ニューワールド・ブリゲイド─学生冒険者・杭打ちの青春─   作:てんたくろー

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お互いにとっての地獄、だよ

 今度は重力制御なんて使っていないけど、身体強化と武器強化は健在だ。こっちも正念を入れて対応しないと杭打ちくんごと押し切られかねない威力。

 切札を一つ失ってなお勢いを増すレイアは、攻撃とともに僕に向け、必死に訴えかけてきていた。

 僕の犯した罪と、その償いについてを。

 

「償い方を分からないんじゃないよ、君は! 勝手に罪を重く見て、勝手に背負って、それで本来課されるべきものを見誤ってるだけ!」

「何を……」

「ありもしない罪の幻影に押し潰されて、ありもしない償いを求めるからわけわかんなくなっちゃうんだよ!!」

 

 猛攻、そして叫び。

 彼女はまさしく自分の考えを理解してもらうために今、僕に向かってきているんだ。僕は償い方を知らない分からないじゃなくて、まずはそもそものところ、犯した罪は何なのか考えるべきなんだって。

 

 意味が分からない……そんなの明白だ。僕がみんなより孤児院を取って、調査戦隊を壊滅に追いやったこと。それこそが罪だ。

 孤児院は見捨てられなかった。そこについて僕は何一つ後悔してないけれど、それでももっと他にやりようはあったんじゃないかって、そこは今でも悩んでいるよ。

 

 そう、だからこそ分からない。調査戦隊を護りつつ孤児院を選べる手はなんだった? 仮にあるとして、その手段をどうやれば僕は、選べた?

 そこさえわからないから償うことさえできないでいるんだ。そんな気がする。僕は、振るう杭打ちくんで、レイアを払いながら応えて叫ぶ。

 

「でもね、現実に僕は調査戦隊を滅ぼした! それがすべてだ、僕の罪だ! だったら償いはなんにせよ、しなくちゃいけないだろ!?」

「そこからして違う!! 君の罪は調査戦隊を解散させたことでもなければ、ましてや孤児院を選んだことでもない!!」

「何を……!」

 

 レイアも僕に打ち払われる度、負けじと超速度で接近してきてはロングソードを振るう。ぶつかり合う得物同士、その度に地面が破れ大地が裂けて、暴風が巻き起こる。

 観客の冒険者達も十分な位置を取りつつ、それでも被害を受けている。揺れる地面に足を取られて、吹きすさぶ風に身体を飛ばされて。

 

「うおああああああっ!?」

「な、なんて戦いだ!? 台風と地震が、いっぺんに!」

「こ、これが冒険者"杭打ち"と"絆の英雄"の戦い……」

「世界最強の2人の、ぶつかり合いでござるか!!」

 

 知った顔も叫べば、知らない顔も喚く。みんな、僕とレイアの戦いの規模に恐々としているみたいだ。

 さすがにタイトルホルダー同士はね、ぶつかるとこうもなるんだよ! だから嫌だったんだ、絶対に周囲に被害が及ぶから!!

 

 僕は多少なりとも周囲に気を遣うけど、レイアはまるきり気にせず向かってきてる。

 3年前と、立場が逆だ……! あの頃は僕こそ何も考えずに好き放題して、レイアはそれをずっとフォローしてきてくれた!

 なんでこんな、合わせ鏡みたいになるのっ!? 混乱と戸惑いの中、杭打ちくんでロングソードを迎え撃つ。

 

「聞きなさい、ソウくん! 大切なもの二つを秤にかけるのも、より大事なほうを選ぶのも生きてれば当然あるんだよっ! 君だけの話じゃない!!」

「っ!?」

「そして選ばなかったほうがどうなったかを、どうすればよかったかをあとになって悔いることだって当たり前! そんなの罪でもなんでもない、生きてる限りいつだって誰にだってついてまわる話なんだよっ!!」

 

 力強く断言する彼女に、二の句が継げない。

 当たり前? こんなことが? 僕のした最低な行為が、そしてその結果生まれた罪悪と後悔さえも生きる上で当然のこと?

 ……そんなはずがない。あるもんか、そんなこと!

 

「嘘だ! それは優しい嘘だよレイアの! 僕を慰めるために言っている!!」

「そう思いたいのは分かるよ! 自分で自分がどうしたって許せない君は、どうしても自分を傷つけたがっているから!」

 

 雄叫び否定すれば、倍ほどの声量で言い返される。その声に込められた気迫に、思わず後退りしてしまう!

 いけない、ここで気負いで負けるわけにはいくか! 僕の贖罪は、ちょっと優しくされた程度で揺らいで良いものじゃない!

 

 吹き荒れる風に帽子が飛び上がる、素顔が丸見えだけどもう知るもんか。

 嵐めいた夕焼けの草原の中、レイアを睨みつければ──負けじと彼女も僕を睨みつけ、射殺さんばかりの眼光とともに続けて叫んだ。

 

「でも本当だよ! 私だってそうだったからね、この3年!!」

「レイアが? 何を悔やむ必要があるの──!」

「どうすれば調査戦隊の解散を、ソウくんが思い詰めるのを、防ぐことができたのか! リーダーだったくせに何もできず崩壊を見ているだけだった私にとっても、あれからの日々は地獄だった! ……地獄だったんだよ、ソウくん」

「……!!」

 

 もはや感極まってか涙さえ流しながら、レイアは最後には消沈してつぶやいた。

 レイア……君がどうして、そんなふうに苦しむの?

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