戦姫絶唱シンフォギア 装者と鋼の勇者達 作:宇宙刑事ブルーノア
『世界を渡る仲間達』
ドルギラン船内………
「フ~、やれやれ………如何にかなったなぁ」
「ちょっと危なかったけどね………」
「あ~、お腹空いたなぁ~」
一仕事終えたと言った様子で、ドルギランの船内へ戻って来た轟・未来・響。
今し方、某国から放棄の申し出があった聖遺物を回収して来たところである。
しかし、引き取りの際に『アリエナイザー』が出現すると言うトラブルがあり、難なく撃破したものの、余計な手間を取ってしまったのだ。
『アリエナイザー』………
惑星間において犯罪に手を染めた宇宙人の総称であり、宇宙警察によって取り締まりが行われている。
個人で在ったり、人数が居ても精々数人程度など極めて小規模である事が殆どであり、宇宙犯罪組織の様に組織力による巨大さは無い。
しかし、単独犯や小規模である故に人目に付き難く、動きが把握し辛いと言う点も存在する。
再び倒されたものの、宇宙の悪の間での伝説である『マクー』、『マドー』、『フーマ』が立て続けに復活した影響か、銀河系の彼方此方でアリエナイザーの活動が活発化していた。
特に地球には、宇宙犯罪組織に続けと言う思いか、アリエナイザーが多数侵入していると言う情報がコム長官から齎されていた。
前述の通り、個人の犯罪者達の為、動きが把握し辛く、取り締まっても取り締まっても中々数が減らないと言うのが現状であり、他の星々も同じ状況の為、宇宙警察からの増援を派遣する事も出来なかった。
だが、地球には数多くのヒーロー達が居るお陰が、幸いにも今の所マクー・マドー・フーマの様な被害は出ていなかった。
(………アリエナイザーの活動の活発化も、例の巨悪の存在が関係しているのだろうか?)
以前のコム長官との話を思い出し、心の中でそう考えを巡らせる轟。
「う~、私もう駄目~………」
とそこで、響が力尽きたかの様に、仮眠用のベッドの上に倒れ込む。
途端に、腹の虫が凄まじい音を立て始める。
「響、はしたないよ」
「未来~、未来の御飯が食べたいよ~」
そんな響の様子を叱る未来だったが、響は意にも解さず、逆に未来にそう言って来る。
「もう~、しょうがないんだから………轟お兄ちゃん、キッチン借りるね」
「おう、構わないよ。と言うか、もうその辺のスペースは未来ちゃんと響ちゃんのみたいなもんだろう」
ドルギラン内に在るキッチンへ向かった未来にそう言う轟。
晴れて恋仲になった轟・響・未来の3人は、元々幼馴染である事もあって、以前にも増して公私を共にする事が多くなっていた。
そしてS.O.N.G.としての任務が日を跨ぐ事も多かった事から、響と未来はドルギランで寝泊まりする事が多くあり、今では多数の私物を運び込んですっかり2人のスペースを作り上げていた。
事実上の同棲の様なものだが、前述した通り幼馴染の間柄である3人は、幼少期から寝食を共にした事も多く、全員が特に気にした様子は無い。
すっかりS.O.N.G.のツッコミ担当が板に付いて来ていたクリスからやはり色々とツッコまれていたが………
完全にバグっている3人の距離感に今ではすっかり疲れてツッコミを放棄し、只々死んだ魚の様な目で見るばかりとなっていた………
因みに、轟と響・未来の関係については、コム長官にも報告済みである。
銀河連邦警察も警察組織には変わりない為、そう言った事には報告義務が発生し、相手の身辺調査が行われるのだ。
雷と劾も既に報告を済ませており、マリアとキャロルは共に訳有りの身だが、幸いにもコム長官はそう言った事に理解が有る懐の深い人物であり、両者共に被害者としての面もある為、無事認められている。
そして響と未来の事も当然認められているが………
所謂、
コレは、マリア・キャロルと異なり、響と未来はまだ未成年であり、現役の学生の身だ。
幾ら将来を約束しているとは言え、轟が2人とそう言った行為に及んだ場合、
仮にも現役警察官………更に言えばエリート職と言える宇宙刑事がそう言う行為を疑われるのは非常に良くない。
轟の事も考え、その事には納得・理解しているが、お年頃な響と未来には不満が無いワケではなく、良く『早く大人になりたい』と愚痴って他の装者達を苦笑いさせていた。
「…………」
と、仮眠用ベッドに横たわっている響が寝返りを打つ様に仰向けになったかと思うと、何かを考えている様な目で天井を見上げる。
「? 如何した、響ちゃん?」
すぐにその様子に気付いた轟が尋ねて来る。
「あ、うん………あの時………エレクライトを纏ってフーマの仲間になってた時なんだけど」
「…………」
身を起こした響の語り始めた内容に、自然と表情が険しくなる轟。
「あの時………何だか『私だけど私じゃない誰か』の存在を感じたんだ」
「? 『私だけど私じゃない誰か』?」
「う~ん、何て説明すれば良いのかなぁ………確かに私なんだけど………私とは違う誰かの存在を感じたと言うか………」
何と説明して良いか分からず、頭を悩ませる響。
「………ひょっとするとそいつは、『並行世界の響ちゃん』かもな」
だが、轟はそう推察して見せた。
「? 『並行世界』?」
「『パラレルワールド』とも言うな。何処かの時点で分岐し、分岐前の世界と並行して存在する別の世界って事だ」
「別の世界………」
「例えば、そうだな………俺が宇宙刑事にならなかったとか、響ちゃんがライブに行かず、シンフォギアを知る事が無かったとか………そう言う可能性によって世界は枝分かれし、その数だけ幾つもの世界が出来るって事だ」
「………そうなのかも知れない」
轟の説明に、何となく納得した様子を見せる響。
「その私も、あの時の私みたいにエレクライトを纏って戦ってたんだけど………周りに誰も居なくて、ひとりぼっちだった………自分は罪を犯した………だから孤独で居ないといけない………そんな事を思っている様に感じたの」
並行世界と言えど自分の事の為か、表情が翳り出す響。
「…………」
すると轟は、何も言わずに響が居る簡易ベッドの上に座り、響の肩を掴んで抱き寄せた。
「キャッ! 轟兄!?………」
「大丈夫だ」
「!」
思わず短い悲鳴を挙げた響に、轟は安心させる様な声色でそう言う。
「並行世界でもきっと響ちゃんは響ちゃんだ。例え響ちゃん自身が孤独を望んでいたも、皆が放っておかないだろうぜ」
「そうだよ、響」
とそこで、調理を終えた未来が、料理の乗ったお盆を持ちながらキッチンスペースから出て来る。
「響の隣には私が居る。例え傍には居なくても、きっと心では繋がってる筈だから」
「未来………」
確信を持ってそう言う未来の姿を見て、響に笑顔が戻る。
「そうだね………きっとそうだよね」
「うん………さ、お待たせ。轟お兄ちゃんも一緒に食べよう」
そこで未来は、料理をテーブルの上に並べ出す。
「おお、コリャ旨そうだ」
「当然だよ、轟兄! 未来の料理は最高なんだよ!」
「もう、響ったら、調子良いんだから~」
そして3人の間には、和気藹々とした空気が流れだすのだった………
◇
何処かの並行世界………
「うん?………また?………」
胸の辺りが暖かくなった様な感じがし、灰色の灰色のフードパーカーを着ている響………
『並行世界の響』が胸に手を当てる。
彼女もまた、ツヴァイウイングのライブに行き、そこで惨劇に遭った上、その後謂れの無い誹謗中傷を受けたのだが………
その時に陽だまりである未来が傍に居なかったと言う状況に見舞われており………
それよってやさぐれた性格となってしまい、他者を拒み1人孤独にノイズと戦い続けていたのだが………
別の並行世界から訪れた未来達との交流によって救われ、自身の世界の未来とも再会出来た事で落ち着きを戻した。
………かに思われていたが。
後にある事件により、漸く再会出来た自身の世界の未来を失ったと思い込んでしまい、胸の歌を捨てて復讐の力を手にし、未来の仇を討ったかに思えたが………
実はそれが勘違いであり、それにより多数の並行世界が滅亡しかねない大事件が勃発。
絶望に打ちひしがれた並行世界の響だったが、別の並行世界の響、更に並行世界の装者達に助けられた事で胸の歌を取り戻し、仲間達の絆を力に変えて得た繋ぐ為の力で事態を収取に成功。
そして、無事だった自身の世界の未来と再会を果たした。
だが、その戦いの最中にて、自身にそんな積りは無かったとは言え、『誰かのミライを奪った』と言う罪の意識から、並行世界を巡り、困っている人々を助けると言う贖罪の旅に出る事を決意。
自身の世界の未来と再び別れ、孤独な旅路を続けていた。
………つい此間迄は。
「アハハハハハハッ! 夏ミカン! またやったなぁっ!!」
「士くんが悪いんですよ!」
「ちょっと2人供!」
「まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いて」
今、並行世界の響が居る場所………彼女と同じく並行世界を巡る『光写真館』では、『仮面ライダーディケイド』こと『門矢 士』、『仮面ライダーキバーラ』こと『光 夏海』、『並行世界の仮面ライダークウガ』こと『小野寺 ユウスケ』、そして夏海の祖父で写真館の店主である『光 栄次郎』が何時の通りと言えば何時も道理に騒いでいる。
「響ちゃん、如何かしたのかい?」
とそこで響に声を掛けて来る1人の青年………『機界戦隊ゼンカイジャー』のリーダー『ゼンカイザー』こと『五色田 介人』
『トジデント』、そして『神』との戦いの後、仲間である『ジュラン』、『ガオーン』、『マジーヌ』、『ブルーン』と共に並行世界を巡る旅に出ており、その過程で並行世界の響と光写真館の一行と出会った。
そして『旅は道連れ世は情け』の精神から、全員を巻き込んでの旅に変えてしまったのだ。
「別に………只、何だかちょっと良い気持ちになっただけ」
「そっか! それは良かったね!」
「ん………」
ややぶっきら棒に返す並行世界の響の態度を全く気にせず、無邪気に喜んでくれる介人。
「あ! そうだ! 次は響ちゃんの世界に行かないかい!」
「えっ!?」
「響ちゃんもそろそろ里帰りした方が良いって! 前から聞いてた未来ちゃんって子にも会ってみたいし!」
「ちょっ!」
「よ~し! それじゃあ早速行こうかっ!!」
並行世界の響の返事も聞かず、介人は写真館の背景ロールを降ろす。
「あ! お前、また勝手に!!」
「良いじゃない、良いじゃない」
「良い訳あるか!」
それによって今度はディケイド勢とゼンカイジャー勢が揉め始める。
「ハア~、全く………」
溜息を吐いて呆れた様子でその光景を見ている並行世界の響。
「………ホント、騒がしい旅になっちゃったな」
しかし、続いてそう言ったかと思うと、皆からは見えない様に笑みを浮かべるのだった………
◇
『宇宙刑事達のセッション』
魔法少女事変・フーマ戦乱から少し経ち………
最早恒例となった、弦十郎主催による慰労会が開催された。
再会した世界ツアーに参加していた翼達も一時帰国し、当然キャロルや復活したオートスコアラー達も引っ張り出されて、またもやどんちゃん騒ぎが始まる。
当初は装者達とオートスコアラー達が互いに気まずそうにしていたが………
そんな空気を響が良い意味で破壊し、今ではすっかり打ち解けていた。
お約束のカラオケライブが始まると、マリアとガリィ、翼とファラ、切歌・調とミカ、そしてクリスとレイアと言った因縁の面々が即興で歌を披露するまでに………
そして最後の締めに、轟のギターと雷のハーモニカによる演奏が披露されようとしていたところ………
「オイ、劾。お前も食ってばっか居ないで参加しろよ」
「俺達だけにやらせる気か?」
ステージ上の轟と雷が、慰労会場に用意されていた料理を次々に平らげていた劾に声を掛けた。
「モグモグ………そうですね。じゃあ、僕も披露させて貰いましょうか」
食べ掛けていた料理を飲み込むと、自らもステージの上に上がって行く劾。
そして、ライダースジャケットの内側から………『横笛』を取り出した。
「劾さんは横笛なんだ………」
「何か不思議が組み合わせだね」
その様子を見ていた響と未来がそんな感想を呟く。
やがて、宇宙刑事3人よるセッションで『銀河のはてまで』が始まる。
其々に全く異なる楽器ながらも、不思議にその音は調和が取れており、寧ろ聞き入る様な気持ちの良い音楽となっていた。
「…………」
キャロルもその演奏に何時しか聞き入り、劾に視線を注目していた。
「良い音楽ですね、キャロル」
そんなキャロルに、エルフナインが声を掛ける。
「! フ、フンッ! まあまあだな………」
そこでキャロルは赤くなった顔を背け、照れ隠しの様にそっぽを向く。
「…………」
しかし、少しすると赤くなった顔のまま、再度劾へと視線を向けるのだった………
◇
『AXZ編予告』
魔法少女事変・フーマ戦乱から1ヶ月後………
南米の国『バルベルデ』で内乱が発生し、鎮圧に向かった国連軍が全滅した………
生き残った部隊が撮った映像が届けられたS.O.N.G.のメンバーは驚愕に包まれた。
そこには壊滅した筈のマクー・マドー・フーマの怪人達の姿………
そして、巨大な怪獣の様な生物の姿が映し出されていた!
急ぎバルベルデへ向かったS.O.N.G.の前に立ちはだかる新たな敵………
『アダム・ヴァイスハウプト』こと『マッドギャラン』が率いる『パヴァリア光明結社』
そんなパヴァリア光明結社に復讐の怒りを燃やす錬金術師『サンジェルマン』
果たして、敵か味方か?
謎の巨人『サタンゴース』の影がチラつく中………
新たな銀河の狼が、地球へと降り立つ!!
その名は………
『戦姫絶唱シンフォギア 奏者と鋼の勇者達』
第4部 AXZ編・俺が正義だ
お楽しみに。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
ちゃっかりと同棲紛いな事を始めてる轟・響・未来。
幼馴染だけにそういう事は昔からやってたから抵抗が薄い感じです。
でも、アレやソレだけはまだです。
他の人の作品とか見るとそっちの関係に行っちゃってる描写してる人も結構居るのですが、作中にも書いた事が私的に気になっているので、この作品ではそういうのは無しとさせて頂きます。
無論、将来的には別ですが………(爆)
まあ、それはさておき………
今回は所謂グレ響………並行世界の響について書いてみました。
例の事件の後、エレクライトで孤独な並行世界放浪生活をしている並行世界の響がちょっと不憫に思えたので、同じ世界を渡るヒーローと旅人であるディケイドとゼンカイジャーを合流させてみました。
これで元の世界に任意で戻る事も出来る様になったので、何時でも並行世界の未来に会えるってオマケつきえです。
そしてお馴染みの宇宙刑事の楽器演奏。
劾は横笛にしてみました。
ちょっと変化球で行ってみた感じです。
そしていよいよ次回からはAXZ編がスタート!
ストーリーは殆ど原型が無い感じですね。
特撮的な話が多く展開される事になるかと。
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。