ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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"それから"の話だよー

 次いでレイアは、もう一人この場にいる古代文明人へと目を向けた。

 ベルアニーさんや教授とともにやって来ていたレリエさんだ。世界的英雄に見つめられて硬直する彼女に、当のレイアは微笑んで尋ねる。

 

「それと。ええと、あなたも古代文明から来られた?」

「は、はい。レリエです。ソウマくんのおかげで、数万年の眠りから覚めまして」

「ソウくんが……そっか。そういうことですか」

「……?」

 

 何かを納得した様子で頷く。僕をちらりと見たのが印象的だけど、何? 僕になんかあるのー?

 気になるけれど今は我慢だ、どうせもうじきすべてがあきらかになるだろうし、その時に分かるかもしれないし。

 

 っていうかもしかしたら"美人さんにだけ声かけてるよこのスケベ……"的な視線だったかもしれない。怖いよー。

 レリエさんはじめ今、僕の周囲にいる人達が揃って美人さんなのは認めるけど偶然だよー。ぶっちゃけ超幸せだけど断固として偶然なんだよー。

 

 視線で言いわけできないかなーと彼女を見るもできるはずもなく、なんならその時にはすでにレイアは別なほうを向いてしまっていた。

 レリエさんに向けても、双子同様に自己紹介をしてるね。

 

「レイア・アールバドです。よろしくお願いしますね、レリエさん」

「よろしく……ええと、敬語はいりませんよ」

「ありがとう! それなら私もいらないよ、レリエさん。お互い対等にいこう?」

「そ、そうね……よろしく、レイアさん」

 

 レリエさんのほうはどうしても緊張してるけど、それでもさすがは"絆の英雄"、さっさと打ち解けようとグイグイ押してるよー。

 こういうコミュニケーション力の強さは3年経っても変わらないね。なんだかホッとするー。

 

 ひとしきり笑い合ってから、レイアは一つ咳払いをしていよいよ全員を見回した。僕ら新世界旅団の面々に元調査戦隊メンバー、ベルアニーさん。そして煌めけよ光の人達にレイアの部下が何人か。

 大体20人くらいかな、みんな席について彼女が切り出すのを待っている。それを受けて、彼女はついに話を本題へと進めた。

 

「さて! それじゃあ話を始めましょうか、みなさん。エウリデとか古代文明とか、あと大迷宮についての話を。あ、でもその前に一応まずは私達の3年、調査戦隊解散後のことから話すべきですね。すべてはそこから始まったので」

 

 すべてはそこから始まった。そう語るレイアの表情はひどく静かで凪いでいて、落ち着き払っている堂々とした姿だ。

 調査戦隊解散は、少なくとも僕にとってはすべてが終わった事件だったんだけど、レイアにとってはむしろスタート地点だった、と? ……そう思えるだけの何かがきっと、この3年にあったんだろうねー。

 

 そんな立場にいないとは承知しつつも、なんだかワクワクするよ。レイアはこの3年、どんな冒険をしてその末に何を見つけたんだろうか。

 僕がこの3年を、少なくとも冒険者としてはほとんど惰性だけで過ごしてきたからすごく興味があるよー。

 

 期待の眼差しで彼女を見る。他の、この場にいる知り合いの人達も大なり小なり似たような感じだ。元調査戦隊リーダーのそれから先の話、なんて垂涎ものだもんね。分かるー。

 そうした瞳の数々に、レイアは薄く微笑みながらも続けて話していく。時は遡ること調査戦隊解散後。すべてが一旦終わってからの、彼女視点からの話だ。

 

「……紆余曲折を経て解散した調査戦隊だけど。その後私は叔父であるウェルドナーさんと一緒に海を渡りました。冒険者として1からスタートを切ろうと思ったんです。キャリアの積み直しってやつですね」

「何故海を……エウリデでもリスタートは図れたろうに。いやむしろ、お前達の名声を考えればまたすぐにでもポスト調査戦隊を作れたはずだ」

「その調査戦隊から、離れるべきだと思ったんですよベルアニーさん」

 

 冒険者としての再起。ウェルドナーさんと二人してのリスタートへの志を、わざわざ心機一転しようと海を越えたレイアにベルアニーさんの困惑気味の問いかけがなされた。

 たしかに……再起を図るなら難易度的には間違いなくエウリデ内のほうが低かっただろう。調査戦隊のホームだったわけだし、調査戦隊に入隊を希望していた冒険者もたくさんいたからね。

 

 誰もが思うだろう考えを口にした彼に、レイアはけれどゆるく首を左右に振って否と答えた。

 そして頭を掻いて恥ずかしそうに、けれどどこか清々しい表情で語る。

 

「調査戦隊がなぜ解散したのか。私は、私達は何をどこでどう間違えたのか……それはきっと、エウリデにいたままだと分からない。そう思ったんです。それに正直、私にはもう誰かを率いる資格なんてないって思ってましたし」

「私宛の手紙にも書いていたね。あの時もこう返信したけれど、いくらなんでも極論に過ぎるよ。元リーダー」

「うん、そうだね教授。今だから思うけど、あの辺りの私はちょっと精神的にね。キてたから」

 

 苦笑いするレイアに、誰も何も言えない。

 なんだかんだと精神的に追い詰められていたんだ、彼女も……今、明るく語っている姿の裏にどれだけの苦悩や葛藤があったのか。

 僕には、想像することさえ憚られるよー。

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