ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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人を守る、彼らを守るよ!

 眼の前で蠢くこの、よく分からない化物。エウリデ王曰くの"神"とやら。

 そいつをあんたらは知ってたのー? と軽い口調で尋ねると、衛兵達の中でもたぶん上役なんだろうね、兜を被ったおじさんが戸惑い、どもりながら、けれどはっきりと叫んだ。

 

「し……知るかそんなもの、モンスターだろう! なんでここにいる!?」

「で、であえであえ! モンスターが侵入してきているっ! 冒険者の援護をしろ、町には、民には絶対に危害を加えさせるなーっ!!」

「! …………へえ」

 

 知らないと言う、それ自身を信じるかどうかはともかくとしてその直後、衛兵達が仲間を呼び、慌てて化物に対処しようとしていることに僕は目を剥いた。

 王城から離すのでなく、逆にここに閉じ込めてどうにか民を避難させようとしているんだね。王族や貴族より、町の者達に被害がいかないように動いたのか。

 

 衛兵としてはどうなんだって感じ、だけど僕としては思いもよらない光を見つけた気分がして、ひっそりと帽子とマントの奥で微笑んだ。

 末端はまだまだ、捨てたもんじゃないってことなんだね、この国も。

 

「よかった。エウリデも上は腐っていても、末端はまだまだ気概があるみたいだねー」

「お、おい! モンスターだからあんたに相手を任せたい! お、俺達は援護に回るがどうか!?」

「ありがたい、と言いたいけど悪いけどあなた達には無理だよー。こいつ、単純に強すぎる。レジェンダリーセブンが複数人いないとたぶん、押し切れない」

 

 冷静に、僕をメインに据えて自分達は援護に回ろうとするのも好印象だ。

 変にでしゃばらず、状況を読んで、しっかり把握した上で自分達にできることをやる。うん、衛兵なんかにしておくのはもったいない人達だ。

 

 でも残念ながら相手が悪い、こいつ相手には下手な数を揃えれば揃えるほど犠牲者がそのままそっくり増えるだけだろう。

 負けはしない。今までのやり取りでお互い決め手を欠いていて、いわゆる千日手になっているだけであって、このままだと勝てなさそうだけど負けることもないだろう。

 

 この状況、杭打ちくんもなしに押し切るとなると……やっぱりレジェンダリーセブン級のが数人、せめてあと一人はほしいよー。

 得た所感を素直につぶやくと、衛兵達はそれこそ顔を真っ青にして呻く。眼の前のモンスターが予想以上の輩だと、ハッキリ認識したんだねー。

 

「れ、レジェンダリーセブンが複数人!? む、む、無理だぞそんな!?」

「一応あてはなくもない。でもどうあれ被害は拡大するから、あなた達には僕の援護より民を、住民の避難誘導をお願いしたいんだ。できる?」

「っ……!」

 

 今、地下に向かっているシアンさんとサクラさんがシミラ卿を、あわよくばいるかもしれないリューゼまで引き連れてきてくれればたちまち形成はこちらに有利になること間違いなしだ。

 そういう希望があるから、ひとまず僕はこのまま神モドキを足止めして、みんながやって来るのを待つことにする。

 

 衛兵さん達はどちらかと言うと周辺住民の避難、その誘導をお願いしたいね。

 万一何かの拍子に僕が突破されたら、その時点で大惨事確定だろうし。そんな思いで指示を投げると、衛兵さんは少し逡巡した上で、決然とした顔つきで部下達へ指示を投げた。

 

「…………二班だけ援護、残る全班は避難誘導! 王都の外、緊急用の仮設テントを至急張ってそこに可能な限り住民を避難させろ!!」

「王都周辺を今、冒険者ギルドが取り囲んでいる! 彼らにも事情を話して協力を促して! ギルド長ベルアニーあてに、ソウマ・グンダリの名を出せば通るから!」

「はあっ!? なんで冒険者が王都を!?」

「いいから早くっ!」

『ウォアアアアアアアオオオオオオオオッ!!』

 

 幸いにして──っていうかそれが原因でこうなったところもなくはないけど。王都周辺にはすでに数多の冒険者達がいてスタンバっている。

 彼らの力も借りれば、ひとまずの避難くらいはできるだろう。僕の本名を出せば、ベルアニーさんなら動いてくれるだろうからね!

 

「くっ……! 迷ってる場合でも無しか! 全員速やかに動け、動け! モンスターが民を食い殺す前に、一人でも多く一秒でも早く逃がせーっ!!」

『ウォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

「させないよ、神様!!」

 

 やはりほとんど迷いなく、僕の言うことを聞く衛兵さん達は間違いなく心から、エウリデの民のために動いている。

 一人でも多く、一秒でも早く……立派な、とても立派な人達だ!

 

 そんな彼らをも喰らおうとしてか化物が体勢を整えて迫るのを、僕はまた、ガッツリと体当たりして受け止める。

 邪魔はさせない! 彼らが人を救うなら、僕はそんな彼らを救い護ろう!!

 

「民を守るためにひた走る……あんな人達こそ、国の上にいるべきだったんだよ、エウリデ」

『ウォアアアアアアッ!! ウォアアアアアアッ!!』

「────来いよ神様! 格の違いを思い知らせてやるよー!!」

 

 少しだけ、エウリデ王を憐れんで──こんなモノに縋らなければならなかったなにがしかの事情は、間違いなく憐れだからだ──

 僕は、力強く叫びこの拳を振るう!

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