戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達   作:宇宙刑事ブルーノア

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新年あけましておめでとうございます。

今年も『戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達』をよろしくお願いいたします。


第38話『零れ堕ちる砂の様に』

???………

 

「………う………ううん………! ハッ!?」

 

「あ、気が付かれましたかー?」

 

意識を取り戻した劾が跳び起きると、モノトーンを基調とした未来風の制服らしき姿で、両腕と両足首には大量の腕時計を纏い、髪に1束だけ濃いピンク色のメッシュが施された女性が目に入る。

 

「あ、ど、どうも………」

 

「お目覚めの珈琲、如何ですか?」

 

女性………『ナオミ』がそう言いながら、劾に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を差し出す。

 

「あ、ありがとうございます」

 

しかし、劾はそれを気にする事も無く、到って普通にそれに口を付ける。

 

(う~ん………飲めなくは無いですけど、コーヒーではないですね)

 

ナオミの珈琲をそう評する劾。

 

「………って! そうじゃなくて此処は一体!? キャロルちゃんは!?」

 

「ウルセェなぁ、静かにしろよ」

 

「先輩に比べたら全然静かだと思うけどね~」

 

「んだと、亀! そりゃ如何言う意味だ!!」

 

「モモタロス、煩い」

 

「ZZZZZzzzzzzーーーーーーー………」

 

と、我に返った劾が叫ぶと、それを聞いたモモタロス、ウラタロス、リュウタロスが騒ぎ出し、キンタロスのイビキが響き渡る。

 

「! 貴方は………モモタロスさん!? と言う事は、此処は………」

 

「はい~、時の列車………『デンライナー』の車内ですよ~」

 

モモタロス達の姿を認めた劾が声を挙げると、独特な喋り方の声が聞こえて来る。

 

「!」

 

声が聞こえて来た方向を見て劾が見たのは、旗が立てられた山盛りの炒飯を、旗が倒れない様、棒倒しをしている様に食べている紳士風な出で立ちの中年男性………デンライナーの『オーナー』の姿が在った。

 

「貴方は?………」

 

「初めまして、宇宙刑事シャイダー………陸街 劾さん。私はこのデンライナーの『オーナー』です」

 

「ど、どうも、初めまして………」

 

独特な雰囲気と迫力を持つオーナーを見て、やや萎縮する劾。

 

「あ! そ、そうだ! キャロルちゃんは………」

 

「キャロルなら此処だよ」

 

「!」

 

そこでまた別方向から声が聞こえて来た再度劾が振り向くと………

 

気を失っているキャロルを膝枕して、髪を優しく撫でている眼鏡の男性の姿が在った。

 

その顔は、()()()()()()()()()()()()()()

 

「ひょっとして、貴方は………」

 

「初めまして、宇宙刑事シャイダー………私がキャロルの父、『イザーク・マールス・ディーンハイム』だよ」

 

そう言って微笑む男性………キャロルの父『イザーク・マールス・ディーンハイム』

 

!? やっぱり、キャロルちゃんのお父さん!? でも、貴方は………」

 

死んだ筈のイザークが現れた事に、驚愕する劾。

 

「うん、君が思っている通り………僕はとっくの昔に死んだ筈だった」

 

「それが如何して?………」

 

「それは恐らくですが、キャロルくんの記憶が喪失した事が関係しているのでしょう~」

 

驚いたままの劾に、オーナーがそう口を挟んで来た。

 

「記憶?………」

 

「時間と記憶は密接に関係しています。人の記憶こそが過去であり、またそれが今と未来を創るのです………」

 

「記憶が今と未来を創る………」

 

「イザークさんは既に亡くなっているので、本来は『幽霊列車』の区間である『死者の世界』に居ました~。しかし、その存在を唯一覚えていたキャロルさんの記憶が失われた事で、半ば事故の様に『時の砂漠』を走っていたデンライナーの方に弾き飛ばされて来たのです~」

 

「…………」

 

そう説明するオーナーだったが、専門用語が多過ぎる為、劾は完全には理解出来ない。

 

「まあ~、一言で言えば………イレギュラーな事態が発生したという事ですかね~」

 

「はあ………?」

 

「大丈夫だよ。キャロルの記憶は完全に失われたワケじゃない」

 

とそこで、今度はイザークがそう口を挟んで来る。

 

 本当ですか!?」

 

「ああ。そもそも記憶は無くならないよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

自身の膝で安らかに眠っているキャロルを愛おしそうな眼を向けながらそう言うイザーク。

 

「キャロル………愛しい僕の娘………」

 

イザークはそう呟きながら、キャロルの髪を撫でていた手を止める。

 

すると、その手が輝きを放ち始める。

 

「う………ううん………」

 

短く声を漏らすキャロル。

 

やがてイザークの手の光が治まると、その目がゆっくりと開かれた。

 

「やあ、キャロル」

 

「パパ?………!? パパッ!?」

 

寝起きでボーっとしていたキャロルだったが、声を掛けて来たのが死んだ筈の父・イザークである事に気付くと、慌てて跳び起きる。

 

「えっ!? 嘘っ!? そんなっ!? 幻っ!?」

 

流石のキャロルも動揺を隠せずに居た。

 

「そう、今の僕は幻かも知れない………けど、此処に居るのは確かさ」

 

そこでイザークがそう言い、キャロルの頬に触れる。

 

「!?」

 

驚きながらも、その手から確かな温もりが感じられ、キャロルの目から涙が溢れ出す。

 

「パパ………パパァーッ!!」

 

そのまま飛び付く様にイザークに抱き着くとそのまま号泣して始めるキャロル。

 

「ウワアアアアアアッ!!」

 

「キャロル………」

 

泣きじゃくるキャロルをイザークは優しく、そして愛しく抱き締める。

 

「グス………コレはホンマに泣けるでぇ」

 

「「「…………」」」

 

何時の間にか起きていたキンタロスが鼻を啜りながらそう漏らし、モモタロス・ウラタロス・リュウタロスも黙ってその光景を見守っている。

 

「キャロルちゃん………」

 

勿論劾も、優しい眼差しを向けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、暫く泣き続けた後に、落ち着いたキャロルに、イザークとオーナーが事情を説明した………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイムマシン………時の列車………デンライナー………時の砂漠………そんな存在が在ったなんて」

 

数100年近く生きて来たが、初めて耳にした事ばかりで、キャロルがやや唖然となる。

 

「僕も死んでから知ったけど、驚いたよ。そして思ったよ………やっぱり世界は広いって。色々と見て来た積りだったけど、まだまだ学び足りなかったなって」

 

「パパ………ごめんなさいっ!!」

 

とそこで、キャロルがイザークに向かってバッと頭を下げた!

 

『私』………『世界を識れ』ってパパの言葉を、復讐の為に使って………挙句、フーマなんて連中に利用されて………」

 

もう会える筈が無かった父・イザークに会えて、キャロルはコレまでの行いを完全に悔い、只管に謝り出す。

 

「キャロル………」

 

そこでイザークの表情が険しくなり、キャロルの方へと右手を伸ばす。

 

「!!」

 

殴られると思ったキャロルは、思わず目を閉じて身を固くする。

 

だが、イザークの右手はキャロルの頭の上に置かれ、そのまま優しく撫で始めた。

 

「!?」

 

「謝るのは僕の方だよ………キャロルは賢いから僕の気持ちを分かってくれるだろうって勝手に思って、抗おうともせずに死んでしまった………今にして思えば、とんな独り善がりだよだったよ」

 

「そんな!? 違うよ! パパは何時だって人の為に錬金術を使って来た! 何時も誰かを助けて来た! それを私は!………」

 

「だったら、今からでも遅くは無いですよ」

 

とそこで、劾がそう口を挟んで来た。

 

「陸街 劾………」

 

「間違えた、失敗したと思ったのなら、それを反省してやり直せば良いんです。大丈夫、キャロルちゃんなら出来ますよ。1人で無理な時は僕が力を貸します。勿論、エルフナインちゃんや響さん達だって力を貸してくれますよ」

 

「…………」

 

優しくそう語り掛けて来る劾の姿に、キャロルの目から再度涙が溢れて出て来る。

 

「…………」

 

イザークはその光景に満足そうに微笑む。

 

すると、その身体が徐々に透明に成り始めた!

 

「!?」

 

「! パパッ!?」

 

「そろそろ戻らないと行けないみたいだね………」

 

慌てる劾とキャロルとは対照的に、イザークは落ち着いた様子でそう言う。

 

「キャロルさんの記憶が戻った今、イザークさんは本来居るべき場所である死者の世界に帰る事になります」

 

「オーナーさん、ありがとうございました。キャロルを連れてきて欲しいと言う無理を聞いて頂いて………」

 

オーナーがそう説明する様に言って来ると、イザークが深々と頭を下げる。

 

「やだ! 嫌だよ、パパッ!! 折角また会えたのに!!」

 

「キャロル………」

 

狼狽しているキャロルの頬に、イザークは殆ど消えかけている手を添える。

 

「改めてもう1度言うよ………生きて、世界を識りなさい………今度は仲間達と一緒に」

 

「!!」

 

イザークの言葉に、キャロルが目を見開く。

 

「宇宙刑事シャイダー………いや、陸街 劾くん………キャロルの事を………よろしくお願いします」

 

「………ハイ」

 

劾が静かに、だが力強く頷いた瞬間………

 

イザークの姿は完全に消え去ってしまった………

 

「パパ………」

 

イザークが存在して居た場所に手を伸ばすキャロル。

 

それは虚しく空を切るが、それでもキャロルはその手を力強く握り締める。

 

「キャロルちゃん………」

 

劾がその肩に手を置くと、キャロルは振り返り、涙の残った顔を向けて来る。

 

「…………」

 

劾は優しく微笑みながら、その涙を返して貰ったあのハンカチで拭ってやるのだった。

 

「………さて~、では御2人をお送りすると致しますか」

 

「それにしてもオーナー。良かったんですか? 本来ならばイザークさんはすぐに死者の世界へ送り返さないと行けなかったのに、それどころか頼みまで聞いてあげるなんて」

 

その光景を見ていたオーナーが呟いたところ、ナオミがそう言って来る。

 

「確かに~、余り良い行動ではありませんでしたが………死して尚、娘の事を思っていた親心を無下には出来ませんからね~」

 

「さっすが、オーナー!!」

 

粋な計らいを見せたオーナーを誉め立てるナオミ。

 

「!?………」

 

とその瞬間に、炒飯に立てていた旗が倒れ、オーナーは変顔をして見せたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実空間の現在………

 

都庁前の広場………

 

碧の獅子機(クビライ)の爆発で、半径12キロが爆心地なると言われていたが………

 

そんな破壊の後は何処にも無かった。

 

その代わりに、爆発の中心点………チフォージュ・シャトーが突き刺さった都庁を取り囲む様に佇むワンセブン・ダイデンジン・マックスビクトリーロボの姿が在った。

 

碧の獅子機(クビライ)が爆発する瞬間に、ワンセブンが腹部のシャッターを裏返して出現させた反射板による『ミラーアタック』………

 

ダイデンジンが『デンジ爆発返し』で、爆発のエネルギーを上空へと反射。

 

残ったエネルギーは、マックスビクトリーロボが吸収し、被害を防いだのだ。

 

「如何やら助かったみたいだな………」

 

「今回ばかりは流石にヒヤッとしたぜ」

 

そして、碧の獅子機(クビライ)を倒す為に全エネルギーを放出して無防備となっていた装者達は、ギャバンと初代ギャバンがギャバンバリヤー、シャリバンと初代シャリバンがシャリバンプロテクション、そして初代シャイダーがブルーフラッシュスパークを放って守っていた。

 

「轟兄! キャロルちゃんと劾さんはっ!?」

 

とそこで、響がギャバンに向かって尋ねる。

 

「何処にも姿は見えねえな………」

 

「我々は守って貰って助かったが、あの2人は爆発の中心に近い場所に居た。もしかすると………」

 

奏が言うと、翼が最悪の想像を巡らせるが………

 

「馬鹿言うな。アイツがそう簡単にくたばるかよ」

 

「それは俺達が良く知ってるさ」

 

「その通り、彼なら大丈夫さ」

 

ギャバン(轟)とシャリバン(雷)、そして初代シャイダーは、劾が………2代目シャイダーがそんな簡単に死ぬタマではないと確信していた。

 

と、その瞬間………

 

辺りにミュージックホーンの様な音が鳴り響いたかと………

 

空中に出現した穴から、行く手にデンレールを生成しながらデンライナーが現れた。

 

「! デンライナーッ!!」

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

驚く装者達と宇宙刑事達の前に降り立ち、停車するデンライナー。

 

そして、側面部のドアが開いたかと思うと………

 

「よっ、と」

 

キャロルをお姫様抱っこで抱き抱えた劾が降りて来た。

 

「! キャロルちゃんっ!!」

 

「「劾っ!」」

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

響とコンバットスーツを解除した轟と雷が駆け寄り、一瞬遅れて他の装者達も続く。

 

「皆さん、御心配をお掛けしました」

 

「別に心配なんざしてないさ」

 

「お前がそう簡単に死ぬワケないからな」

 

「酷いなぁ」

 

轟・雷とお道化た会話をしながら、劾はキャロルを地面に降ろす。

 

「…………」

 

「キャロルちゃん………」

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

降ろされたキャロルは、やや俯き加減で響を先頭にした装者達と向き合う。

 

「………俺の負けだ………投降する」

 

やがてボソリと呟く様にそう言ったかと思うと、手錠を掛けろとでも言う様に、両手を差し出す様にするキャロル。

 

「「!!」」

 

「待て、翼」

 

「姉さん、此処は任せましょう」

 

それを見た翼とマリアが、キャロルを拘束に動こうとしたが、奏とセレナに止められる。

 

「…………」

 

任された人物………響は、すっかり覇気の無くなってしまっているキャロルの姿を暫し見詰めていたかと思うと………

 

やがてその眼前へと歩み寄る。

 

「…………」

 

キャロルは一切抵抗の様子を見せない。

 

「…………」

 

するとそこで………

 

響はキャロルの差し出されていた両手を、自分の両手で包み込む様に握り締めた。

 

「!?」

 

「…………」

 

驚いたキャロルが顔を上げると、そこには優しい笑顔を浮かべている響の姿が在った。

 

「立花 響………お前と言う奴は………」

 

そんな響の姿を見て、キャロルは呆れた様に笑う。

 

しかし、その笑顔は………

 

蟠りも屈託も無い、綺麗な笑顔だった。

 

「………こちら陸街 劾。クビライとフーマは滅びました。キャロルちゃんは投降。状況終了です」

 

そんな2人の姿を見ながら、劾は本部へそう報告の通信を入れる。

 

「「「…………」」」

 

その一連の光景を見て、初代ギャバン・初代シャリバン・初代シャイダーは満足そうに頷いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、後に『魔法少女事変』………

 

別名『フーマ戦乱』と呼ばれる3度目となる宇宙犯罪組織によって引き起こされた事件は………

 

またも宇宙刑事達と装者達の活躍によって阻止されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新年1発目の新話、投稿させて頂きました。

碧の獅子機(クビライ)の爆発に巻き込まれたかに思われた劾とキャロルですが………
デンライナーに助けられます。
そしてそこで何と!
オーナーの計らいによって、キャロルの父・イザークと再会!
イレギュラーな事態でデンライナーに現れていたイザークのお陰で、キャロルは記憶と本当の父の命題を思い出します。

そして、ワンセンブン達によって爆発は防がれ、宇宙刑事達に守られて無事だった装者達の元へ、劾とキャロルが帰還。
投降を表明するキャロルでしたが、響はその手を優しく握る………
コレにて、魔法少女事変、別名フーマ戦乱は終結となります。

次回はエピローグとなり、キャロルを含めた一同のその後、エルフナインの事、そしてAXZ編へ向けての話となります。
お楽しみに。

今年もよろしくお願いします。
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