ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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誰もが最初は志だけ、だよー

 土壇場での覚醒、と言うよりは元からの底力が引き出されたってところだろうか。

 対峙する前より遥かに強い威圧を放つシアンさんは、今やリューゼリア相手にも一歩踏み出せるほどにそのカリスマを拮抗させている。

 

 カリスマ、威圧、あるいは支配力……この手の能力は迷宮攻略法でもある程度までしかカバーできない、半分以上が天性の素質に依る部分だ。

 実際、リューゼリアには生まれついてのカリスマなんてありはしなくて、今放ってるのは迷宮攻略法の一つ、威圧法を駆使しての擬似的な支配力だからねー。

 逆に天性の素質、貴族としての生まれ育ちに由来するカリスマを持つシアンさんなら、現時点でもある程度は対抗できるんだよー。

 

 もっとも、さっきまではほとんど眠っていた素質で、今も少しばかり引き出したって程度だろう。

 目覚めたばかりの力に、意識のほうが少し追いついてなさげだ。脂汗をかく団長を見て、リューゼリアは顔をしかめて告げた。

 

「オレ様の威圧に抗ったのか、褒めてやらァ……だが志だけ一丁前でもなァ。そんな意気込みだけのカスなんざこの世の中、ごまんといるんだぜ、小娘」

「意気込みだけ、大いに結構っ!!」

 

 なおもシアンさんを見くびる彼女に、けれど返される力強い断言。まさしく開き直りの言葉だけれど、そこに込められた想い、祈りは生半可なものじゃない。

 意気込みだけ。たしかに今はそうだろう。シアンさんは今はまだ弱いし、新人さんだし、経験もろくにない。大言壮語と壮大な夢ばかりとカリスマが持ち味の、少し探せばそれなりにいそうな冒険者でしかない。

 

 だけどそんなの、掲げた夢の灯火の前にはなんの理由にもなりはしない。

 シアンさんが、燃えるような瞳を宿して力強く言い放つ!

 

「信念も大義もない、力だけの輩などそれこそ単なる暴力装置! 志あってこその力、理想あってこその現実なのだと知りなさい!」

「…………ほう」

「誰もが最初に掲げるは、力ではなく志のはず! あなたもかつてはそうだったでしょう……己の始まりさえも貶めて、それが冒険者としての姿とでも言うつもりですか、リューゼリア・ラウドプラウズ!!」

 

 今届かないならいつか届かせる。今できないならいつかできるようになる。そのために今、この時を必死に積み重ねる。

 誰だって初めは何も持たないんだ。それでも想うところが、目指したい夢があるから進んでいける──レイアやリューゼリア、調査戦隊のみんなもそれは変わらなかっただろう。

 

 鼻で笑った意気込みだけど、誰もがそこから始まったんだ。

 どうやらそれを忘れてるらしいかつての同胞をこそ、僕は軽くせせら笑ってやった。

 

「ハハ……お前の負けだよ、リューゼ」

「…………ソウマ」

「誰もが最初は口だけだ。誰も彼も、始まりは夢みたいな理想だけなんだ。それはお前だって同じだ……お前は自分の起源をもカスと言うのかな?」

「言うわけねぇだろ。つうかそもそもオレ様は最初から強かったっつーの」

 

 強気にふんぞり返るけど、さすがに負けを認めはしたみたいで威圧がすっかり消えていく。代わりに僕を睨んでぼやくんだけど、最初から強かったからってそれが何? って話だよねー。

 

 強さで人を選ぶんなら僕なんかは永遠に一人ぼっちだ。そんなところじゃない部分に価値を見出だせたから今、ここにこうしているんだよね。

 弱くても、まだまだこれからでもシアンさんにこそついていきたい。そう思わせてくれるだけでももう、それは僕にとってリューゼにも勝る彼女の魅力なんだ。サクラさんやレリエさん、モニカ教授にとってもそうだろう。

 

 強さに負けない夢を、理想を掲げてくれる団長こそが僕を連れて行ってくれる人だと信じる。

 そんな僕の想いをようやく感じ取ったのか、リューゼは肩をすくめた。一触即発の空気が霧散して、シアンさんも緊張から解放されてその場にてふらついていた。

 

「ぅ……」

「シアン!」

 

 体力も気力もごっそり削られたんだろう、とっさにレリエさんが介抱し、ソファに座らせて優しく背中を撫でさすっている。

 お疲れ様……団長。あなたはたしかに新世界旅団のリーダーとして、レジェンダリーセブンにさえ負けない姿を見せてくれたよー。

 

 団員としてとても、誇らしいねー。リューゼがつまらなさそうに呻く。

 

「ハン…………まあ、それなりにわかったぜ。小娘、テメェはたしかにレイアの姉御に似てるな」

「ソウマくんにもそれは言われますが、そんなになのですか?」

「見た目や声の話じゃねえぞ、性格も違う。だが放つカリスマだけはそっくりだ。ソウマ、モニカ。オメーらもこれに引っかかったのか」

「自分から飛び込んでいったんだよ。彼女とならまた、冒険してもいいってそう思えたからねー」

 

 彼女は彼女なりに、シアンさんを見定めたみたいだ。新米、雑魚。だけど小物でもないって印象かなー。

 今はそれでも良いよー。そのうちもっともーっと、団長のすごいところを目の当たりにするんだろうからねー。




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