ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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交渉という名の脅迫だよー

「貴様は」

「お初にお目にかかります、エウリデ国王陛下。私はエーデルライト家がシアン・フォン・エーデルライト。冒険者パーティー・新世界旅団の団長として今回貴国との交渉の使者として参りました」

 

 ぶっちゃけキレかけて売り言葉に買い言葉、立ち上がって言いたいこと言っちゃった僕がそのままバトンタッチして。それでもシアンさんは毅然と立ち上がり、エウリデ国王と対峙した。

 貴族、すなわち臣下としての礼は欠かさず。けれど冒険者、すなわち敵対する者としての矜持は忘れず。凛とした表情のままに応える団長は、僕から見ても立派にカリスマある冒険者だ。

 

 リューゼリアとの経験が、期せずして活きた形になるねー。

 国王も彼女の放つ気迫に若干の反応を見せ、目を細め、冷厳なる表情で言葉を放つ。

 僕の威圧の影響下にありながらよくやる……他のボンクラどもはさておくにしろ、この王だけはなかなかだと評すしかないねー。

 

「エーデルライト……青き血でありながら下賤なる道を貴ぶ下衆の家か。貴種が、ゴミ山に染まってゴミ同然となるなど度し難い」

「…………こちらの要求は!」

 

 もはや半分以上意地じゃない? ってくらい引き続いてこっちを見下してくる王に、シアンさんは怒りを露にして叫んだ。

 その様子に大臣以下貴族どもがまた憎しみの相を浮かべるけど邪魔っけだ、引っ込んでて。

 

 本来従うべき王に逆らうんだ、恐怖はもちろん団長にもあるんだろう。身体が震えている。

 それでも、そんな怯えを冒険者として抑えつけ、克己しているんだ……やっぱり心が強い。権威に屈せず何者にも負けず、真の冒険者かくあるべしって感じの姿だ。

 

 力強く団長は交渉を始める。

 まあ、言っても一方的な要求、半ば脅迫みたいな話なんだけどね。

 

「元騎士団長シミラ・サクレード・ワルンフォルース卿の処刑措置撤回と身柄の解放、冒険者への引き渡し。そして冒険者達への今後一切の干渉の禁止! それらを貴国、エウリデ連合王国に対して求めます!」

「ふざけるな! エーデルライトの小娘が、それでも貴族の女か!」

「なぜ蛆虫共にそのような真似をせねばならん! 貴様らこそ謹んで首を差し出し、反逆者ワルンフォルースともども処刑されろ、一匹残らず!!」

「愚かで生意気なゴミどもめ、貴様らの血を根絶やしにしてくれるわ!!」

 

 シミラ卿を解放し、冒険者にしろ。そして今後一歳冒険者に関わるな。

 ──いやー、実に喧嘩売ってるよね、この内容。エウリデに一つも良いことないもの、戯言だよねー本来なら。

 

 案の定貴族達もふざけんなー! ってなってるし。こればかりは気持ちも分かる。分かるけど、元を糺せばシミラ卿処刑なんて無茶苦茶なことをしようとした君らが悪いんだよー。

 なんだっけ、雉も鳴かずば撃たれまい? みたいな。下手なことして虎の尾踏んでたら世話ないんだよね。

 

「…………愚かなりエーデルライト。貴様らの家は教育を過った。致命的なまでにな」

「いいえ。むしろこの国の貴種においては唯一、成功したのです。それは今、冒険者達によって囲まれ、交渉という名の脅迫を受けているこの国の現状がすべてを物語っている」

「脅迫だと?」

「はい──先に述べた要求が通らない場合、我々は王都を攻撃します」

「何っ!?」

 

 ほら、出たよ虎の本体。大臣が目を剥いて驚きも隠せずにいる。

 まさかここまで強硬策に出るとも思わなかったかな? もしかして今、王都を囲む連中はハリボテ、パフォーマンス程度だと思ってたのかも。

 ははは、なわけないじゃんすべてがマジだよー。

 

 今や王都は絶体絶命、少なくとも王城に関してはもう待ったなしで崩壊寸前だとも。

 まあ、仮に攻撃するとしても言うまでもなく、民は極力巻き込まないようにはするんだけどね。そのために今、僕らが交渉の使者なんて形でここまで潜り込んできてるわけだしー。

 

 とはいえそんなことを知るはずもないエウリデ側は大騒ぎ。

 動けないまま狼狽し、なんともみっともなく喚き悲鳴を上げている。

 そんな中を、団長は続けて国王へと問うた。簡単な選択──やるか、引くかを。

 

「さあ、選んでください! 罪なき民をも巻き込んで愚かな処刑を強行するか、否か!」

「ふ……ふふ、ふふふ……」

「…………!?」

 

 強く迫る彼女に、被せられるように響く、笑い声。

 エウリデ国王が、肩を震わせ身を震わせ、耐えきれないとばかりに歪んだ笑みを溢している。

 心底から愉快というように、けれど不快さを隠さず敵意をむき出しに、団長を見下ろしている。

 

 なんだ? この余裕、なんかあるのかな?

 訝しむ僕をもちらりと見つつ、もはや裸の王様も同然のはずの男は、ニタリと嗤い、言った。

 

「つくづく愚かだ、冒険者というものは。国に、エウリデに逆らうのだから」

「何を……」

「貴様らに勝ち目などない。我らには"神"がついているのだからな」

 

 神。

 唐突に出てきたそんな単語に、僕もシアンさんもサクラさんも意味を測りかね、一瞬硬直するのだった。

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