応じるとか大した技術で、だからこそサクラさんは余計に面白がって燃えちゃってるねこれ。

 シアンさんはシアンさんで、最近特訓の中で辛酸を舐めさせられている相手に、防戦一方ながらある程度長引かせているその防御技術をかぶりつきで観察している。

 

「片手とは思えない……この動きは筋力だけじゃない。速度自体は普通なのに、効率よく動いているからこその動き。無駄を削ぎ落としていった上で、しかも複数の動作を一度に行うことでさらにコンパクトにしている。すごいわね……」

 

 向上心の塊みたいな話だなあ。

 単に新世界旅団の団長として、一刻も早く強くなりたいって意志の為せる姿勢でもあるんだろうねー。

 

 ブツブツ言いながらも目の前の、格上を相手に片手でどうにか凌げている男の姿を具に観察して分析しているシアンさん。

 とはいえやつのほうは、わざわざこんな風に見世物だかサンプルだかになる気ももちろんない。むしろいい加減分が悪いと見てか、一瞬の逡巡の後についに諦めたようだった。

 

「ちいっ……!」

「うわっ!? ……へ、お、おおい!?」

 

 そう、やつは諦めた──諦めてガルシアさんを解放したのだ。

 ことここに至って、彼を連れて逃走なんてのが不可能になったと判断したんだね。そして、であるならばと己一人の逃走だけは果たすべく、彼を解放して両腕を自由に使えるようにした!

 

 そして飛び込んできた窓へと飛び退きざまに、懐から取り出した何かをガルシアさんに投げつける。

 あれは──ナイフ! まっすぐに彼の喉を狙っている!

 

「連れ帰れねば、お前はここで……!」

「暗殺なんざ、させんでござーる!」

 

 拉致するか、それが叶わなければ殺すか……ってところか。要するに口封じのためにガルシアさんを狙ったみたいだ。どうにも命を軽く見ている連中だねー!

 とはいえこれもサクラさんがカット。すかさず間に入り込みカタナを振るい、ナイフを叩き落とす。さすがに殺されるのは寝覚めが悪いしね、ナイスだよサクラさん!

 

「おのれ、邪魔だてばかり……!」

「ヒノモトの女侍、舐めんなでござるー!!」

 

 苦虫を噛み潰したように顔を歪める男に、サクラさんは格好良く啖呵を切る。

 侍──サムライ。ヒノモト独自の戦闘技術を会得している戦士の総称だね。いろいろ好戦的なお国柄らしくて、特に対人技術が発達しているって聞くよ。

 

 サクラさんの異様なまでの対人戦への慣れっぷりは、サムライだからなんだろうねー。

 納得しつつも僕はすでに動いていた。サクラさんがガルシアさんを助けに入った時点で、一歩踏み出していたのだ。

 逃しはしないよ不埒者。どこのどなたがなんのつもりで何をしようとしたのか、洗い浚い吐いてもらうよ!

 

「……いただき!」

「な────が、ああっ!?」

 

 暗殺失敗に動揺する男の、反応があからさまに遅れた。

 0.01秒でも遅れたなら僕の攻め時だ、容易くいなせるとは思わないでほしいねー!

 僕はやつの懐にまで瞬時に潜り込み、天高くへと伸ばすようにアッパーを放った。




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