ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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恨まれてない、らしいよー?

 レイアと近いうち、たとえ嫌でも会うことになる──

 なんかやけに確信してる感じでそんなことを予言するモニカ教授に、僕はもちろん他の仲間達も目を丸くして彼女を見ている。

 

 かつて僕と教授が所属していたパーティー、大迷宮深層調査戦隊。3年前に解散して以降、元メンバーは世界各地に散り散りとなり、特に中核メンバーだった7人はレジェンダリーセブンとかってダッサい名前で呼ばれたりするほどなんだけれども。

 そんな中でもとりわけリーダーを務めていた彼女とは解散以来、ただの一度も会ったことはないし。そもそもこの町というかエウリデに来たって報せも耳にしたことがないから、たぶん寄り付いてすらいないんじゃないかなーって思うんだよね。

 

 そんな彼女が近いうちにこの町にやってくる? なんでまた?

 疑問は尽きない。教授が面白がりながらも、首を傾げる僕らに説明した。

 

「ソウマくんに続いて私まで新世界旅団に入団するのだ、レジェンダリーセブンはみんなして動き出すだろうさ。ただでさえ私宛に、ソウマくんの動向を窺っていた者までいたほどなんだよ?」

「僕? え、誰?」

「他ならぬレイアさん御本人だよ」

 

 レイアが僕の動向を窺っていた。語る教授に、僕はどきりと心臓が跳ねるのを自覚していた。

 まさか、という思いとやはり、という思いとが両方ある。僕こそは彼女の調査戦隊を解散に追いやった張本人なんだ。

 

 ガルシアさんにもこないだ、調査戦隊は僕が壊したって言われたけど……そこについては何一つ異論を挟む余地もない。

 脅迫されても、それを実際に選んだのは僕だからねー。孤児院を盾にされていた以上、同じ状況に立たされたなら何千何万だろうと同じ選択をするだろうけど、だからこそ僕は、僕の選択が招いた事態を受け止めようとは思っている。

 

 つまり、元メンバーが僕への復讐を考えているかもしれない、ということを受け止めるってことだねー。

 さすがに殺されてなんか絶対にやらないけど、殺そうとしに来るのは受けて立とうと思う。せめてそれが、調査戦隊メンバーだった僕にできる最後のことだと思うから。

 

 レイアもたぶん、そのつもりなんだろう。むしろあいつこそが一番、僕を殺したくて殺したくて堪らないってなっててもおかしくはないんだし。

 目を閉じて少し、息を吐く。僕は腹を括って、教授に問を投げた。

 

「……復讐、だね? 他にもたくさんいるだろうけど、一番真っ先にそれを行う権利があるのは、間違いなくレイアだ」

「は? 復讐?」

「えっ?」

 

 ぽかん、とした様子で教授が口を開いた。突拍子もないことを言われて目を丸くしている。えっ?

 シアンさん達も半ば、復讐だと思っていたんだろう。険しい顔をして耳を傾けていたのが、いきなり話が食い違っているらしいことに気づいて唖然としているよー。

 

 復讐じゃない? まさか。そんな馬鹿な。

 困惑する僕に、教授は呆れた声を投げかけてきた。

 

「馬鹿なことを……彼女は調査戦隊解散の引金になった君に対して、むしろ罪悪感を抱いているよ」

「…………いや、さすがにそれは嘘だよ。ありえないってー」

「君の立場ならばなるほど、そう考えるか。先日愚兄に言われたことも関係しているのかもしれないな……つくづく罪深い輩だよ、アレは」

 

 たしかにガルシアさんに言われたことも少しは心に残ってるけど、むしろこれは追放を受け入れてからこっち、ずっと覚悟してきたことなんだけど。

 僕はかつての仲間達から復讐されるだけのことをしてしまった。それは事実なんだ。恨まれてないと考えるほうがおかしいんだから。

 

 あんなに素晴らしいパーティーが解散に追いやられて、その原因ともなった僕を恨まない? なんの冗談だよ。

 慰めにしても下手っぴすぎる、もうちょいリアリティが欲しかったよと思いながらも思うところを述べると、教授は深々とため息を吐いた。

 そしてやれやれと肩をすくめ、言い聞かせるように語りかけてくる。

 

「いいかい、ソウマくん? たしかに君が追放されて以後の調査戦隊の中には、君に対して恨みを抱える者も出てきた。たとえ事情があるにせよ、君は孤児院と調査戦隊を秤にかけて孤児院を選んだのだからね。調査戦隊を選んでほしかった者達の中には、そう考えるものがいてもおかしくはない」

「そうだねー……」

「だがこの天才メルルークが断言しよう。レイアや他の中核メンバー、レジェンダリーセブンと今では呼ばれている者達は君を恨んでなどいない。君が置かれていた状況、それまでの来歴や事情を詳しく知る者は皆、心無い外道極まる選択を強いられた君を助けることができなかったと今でも心から悔やんでいるよ……無論、私もその一人だ」

 

 どこか懺悔するように、遠い空を仰ぎ見るように部屋の天井を見上げて話す。

 モニカ教授はそうして、僕が抜けてからの調査戦隊を語り始めた。




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