ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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重力さえも立ち入れないよ

 僕めがけて振るわれるロングソードを、杭打ちくんで受け止める。余裕だ。

 レイアにしても小手調べ程度なんだろう、大した威力も込められていない、お遊びの斬撃だけど──

 

「やる気ないことばかり言って、実際、死にそうな顔しててもさ」

「……!」

「身体は勝手に動くみたいだね! やっぱりソウくん、君は本物の戦士だよ!」

 

 それをもって彼女は僕の、頭ばかりじゃない部分の本音を見透かしたみたいだった。笑顔で指定してくる。

 少なくとも身体はこの通り、向けられた攻撃に咄嗟に反応する程度には生きる気があって、活力だってあることを。

 

 嫌になるよ。どんなに理屈こねて自分を否定しても、僕の身体はそれでも動くんだ。

 本能の部分が叫んでいるんだよ……戦え! 良いも悪いもなくただ戦え! 生きろ! って。

 僕は右手に握る杭打ちくんを振るった。ロングソードごとレイアを弾き返し、そのまま彼女の胴に照準を定める。

 

「まったく」

「! くっう!?」

「こんなことばかり上手くなる! 罪の償い方さえ知らないくせに、僕ってやつは!!」

 

 嘆きとともに放つ杭打ち。それ相応の威力だけれどこっちだって小手先だ、少なくともレイアにコレは通じない。

 ほら、実際に……ヒットの瞬間、彼女は即座に重力制御を用いて防御した。杭打ちくんと自分の間に薄い重力の壁を張って、衝撃を吸収させたんだ。大した技術だ、3年前にはなかったテクニックだね。

 

 そうして僕の一撃を防いだレイアが、側面に回り込んで突きを放つ。シミラ卿かってくらいに正確で速く、そして今度は威力も在る。まともに喰らえばチクッと痛むくらいはするかも。

 でも喰らってやれないよ。僕は今しがたレイアが見せてくれた技をそのまま使い返した。

 

「…………!? ソウくんも同じ技を!?」

「真似してみたよ。意外とやってみるもんだね」

「嘘ぉ!? どんな天才、それとも化物!?」

「化物ー!?」

 

 刺突を完全に視認した。その向かう先を予測して、最低限度のブラックホール・シールドを展開する。

 相手が突きを放ち、もう止まれないタイミングに合わせてだ。当然、レイアの攻撃は弾かれる──シールドのある部分めがけて突きを放ってるんだから当然だね。

 

 見様見真似でも案外できちゃうもんなんだ。驚愕に顔を染めるレイアに向けて言ってみると天才はともかく化物扱いされちゃった。

 ひどいよー……ひどいからもう一手打っちゃうよー!

 

「重力制御はお互い、あんまり良くないねこの場合」

「っ、何を」

「互いに攻防自在ってんじゃ千日手だ。だからお互い、強制的に使わないでいようか──!!」

 

 どっちも互いの攻撃を一々重力使って防いでたんじゃ、それこそ日だって暮れるし夜明けも来ちゃう。それはギャラリー的にも良くはないよね。

 だから僕は宣言とともに重力制御を使った。エウリデ全土の重力を把握して制御、誰にも何もできないように防備を固めたんだ。

 

 これによりレイアはおろかギャラリーのリューゼだって重力に何もできない。かく言う僕も、エウリデ全土の重力を掌握するのに手一杯で他の操作は何もできそうにない。

 よし、成功。これこそがいいんだ。重力制御は互いに禁じ手としたいなら、強制的に誰も使えないようにすればいい。

 簡単なことだねー。

 

「っ!? 重力制御ができない! こ、こんなことまでできるのソウくん!?」

「なんとなくだけどねー。実際、使えないと割と困るでしょ、レイア」

「……だね。まったく、いとも簡単に人の切札を潰してくれるよ」

「レイアが望んだ戦いだからねー」

 

 本当はしたくないけど、やるとなったらやるしかない。少なくとも僕の身体はどうしたって迎撃のために動くし、レイア本人がそれを望んでいる。

 心は……痛むけど。素直にやられてしまえってずっと叫んでいるけど。けれど裏腹の、強いやつとの戦いに胸踊る感覚が生まれているのもまた、事実だ。

 

 なんて勝手なやつなんだよ、僕は。あまりに身勝手すぎて、泣きたくなってくるよー。

 思わずして、気持ちを吐露する。

 

「この期に及んでまだ僕は、償うことから逃げてるのかな? ……分からない。どうすれば僕は調査戦隊のみんなに償える? あの時僕は、本当はどうすればよかった? そんなことばかりこの3年、ずっと考えてきた」

「ソウくん」

「もう、自分でも何がなんだかわけがわからないよ。どうすれば僕は、何をすればいい……?」

「──ソウくん!!」

 

 助けを求めてどうなるんだか。そう自嘲しながらも嘯けば、レイアはまたしても斬り掛かってきた。

 まるで手を差し伸べるかのようにロングソードが奔る。僕はそれを、まるで手を払い除けるように杭打ちくんで迎え撃った。

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