ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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ピリオドをつけに行くよー!

 集結した、古代文明人や大迷宮と少なからず関わりのある面々を見て、レイアは静かに切り出した。冒険前の、リーダーによるスピーチだ。

 3年前、調査戦隊の活動にあってもレイアが参加する場合は必ずこれが前置きとしてあった。彼女なりの思いや注意事項とか、あと連絡事項を伝える時間だね。

 

 調査戦隊は解散しても、それでも残るものは当然ある。レイアにとってはこのスピーチが、かつての栄光に対しての名残のようなものかもしれないよー。

 

「──古今東西すべての冒険者達が夢見て、そして志半ばで挫折した大迷宮の真相解明。そして古代文明の謎への、答えを見出すこと。多くの先達の果てに、ここにいる私達こそが時代を変える権利を得た」

 

 静かに目を閉じ、つぶやくレイア。成立はその表情からは、抑えきれない熱情が渦巻いて見える。

 ことは世界の謎、秘密の解明に繋がる。これは紛れもなく歴史に残る一大プロジェクトなんだ。高揚するなってほうが無理がある。

 

 現に見渡せば、ほとんどの参加者が同じような熱情を、レイアと異なり隠すことなく燃えたぎらせている。

 冒険者にとっての夢、浪漫。そのすべてをこれから味わえるかもしれないんだ。老若男女関係なくテンションは上がるよねー。

 

 そんな熱気の高ぶりを、当然見逃すレイアじゃない。

 両目をカッと見開き、両腕を掲げる! まさしくスピーチと言うべき、ボディランゲージも加えての思いの伝達だ!

 

「今! 我々が冒険者を、人類を次のステージに導く役目を背負ってるんだ! これまでのすべてに決着をつけて! これからのすべて、私達のあとに続く者達に未来を紡いでいく!」

「レイア……」

「冒険とは、未知なる世界に触れること! 冒険とは、冷たい世間の風に晒され、それでもなお己が焰を燃やし続けること!」

 

 彼女なりの冒険を定義するその言葉は、出会って間もない僕にもくれたものだ。それから先の僕の人生、冒険者としての道程をずっとずーっと支え続けてきてくれた、魂の言葉。

 あの頃と変わったこともたくさんあるけれど。その言葉は今も変わらずに、僕達を結ぶたしかな絆として輝いているんだね。思わずして彼女が眩しく見えるよ。

 

「……この信念を掲げて幾星霜。辛いことも苦しいこともあったけど辿り着いたこの場所、この絆達に感謝を捧げて今、言うよ」

 

 そうして言葉を切る。誰もが分かりきったその言葉を、誰もが期待を孕んだ面持ちで待ち望む。

 ──号令だ! レイアは高らかに、大きな声で張り裂けんばかりに檄を飛ばした!

 

「さあ行こう!! 大迷宮の深層、3年前には届かなかった地点へ! 私達のこれまでとこれからに、つけなければならないピリオドをつけに!!」

「よっしゃあ!! 行くぜ行くぜ行くぜェェェッ!!」

「今日、俺達が歴史を変える……!」

「過去も、現在も、そして未来さえもがこの冒険の次第で……!!」

 

 そして火蓋は切って落とされた。進撃を導くその声に、リューゼリアをはじめ冒険者達が次々と意気軒昂に叫ぶ。

 さすがのカリスマだよ、レイア。シアンさんもかなりのものだなと思ってたけど、やっぱり世界最高峰の冒険者集団のリーダーをしていたのは伊達じゃないねー。

 

 とはいえシアンさんもこの域にはいずれ、到達するだろうとは信じているよ。

 今の僕が一番に考えるのは、やっぱり新世界旅団だ。団長たるシアンさんにはレイアにも負けない可能性を感じるし、彼女が少しずつ成長していく姿を見ながら冒険者活動を続けるのは、なんていうかすごく生き甲斐になってくれると思うんだ。

 

 かつてのリーダーに感心しつつも、今の団長に期待を寄せる。

 なんだか楽しさすら覚えている僕に、レイアはスピーチを終えて僕に話しかけてきた。

 

「よし、じゃあ行こうかソウくん……露払いは私達でやるよ、最高戦力だからね」

「うん、よろしくねレイア」

「あはは、こないだから引き続き、3年ぶりの共闘だねえ」

 

 並み居る冒険者達の中でも依然、最強格なのはやはり元調査戦隊、とりわけレジェンダリーセブン、もっと言うならレイアだろう。

 そこに自分で言うのもなんだけどレイアに唯一比肩する僕、冒険者"杭打ち"が並んでツートップなわけだねー。

 

 ゆえに先陣切るのは最強であるこの二人なんだ。

 呑気に微笑むレイアの言うように3年ぶりの本格的な共闘。さっそく血の滾るのを感じさせてくれるよー。

 

「先にどうぞ、レイア。続けて僕、そこからウェルドナーさん達が続いてショートカットルートに入って」

「おじさん達後続が来るまでに粗方片付ける。できる?」

「余裕。そっちは?」

「もちろんですとも! あはは、楽しくなってきた!」

 

 ざっくり洞穴から地下86階まで侵入する段取りを決めて、レイアと2人で穴の前に立つ。

 懐かしくも慣れ親しんだ軽口を交わしながらも、僕らは顔を見合わせて頷いた。

 いざ、迷宮へ!

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